お出かけネタSS2回目

●2回目のお出かけ

「舞園さん……この後、一緒に……」

「はい、行きましょう!」

「え? なんで分かったの?」

「エスパーですから――なんて冗談です」

そう言って、舞園さんはにっこりと微笑んだ。

「苗木君だからですよ」

「ま、舞園さん」

思わず、ボクはうろたえた。
頬が熱い。
顔が赤くなっているのが自分でも分かる。
だって、仕方ない。
舞園さんのその笑顔は、最高以外の表現が思いつかないほどの…
最高の笑顔だったんだから。

「うふふ……自分で言ってて恥ずかしいですね」

自分で言っていて照れたのか、舞園さんも少し目線を反らしている。
その頬はほんのり朱色だった。

「えっと……よし、じゃあ一緒に行こうよ」
「……はい!」

どこかこそばしい沈黙を少しの間噛みしめて、ボクはちょっと上ずり気味の声を上げた。
舞園さんもいつもよりどこか高めの声で返答してくれた。

ボク達は一緒に歩幅を合わせて歩き始める。
向かう先は、植物庭園。
息抜きに行ける場所はいくつかあったが、今日はなんとなく暖かい場所に行きたいと思ったんだ。

「…………」

チラチラと舞園さんが横目でボクの方を見ている。
視線の向かう先はわずかに下げられていて、ボクは自分の格好に変なところがないのか内心動揺していた。
チャックが開いてたりしたら、最悪だなとか思っていた。

「……着いちゃいましたね」

そんなことを考えているうちに植物園に着いた。
舞園さんは少しだけ残念な顔をした。

「……え? えっと……そうだね」

おかげで思わず、ボクも釣られるように情けない顔をしてしまったような気がする……。
しかし、すぐにそれは変わった。

「苗木君と一緒にいる時間が減っちゃいましたね」

舞園さんは「えへへ」とでも言いそうな感じではにかんだ。
先ほどの最高の笑顔とも違う笑顔。
けど、こちらの心を打つようなそんな笑顔。

偽物の青空の下だけど、舞園さんの笑顔が太陽の光で輝いて見えた。

「ここを散歩しようか!」

ボクは大きな声で言う。
舞園さんをがっかりさせないように、頑張ろうと思って!

「はい、そうしましょう!」

「ここは、校舎の中では気持ちいい場所ですし……」

「それに、苗木君と2人でゆっくりお話も出来ますから……」

舞園さんも賛成してくれた。
しかも、かなり嬉しいことを言ってくれた!

「うん、じゃあ行こう!」
「はい!」

そうして、ボク達は2人で歩き始めた。
変わった草や花を見ながら、舞園さんが楽しそうに笑う姿をボクは見た。
その姿を見ているだけで、ボクの身体から力が沸き出るのを感じる!
ボクはそのままの勢いに任せて言った。

「舞園さん、ボクはすごい楽しいよ!
 こんなところに閉じ込められたことは嫌だけど……
 舞園さんとこんな風に2人で喋れることだけは良かったって思ってる!」

「はい! 私もです」

「舞園さん、良かったらでいいんだけど……」

「はい、いいですよ」

「え?」

「また明日も……ってことだと思ったんですけど、違いましたか?」

「そ、そうなんだけど……よく分かったね」

「あ、本当にあたりなんですか? 嬉しい……!」

「あはは……確信はなかったんだ」

「はい! けど……」

「……け、けど?」

「苗木君の言うことなら何でも聞いちゃうかもしれませんよ」

「……え? …………えぇ!?」

「なんて、冗談です!」

舞園さんは釘を刺すように笑って言った。

「それに、何でもって言っても、苗木君が無茶なお願いするはずないですもんね!」

「う、うん……!」

「うふふ……」

口元に手をあて、目を細め、舞園さんはコロコロと笑った。
なんかボクが誘ったはずなのに、ひたすら舞園さんの手の上で転がされてるような気がする……。
すると、そんなボクの様子を見て、舞園さんは唐突に言った。

「そういえば、前に私が言った質問の答え考えてくれましたか?」

「えっと……なんで舞園さんがボクのことを覚えているかだよね?」

「はい…………考えてくれました?」

「うーん、考えたけど分からないなぁ
 同じ中学校だったけど……生徒はいっぱいいたし……」

「ボクはどこにでもいる目立たないヤツで……
 何事にも平均的で大抵の趣味がランキング1位だし、
 王道って言葉すら裸足で逃げ出す普通中の普通で……」

「もーうっ、何言ってるんですかぁ?
 やっぱり苗木君って少し変わってますね」

「か、変わってるなんて、そんなっ!」

「うふふ……褒めてるんですよ!」

と、そこで急に舞園さんはボクの手を取った。

「今日は誘ってくれて、ありがとうございました!
 やっぱり、誰かと一緒にいるだけで気が晴れますね……
 よければ、また声をかけてください! 私も、暇な時間があったら誘いますから!」

舞園さんはちょっと照れたように笑って……。
ボクの手を取ったまま、走り出した。

「それじゃ、戻りましょうか」

「ちょ、ちょっと、舞園さん!?」

「私、意外と足がはやいんですよ!」

「えぇぇーー」

「嫌だったら……」

舞園さんの顔は前を向いていたから、ボクからは見えなかったけど……。
おそらく、やっぱり笑っていたんだろう。

「明日からは苗木君が私の手を取ってリードしてくださいね!」

冗談なのか本気なのか分からない言葉が舞園さんの口から出てきた。
そして、「明日」という言葉はボクの頭の中で何故か感慨深げに響いた。

「なんて……これも冗」

「うん……! いいよ、今からでも……!」

「え、え、苗木君!?」

振り返りながら、少しペースを落とした舞園さんをボクは追い抜いた。
そして、そのまま舞園さんの手を引くように前へ前へと歩いた。

「なんでキミがボクのことを覚えているかは分からないけど……。
 ボ、ボクは明日も舞園さんと一緒に過ごしたいな。
 今日はまだ答えが分からなかったけど……明日以降も考えていいよね?
 キミの投げかけた謎を考える時間はあるよね?」

ボクのそんな言葉に、舞園さんはこう答えた。

「――はい。もちろんです
 明日でも明後日でも苗木君の答え合わせに付き合います
 だって……私は苗木君のじ……」

と、そこで舞園さんはアレっという顔をした。

「えっと……苗木君の大切なお友達ですもんね?」

「あはは……」

「なんか私の方こそ締まらない答えになっちゃいましたね」

「うん……いいよ。舞園さんと友達ってだけでも嬉しいよ」

ボクはそう言って、舞園さんの代わりにこう締めた。

「ボクと舞園さんは同じ境遇にいる仲間を超えた……大切な友達だもの」

――そう、今はただ一緒にいるだけで嬉しいんだ。


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