kk9_272-276

いつから目で追いかけるようになったのだろう……
いつからこんなに胸が痛くなるようになったのだろう……
いつから彼女のことを好きになったのだろう………。
それは彼女を初めて見た時からなのだろうか
いつもの様に何気ない会話をしていた最中なのだろうか
めったに表に出さない素の感情を見れた時なのだろうか
……いつからなのかは分からない。けれどこの気持ちだけは確かに分かる。


――僕は霧切さんが好きだ。

きっかけも理由も分からない。
気が付けばいつも霧切さんのことを考えている。

朝から霧切さんと会話できたらその日1日はずっと幸せな気持ちになるし。
霧切さんが探偵の仕事で会えなかったらその日1日はずっと寂しい。

だから休みの日は何かと理由を付けて一緒に過ごせるようにしてるし
探偵の助手を名乗って常に側にいられる様にしている
おかげで僕はいつも幸せな気持ちになれる。

でも、時々不安になる。
霧切さんは僕のことをどう思ってるんだろうか。
いつも一緒にいて鬱陶しく思われてないかな……。


――――――
「そうね。…確かに、最初は物好きな人もいるのねと思ったわ」
「あるいは、何かウラがあるんじゃないか?と、思って、身辺調査もしたわ」

「…クラスメートだったのにって?…ただのクラスメートならそうでもなかったのたけれど」
「生憎私たちの母校は、皆、何がしかの超高校級の才能の持ち主が集まる処だったもの」
「特に『幸運』だなんて、あやふやな肩書きなら。私の『探偵』の才能が黙ってなかったのよ」
「勿論、身辺調査をしたところで何もでなかったわ」
「正真正銘、ただの高校生だったの」

「――だからこそ私の様な自分の才能を隠していた、怪しい人間と親しくしようとしていたのが理解できなかったの」

「毎日毎日他愛の無い話をしたり、一緒にお昼を食べたり……いつの間にか放課後も一緒に過ごすようになったり」
「休みの日も一緒に買い物に行ったり、遊びに出かけたり………」

「…そうよ。あの時は特に意識をしていなかったけど、あれは確かにデートね」
「そうしていつも一緒に過ごしていたの。――もっとも、私に探偵の依頼があった時は別よ」
「その時は1日会えない……なんて事もあったわね」


「……その時から?えぇ、そうね。――確かにその時には既に好きになっていたのかも」
「でも、その時には分からなかったのよ。……仕方ないじゃない。そんな経験、生まれて初めてだったから」

「…モテてたんじゃないかって?どうかしら、自分の父親に捨てられたせいで一種の男性不信に陥ってたから」
「興味が無かったのよ。……だからあの時私が抱えていた気持ちを、上手に処理できなかったの」

「だから彼が私の助手になるって言い出したときは、凄く嬉しかった」
「そして、どうして嬉しいか悩んだものよ」

「そうして、何故彼がここまで私に執着しているのかずっと考えたの」
「何度も何度も……。でも考えれば考えるほど答えが絞り込めてしまうの」

「…そうよ。あの人は私の事が好きなんじゃないかって」
「本当に何度も何度も調査したわ。まさかこんな、探偵を生業としている女を好きになるはずが……ってね」
「でもね、熟考すればするほど、綿密に調査すればするほど、彼の好意は本物だとわかったの」
「ずっと私と一緒にいるし、私と他の女子に対する態度が、少し違う事も分かって……」

「確信したの。……そこまでしなくてもって?……いいえ、私は探偵だから。確信を持てるまで行動できないのよ」


「そこからが大変だった。なんせ人を好きになったことが無いのだから。……この好意をどう処理すればいいのか」
「応えるべきなのか、そうでないのか……。応えるなら、どうすればいいのか」
「まぁ、その結果は言わなくてもわかるわね?」


――――――
「霧切さんが好きだ」
今日もまた、自室で呟く。
口にすればするほど、気持ちが高ぶっていく。
好きだ。好きだ。好きだ。…………
でも、それ以上に嫌われたくない、ずっと側にいれるだけで……なんて後ろ向きな気持ちにもなる。
僕は人より少しだけ前向きなのが取り柄なのに。

この高ぶった気持ちを処理できず、悶々としたまま今日も布団に入る。


――最近霧切さんの様子が変だ。
いつも思慮深い彼女が僕と話しているときに上の空だったりする。
それどころか…少し、距離を置かれてる気がする。
僕が何かしたのだろうか?
……やっぱりいつも一緒にいるのが鬱陶しいのだろうか……………

いっそ全部ぶちまけてしまおうか、『僕は霧切さんが好きだ』って。
とてもじゃないけど、そんな勇気はない。
ここまで築いた関係を崩したくない。


「どうしたんですか苗木くん?何か悩みがあるなら相談に乗りますよ」
「舞園さん…。別に何でもないよ。大した悩みじゃ……」
「苗木くん、私エスパーですから何を悩んでるかわかりますよ」
「えぇ!?」
「霧切さんの事ですね?」
「……!?何故それを……」
「やっぱり」
「!かまを…かけたの?やっぱり舞園さんて……」
「ふふ、エスパーでなくてもわかりますよ。苗木くん、霧切さんのことが好きなんですよね」
「っっ!!やっぱりエスパーなの?」
「丸分かりですよ。いつも霧切さんの事ばかり見てますよね」
「……バレてた?」
「むしろ、バレてないと思う方が驚きです。いっつも一緒に居るじゃないですか」
「……………」


