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「……好きな男の子のタイプ?」

 自分でも意外なほど、素っ頓狂な声が出た。
 彼がそういうことを気にする人間だとは考えていなかったし、自分がそういうことを聞かれるような人間だとも思っていなかった。

「あ、えっと。僕、今期の文集委員なんだ。それで」
「ああ……なるほど」

 合点がいった。
 そういえば、そんな話もあったか、と記憶を辿る。

 文集委員なんて、誰も進んではやりたがらない。
 超高校級にクセの強い面々の紹介ページ、担当するともなれば相当に面倒が付きまとう。
 ……なんて考えていたら、案の定。
 苗木君が石丸君に指名され、断りきれずに引き受けていたのだった。

 彼の持ったメモに視線を這わせ、他の項目を探る。
 女子への質問コーナーは、『スリーサイズ』『好きな男の子のタイプ』『初恋の相手』etc.
 なんというか、項目を考えた人間の邪心が見え隠れしている。
 それを自分で尋ねずに、こうやって間接的に知ろうとする辺り、人間の小ささが伺えるというものだ。

 そして、私のような湿っぽい女子に、そのような質問をしなければいけない。
 それだけでも、苗木君の苦労が推し量れる。

「……それ、仮に私が答えたとして、知りたい人はいるのかしら」

 でも、あえて絡む。

 気遣いな彼は、きっと答えに窮して、困った顔をするだろう。
 その顔が見たいと正直に言ったら、苗木君は怒るだろうか。


「僕は、ちょっと気になるかな」

 不意打ちのカウンターだった。


 誤魔化して笑うでもなく、焦って言い訳を探すでもなく。
 そのままの表情で、真正面切って言われてしまった。

 ほんの一瞬、心臓が跳ねる。


「……馬鹿正直な人」

「え?」
「馬鹿正直で、馬鹿みたいに前向きな男の子。三度は言わないわ」

 声音が自然と不機嫌になる。
 苗木君にしてやられたことを、どうやら私は悔しく感じているらしい。

「正直で、前向きな人……と」
「苗木君、『馬鹿』が抜けているわ。勝手に編集しないで」
「だ、だって普通、好きな人に『馬鹿』とか言わな」
「――― 文 句 が あ る の ?」
「わ、分かったよ……」

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