実家帰省 ~前編~

『実家帰省 ~前編~』

久しぶりにインターホンを押す
入学して以来ご無沙汰の自分の家

「はいはーい。どちらさま……って!兄貴お帰りー!」
「ただいまー。って帰ってきて早々頭を撫でくり回すのはやめろ!」

出てきた妹の手を払いのける
こういう所はまるっきり変わってない妹に安堵する

「ところで兄貴、隣の美人さんは誰?」

妹の視線は僕の隣に立つ彼女に向いた

「美人って……私が?」
「そうだよ。霧切さんは綺麗だもの」
「絶望した!久しぶりに帰ってきた兄貴の惚けに絶望した!!」

何気に失礼だなこの妹は……兄を何だと思ってるんだ
彼女――霧切さんの手を取り僕は実家へと帰宅した


―――――――――――

冬休みも半ばを過ぎた頃
部屋の片付けも終えた僕は霧切さんと一緒に僕の家、ようは実家へと帰る事にした
学園長にも一応知らせて許可を貰った
その時の霧切さんが学園長と赤の他人のように接するのを見てて少しだけ悲しかった

『霧切さん、まだ学園長のこと許せないの?』
『……』

僕は霧切さんと学園長――霧切さんのお父さんである霧切仁さんのことを聞いている
告白して付き合い始めた頃お互いの家族の話になった時に話してくれた

『……頭では分かってるの。何か理由があったと。でも納得はできないしどうしても……憎いのよ』

そう言ってから僕のほうを見る霧切さん

『それよりも本当に私も一緒でいいのかしら?』
『う、うん。この間のニュース見てたらしくて見舞いに来た時にその……近況洗い浚い吐かされちゃって』
『私達の関係も?』
『……うん。むしろ連れて来いって母さんに念を押された』
『……覚悟をしないといけないみたいね』

その言葉の意味
僕は彼女がそっと自分の手を握ったのを見て悟る
きっとこの帰省は僕達にとって大きな転機になるのだろう
そんな予感がした


―――――――――――

リビングにてくつろいでいた父さんとテーブルを挟んで向かい合う形で僕が対面に座る
父さんの右隣に母さんが座り妹はちょうどその中間に座った
そして僕の隣に霧切さんが座る
いつもと同じポーカーフェイスに見えるがほんの僅かだけど目を落とした
みんなに気づかれないようにそっと霧切さんの手を握る
ほんの僅かに震えていた手に僕の手を重ねることで少しでも不安を消せるように

「話は聞いてるけどこうして会うのは初めてだね」
「誠ったらこんなに綺麗な彼女さんができたのに連絡一つよこさないんだから」

父さんと母さんの言葉がグサッと刺さる
確かに連絡してなかったのは悪いと思うけど……

「はじめましておじ様、おば様。苗木君とお付き合いさせていただいてます霧切響子です」
「ほんとに兄貴と付き合ってるんだー。将来は私のお義姉ちゃんになるのかな?」
「ぶほっ!!」

霧切さんの自己紹介に妹がそんな事を言い出した
あまりの不意打ちに飲んでいた紅茶が気管支にはいったのか僕はむせた
チラッと霧切さんを見たら僅かに頬が赤くなっていた

「あらあら」

こっちを見ながらニヤニヤしてる母さん
とりあえず妹よ、後で覚えてろよ
そんな事を考えていると父さんから切り出してきた

「さて誠、病院では事故直後ということもあったから見なかったが……手はどうなんだ?」

空気が変わる
父さんの前で僕は手袋を外す

「……大丈夫、っていったら嘘になるけど感覚は残ってるよ」
「そうか……不自由はしてないんだな?」
「してないよ。クラスメートの皆も優しいし」

父さんと母さんに妹も僕を心配してくれてたのだろう
それを聞いて安堵の表情を見せてくれた

「……ごめんなさい」

霧切さんの発した一言に家族全員が霧切さんを見る
一瞬ビクついた彼女の背を押すように僕は家族には見えないように背を撫でた

「本当は最初に話そうと思っていました。でもどうしても覚悟ができなくて……ですが苗木君のご家族にはやっぱり知っておいて貰いたいんです」

そう言って震える手で霧切さんは手袋を――外して見せた

「それは……」
「私はあの人、学園長によって入学させられるまで超高校級とまで呼ばれるある才能を生かしてある事をしていました」

霧切さんの才能は探偵
僕は彼女の助手として色々と手伝ってるし教わってもいる

「でも才能はあっても経験不足だったんです。ある時感情のまま行動して……捕まって当時一緒に行動していた仲間の居場所を知りたがった相手が……」

当時の霧切さんはまだ探偵としては一人で行動するには未熟だったと僕は聞いている
今僕が教わっていることも知らなかったらしい

「この手を……焼きました」

妹が息を呑んだのが分かる
確かに妹はこういう裏側を知らないだろうし普段なら漫画のような話だと言うだろうけど……
あの手を見てそんな事を言ったら妹だろうと僕がキレるだろう

「幸いにも仲間に私は助けられましたが……この火傷は傷痕として残りました」

まっすぐ霧切さんが父さんと母さんを見据える

「私は――探偵です。苗木君のような人と本来なら交際などしてはいけない裏方の人間です」


それでも、と言葉を紡ぐ

「私は苗木君と一緒にいたい。この傷を受け入れてくれた彼と一緒にいたいんです」

霧切さんが頭を下げる

「こんな傷物の私ですが……彼との交際を許していただけませんか」
「それは「それは違うな」」

僕が霧切さんのある言葉を否定しようと声をあげる前に父さんの声が響いた

「霧切さん、答える前にここだけは否定しておくよ。君は傷物なんかではない」
「おじ様……ですが私は」
「そう余り自分を卑下することはないさ。仮にそうだとしても誠が認めた相手だ。こちらからよろしくお願いしたいくらいだ」

すると父さんと母さんが僕達の手を取り重ね合わせた

「この傷で苦労することもあるだろう」
「でもあなた達なら大丈夫。二人で乗り越えていけるわ」

父さんと母さんの言葉
霧切さんが望んでいた何よりの言葉

「ありが、とう、ございますっ」

嗚咽交じりで涙を流し答えた霧切さん
よかったね霧切さん
そんな想いをこめて彼女の涙をそっと拭い続けた



~中編へ続く~
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