km1_352-366

翌日。

あの地獄のような裁判が終わり、アタシたちは分かれてそれぞれのコテージへ帰った。
一晩何も考えずにただ眠った。
考えようが無かった。

「……ん」

気付けばもう朝。まだモノクマアナウンスは流れていないらしい。
一度大きく伸びてから、アタシはシャワールームに向かう。
扉を閉めて、機械的に服をスルスルと脱がして、栓をひねる。
温かいお湯は、最悪の気分を少しだけ和らげる。

「レストランに…行かなきゃ…」

気付いたらもうシャワールームを出て、アタシは着替えを済ませた状態で外に出ていた。
ふらふらとした足取りで歩き出す。
もはやそれが習慣と化したのか、それとも誰かに――アイツに会いたいからか、問題なく目的の場所に着いた。
ホテルの階段を昇った先のレストランには、人っ子一人居ない。

「誰もまだいない、か」

一人で何気なく呟く。
………虚しい。

「…小泉さん?」

背後から聞こえた声にビクッと震える。
ひとり言を聞かれたことに慌てながらも、とにかく振り返る。
誰かが近くにいるのは安心するものだ。

「おはよう、ソニアちゃん」

彼女――ソニアちゃんは軽く会釈した。

「おはようございます」

早いんですね――そう言った彼女の顔には無理に出したような笑みがあった。
そのことを深く指摘する必要はない。
元から前向きな性格の彼女なりに昨日のことを受け止めようとしているのが分かるからだ。

「他の人はまだ来ていらっしゃらないんですね」

ぐるりと周りを見てから、ソニアちゃんは近くの席に座る。
アタシもつられたように彼女の前に座った。

「……」

「……」

お互いに黙る。ただ何も話さず、落ち着かないようにそわそわと視線を動かす。
…何だか、気まずい。

「あの」

「あのさ」

まったく同じタイミングで聞こえた声に、アタシは口を噤んだ。
ソニアちゃんも遠慮したように口の動きを止める。

「…お先にどうぞ」

おずおずと手を差出して、ソニアちゃんが続きを促す。
その動きにアタシは手を振って応える。

「いや、いいよ」

大した話じゃないし、と付け加える。
いや、本当のところは何を話そうとしたのかすら決まってない。
単に気まずい空気を、少しでも喋ることで和らげようとしただけだ。
そうですか、とだけ返して、ソニアちゃんは遠慮がちにある質問をした。

「昨日、七海さんに、その、何を言われたんですか?」

「それは…」

昨日のことを思い出して、ついうつむく。
皆を信じて死んだ千秋ちゃんとモノミ、モノクマの笑い声、そして…。

「あ、いえ、すみません。馬鹿なこと聞きましたよね」

そんなアタシの態度に、ソニアちゃんが慌てたように頭を下げた。
気を遣ってくれてるんだ、とありがたく思う。
この子は優しい。王女だとか、そういうのは抜きで。
ううん、と首を横に振って返す。

「気になるだろうし、ちゃんと話した方が良いに決まってるよね」

アタシは昨日の千秋ちゃんの言葉を伝えた。
頭の中で響いた声については言わないでおく。変な話だし。

「そう、だったんですか…」

それだけを茫然としたように呟くと、ソニアちゃんは遠くを見るような目をした。
再び沈黙が流れる。ただ、今度のはそんな気まずいものじゃない。
少しして、アタシと彼女はお互いの顔を見る。
その表情に、アタシは二人とも考えていることは一緒だろうと感じた。

「七海さんは、最後までずっと私たちのことを想ってくれていたんですね…」

「…うん」

頷き返して、笑顔で叱咤してくれた彼女の笑顔を思い浮かべる。
そうだ、あの子は言ってくれたじゃない。『希望』を捨てるな、って。

「だからね、生き残った以上はアタシたちは前を進まなくちゃいけないと思う」

「そう、ですよね…田中さんや、他の皆さんのためにも」

ソニアちゃんの顔つきが変わる。決意に満ちたモノに。
気付けば、いくらか辺りの空気は明るさを取り戻していた。
これが、アタシたちの持てるだけの『希望』なのかもしれない。
きっと、そうなんだ。

