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意識が鮮明になった頃には手遅れだった。
リアルな感触は当然で、ここが夢の中じゃないことは明白だ。
冷汗が背筋を伝う。
そりゃボク自身が望んでいたことだし、願望は叶った。
だけど急に現実世界に呼び戻されてこんなことってないよ……。

どうすればいいんだろう。
寝て起きたら、霧切さんに抱き付いていた時は。

霧切さんの柔らかさとは相反して、ボクの身体は硬直する一方だった。
シャツ一枚越しで、息遣いまで聞こえる距離なのに、考えていることはまったく分からない。
ただただ無言の圧力に押し潰される一方で、甘美な気持ちには到底なれなかった。

「……離してもらえないかしら」

「ご、ごめん!」

慌てて身体を離した。
平坦な声からは感情が伺いしれないが、怖くて顔を見ることができない。
しばらくは口を聞いてくれなくなるかも……。

「顔を上げて、別に怒ってはいないわ」

恐る恐る俯いた顔を上げてみると、言葉通り怒った様子には見えなかった。
一先ず安堵で胸を撫で下ろした。
……あれ? 心なしか霧切さんの耳が赤くなっているように見える。
気のせいだよね……。

「……あれ? そういえばなんでボクの部屋に霧切さんがいるの?」

「今更?」 

「ははは……ちょっと状況に付いていけなくて」

「それはいきなりあなたに抱き付かれた私のセリフね……まあいいわ、これ」

そう言って差し出されたのはボクの携帯電話だった。

「デスクの上に置きっぱなしになっていたわ。
激務続きだったとはいえ、もう少し気をしっかり持ってほしいわね。
鍵も開けっぱなしだし」

わざわざ持ってきてくれたのか……。
それなのにボクは出会い頭にセクハラ紛い、というかそのものをしてしまった……。

「ありがとう……気を付けるよ」

「はぁ……それにしてもどんな夢を見ていたのかしらね。煩悩まみれの苗木君は」

ベッドに腰を掛けた霧切さんが妖艶に微笑む。
思わず胸が高鳴ってしまったが、その発言は撤回してもらわないといけない。

「ぼ、煩悩まみれって!」

「あら、ベッドの下に隠した欲望を晒されてもそんなことが言えるの?」

「あ、あれは葉隠クンに押し付けられて……なんで知ってるの?」

「……本当に隠してたの?」

訝しげな視線が送られる。
……やってしまった。

「ずるいよ……」

「……冗談のつもりだったのだけど。バカ正直なのは相変わらずね。
それにしても、あなたは自分のことを平凡だと言うけど、隠し場所まで平凡なのね……。
なんとなく理解できた気がするわ」

今日日こんな古典的なことをする人は逆に珍しいんじゃ……。
でも、探偵の霧切さんが言うのなら正しいのかな?
……違う気がする。

「どちらにしても、さっきまで私の胸に顔を埋めていたあなたが否定できるのかしら」

「否定できないけど……でもそういうことじゃなくて……」

「そう、私じゃ満足出来なかったのね」

霧切さんが身を乗り出し、ベッドの下に腕を伸ばそうとしている。
あれを見られるのはまずい……慌てて腕を掴んだ。

「それは違うよ! その、霧切さんの夢を見ていたんだし……」

「えっ?」

……焦りでつい口に出してしまった。
からかっていた霧切さんも不意を突かれた様子だった。
ボクは恥ずかしくなって視線を逸らしてしまった。

あんな夢を見たのは疲労が溜まっていたせいだろうか。
帰宅してからは、上着だけを脱いで、早々にベッドに身体を投げ出した。
ここ数日の激務から解放され、休日を迎えられるという安堵感を味わう暇もなく、
あっという間に意識は沈んでいった。

