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Iは流れる/朽ち果てる」(2011/01/20 (木) 23:35:00) の最新版変更点

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*Iは流れる/朽ち果てる ◆LQDxlRz1mQ  どれだけの距離を歩いただろう。  森を突き抜けた彼──鬼札・ジョーカーは更なる"貰い手"を探し、彷徨っていた。  志村純一、その腕は既に一人の少女の生き血を奪い、その鼓動を消し去った。  彼が自分の支配すべき世界にすること──  それは── 「井坂さん、でしたか……あなたのような人と出会えて、安心していますよ」  偽の笑顔を振りまき、相手を油断させることである。  彼が次の鴨としたのは、井坂深紅郎という男で、「医者」というなかなか特殊な職業に就いている男であった。  その仕事は、人の命を救うことであり、純一としては「面白い相手に出会えた」という気分であった。  そんな人間がこの殺し合いに乗るか。答えはノーだ。  ならば、真理の時と同じく最大限の情報を引き出した後、殺す。 「いえいえ、こちらこそ」  井坂は社交辞令にしても、あまりに淡白な態度でそう答えた。純一を見ようともせず、その顔は終始無表情である。  志村純一という男に一切の興味を示さない彼の態度に、流石に苛立ちを覚えるが、純一はそれでも表情を笑顔で固めて、情報を得ようと声をかける。 「あの……大ショッカーは『世界の選別』と言ってましたが、世界が無数に存在するのって本当なんでしょうか?」 「さあ。しかし、それなら私とあなたの世界には何か『相違点』があるはずだ。  教えてもらいましょう、まずはあなたの世界について──」  純一は、まるで逆手にとられたかのような表情で彼を一瞬──ほんの一瞬だけ鬼神のごとき表情で睨んだ。  どうやら、目的はどうであれ井坂という男も同じことを望んでいたらしい。  異世界に興味を持つのは仕方がないことだが、こうなると目の前の男がだんだんと怪しく見えてくる。  目の前の人間が『黒』である可能性が出た瞬間、純一はその懐のグレイブバックルをさりげなく握った。 「──その体で」  ──ウェザー──  やはりか、と思いつつ純一はグレイブバックルを体に巻く。  ──Open up──  井坂の体が白のウェザー・ドーパントへ、純一の体が黒の仮面ライダーグレイブに変わる。  変身はおよそ、同時であった。 「それがあなたの世界の仮面ライダーですか。では、実験させてもらいましょう」  ウェザー・ドーパントの先手。  その猛吹雪がグレイブの体に直撃し、その体の表面を凍らせる。内部に通ってくる冷気も、純一の体に早速深刻なダメージを与えた。  機能を麻痺させたグレイブの装甲が、火花を散らす。 「……成る程、強度はこの程度ですか」  グレイブは反撃を試みるが、関節部までも凍ったグレイブの体は動かなかった。  アルビノジョーカーの姿だったならば、こんな風にグレイブの体が動かなくなることはない。だが、グレイブの姿を借りた以上、ここで躓いてしまうのは仕方のないことであった。  なんとか変身解除してアルビノジョーカーの姿になろうとするが、変身を解除するということは殺す隙を与えることに他ならない。 「では、雷によるダメージを与えてみましょう」  グレイブの真上に発生した小さな雲から、雷と豪雨が降り注ぐ。  水の浸透したグレイブの体中を、雷が襲う。たった一閃の雷は、轟音で耳を一瞬殺すと同時に、グレイブの機能を潰していた。  グレイブの体が、遥か後方へと吹き飛ばされる。 「……ウガァッッッ!!」  そのあまりの衝撃に思わずアンデッドとしての声が漏れた。  地面に叩きつけられた体が、グレイブの装甲の中で小さくバウンドする。体に強烈な痛みを感じつつも、自分が引いたジョーカーを純一は呪う。  体は先ほどの落雷で一時的に痺れた体は、頭で考えるように動くことを忘れていた。  どこから近づいてくるかもわからない井坂という男を、純一は恐れる。それを確認することさえできない恐怖。 「──異世界の仮面ライダー、どうやら取るに足らない存在というわけですね。  ……しかし、世界の存亡のためにも死んでもらいましょう」  急に舞い上がったグレイブの体。  首に温度を感じる。目の前には薄っすらとウェザーの姿が見える。  どうやら、首を掴まれ、持ち上がられたらしいというのを純一は感じた。  ……が、それは好機でもあった。  ──MIGHTY──  自らの首元を掴むウェザー・ドーパントの胴に光剣の斬撃が飛び込む。  高熱を帯びた剣が体表面を伝った。グレイブの首元を離さずに、しかし強大なダメージに体を支えきれずに膝がよろける。 「ウッ……!! 一撃でこれだけのダメージを与えるとは……攻撃力は並ではありませんね」  ウェザーの体に確かな一撃の痕が残っている。  深かった。  溶けたような痕が、陰に隠れて見えないほどに遠い。  ……ウェザーはその痛みに少しの焦りを感じる。この一撃は決定的とはならないものの、何度も食らえば致命傷となりかねない。  戦闘を続けるか、続かないか。その迷い。  折角、ここまで追い詰めた相手の息の根を止めずに放っておくのか。 (……いや、深追いすべき相手ではなさそうだ)  相手の裂傷を見て、ウェザーはその男を投げ捨てるように放った。  このままならば、放っておいても他の参加者にとって鴨となるのは間違いない。自分の行動は決して無駄ではなかったのだろう、とウェザーはグレイブが立ち上がる前に思考を飲み込んだ。 「良い実験になりましたよ、異世界の仮面ライダー」  そう言ってウェザー──いや、井坂深紅郎となった彼はグレイブの元を後にする。  ──だが、それは井坂の決定的なミスであった。  草原に倒れていたのは志村純一でもなく、仮面ライダーグレイブでもなく、──アルビノジョーカーという白い悪魔だったのだから。  自分を痛めつけた復讐。──そんな怨念に取り付かれたジョーカーは、鎌を掴んだまま井坂の下へと走る。 「……懲りないですね、あなたも」  再び、振り向きもせずに井坂がウェザーメモリを耳に挿し込む。が、そのメモリが音を発することはなかった。  そして、井坂の白衣も異形へは変わらない。  そこにあるのはドーパントではなく、ただの医者の姿であった。 「!? どういうことだ……!?」  一瞬焦ったアルビノジョーカーであったが、その変身が不可能となった井坂を前ににやけた。  その鎌──デスサイズは、二人目の命を吸い尽くそうと、井坂の眼前で振り上げられた。 (どうして……一体どうして!?)  井坂の脳裏に、一人の女性の姿が浮かんだ。  どうやら、それが走馬灯というものらしいのは井坂にもわかった。  その幻影を振りほどいて、対処方法を考えたいところだが、その女性の姿は頭の中から離れない。  園咲冴子。  今の井坂には、何故この女性の顔が浮かんでしまうのかわからなかった。  ただ、彼女は園咲に近づくために利用したに過ぎないのに。  そのとき、何故自分が世界の存亡などというものを理由に戦おうとしたのか、全てがわかった。 (成る程……。私は、あなたを愛していたんですね……冴子さん)  デスサイズは重力に従うように、井坂の頭部に振り下ろされた。 △ ▽  彼のいた世界が一体、どの世界だったかはわからない。  ただ、井坂深紅郎という名前が名簿の下方にあるように、彼が別の世界の人間であるというのは間違いないだろう。  この時だけ、純一の笑顔は心底から出てくるものだったのかもしれない。  受けた屈辱を返した、その快感に顔も引きつるというものだ。  そんな笑顔を隠せないまま、純一は井坂のデイパックにある必要物を自分と真理のデイパックに移していた。流石に、大量のデイパックを所持していれば怪しまれるからだ。  その時、初めて純一はその支給品に『アタリ』と『ハズレ』があることに気づいた。  自分自身の支給品は、言うならば『中間』。  変身した相手を倒すことはまずできない道具である。  ひとつは、『ステルス』というスタンスをとった純一にはうってつけのもので、ペンとライターに分離するZECT-GUNである。一見して、ただの日用道具にしか見えない二つのユニットを組み合わせることで銃になるという代物だ。  もうひとつは、トライアクセラーという警棒である。どうやら、トライチェイサーあるいはビートチェイサーというバイクの始動キーともなるらしいが、そのバイクはどこにあるのかわからない。  