「よう」

「なんだ早いなオメーら」

外側の階段から見慣れた小さな影と大きな影が現れた。
赤音ちゃんと九頭龍だ。

「おはようございます、お二人とも」

「おはよう。…赤音ちゃん、ランニング行ってきたの?」

間近になって見て、赤音ちゃんが汗だくなのに気付く。
毎朝、ランニングを始めたのは知っていたけれど――

「まぁな。これを欠かすのはどうもしっくりこなくなっちまってよ」

笑って答えた彼女に、昨日の重い空気を吹き飛ばせそうな明るさを感じる。

「は。図太いモンだぜ。昨日は大変だったのによ」

皮肉めいた口調でそう言った九頭龍は、赤音ちゃんほどではないけれど立ち直っているようだ。
その眼には、昨日と違って強烈で鋭い光が宿っている。

「…オレみたいなのがウジウジ悩んでもしょうがねー。前を見るしかねーだろ?」

「ま、そっちのがらしいな。…七海のヤツが繋いでくれた命だ。絶望してる場合じゃねーよ」

「そうだぜ、チビッコギャング」

「チビッコは取り消せ!」

「ふふっ、あはは!」

漫才みたいなやりとりに思わず笑い出してしまう。
それにつられてか知らないけど、ソニアちゃんも笑い出す。
赤音ちゃんも、呆れたように九頭龍もだ。
久しぶりに明るい気持ちで心が満たされる気がした。
別に皆の死を忘れるんじゃない。それを受け入れて、残った仲間全員で進むんだ。
それだけしか、アタシたちには出来ないんだから。

「よ、よォ……」

しばらくして、遅れたように左右田のアホが暗い表情で現れる。
それでも、まだ昨日よりかはマシな顔つきだった。

「これであと一人、だな」

九頭龍が片眼だけを動かしてレストラン内を見る。
生き残ったのは六人。ここにいるのは五人。

「…日向さん、まだ寝てるんでしょうか?」

ソニアちゃんが何気なく言ったその名前にズキッと胸が痛む。
そうだ、昨日のこと。その中でも一番心の奥底に響いているのは、アイツの『絶望』した顔だった。
アイツは、まだ―――

「あー、日向のヤツならですね、さっき会ったんですがね…」

左右田がポリポリと帽子のてっぺんの方を掻きながら、少し申し訳なさそうに口を動かす。

「『今日は誰にも会いたくないって皆に言っておいてくれ』…だそうです」

「そう、ですか…」

「まぁ仕方ねぇか」

ソニアちゃんが九頭龍の言葉に納得したようにうつむく。
確かに、そうだ。
昨日のことで一番ショックを受けたのは、紛れもなくアイツだ。

「でもよう、メシはどーすんだ?」

ほら、と赤音ちゃんがテーブルの一角を指差す。
そこにはモノクマがあらかじめ用意したのであろう
朝食らしきパンに牛乳やカリカリに焼けたベーコン、それにサラダの皿が人数分用意してある。

