パラレルロンパ 3章 ~絶望病デレデレ型 初期~

短気で能天気。しかしそこが魅力的な『超高校級の体操部』こと終里赤音。
「うええ……えーん」
……ジャバウォック島にある病院の一室で、ベッドに寝っ転がって泣き喚く今の彼女には、
それを見る影もない。
絶望病という悪魔に、彼女の精神はまるで苛められっこの子供のようになってしまった。


「赤音ちゃん…大丈夫、大丈夫だからね」
それを母親か姉のようにあやしているのは小泉真昼。
彼女の才能は『超高校級の写真家』であって、決して保母でも小児科医でもない。
しかし、立派な母親と物ぐさな父親という環境で育まれた世話好きという性格は
今の状況では有利に働くものだった。

何より、今の彼女には罪悪感から来る責任感が備わっている。
「ふええ……弐大……私さみしぃよぉ……」 「……」
終里が仲が良かった、今は亡き『超高校級のマネージャー』の名を呟く度、それは刺激される。
品性の無い男だったが、そんな弐大が命を張って金属バットから守ってくれたおかげで
今の自分はいる。

さらに言えば、自分に懐いてくれた西園寺も同様だ。
あの憎むべきモノクマが仲間を侮辱したとはいえ、それで短気を起こしたが故に西園寺は
重傷を負い、苦しんでいる。

死の運命を回避してくれた彼らの分まで… そんな想いが、絶望病感染の恐怖をさっぱり
打ち消していた。
だから終里の身体に触れるのも厭わず、寝汗を拭っていた。

「……赤音ちゃんの、やっぱおっきい…」
…美談になるほど真面目だった小泉の思考は、終里の肢体を眺めると中断された。
褐色の、豊満な体付き。同性愛の気はない(はずだ)が、それでも見惚れるほど。

小泉自身のスタイルも、決して悪くない。むしろ半端に豊かであるよりは美しい体付きだ。
が、それでもクラスメイトの少女の見事な身体を、羨望の眼差しで見てしまうのは女の本能だった。

(…男ってやっぱこういう体付きが好きなのかな…)
軽い不快感を覚えながら日向の事を脳内に描く小泉。



(……? や、やだ、なんで日向の事考えてんの私)
考えてみれば、自然な事である。
故人の十神や弐大は色の事は二の次という印象があったし、田中や狛枝も同様だ。
左右田はソニア・九頭龍は処刑されたペコに今も執心してるし、同じく処刑された花村は
エロキャラであったが、その守備範囲は同性相手にも向けられていた。

対して日向は、小泉真昼を性的な目、本能に駆られた欲望のまま見た事がある。

―詳細は男のマロンで察すべし―

意識するのは、無理からぬ事。
だが、小泉自身気付かない『軽い熱』が、その考察を彼女にさせなかった。



個性派揃いのクラスメイトの中では、裁判以外地味な印象。

しかし、聞いた話だと人の下着奪って、コレクションする趣味があるとか…。

(それが事実なら)と小泉。
(露骨にスケベだった花村の奴なんか比じゃない……)
新たな不快感に支配されていく。


何故か、女性陣に対する。
(赤音ちゃんだけじゃない、千秋ちゃんだって意外と凄いはず……それに蜜柑ちゃんだっ
て…………って)
そこで、ある事実のために思考の方向は悪化する。
(日向と蜜柑ちゃん、今この病院にいるじゃない! 同じ屋根の下!
あんなに美人で、健気で、
…それでいて気弱だから守ってあげたくなる性格で、……変に色っぽくて……

                  …胸だって私よりおっきくて…………)

頭に血が上り、歯は噛み締められ、腕は震えていく。
負の感情が、風船の如く膨らんでいく。
同性には優しいはずの彼女にしては、とても奇妙な事。

まるで、人が変わったかのように。悪魔に心を喰われたが如く。




そう、小泉真昼は伝染してしまったのだ。終里から絶望病を。

が。

「うえええ! 小泉こわい~!」
すっかり認識の外にあった、目の前の終里の泣き声。
病魔に侵されていても、勘が鋭い彼女は小泉の中の狂気を感じ取ったようだ。

尤も、外にも僅かに滲み出ていたが。

はっ、とした小泉は平静を取り戻す。

(って! 何考えてんの私… これ以上友達を失うなんて……ましてや、自分の手で)
嫉妬の道へ行かせた元凶の終里が泣く事で、
皮肉にも今の小泉に数秒前の己の醜悪さに気付かせてくれた。

(こんな姿見たら……日寄子ちゃんだってこんな風に泣くに決まってる
日寄子ちゃんが大怪我したのも、この短気がいけないんじゃない…
大体、何で日向ばっか肯定して、女の子たちを妬むの……? ……しっかりしなきゃ、私)
頭を冷やして終里を宥め、再び寝汗を拭う作業に戻る小泉。
そう、そんな過ちを犯すほど彼女は愚かではない。

…愚かではないのだが。

(日向の毒牙から守るためには、その欲望を私に向かせる事が一番良い手だね)

……絶望病特有の、恐ろしさとはいえ。

(よし、旧館の調理場借りよ)

…………自覚をしないまま、ズレた方向に突き進んでいく。

(男を掴むのは胃から。 これも女の子たちみんなを、守るためなんだからね、うん)

一応善意から端を発しているのは、彼女らしい、と言うべきか。
……悪く言えば、目的付けて正当化していると言うべきだが。
「ふえええ、小泉別の意味でこわい…」


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