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未来機関第十四支部の会議室にあるホワイトボードにはこんな言葉が記されていた。

"第12回 新世界プログラム・監視者デザイン会議"


"No、モノクマ! Yes、プリティ!"をコンセプトにお題の動物から監視者のアバターデザインを決めていくという会議だった。
しかし、蓋を開けてみればその都度しっくり来るデザインが出ず、あれよあれよと気づいたら12回もやっていたというわけだ。
そして司会・進行の十神君が口を開く。

「腐川と朝日奈が欠席だが、過半数に達しているということで始めるぞ」

因みに朝日奈さんは世界食糧会議の特派員として出席している。
何でも世界の飢餓や栄養不足問題をプロテインで解決してくると意気込んでいた。
そしてもう一人、腐川さんは別人格のジェノサイダー翔が表立っているということで本部に軟禁、もとい拘束中。
やはり希望溢れる世界のためとは言え、殺人鬼を野放しにするほど本部は平和ボケしていないようだ。

「前回のテーマ"猫"でも決定稿は出なかったが、今回のテーマは"兎"としよう。各自、兎をモチーフにしたマスコットを描いてみろ」

そして僕らは白紙の紙に各々でマスコットを描き始めた。
描き始めて10分くらいが経過した時だった。

「頃合だ。お前ら、描いたデザインを見せてみろ」

四人の描いた兎のマスコットが一斉に披露されたのだった。


「……えっ!?」
「なん……だと……?」
「ななななんだべっ!?」
「……フッ」


男性3人の困惑を他所に、唯一の女性参加者・霧切さんだけが余裕の笑みを浮かべていたのだった。

「葉隠君のように妙にリアリティでもない、十神君のようにメルヘンチックでもない。……ましてや苗木君のように幼稚なデザインでもない。私のデザインで決まりね」

まさかのドヤ顔で勝利宣言である。

「けーどよぅ、霧切っちの絵からは何か禍々しいオーラを感じるべ」
「おい霧切、俺は"兎"を描けと言ったはずだ。"モンスター"を描けとは一言も言ってないぞ」
「ちょっとあなた達、私の渾身の出来にケチを付けるつもり? 苗木君、あなたも二人と同じ意見なの……?」

ジトリと僕を睨んだと思えば、すぐさま物悲しそうな表情を浮かべて僕を見つめてくる。
何というか、否定しづらい。

「その……すごく独創的っていうのかな。それに結論を急ぐのはまだ早いんじゃないかな? 皆の作品をもっと鑑賞してからでもいいんじゃない?」
「それもそうね……」
「その意見に同感だ。消去法で選考するとしよう。まずは苗木のからだ」
「えっ、僕のがボツなのぉ!?」
「当然だ。お前のデザインは幼稚すぎる。こんな監視者に先導されるなら俺はすぐに強制シャットダウンを選ぶぞ」
「そうね。明らかに対象年齢を間違えているわ。幼稚園児を対象にしたプログラムじゃないのよ」

ぐふっ。
もうやめて、僕のライフはゼロよ!
今すぐ二人にオブラートをプレゼントしたいくらいだ。

「次は葉隠君ね。年賀状みたいなリアルさと"お金ちょうだい"という一言がシュール過ぎるわ」
「奇遇だな。俺もこいつの絵を見ていると監視者というより寄生虫に見えて仕方がないところだ」
「おい、お前ら! 年長者を敬うという気持ちを少しは持ったらどうなんだ!?」
「フンッ、俺は愚民を敬う気はこれっぽっちも持ち合わせてないんでな」
「十神っちに期待した俺が馬鹿だったべ……」

ガックリとうな垂れる葉隠君だった――。

「そういうことだから俺のデザインを採用するとしよう」
「ちょっと待ちなさい、私のデザインが最終案に残っているでしょう?」
「お前のデザインは論外で選考基準には含まれていないぞ」
「聞き捨てならないわね。そのメガネ、度数が合わないんじゃない?」
「何だと……!」

霧切さんと十神君の目線から火花がバチバチ炸裂している!
でも、これっていつものように議論は平行線を辿って次の会議に繰り越しちゃうんだよね――。

「おい、苗木」
「えっ、何かな十神君?」
「このままでは埒が明かない、お前が選べ」
「それもそうね。今回の音頭を取っているのは苗木君だし彼に決定権を持たせるのが筋ね」
「えっ、えっ?」
「だからこそ俺のデザインがふさわしいわけだ。選択権を与えられたことを光栄に思え、苗木」
「あなたの選択によって全てが決まるの。……ここまで言えばわかるわね、苗木君?」

二人によるプレッシャーで押し潰されそうだ――!
ここは一つ、僕の"運"に賭けて決めようじゃないか!