「…アタシが、持ってくよ」

言葉と同時に皆が一斉にアタシを見る。
アタシは特に皆の顔を見ずに歩き出す。

「…いいのか?」

「…別に大丈夫よ」

九頭龍の一応は心配してるらしい顔を見ながら、朝食の乗ったお盆を両手に乗せる。

「なら、いいがな」

それだけ言うと、九頭龍は座る。
余計なことは言わないのが、彼なりの気遣いかもしれない。
他の皆も、よろしくとか頼んだとか言って九頭龍に倣う。

「……」

じっとお盆を見つめてから、足を急ぎがちに動かす。
さっさと終わらせて、さっさと戻ろう。
それだけ決めると、アタシはレストランを後にした。

「うぷぷぷぷっ!! どこに行くの?」

…出て早々、最悪の相手に最悪のタイミングで出くわした。
白と黒の混じったモノクロなクマを一瞥して、アタシはスタスタと横を通り過ぎる。

「ほえ? 何? スルーする?
そこでスルーするー? …って、ダジャレみたいになっちゃったー!」

…聞こえない。何も聞こえない。

「ふーん、そう。ボクを無視するなんて、小泉さんってホントいい度胸してるね」

眩しい青空を仰ぎ見る。あぁ、今日も晴れたなぁ。

「うぷぷぷ。まぁ点数稼ぎに忙しいもんね」

「…はぁ?」

「七海さんがいない今って、小泉さんにとって大チャンスだもんね」

「……何、言ってんのよ」

そこで無視すればよかったのに、アタシはしなかった。
いや、出来るわけがなかった。
だって、コイツは。

まったまたーっ!! とお腹の辺りを撫でて、モノクマはすっとした笑みを浮かべる。

「日向クン攻略の最大の障害、いわば邪魔者が居なくなったんだもんね。
こうして少しでも七海さんの居た所を奪おうって腹なんでしょ?
いやー、最近の高校生の恋愛事情はまるで昼ドラみたいだよねー!!」

コウフンしちゃうなー、とモノクマがぷるぷると身悶える。
アタシはそれを睨み続けた。

「………」

「んー? なーにその顔? やっぱし反抗期?」

「………」

変わらず、睨む。
モノクマは首を傾げてニコニコ笑った。
それが、癇に障った。

アタシはモノクマに近付く。ヤツは何をするのか、むしろわくわくしたように表情を変えない。
深呼吸を一回。肺の中に酸素のみを入れるぐらいの気持ちで一回する。
そうしてモノクマの耳元に口を寄せて、

「ふざけんなッ!!」

吸い込んだ思いを、全て吐き出すぐらいの勢いで叫んでやった。

「クマーッ!?」

大きく跳びはねて、モノクマはそこかしこを走り回る。
かなり響いたらしく、前後も分からないように駆け回る。
最後には悶えたようにゴロゴロと転げ始めて。

「ば、ば、ばるすー!!」

訳の分からない叫びと共に、プールという名の海の底へと沈んでいった。
…ちょっとだけ、ちょっとだけだけれど、スッキリした。

本当のところは、もっと色々とまだやってやりたいぐらいだけど、抑えることにする。
本来の目的を忘れてはいけない。

「…そこでアタシの、アタシたちの仲間に謝りなさい」

それだけ呟いて、日向のコテージに向かう。

「……」

木製のドアの前に立って、アタシは動きを止めた。
躊躇いがちに、ノックを二回。

「…誰だ?」

投げやりな声が、長い間をとって聞こえてきた。
応えず、アタシはドアを押し入るように開ける。

初めて入った彼の部屋は、びっくりするほどシンプルだった。
目立つ家具は特にない。あるとしても、モノクマの置物のある雛壇くらいだ。
そして、何だか冷たいモノを感じた。
それは、きっと――

「…何の用だ」

ベッドから聞こえた感情のない声色に、アタシは身動きが取れそうになくなる。
時間が止まったような雰囲気に負けないように、必死に口を動かす。

「朝ごはん、まだでしょ」

何とか言葉を出すと、体も不思議と動き出す。
とにかく日向がいるであろうベッドに、アタシは向かう。

「…そこに、置いといてくれ」

シーツを被ったまま、淡々と彼は告げる。
放っておいてくれ、と暗に言っているのが分かった。
でも、アタシは――

「そんなこと言って、どうせ食べないんでしょ」

お盆を近くのテーブルに置いて、ベッドに向かう。
まだアタシは、コイツの顔も見ていないんだ。

「ほら、寝込んでいいのは病人ぐらいよ」

シーツに手をかける。引っ張っても、当然のように剥がれない。
引っ張っても、引っ張り返されるだけ。
きっと、ここが日向の最終防衛ライン。

「…だったら俺は寝込んでもいいだろ」

熱があるんだ、と言い訳がましい口調で日向はシーツを握る力を上げる。
熱があるヤツがこんな元気にシーツを引っ張れるはずがない。
それに熱があるなら、なおさら放っておくわけにいかない。