そうして見たのはあのコロシアイ学園生活の夢。
何故だか夢だとはっきり認識できて、身体も動かせるのに、
引きずっていくと決めたボクの意識が、忘れないために刻み込ませようとしているのか、
凄惨な殺人がハイライトで流れ続け、ボクはそれを眺めていることしかできない。
血の臭いに嫌に慣れていき、気の遠くなるほどに仲間の死が繰り返される。
擦り減っていく精神に耐えきれず、ボクはあてもなく逃げ出した。
何処へ行くのかも分からぬまま、学園生活の記憶の中を無我夢中で疾走した。
そんな時、誰かがボクの手を掴んだ。
振り向いた先にいたのは、霧切さんだった。

「――ということだったんだ。なんか霧切さんにはいつも助けてもらってばっかりだね」

「……別に私は何もしていないわ」

「でも本当に来てくれるなんて思わなかったなあ。あの頃から急に部屋に入ってくることはあったけどさ」

「悪かったわね」

「い、いや責めているわけじゃなくて……むしろ頼ってもらえて嬉しかったかな……」

「……呆れるほどのお人好しね。ほんと、心配になるぐらいの」

「そうかなぁ……」

霧切さんに頼ってもらえたから嬉しかったんだけどな……。

「でも、結局どうして抱き付いてきたのかしら」

「それは……その……」

「隠すのは結構だけど、バカ正直のあなたにはお勧めできないわね」

またバカ正直って……。
もう否定する気もないし、なぜか親しみすら感じてしまうけど。

「霧切さん、すぐ何処かへ行っちゃうからさ……無性に寂しくなったんだ……」

自分でも情けないとは思うけど、紛れもない本心だった。
まともに霧切さんの顔を見ることができないけど、呆れているだろうか、笑っているだろうか。
それとも口を開かないということは引いているのだろうか。
いずれにせよしょうがないことだし、苦笑いを浮かべるしかなかった。

「霧切さん、今日はありがとう。お蔭で本当に助かったよ」

「……苗木君」

「えっ?」

気が付くと、ボクは霧切さんの腕の中に引き寄せられていた。
やっぱり柔らかい……じゃなくて!

「きり……ぎりさん?」

「少なくとも、今夜はあなたの傍にいるわ」

霧切さんの匂いが一杯に広がる。
確かな力で、ボクは抱き締められていた。

急な出来事に思考がついていけない。
真っ白になった頭が、明後日の方向へ回転している。
ある程度の平静を取り戻させたのは、霧切さんの手だった。
ゆっくりと、ボクの頭を撫でていく。
行ったり来たりをする動作が繰り返されるたびに、目頭が熱くなりそうだった。

……おかしいな、どうしてなんだろう。
確かな膨らみも押し付けられ、言葉も甘い響きを持っているはずなのに、
なぜだかボクはそういう気持ちにならなかった。
魅力がないというわけでもないし、むしろその真逆だ。
しかしあるのは、それとは程遠い感情だった。

ボクは、安心していた。

「霧切さん……大胆だね……」

「苗木君ほどではないわよ」

「そんな事言われたら誤解しちゃうよ」

「そういえば苗木君も男の子だったわね、さっき確認できていたことだったわ」

「そういえばって……」

「でも私は、あなたのことを信頼しているから」

「なんか逆にヘコむなぁ……」

「それなら襲ってみたらどうかしら、拒みはしないわ」

「そ、そんなことしないよ!」

「そう言われるのも悲しいものね……」

「……霧切さん、ボクで遊んでるでしょ」

「今頃気づいたの?」

霧切さんは軽く微笑み、ボクをトンと押した。
抵抗せずにベッドに身体を預けると、左に霧切さんも倒れ込んできた。

「服、皺になっちゃうよ」

「別に構わないわ……もっと大切にしたいものがあるから」

ボクの左手が霧切さんの両手に包み込まれる。
しっかりとした力で握られて、気持ちが落ち着いていく。
これ以上言葉を紡ぐこともなく、静寂が訪れた。

いつもと同じ部屋、いつもと同じベッド、いつもと同じ静けさ。
違うのは隣にいる人だけ。
たったそれだけなのに、なぜこんなに満たされているのだろう。
分かり切った答えを出すこともなく、心地よい倦怠感に身を任せた。
忘れていた疲労も相まって、重たくなっていた瞼を閉じた。

