メイド喫茶

「ですから、一度苗木誠殿も行くといいですぞ!」
「けど、あういうとこって高いんでしょ?ちょっと懐がさ」
さっきから山田クンの強い誘いに、いい加減逃げたくなってきていた僕がいた。
僕はただ、今日一日ソワソワしてた山田クンに、どうしたの?て聞いただけだったのに。

「きっと苗木誠殿の中には、汚いマスコミどもが吹き込んだ間違ったイメージだらけなのでしょう!
 しかーし!実際は違う!!我輩と一緒に行けば、その誤解も解けますぞ」
さっきから山田クンが執拗に僕に行こうと進めているのはメイド喫茶だ。
なんでも、今日新規オープンの店があるらしく、山田クンはずっと楽しみにしていたらしい。
そして山田クンがいうには、その喜びをだれかと共有したいらしく、たまたま声をかけた僕が狙われてしまったというわけだ。

「だから、さっきから言ってるけど本当にに今月は苦しいんだ。来月じゃだめなの?」
「うー、そうでありますか。吾輩がお金を出すことは簡単ですが、やはり初めては
 自分のお金で行ってもらいたいものですからなあ。仕方ありませぬ、来月はきっとですぞ!」

そう僕の返事にがっかりした顔をした山田クンだったが

「ならば、苗木殿のぶんまで楽しんできますぞ!待っててちゃーん!!」

とすぐに満面の笑顔になり、あの巨体でスキップしながら教室を出て行った。
なんでもメイドは、2,5次元だからアリ!らしい。僕からするとよくわからない基準である。

「……けど、メイドねえ。」
と山田クンが残していったチラシを見る。そこにはメイド服をきた女性たちが写っていた。
正直いうと、実は前から一度行ってみたいという興味はあった。
けど、今月はいろいろとアクシデントで出費を重ねてしまい、もはや食費をぎりぎり残してる有様だ。
……それもこれも、葉隠クンが悪い。来月かならず取り立ててやる。

しかし、チラシに映っているメイドを見ていると、なんというか、ダメな妄想が沸き上がってくる。
やっぱり朝比奈さんは元気いっぱいで、明るい感じのメイドさんとかになりそうだ。
一転、舞園さんは、こうおしとやかにロングのスカートとか似合いそうだな。
セレスさんは、むしろメイドを横に侍らせてる女主人だよなあ。
大神さんは……ノーコメントで。


「私なんかは、どんな感じなのかしら?」
「そうだね、霧切さんはやっぱりキツメで上から注意してくれるクールなメイドて感じかな。」
うん、自分で言っておいてなんだけど、霧切さんにメイド服とかかなり良い気がする。
まあ絶対着てくれないだろうけど。……て、アレ?

「……いっいつからそこに?」
「……そうね、今日一緒に帰ろうかと苗木君から誘ったくせに、何時まで経っても昇降口に降りてこないから
 わざわざまた靴を履き替えて迎えに来たら、山田君とメイド喫茶がどうとか、喋ってたあたりかしら」
全部だそれーー!
「けど、苗木君てメイドが好きだったのね。……安心して、人の性癖を吹聴するような趣味はないから」
なんか誤解されてるし!!
「い、いや違うんだよ!別に僕が特別メイドが好きとかじゃなくて、その山田クンが無理に!!」
「……あら、人のせいにするの?私の知っている苗木君はそういう人じゃなかったのに」
と口を手で押さえて、顔を背ける霧切さん。
うう、喋れば喋るほど泥沼だ!どうすればいい?
「けど、そんなに苗木君がメイド服が好きだというなら、私も着てみようかしら」
え?思わず我が耳を疑った。
それは霧切さんから、到底出ると思えないような台詞だったからだ。
「え、その、霧切さんがメイド服を着るの?」
「だって、普段の私の格好て野暮ったくて、可愛くないでしょう?
 けど、こういう服って可愛らしいし、それに苗木君が好きだというのなら」

なんだ、なにが起こってる?あれか、新手のスタンド攻撃か!?
僕の目の前にいるのは本当に霧切さんなのか?
いや、メイド服を着てくれるって言うならものすごく嬉しいけど、
明らかに普段のキャラとちがう。というか顔を赤く染めてモジモジして
まるで恋する乙女のような霧切さんは、カワイイ!、じゃなくて変すぎるだろ!
いったい、どうなってるのかと霧切さんを見てると、口の端が笑ってる?…………あ!!

「やっと気づいたわね、毎度毎度この程度で騙されるのだから、葉隠君に何度も騙されちゃうのよ、貴方は。」
と、途端に普段の感じの霧切さんに戻る。
「そもそも会話を聞いていれば、苗木君が無理に誘われてたのはわかるわ。
 ……もっとも心の底から拒否してたわけではないようだけど」
う、見透かされている。さすが超高校級の探偵。
そしてさっきの事は、いつものように僕がからかわれていたというわけか。
たしかに僕もそろそろ成長しないと、この調子じゃ身がもたない。

「けれど、そんなに私に着て欲しかったのかしら?」
「いや、その霧切さんは美人だから、こういうのも似合うだろうな、て思って」
うわ、僕は本人に向かって何を言っているんだ!さっきのショックが抜けていないらしい。
と、霧切さんを見ると顔を真っ赤にしている。
「…………そうね、そこまで言うなら着てみてもいいわよ」
と、その真っ赤な顔のまま僕に向かって言う。
ん?、先刻のとそっくりだなこれ。
「いやいや、いくら僕でもそう何度も騙されないよ。」
さすがについ先刻騙されたばかりで、またおちょくられるのも癪だ。
その言葉に一瞬目を丸くした霧切さんだが
「……さすがにお人好しの苗木君でも無理か。多少は成長してるようね」
と悔しそうに喋る。
うん、やっぱりおちょくってたか……おちょくってたんだよね?
「それじゃ、帰りましょうか、"メイド好き"の苗木君。それともご主人様と呼べばいいかしら?」
「うう、もう勘弁してよ、霧切さん」
しばらくこの事でからかわれるのだろうな、と思いながら僕は霧切さんと教室を後にした。

後日
「ぐー、なぜあそこに知ってる女子がいるのでありますか!三次元は三次元の巣にいればいいのに!」
と山田クンが叫んでいた。なんでもあの日とは別の日にメイド喫茶に行ったとき、なんと霧切さんがいたらしい。
そのことについて、霧切さんに尋ねると。
「……敵を知るには直接見ないとね。」
といってそれ以外は何も答えてくれなかった。敵ってなんのことだろう?


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