「…あのねぇ、外に出れるヤツが熱で寝込んだりする?」

ピタ、と押し問答が止まる。

「…左右田に聞いたのか?」

お互いの動きが一瞬静止する。
その隙に、まぁね、と返して、アタシは一気に力を込めてシーツを引っ張る。

「…あ」

純白の防壁の先には、丸まった態勢でこっちを見る日向がいる。
その顔は油断しきっていて、いつもよりもっともっと頼りない印象があって――

「……アンタ、泣いてるの?」

そこまで考えて、そんな印象を抱く原因を知る。
日向の両目は、泣きはらしたかのように真っ赤だった。
言われて、日向は慌てたように目を擦りあげると、

「違う、これは……これは、寝不足なだけだ」

まるでごまかすように、ぶっきらぼうに言うと、日向は身を反転させる。
何だかその振る舞いが、悪いことをしたのがバレた子供みたいだと、アタシは感じた。

「嘘ね」

「嘘じゃない」

断定するように言った途端、むきになったような声が返ってくる。
それは、実に弱々しいモノだった。

「別に泣いてたっていいじゃない」

とりあえず思ったままを告げる。ヘタに考えたって、アタシにはいい言葉は出せない。

「…よくないだろ」

背を向けたまま、低い声が返ってくる。
どうして、と尋ねる前に言葉が続く。

「俺、なんだぞ」

調子を変えず、淡々と言葉を日向が紡ぐ。
恨みがましい、低い声で。

「七海を殺した俺が、その七海のことで泣いていい訳、ないじゃないか…」

「…ッ」

深い悔恨のこもった声をそれだけ出して、日向は黙った。
あぁ、そうか。コイツは、コイツは…。
アタシは、日向の言いたいことを理解する。
どれほどの気持ちでそれをさらけ出したのかも。
…でも、そんなの。

「…か」

ゆっくりと、口を開く。
ピンボケ直しの反論のために、心を加速させていく。
そして、気持ちを吐き出す。

「――大バカ日向!!」

突然の大声に驚いたのか、日向が振り向く。
構わず、続ける。

「それで自分を捨てるようなことしてどうすんのよ!」

「そんなの…ただ千秋ちゃんの死んだ悲しみを、そのまま言い訳にしてるだけよッ!」

ひどく、自分が嫌な人間に感じた。
こんな、相手の傷をえぐるようなセリフを突きつける自分が。
分かっていたけど、止められなかった。
無理に心を押さえつけてる彼を、これ以上見ていられなかった。

「…おま、えに」

小さい、だけどはっきりと伝わる声を発しながら日向が立ち上がっていた。
その目には光なんて無くて。ただ、虚しい色しか見えなかった。

「お前に俺の何が分かるッ!!」

ビリビリと体の芯まで響いてくるような叫びに、身がすくむ。
怖い、感情をぶつけられるのが。でも、引いてはいけない。
出来る限り、アタシなりに闘うんだ。

「アンタだってアタシのことは分からないでしょ!!」

負けないくらい大声を張り上げる。
昨日みたいにアタシが退くと思っていたのか。たったのそれだけで、脆い日向はたじろぐ。
日向が後ろに行く分、アタシは前に踏み込む。
伝えられることを全て出し切るために。

「自分のことなんて、全部自分にしか分からないわよ…」

そのことを悔しいとは思わない。
大事なのは相手の全てを知り尽くすことなんかじゃないからだ。
そのまま続ける。

「…ただね。少なくとも、それがアンタの本音には見えないよ」

そうだ。コイツは自分を縛ろうとしている。
皆を助けるために身を捧げた千秋ちゃんを殺した、自分が憎いから。
それだけは間違いない。
きっと、他の皆も似たようなことを少なからず思っているはずだから。