霧切さんの姿が見えなくなっても、確かに繋ぎとめられた存在を感じ、
ボクの心を安定させているようだった。
ゆったりと、意識はまどろみの中へ沈んでいった。

……あれ? なんか左手に圧力を感じる。
これではまるで握り潰されるような……。

「き、霧切さん、痛いよ!」

「ご、ごめんなさい」

反射的に目を開けた。
向かい合った先には、珍しく狼狽した様子の霧切さんが見える。

「……どうしたの?」

「……別に、大したことではないわ」

……そうは見えないけど。
霧切さんは、表面上は落ち着きを取り戻しているようだった。
だけど、その仮面の裏に隠されている真意は計れない。
それでも、ボクには言えることがあった。

「それは違うよ」

「……なぜそう言い切れるのかしら」

「……霧切さんのことだから、分かるんだよ」

「理由になってないわね……」

矛盾を撃ち抜くわけでもなく、論理性の欠片もない。
学級裁判においては何の効力も持たないもの。
だが今この場においては、彼女の言葉を砕く弾丸になってほしかった。

「私は……あなたのことが理解できない」

長い沈黙の後、苦しげに呟かれた声は、やっとの思いで絞り出した嘆きに聞こえた。

「私は、他者との関わりを絶ってきた。情を抱いたら判断を見誤ってしまう。
……それに、背負う物の大きさも知っているから。
でもあなたはその重さを理解していながら、手を伸ばすことをやめなかった。
私のような信用し難い人間でも同様に……そして全てを受け止めて背負ってしまう。
……想像しただけでも押し潰されそうになる。私には、たった一人でも重すぎる」

「霧切さん……ボクは……」

――そんな大仰な人間じゃないよ。
続けようとした言葉は、頬に添えられた手に遮られた。

「でもね、苗木君」

確固たる意志を持った、紫色の瞳がボクを射抜く。
先ほどまでの揺らぎはもう感じられず、見つめられるとそれだけで有無を言えなくなってしまう。
置かれた苦境にも屈せず、悠然と立ち向かう強い光を宿したそれは、
ボクが惹かれた霧切さんそのものだった。

「あなたのことだけは、私は背負いたい」

霧切さんが笑う。

「苗木君、ここまで言えばわかるわね」

「ちゃんと、最後まで言ってよ……」

「いつもの苗木君なら分かってくれると思うのだけど」

分かるとか、分からないの問題じゃないよ……。
もしかして自分で言うのが恥ずかしいだけなんじゃ……。

「まあいいわ……私は、苗木君のことを支えたい」

えっ、そういうこと?
勝手に舞い上がっていたボクが恥ずかしくなってくる。
……もちろん凄く嬉しいんだけど、なんだろうこの気持ち。

「……それに、さっきも言ったように、私のような素性も明かさない人間を信じ込むような、
危ういあなたを放ってないわ」

「それは違うよ、霧切さんだからボクは信じたんだ」

「……よりにもよって私とはとんだ物好きもいたものね」

気恥ずかしかったのかそっぽを向かれてしまった。

「そうかなぁ……霧切さん、凄くかわいいのに」

「……なんで今そんなことを言うのかしら」

「えっ? い、いや、つい思ってたことが口に出ちゃったというか……」

「からかうのは結構だけど、もうちょっとマシなやり方をしたらどう?」

今回はからかったつもりは無かったんだけどな……。
機嫌を悪くしてしまったのか、霧切さんは黙り込んでしまった。
コーヒーでも淹れてくれば機嫌を直してくれるだろうか。
気だるい身体に鞭を打って、取りあえず起き上がった。

