放課後

チャイムの音が鳴り響いた。同時に僕と彼女は駆けだした。廊下を、階段を、昇降口を、正門を。ひたすらに、一目散に。
ただただ必死に、寮までの帰路を全速力で。

別に命の危機があるわけじゃあない。ただ煩わしいだけ、僕等を阻むもの全てが。
学校の敷地を抜け出すと同時に僕らは手を繋ぐ。周囲を見渡す余裕はなかったが、チラリと一瞥したところ学校から出てきたのはまだ僕らだけ。

こんな時まで律儀に自らに課したルールを守る彼女。それは僕も同じだけど……曰く『報酬効果』というやつらしい。
学校で人目につかないように我慢することで、その後の見返りが大きくなるんだとか……いつもならそうなんだけど。
今日は既に危ない橋を何度も渡った。そもそも最初に求めてきたのは彼女のほうなのに。

今更我慢する必要なんて、と思いつつも、先ほどの失敗を思い返した。



六限目の途中で保健室に入室、体調不良を装って愛しい彼女の容態を確かめに行った。
勿論彼女も別段どこが悪いわけではなく、著しく体力を消耗したので休憩していただけだった。
だけど、僕を不安にさせた罰として、悪戯してたら我慢ができずに危うく校内で……。

もう、本当に限界というタイミングで邪魔ばかり入る。こうなってしまうと僕の才能が本当に幸運なのか怪しくなる。
もっとも、理解のある先生でよかった。多少お小言はもらったけれど、要は『場所を弁えろ』ということだった。
確かにアレはどうやっても言い逃れできる状況じゃなかった。そもそもバレちゃダメなのに……。まぁそこも理解のある人で良かった。


横槍が入ったことで確かに僕等の熱は冷めたが、消えてしまったわけじゃない。
彼女が体操着から制服に着替えて、保健室を後にしてすぐに僕は彼女を抱きしめた――まだ授業中なんだから見つかるリスクは低いだろう。
それに今日一日中、ずっと薪をくべられ続けた僕の炎は、より一層燃え上がってしまった。
押さえが効くハズない。

だけど彼女の方はまだ幾分か冷静なようで、僕が制服の上から感じる柔らかさに理性の糸が擦り切れそうになっているのを知りながら、頬にキスして素早く身を離した。

瞳が『我慢しなさい』と訴えている。同時に僕の手が痛いほど強く握られた。やっぱり彼女も我慢しているんだと思うと、誘惑に負けそうになる。
だから僕も我慢するために、僕がされたのとは反対の頬にキスした。


早く帰りたい。一刻も早く帰って、彼女を精一杯愛したい。彼女に愛されたい。そんな考え事で頭が一杯だった。


だからついウッカリ、何気なく教室の扉を開いた。
もう後数分で授業が終わるとはいえ、授業中にふいに扉が開けば注目が集まる。このクラスの住人なので僕だけならすぐに収まるだろう。
ただ――――僕と彼女が同時に教室に戻ってきたら?



何人かは普段通りに僕等の体調を気遣ってくれていた。何人かはそもそも興味がないのかこちらを一瞥しただけで興味を失っているか、そもそも寝ている。
そして目敏い何人かは僕等を見て露骨にニヤニヤしている。

しまった――。後悔してももう遅い。生暖かい視線を背に浴びながら僕等は席に着いた。
僕等は一番後ろの席だから、まるで見世物になったかのように好奇の視線にさらされた。
恥ずかしさと、ばれてしまった事に対する後ろめたさのようなものと、胸のつっかえが下りたような安堵感を覚えた。

それでも居心地はとても悪く。彼等は席に着いた後もチラチラとこちらを振り返ってくる。

その無遠慮な視線の間隙を縫って僕等は目配せし、終業の鐘の音と共に教室を飛び出した。



これで疑惑は確定しただろう。こんなあからさまに逃げ出せば、それはもう認めたも同然。そもそも言い逃れできるチャンスを放棄したんだから。
事実なのだから、言い逃れするのもおかしな話だが……。


こうして僕等は手を繋ぎながら彼女の部屋の前まで来た。
幸いまだ知り合いには遭遇していない。周囲に人がいないのを確認してから玄関の前で絡まるように抱き合ってキスをする。
ここまで走ってきたせいもあり、汗にまみれて息も切れ切れ、そして心臓がうるさいくらいバクバクとしている。