「一人で立ち上がれ、なんて言わないわ」

でもさ、と付け加える。

「少しは、アタシたちを頼ってよ…辛い時にそばに居てやれなくて、何が仲間なの?」

真っ直ぐに、射抜くように、今度こそ日向と向かい合う。
もう、アタシは逃げたりなんかしない。

日向は黙っていた。応えないというより、何も応えられないように、ただ沈黙を守る。
アタシもまた、沈黙を守る。待つことが最良だと、思えたから。

「…どうして」

ぼそりと、聞こえるか聞こえないかぐらいの音量の呟きが届く。
日向が顔を上げた。その表情には、困惑の色がある。

「どうして、お前は…」

「仲間だから。大切な、仲間だから――」

放っておける理由なんて、ある?
言いかけた言葉を遮るように尋ねる。
アタシの顔をまじまじと眺めて、押されたように日向は座り込む。

「俺は……俺は…」

下を見つめて、迷うような声を出す。
もう、後一押しだ。
これで、立ち直らせて(論破して)みせる。
そんな決意と共に、アタシは最後の言弾をぶつける。

「――男でしょ! はっきりしなさい、日向創!」

「……」

日向は、何も言わない。ただ、下を見続ける。
何も、応えない。…それだけだった。

失敗――だったんだ。
所詮、アタシだけじゃダメだったんだろう。
でも、それでも、構わない。そう、思えた。
言いたいことはちゃんと伝えたことを確認して、アタシはコテージのドアを向く。
もう、終わりだ。

「…分かってみるとバカみたいだな、俺」

コテージのドアを開けようとした動きが止まる。
そこには…そこ、には。

「別に、いいでしょ。アタシも同じようなモノよ」

なるべく平静を保つように言い聞かせながら、アタシは応える。
この喜びが、緊張が伝わらないように。

「そんなことないだろ。おかげで、その」

頬を掻きながら、そいつは躊躇いがちに笑った。
絶望の薄れた表情で。

「――助かったよ。ありがとう、小泉」

そこには、日向創がちゃんと立っていた。
アタシの言葉は、届いたんだ。

「……ふん、単に見ててイライラしただけよ」

途端に何だか恥ずかしい気持ちが湧いて、そっぽを向く。
変にアレなセリフを吐いたからかもしれない。
…それもこれも、日向が悪いんだ、絶対。
そんな訳でごまかしの言葉を出すことにする。

「アンタは、そうやってマヌケな顔してる方が笑えるもん」

「…ひどくないか?」

「昨日さんざん怒鳴られた仕返しよ」

困ったように笑う日向に、しれっと返す。
それを聞くと、少しだけ日向は顔を曇らせた。

「…昨日は、悪かった。辛いのは皆同じだったよな」

深く頭を下げた日向にアタシは軽い溜息を吐く。
別にそんなに怒ってるわけじゃないんだけどな…。

「そう思うんならアタシ以外にもちゃんと謝っときなさいよ」

「分かってるよ。メシにしてから行ってくる」

そう言って顔を上げた日向は、実に晴れ晴れとした表情をしている。
…少しはマシになったじゃん。

「ん。じゃ、はい」

肩の荷が降りたような心地を感じて、
アタシは自然と笑みを浮かべながら、テーブルの上のお盆を手渡そうと向ける。
すると日向は何故か不思議そうな顔をした。

「…食べさせてくれないのか?」

「…へ?」

一瞬は何を言われたのかさっぱり分からなかった。
次の瞬間は言われたことを理解するのに使って、そして。

「冗談だよ」

日向が笑う。その言葉に何かしらの返事をする前に。
そうしてようやくアタシの中で時が動き出す。

「ひ、日向のアホッ!!」

顔が熱くなるのを感じながら、叫ぶだけ叫んでアタシはコテージを飛び出す。
あーもうっ! あーもうっ! 心配したアタシがバカみたいじゃないの!!
ほんっと! これだから男は!
……………………………………。
………………………はぁ。

「ま、いいか」

ホテルの階段を見据えて、アタシは小さく呟く。
とりあえず、皆に報告しよう。仲間全員、闘い続けられそうなことを。

仲間たちが…アイツが、いるから。
確かな『希望』を胸にアタシは、進み続けるだろう。
『絶望』の残り香は、もう無い。

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