……えっ?
横向きのまま身体を起こした結果、視界に映されたのは、真っ赤な顔をした霧切さんだった。

「き、霧切さん、もしかして照れてるの?」

「……苗木君」

凄まじいプレッシャーが発せられる。
……言うんじゃなかった。

「コーヒー」

「えっ」

「コーヒー、いいわね」

「う、うん!」

逃げ出すように部屋を出た。
コーヒーを持って戻った後も、張り詰めた空気は変わらなかった。
手持無沙汰にコーヒーに口を付けるも、熱さで中々進まないのが辛い。
恐る恐る霧切さんの方を見ると、表情もなしに、優雅とも言える動作でカップを口に運んでいた。

「何を見ているのかしら」

「い、いや……」

「もういいわ……私が大人げなかったわね」

「ち、違うよ! ボクのデリカシーが足りてなかっただけなんだから」

「そうやって下手に出るのはあなたの悪い癖よ。悪いのは子供騙しのからかいに動じた私なんだから」

霧切さんはカップを置くと、大きな溜め息をついた。

「……前科があるから信じてもらえないかもしれないけどさ、霧切さんがかわいいって言葉は嘘じゃないよ。
あの時だってまるっきり嘘ではなかったし……」

「……あなたのバカ正直さが恐ろしく思えたのは初めてだわ」

霧切さんはそう言うと、ベッドに顔を埋めてしまった。
顔を見られたくないのだろう。
きっとボクの顔も酷いことになっているだろうから丁度良かった。

とりあえずカップを片づけて、台所で洗った。
部屋に戻ると、霧切さんはベッドの上で寝息を立てていた。
……無防備だなぁ。
隣に寝そべってみてもビクとも反応しない。
それだけの信頼を勝ち得ていることは嬉しいけど、男性としては意識されてないのかな。
さっきも『そういえば苗木君も男の子だったわね』なんて言ってたし……。

「なんか悲しくなるなぁ……」

「なにが悲しいの?」

「お、起きてたの?」

思わず身体を起こしてしまう。
同様に霧切さんも上体を上げた。

「寝ようにも寝られるものではないわ……苗木君の匂いがして」

「ご、ごめん。嫌だったよね」

「……そんなこと一言も言っていないけれど。それで、何が悲しいのかしら」

「大したことじゃないよ……」

「それは違うわね」

「……どうして?」

「苗木君のことだから、分かるのよ」

自信に満ち溢れた笑みで、オウム返しをされてしまった。

「というより、あなたは分かり易すぎるのよ」

「ははは……」

乾いた笑いしか出てこなかった。

「あなたのことを支えたいと言ったことに偽りはないわ……。
私に、出来る限りの協力はする」

「……霧切さん、ちょっとごめん」

さっきボクがされたように、霧切さんを思いっきり抱き締めた。

「な、苗木君?」

「霧切さん、ボクだって男なんだよ?」

今ここで口に出すまで、この言葉が持つ切実さを理解出来ていなかった。
悲しくなるなんて、ただの軽い嘆きのつもりだった。
それがどんどん膨れ上がって、気が付いたら霧切さんを抱き締めていた。
実際には、ボクはこんなにも焦がれていた。

「ボクはナヨナヨしていて、小さくてひ弱で、キミを引っ張っていくこともできないけど、
それでも男なんだ……」

「……だから?」

霧切さんはどこか柔らかい声色で言葉を発すると、
ボクの背中に腕を回した。
その力は抱く、というよりは、受け止める、という表現が合っていた。

「だからって……」

「だいたいナヨナヨしていてなんて言っているけど、あなた妙なところで押しが強いし頑固じゃない」

「そうかなぁ……」

「そうよ。あとそうね、選択肢として、小柄で体格も良くない男性よりも、
大柄で体格もいい男性の方が、男性らしさや、包容力を感じるものなのかもしれない。
でもね、苗木君、私の選択肢にはあなたしかいないの」