「あれー?珍しいじゃん。苗木が霧切ちゃんじゃなく、舞園ちゃんと一緒なんて」
「朝日奈さんまで……」
「ね?皆知ってますよ」
「何々なんの話?」
「苗木くんたらバレてないつもりらしかったんですよ、霧切さんを好きなこと」
「えぇー私でも苗木って霧切ちゃんが好きなんだろなって事くらい分かってたよ?」
「………そう、なの?僕って………」
「そもそも、付き合ってるんじゃないの?」
「い、いや、まだ付き合っては……それに僕が好きでも、霧切さんがどう思ってるか………」

「苗木くん。大丈夫ですよ。霧切さんも苗木くんのことが好きですよ」
「私エスパーですから、間違いないです。…(それにさっき、霧切さんに同じアドバイスしましたし)」
「舞園さん……」

「苗木!霧切ちゃんみたいな女の子は押しに弱いんだよ。押しまくるんだよ」
「朝日奈さん……」

「2人ともありがとう。僕の気持ちを伝えてくるよ」


「霧切さん、用事は済んだ?」
「えぇ、今終わったところよ」
「なら、一緒に帰ろう」


「ねぇ、霧切さん……僕」
「苗木君、後で私の部屋に来て欲しいの。その時にね」
「……わかった」
やっぱり霧切さんにもバレてたんだろうか、恥ずかしい。
でも、舞園さんはああ言っていたけど、本当に大丈夫かな……


ピンポーン
「霧切さん、来たよ」
「入って」
こうして霧切さんの部屋に入るのは何度目だろうか。
事件の資料等を閲覧するときや、探偵の心構え等を教わる時は必ずこの部屋に来る。
必要最低限の物しか置かれていないけど、やっぱり女の子の――霧切さんの部屋はいい匂いがする気がする。

「霧切さん、僕、僕!」
「待って、とりあえずお茶でも飲みましょう」
やっぱり霧切さんは僕の気持ちを知っているんじゃ…当然か、探偵の霧切さんに隠し事なんて……。


「はい、落ち着くわよ」
「ありがとう」
確かに高ぶっていた気持ちが少し落ち着いた。
さすがによく見ているんだなぁ。

「ねぇ、苗木君、あなた私のこと好きなんでしょ?」
「………」
やっぱりバレてたか

「返事しなさいよ。…それとも私の勘違いなのかしら」
「…好きだよ……大好きだ!四六時中霧切さんの事考えてる。目が覚めてから、寝ている時でも考えてる」
「…そ、そんなに私のこと………」
「たまらなく好きなんだ。この想いが叶ったら死んでもいい!」

「ダメよ……」
「そ、そんな……………」
否定されるなんて、舞園さんの嘘つき!
頭を鈍器で殴られたような痛み……目の前が真っ暗になってきた…………

「苗木君!?どうしたの?」
「……死んでやる。霧切さんに振られるなら死んでやる!!」
「ダメよ!!落ち着いて!話は最後まで聞いて」
「だって、ダメって……」
「私もあなたが好きなの!想いが叶ったら死んでも、なんて言うから」
「え………じゃあ……」


「ただ………」
「ただ?」
「付き合うとなったら、その……色々あるじゃない?」
「そりゃ色々あるね……」
まずは今まで遊びに出かけた所を、ただの友達じゃなく恋人同士で出かけないと
それに応援してくれた2人にお礼を言わないと。
あぁ…ごめんね舞園さん。嘘つき呼ばわりして
それに手を繋いで登下校もしたいし、手作りのお弁当も………それにキ、キキ、キスとかも……。

「以前言ったように、私のこの手袋の下は、家族になるような人にしか見せないって決めてあるの」
「だから、私の家族に立候補できるかどうかを……」

「霧切さん……」
まさかそんな先の事まで考えてくれていたなんて。
そこまで行くのは時間をかかるだろうと思っていたけど、僕も腹を括ろう。

「ごめんなさい、ただの冗」
霧切さんが何か言いきる前に抱きしめた。
「な、苗木君?」
「嬉しいよ。霧切さんも僕との事真剣に考えてくれていたんだね」
「苗木君?……ちょっと……」
「愛してるよ響子。子どもは沢山欲しいね」
「ちょ、ちょっと待っ……!?」


――――――
「さ、そろそろパパが帰ってくる頃よ。晩御飯の準備をしなくちゃ。手伝ってもらえる?」
「はーい」
「何かいい匂いがするね。ママ何作ってるの?」
「これ?ニンニクのホイル焼きよ。これはパパのだからあなた達は一つだけよ」
「はーい。パパだけズルいな」
「ふふ、今度ドーナツを買ってあげるわ」

「ところであなた達、弟か妹のどっちが欲しい?」
「うーんと僕は弟かな」
「私は妹がいいな」
「帰ってきたらパパにお願いしてみなさい」

「ただいま」
「あ、パパだ。お帰りなさい」
「ただいま、いい子にしてたかい?」
「うん、あのねぇママにお話してもらったの」
「へぇーどんなお話だい?」
「パパとママのお話だよ」
「ねぇパパ?私ね、妹がいいなぁ」
「あ、ズルいぞ。パパ、僕は弟、弟がいい」
「え?急に何を?」

「お帰りなさいあなた」
「ただいま響子。どうしたんだいこの子達?急に弟が妹が言い出して」
「あら、あなたが言い出したんでしょ?」
「子どもは沢山欲しいって」
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