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ソファでくつろぎながらテレビを見る――。仕事の後によくある光景だ。
でも、僕らのよく観る番組はバラエティではなくサスペンスドラマだったりする。
けれど今日はどうにもドラマの内容が頭に入らなかった――。

と、いうのも晩酌のお供に開けた口コミで評判の発泡酒が予想以上に美味しく、頭がボーっとして登場人物の会話が今ひとつ記憶できない。
右耳から話の内容が入ってきて、そのまま左耳を通り過ぎるような感じ。

そんなものだからテレビの映像より目の前の光景に興味が湧いてくる。
僕の右隣に座り、食い入るように画面を見つめる響子さんの方に傾くのだった――。


~ キリキス vol.2 ~


「ね、ね、響子さん響子さん」
「……なに? 今いいところなの」
「こっちで観ない?」

ポンポンと自分の膝を叩き、もっと傍で一緒に観ないかと誘ってみる。

「イヤ」
「なっ、なんでさ!?」
「今のあなたなら視聴の邪魔をしてくるに違いないから」

僕の方を見ないまま即座に却下してくるのだった。

「そんな、ひどいよ響子さん……。もう僕のこと、好きじゃなくなったの?」
「大袈裟ね。被害妄想も程々にしなさい」
「それとも倦怠期かな……? やっぱり常に一緒にいるせいでマンネリ化しちゃったの、僕たち?」
「根も葉もない根拠で断定するのはやめなさい。私はサスペンスを見たいの」
「僕とテレビ、響子さんは一体どっちが大事なのさっ!?」

僕の叫びを聞いて響子さんは大きな溜め息を吐いた。
こう、聞き分けのない子供を見る親のような目で僕をジトリと睨む。


「……ハァ、口で言ってもわからなそうね」

そう言って響子さんはソファから立ち上がった。

「足、もっと開いてもらえるかしら? 座りにくいじゃない」
「えっ、いいの……?」
「誠君の方からおねだりしてきたんでしょう? ほら、私の気が変わらない内に早くしなさい」

響子さんに急かされるカタチでソファの背もたれにもたれるように座り直す。
足を大きく開いたところで、その隙間に彼女がチョコンと座り込んできた。

「はい、ここに載せて」
「うん……」

自分の左肩をポンポンと叩くので、そこに顎を載せてみる。
ついでに腰に腕を回して離れにくいようホールドしてみたが、その手を叩かれることはなかった。

「一緒に観るんだからちょっかいを出さないこと。いいわね?」
「はーい。……えへへっ。一名様、ごあんなーい」

お風呂上りということもあり、ボディーソープとシャンプーの香りが鼻に広がる。
安息感と爽快感が体中に広がり、思わず笑みがこぼれてしまう。

「うーん、いい匂い……んっ、ん……」
「ちょ、や、やめ……く、くすぐったい……!」

頬擦りしながら響子さんの耳元やあごの線、頬に口付けていく。
彼女の制止に聞く耳を持たず、アルコールの混じった吐息を漏らして睦み合いの悦びに浸る。

「ねぇ、んっ、いいでしょ……?」
「コ、コラ……!」
「んぅ、んぅ、んぅ……んふっ」

耳元といわず耳たぶや耳の裏、あごの線から首筋へと徐々にキスする場所を拡大していく。
最後に左頬を吸い付くように唇を押し当てる。

「大好きだよ、響子さん」
「くっ、ズルいわ。これじゃあ怒れないじゃない……!」

僕の愛の言弾でついに響子さんは抵抗をやめた。
その頬に触れて、彼女の視界をテレビから僕に捉えさせる。
真っ赤な顔の響子さんと向かい合うカタチにしたら――。


「ん、んっ、んっ……んふ、んんぅ……」
「んぅ、んっ、ん……すふ、すふ……んむっ」


僕らは静かに目を伏せて、しばしバードキスに耽った。
上唇、下唇と交互に啄ばんで最後は唇同士を長めに重ねる。
重ねた唇同士には銀の糸。それはプツリと垂れ下がってすぐに途切れた。


「誠君、あなた大胆ね……。素面では見たことがないくらい強引じゃない。お酒の力を借りないと迫れないの?」
「それは違うよ! 素面でも酔っ払っても僕が響子さんのことを大好きなのに変わりはないって!」
「……本当に?」
「だったら今から窓を開けて大声で叫んでもいいんだよ! ご町内の皆さん、聞いてくださーい! 僕は霧切響子さんのことが大・大・大好きです!! ……って宣言して「もういい、わかったわ」……ぶふぇ!?」

顎を片手で掴まれ、唇をヒヨコの口ばしのようにピヨピヨ口にさせられる。
おしゃべり強制シャットダウンだった。

「そんな恥ずかしいことされたらご近所に顔を会わせられないじゃない」
「ふぉめんなふぁい……」
「それに、私の邪魔をしたんだからオシオキを受けなさい」

えっ、オシオキ――?

物騒な単語が彼女の口から出てビクリと震える体。
響子さんはもう片方の手で僕の頭を押さえ、そのまま自分の膝元に載せるのだった。

「サスペンスが終わるまでこのままでいなさい、いいわね?」
「あ、うん「返事は?」……は、はい!」

視界に捉えたテレビの映像は角度が90度も異なることで、さらに頭に入らなくなった。
そんなわけだから、響子さんの膝枕を堪能するように僕は目を閉じて意識を手放すのだった――。


―――――


「……ぶわっ!?」

驚くように目が覚めると寝室の天井だった。
サイドボードに置いてある目覚まし時計の時間を見ると、起床時間よりまだ1時間も早い時間だった。

「あれ、確か響子さんの膝枕で寝てたような……」

きっと、あのまま就寝した僕を響子さんは寝室のベッドまで運んでくれたんだろうな――。
寝ぼけた頭で昨夜の記憶を掘り起こす。

そして隣で眠る響子さんを見ると、まだ彼女は起きそうにない。
よし――。昨夜は迷惑をかけたお詫びに僕が朝ご飯を作るとしますか!


「待っててね、響子さん……。それと、おはよ」

小声で朝の挨拶を囁いて、彼女の額にキスをする。
僕は足音を忍ばせてキッチンへ向かうことにした――。


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