「霧切さん綺麗だからモテるんじゃ……」

「かわいいの次は綺麗?」

「い、いや本当のことだよ……寧ろこっちの方が合ってるんじゃないかな」

「……そう、ありがとう。でも私がモテるかモテないかなんてどうでもいいのよ。
どちらにせよ変わらないわ」

「どういうこと?」

「……たまには自分で考えたらどうかしら?」

いつも『ここまで言えばわかるわね』とか言われている気がするんだけど……。

「それに、引っ張ってもらうなんて私はお断りよ。
私は、自分の道は自分で決めたい」

霧切さんらしいな……。
妙に納得してしまった。

「でも、道を示してくれる人は好きよ。自ずと希望を溢れさせるような」

霧切さんが、ボクの肩を軽く掴んで離した。

「ここまで言えばわかるわね? ……というより、これ以上言わせないで」

抱き締めていた時には見えなかった、霧切さんの顔が目の前にあった。
横を向き、ポーカーフェイスを装っているように見えるが、
確かに上気した頬の赤さは隠せていなかった。

……霧切さんがこちらを見ていなくて良かった。
とてもじゃないけど見せられない顔をしているだろうし、
心臓の高鳴りを抑えられる自信は皆無だ。
でも、ボクには顔を見合わせて言わないといけない言葉がある。

人生でこんなにも緊張したことはあっただろうか。
命懸けの学級裁判も、オシオキで机に座っていた時も、
今ほどの心拍数を記録していたのだろうか。
……違う。
ボクのハイライトは今、この場所だ。

勘違いかもしれない、拒絶されるかもしれない。
それでも、この想いを伝えないと、ボクは膨れ上がった言葉で破裂してしまう。
そんな妄想すらリアルに感じた。

膝の上にある、霧切さんの両手を包んだ。
触れた瞬間、霧切さんの身体が小さく震えた。
手袋越しにしか触れられない手。
でもいつかは、この向こうへ辿り着きたい。
その場所に行くためには、この一歩が不可欠なんだ。

「霧切、さん」

途切れながらも、なんとか声は震えずに出た。
霧切さんがこちらに顔を向けた。
綺麗な人、自然にそんなことを思った。

出会った時と変わらない、感情を表さない顔。
でも今のボクは、霧切さんのいろんな顔を知っている。
ボクをからかって笑う顔、自信に満ち溢れた笑顔、照れた顔、
驚いた顔、拗ねた顔、……父親のことで歪める顔。
でも、まだ足りない。
もう一つ、出会った時と変わらないのは、ボクの貪欲な感情だった。
もっと霧切さんのことが知りたい。
愛おしい全てを理解し、共に歩んでいきたいと強く願った。

見つめた瞳は、夜の波打ち際のような穏やかさを宿している。
しかしなぜだろう、ボクには、霧切さんの感情が、
大きく波打っているのが分かる気がする。

交差する視線、繋がれた手、覚悟は済ませた。
残ったのは、シンプルな言葉だけ。

「ボクは、霧切さんのことが好きだ」

「……私も好きよ、苗木君」

霧切さんは、初めて見せる笑顔で、ボクの告白に答えた。

「……やっと告白してくれた」

「えっ?」

「苗木君はずるいのね……私は今日だけで三回も告白したのに」

三回……? ええっと、さっきのやつと、道を示してくれる人のところ……?
あとは……。

「……もしかしてボクのことを背負いたいって言ってくれた時?」

「一世一代の告白のつもりだったのに傷ついたわ……」

「ご、ごめん! でもボクも舞い上がっちゃってて……」

「冗談よ、それにあなたが謝ることではないわ。……要は、私の我儘だから」

「我儘……? どういうこと?」

「……訊くの?」

「い、いや無理に言わなくてもいいよ」

「そう……」

「……」

「気になるのね……」

「言いたくないなら言わなくていいよ……訊こうっていうのもボクの我儘でしょ?」

「私から言い出したことよ……気になるのはしょうがないわ。
まあいいわ、つまり……」

「……つまり?」

「つ、つまりあなたから告白して欲しかったのよ……」

「ボクに……?」

「あなたはさっき、自分は男なんだって言っていたけど、
……私も女の子なのよ。覚えておいてね、苗木君」

ツールボックス

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