「ど・ち・ら・に・し・よ・う・か・な・か・み・さ・ま・の・い・う・と・お・り。……これに決めた!」

そして一枚の絵が選ばれ、監視者のデザインが決定されたのであった。



"第12回 新世界プログラム・監視者デザイン会議"

閉 幕

―――――

「ふぅー、疲れたー」

処変わってマンションの自室。
仕事を終えて帰宅したら着替えることなくスーツ姿のままベッドにダイブしてしまう僕であった。

「監視者のデザインが決まっただけでも大きな前進かな……」

うつ伏せの姿勢のままボンヤリと考えていると呼び鈴がなった。
ドアスコープから映る来訪者をモニター越しに確認してみる。
――まぁ、この時間帯に訪れる人がいるとしたら既に目星が付いているんだけど。

「はいはーい、お待ちくださーいっと……」

ドアを開けると目の前には霧切さんがスーツ姿のまま立っていた。

「夜分遅くに失礼するわ。話があるの、入っていい?」
「いいよ。話を聞くだけなら、ね」

そう言って霧切さんを招き入れる。
手短に話を聞くという意味を込めて飲み物を用意せず、リビングの絨毯に胡坐を掻いて聞く姿勢を取る。
彼女も僕の真正面に陣取るように正座をするのであった。

「それで、話って?」
「あの時は……ごめんなさい」
「あの時?」
「会議の時に、あなたの絵を幼稚って言ってしまって……」
「あぁ、あの時の……。いいよ、気にしてないから」
「嘘よ。あなた、困ったら右頬を掻く癖があるじゃない。やっぱり根に持っているの?」

ありゃ、筒抜けだったか。
少しだけね。
ほんの少しだけ。

「でも監視者のデザインが決まったことだし、もう根に持つ必要はないと思うんだ」
「本当に……?」
「うん、本当」

今までの彼女ならポーカーフェイスを保って、相手に腹の内を探られるのは嫌がっていたけれど。
今となっては、包み隠さずに自分の本心を曝け出しているようで何とも庇護欲をそそるものである。
これもバカ正直な僕と一緒にいる影響なのかも――。

「嫌いになったり、しない……?」
「嫌いになるわけ、ないじゃないか……」

これ以上弱気な響子さんを見ているのが気の毒になったから抱き寄せてしまう。
そして耳元でそっと囁く。

「響子さん……。ご飯にする? お風呂にする? それとも僕?」
「えっ?」
「だから、響子さんのリクエストを聞いているの。ご飯? お風呂? それとも僕?」
「お、お風呂で……」
「はい、一名様ごあんなーい」
「ちょっと、誠君!?」

右腕は既に彼女の肩を掴んでいるということで、左腕を膝の裏に通した状態で起き上がる。
お姫様抱っこ、完成。
そのまま脱衣所までご案内するのであった。

「その……スーツ皺になるけど、いいの?」
「クローゼットに予備のスーツがあるじゃない。問題ないよね」
「それもそうね……」
「体の隅々まで綺麗にさせていただきます、お嬢様」
「えぇ、お願いするわ。誠君」

―――――

未来機関第十四支部の会議室にあるホワイトボードにはこんな言葉が記されていた。

"第1回 新世界プログラム・監視者口調会議"

「だから監視者は"チャーン"と"ハ~イ"と"バブー"だけ喋らせて自動翻訳させればいいだろうが!」
「駄目よ。アルターエゴに余計な負荷をかけるのに賛成できないわ」
「僕もその意見に賛成だ! 語尾は赤ちゃん言葉の"でちゅ"にしようよ!」
「何言ってんだ苗木っち! ここは俺のように"だべ"を使って親近感を抱かせるのがベストな選択肢だ。俺の占いは(ry」

今度は言語プログラムをどうするかで紛糾するのであった。


つづかない


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