苗木×戦刃

「あれ、戦刃さん?」

「…え? 苗木…くん?」

日曜日の昼、僕は好きな漫画の新刊を買う為に本屋に来ていた。
そこで意外な人に出会ったのだ。

「やっぱり戦刃さんだ、こんなところで会うなんて珍しいね。
江ノ島さんとは一緒じゃないの?」

「…ええ」

そこには漫画の雑誌を持ったクラスメイトの戦刃むくろさんがいたのだ。
戦刃さんは一瞬僕に眼を向けるも、すぐに漫画に目を戻してしまった。
基本無表情なのでよくわからないのだが、漫画から目を離さないところを見ると、
かなり熱中しているようだ。正直意外である。

「戦刃さんって漫画とか興味ないと思ってたよ、何を読んでるの?」

「…やっぱり変かな?」

「いや…、正直意外だとは思ったけど変じゃないよ。
ボクは漫画好きだから同好の士を見つけたみたいでちょっと嬉しいかな?」

他にも山田君や桑田君や大和田君を漫画を読むんだけど、
見事に全員ジャンルが違って盛り上がりづらいのだ。
だからボクとしては戦刃さんの読んでる漫画が気になるわけで…。

「あ、ワンパークだ!
ボクもその漫画好きなんだよ。やっぱり面白いよね!」

「……」

ボクの言葉に小さく頷く戦刃さん。
やっぱりこれは嬉しいなぁ。
今まであんまり絡みがなかったけど、戦刃さんとはもっと仲良くなれそうだ。



「ねえ、苗木君」

「…え、何?どうしたの?」

「私の得意なものが何だったか覚えてる?」

「もちろん!
その、傭兵…だよね?」

超高校級の傭兵。
ボクみたいな平和な暮らしを過ごしてきた人間には、
それがどういうものなのか理解はできないが、想像はできる。
大変なんて言葉では表現できないものがそこにはあったのだろう。

「そう、今まで私はその仕事に向かってずっと頑張ってきたわ。
辛い時もあったけど、それと同じくらい楽しかった。
それでも、最近は少し視野が狭いんじゃないかと思えてきたの。
傭兵の仕事は私に向いていると思うわ。
でも新しい夢を見るのも良いかもしれないな、なんて具合にね」

「…」

こんなに長い台詞を言う戦刃さんは初めてだ。
そして、戦刃さんの目線は雑誌に落ちたままだった。
新しい夢とはつまり…、そういうことなのだろう。

「…いいじゃないかな」

「…え?」

「良いと思うよ。
新しい夢を見るのって大切なことだと思うから」

「……そうかな?」

「そうだよ!
ボクは戦刃さんの夢を応援するよ。
同じ漫画が好きな仲間だしね!」

「仲間……、
そうかもしれないわね。…ありがとう苗木君」

「うん!頑張ってね!」

そういって雑誌から目を外して僕を見た戦刃さんは、
ボクの始めてみるとても綺麗な笑顔をしていた。

「それはそうと苗木君」

「? 何かな?」

「手にタトゥーを入れるとおしゃれだと思うわ。犬とかどう?」

「え、遠慮しとくよ……」

今日は戦刃さんと仲良くなれた気がした。


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