それでも僕等は唇を離さない、離せない。頭が酸欠でクラクラするも、息を吸う度にキスをして、息を吐く度にキスをする。
さすがに舌を入れるのは無理だった。
そしてキスしたまま彼女から鍵を受け取り、転がるように中に駆け込んだ。すぐに後ろ手で鍵を施錠し鞄を玄関に下ろした。

部屋の真ん中まで抱き合ってキスをしながら移動した。
一旦口を離して、僕は先に汗を流すことを提案してみた。彼女の汗は気にならないけど、僕の汗が不快な思いを与えてはいけない。
けれど、というより当然のように僕の口は塞がれてしまい。

僕の額を舐めた後に、耳元で『どうせ汗をかくんだからシャワーは後で』なんて囁いてきた。
僕も負けじと、こめかみから首筋へと垂れる雫を舐め取りながら『わかってるよ』と返した。

「生意気ね」
と一言呟いたと思ったら。

強く突き倒され、ベッドの上に仰向けに押し倒された。マウントを取られた。
仰向けに倒れた僕に馬乗りになった彼女。当然スカートの中は僕に筒抜けで。僕の目はそこに釘付けだ。
僕の目線に気づいて、今日見た中で一番妖艶な笑みを浮かべた。
そのままスカートのファスナーをおろし、いつでも脱げる状態にしながら、そのスカートのたわみで僕の視線を防いだ。

あっ、と思ったときにはもう僕の口は彼女の口で塞がれていた。
至近距離で彼女の瞳が『どこをみてたの?』なんて問いかけるように僕の目を捉える。
艶っぽい笑顔で、頬は上気し、両手で僕の顔を挟んで、目を逸らすことは許されない。

それでも僕が気恥ずかしさから少し目を逸らすと、口内に蛇のように彼女の舌が入り込んできた。


ドアを開けてもらうためにノックするように僕の前歯を彼女の舌先がつつく。僕はまだ閉じたままだ。
続いて歯茎を舐められた。舌で何度もなぞられる。それでも僕は閉じたままだ。我慢するのが辛い。

焦れた彼女は一度舌を抜き、僕の上唇を噛んだ。
痛みで思わず開いた口。その隙を逃すようなことはしなかった。

僕も観念して彼女に蹂躙されている。歯の裏に始まり、舌の裏、頬の内側、勿論僕の舌全体を思うままに攻められる。
時折舌を収めては僕の唾液を掬って行く。そして代わりに彼女の唾液で口内を満たされる。


僕も反撃を始める。彼女と同様に舌を這わせ、絡ませて遡上させる。僕が下にいるから唾液を貪るのは簡単だが、逆に送り出すのが難しい。
それでも必死に送り込む。僕だけ貰いっぱなしじゃ悪いしね。

もう、ずっと瞬きしていない。ドライアイじゃないけれど流石に目が乾く。自然と涙が滲んできたが、これは感極まって嬉し涙が出ているに違いない。
目が潤ったことで、視界がクリアになる。僕と同じく彼女の目も潤んでいて、垂れて落ちる前に舐め取ってあげた。

カッと彼女の目が開かれた。すぐさま強く抱きしめられ、僕も強く抱きしめた。
僕等が密着すには邪魔なものが多すぎる。
どうすればいいか――――結論はすぐに出た。

少し顔を離して僕は彼女のタイを解き、彼女は僕のネクタイを解いた。
僕が身体を少し起こすと、すぐにジャケットを剥ぎ取られた。そして互いの手を交差させながら、互いのシャツのボタンを一つずつ外し始めた。
目の目には僕の選んだブラ。すぐに首筋から鎖骨、胸元へと舌を這わせる。同時に、彼女は僕の額に口付けしながら僕のインナーを脱がしにかかる。

とても愉しい脱がせあいっこ。僕がさっきとは逆に胸から鎖骨、首筋、顎そして唇へと舌を這わせるせいで僕のインナーを脱がせられない。
くすぐったそうに笑いながら、軽く胸を押された。
その些細な抗議で、自分で手早く脱ぎ捨てて、今度は首元を甘噛みする。
響子は僕のモノ。その印付け。勿論僕の首にも同様のそれが出来ている。

すっかりキスマークで首元を飾ったら、いよいよだ。

今までとは逆に僕が彼女を優しく横たえる――勿論唇は離さない。
僕等を隔てるものは何も存在してはいけない。そんな気持ちになって邪魔なものは全て剥ぎ取った。


僕を見上げる彼女の潤んだ瞳、僕の首に回される彼女の手。
「……約束どおり私を食べて」
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