明日はホワイトデー

「えぇー嫌だよー」

そういったのは僕らの息子であるナエギリ息子だ。

「困ったな・・・」

「どうしたの二人とも」

そう言って台所に入って来たのは僕の妻であり、一家の大黒柱である響子さんだ。

「ちょうどよかった。ママからも言ってあげてよ。明日のためにクッキーを作ろうって言ってるんだけど、嫌だって言って聞かないんだよ。」

「明日?・・・あぁ、そういえば明日はホワイトデーね」

そう、明日は3月14日。男子から女子へバレンタインデーのお返しをするホワイトデーだ。

「何故ナエギリ息子はクッキーを作りたくないのかしら?」

そう聞いたのは響子さんだ。その眼は事件を捜査しているときの響子さんの眼と同じだった。こうなったら例え僕たち家族でさえ逃げる事はできない。ナエギリ息子もそれが分かっているらしく渋々といった感じで喋り出す

「・・・だって男がお菓子を作るのなんてかっこわるいもん!」

確かに男の子がお菓子作りというのは、かっこわるいと思われがちかもしれない、が

「じゃあ、いつも家で料理しているパパはかっこわるいかしら?」

響子さんが言った事から分かる通り、僕は専業主夫をしている。料理は毎日するし、たまにお菓子を作ったりもする。もちろん、ナエギリ息子も料理中の僕の姿は、いつも見ているだろう。

「・・・ううん」

少し考えた後、ナエギリ息子は首を横に振った。

「そう。なら、嫌だと言う理由はなくなったはね。パパも手伝ってくれるから一緒に頑張りなさい」

「うん!」

そう答えて手を洗いだすナエギリ息子。母は強しとはこの事である。
そして響子さんは付け足すようにナエギリ息子に言った。

「あと、ナエギリ息子」

「なに?」

「女の子には優しくしないと、めっ!よ」

「うん!分かった!」

ナエギリ息子の返事を聞くと、響子さんは満足そうにリビングへと戻っていった。

「さて、じゃあ始めようか」

「うん。僕は何したらいいの?」

「まずは・・・」

その後、四苦八苦しながらなんとかクッキーを完成させた。作ったのはチョコチップを混ぜただけの簡単なクッキーだ。


作り方は簡単だったけど、ナエギリ息子をサポートする形で進めたため、予想よりも時間がかかってしまったのだ。その後、数個ずつ袋づめし終えた時には夕食時になっていた。

「もうこんな時間か。早く夕食の準備をしないと。ナエギリ息子はリビングで待っててね。すぐできるから」

「僕も手伝うよ」

その言葉に僕は少し驚いた。いつもは、料理が完成するまで待っていて、手伝いをする事などなかったからだ。小さな事だけど、ナエギリ息子が日々成長してるんだなと思うと嬉しくなる。

「ありがとう。じゃあ皿を並べてくれるかな?」

「うん!」

クッキー作りの時に気づいたことだが、ナエギリ息子は僕に似て料理の才能があるようだ。自分に似ている部分を見つけるとナエギリ息子は僕たちの子供なんだなと実感する。


冷蔵庫に入っていた物で簡単な料理を作り、食べ終えた後、ナエギリ息子を寝かせ、響子さんと僕はコーヒーを飲みながら残り物クッキーを食べていた。

「おいしいわね。このクッキー」

「うん。ナエギリ息子には料理の才能があるみたいだね。」

「きっと、あなたに似たのね」

そういって響子さんは僕に笑いかけてくる。僕は少し恥ずかしくてコーヒーを飲むフリをしながら視線をそらした。

「でも、これは誠君が作った物でしょ?」

そう言われ、僕はギクリとした。

「・・・やっぱり、分かった?」

「えぇ。他の物に比べて形が整い過ぎているもの。何度か作った事がある人じゃないとこうは出来ないわ」

「あの子が作った物の中に混ぜたら分からないと思ったんだけどなー。さすが現役の探偵だね」

「あら、私を騙せると思っていたの?誠君のくせに生意気ね」

「う・・・ごめんなさい」

そう言った後、響子さんは突然

「明日は特に予定は無かったわよね?」

「え?う、うん。特に何もないよ。響子さんも明日は休みだよね」

「えぇ。それはそうと誠君。さっき私を騙そうとした罰よ。口を開けなさい」


何故、罰の前に明日の予定を聞いたのかは分からなかったが、騙そうとしたのは本当なのでおとなしく口を開ける

「誠君。あーん」

「あ、あーん」

そう言ってクッキーを口の中に入れられ、サクサクとした触感が口の中に広がる。

「おいしい?」

「・・・うん。おいしいけど、今のが罰?」

「そうよ」

「?」

分けが分からなかった。今のが罰というのは、どういう事だろうか。確かに少し恥ずかしかったが、二人きりの今はそれもさほど気にならない。どちらかと言うとご褒美だと思う。

「誠君」

「何?響子さん」

そう言いながら僕はコーヒーを口に含んだ。

「そろそろ二人目が欲しいわね」

「・・・・・・」

危うくコーヒーを吹くところだった。

「ま、待ってよ響子さん。いきなりどうしたの!?」

「結婚する前に言っていたでしょ?最低でも男の子と女の子を一人ずつ欲しいって」

「言ってたけど・・・」

「あの子もだいぶ大きくなったし、そろそろ良いんじゃないかしら?」

「それは、そうだけど・・・」

そう言いながらクッキーをまた一つ頬張る響子さん。それにしても、さっきから体が熱い。・・・熱すぎるくらいに


「・・・響子さん

「何かしら誠君?」

響子さんは微笑を浮かべてこちらを見ている。間違いない彼女がクロだ。

「さっきから体がすごく熱いんだけど、これが罰?」

「いいえ、それは下準備よ。」

そう言いながら響子さんはポケットから小さな瓶を出して、その中身をクッキーに少しだけ垂らし、口に入れた。

「響子さん。それって・・・」

「あら、さすがの誠君でも分かったかしら?」

そう言った響子さんの顔は赤く、呼吸も荒くなっている。響子さんと僕の今の状況から考えると、瓶の中身は・・・

ビ○○ (閃きアナグラム開始!)

「・・・まさか、媚薬?」

「その通りよ。これで分かったでしょ?私が何故いきなり明日の予定を聞いたのか・・・」

「・・・うん」

正直、僕は限界だった。確かに僕は草食系と言われる部類に入るのだろうが、それでも男なのだ。

「そろそろベッドに行きましょうか。誠君、今夜は寝かせないわ」

「・・・・・はい」

その日、僕は誓った。絶対に響子さんを騙すような事はしないと。
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