最初に殺した少女・真理の支給品は、早くして死んだ彼女にしては『アタリ』であったことも意外であった。  ゼクターの力を借りて強力な一撃を放つパーフェクトゼクターという剣。  『オルタナティブ・ゼロ』という擬似ライダーに変身する道具。  そして、今殺した男の支給品は『ハズレ』ばかりであった。  インドネシアの魔除けのお面という、なんとも不気味な面が支給されている。  もう一つは、人を殺す刃物にすらならない美容師用のハサミやそのセット一式である。  当然、純一にこんなものは必要ない。デイパックと共に、井坂の死体に置いておくような代物である。  それから、──そう、井坂が変身に使用していた道具だ。  純一の世界では、あのような怪人への変身は道具など使わず、直接姿を変える。  だが、彼はそれぞれ一度の変身と変身未遂の際に、あの道具を使っている。 (力を発揮するための道具か……? どちらにせよ、ライダーシステムのようにはいかなそうだ)  井坂の使っていた道具は、二度目の変身を拒んだ。  井坂自体がウェザーとしての元の力を使い切ってしまった、ということだろうか。  どちらにせよ、それがライダーシステムやアルビノジョーカーに比べて使い勝手の悪い道具であるというのは間違いない。  肝心な部分で、井坂と同じ過ちで封印される可能性も考えられる。  その思考が導き出した答えは、ウェザー・メモリを「ハズレ」とすることであった。  全ての準備を終え、ジョーカーはいずこともなく歩いていく。  強力であるはずの武器を後にして。 &color(red){【井坂深紅郎@仮面ライダーW 死亡確認】} &color(red){※井坂の支給品のうち、純一が不要と判断したものはデイパックと共にC-6に放置されています。} &color(red){※ウェザーメモリと井坂のランダムアイテムである、インドネシアの魔除けのお面@仮面ライダークウガと真理の携帯美容師セット@仮面ライダー555はデイパックと一緒に放置されています。} 【1日目 午後】 【C-6 草原】 【志村純一@仮面ライダー剣MISSING ACE】 【時間軸】不明 【状態】全身の各所に火傷と凍傷 アルビノジョーカー及びグレイブに二時間変身不可 【装備】グレイブバックル@仮面ライダー剣MISSING ACE、オルタナティブ・ゼロのデッキ@仮面ライダー龍騎、パーフェクトゼクター@仮面ライダーカブト 【道具】支給品一式×3(ただし必要なもののみ入れてます)、ZECT-GUN(分離中)@仮面ライダーカブト、トライアクセラー@仮面ライダークウガ 【思考・状況】 1:自分が支配する世界を守る為、剣の世界を勝利へ導く。 2:人前では仮面ライダーグレイブとしての善良な自分を演じる。 3:誰も見て居なければアルビノジョーカーとなって少しずつ参加者を間引いていく。 【備考】 ※園田真理のデイバッグを奪いました。 ※555の世界の大まかな情報を得ました。 |026:[[止まらないB/もえるホテル]]|投下順|028:[[勝利か敗北か]]| |021:[[差し伸べる手]]|時系列順|028:[[勝利か敗北か]]| |018:[[白の鬼札]]|[[志村純一]]|| |&color(cyan){GAME START}|[[井坂深紅郎]]|&color(red){GAME OVER}| ----
*Iは流れる/朽ち果てる ◆LQDxlRz1mQ  どれだけの距離を歩いただろう。  森を突き抜けた彼──鬼札・ジョーカーは更なる"貰い手"を探し、彷徨っていた。  志村純一、その腕は既に一人の少女の生き血を奪い、その鼓動を消し去った。  彼が自分の支配すべき世界にすること──  それは── 「井坂さん、でしたか……あなたのような人と出会えて、安心していますよ」  偽の笑顔を振りまき、相手を油断させることである。  彼が次の鴨としたのは、井坂深紅郎という男で、「医者」というなかなか特殊な職業に就いている男であった。  その仕事は、人の命を救うことであり、純一としては「面白い相手に出会えた」という気分であった。  そんな人間がこの殺し合いに乗るか。答えはノーだ。  ならば、真理の時と同じく最大限の情報を引き出した後、殺す。 「いえいえ、こちらこそ」  井坂は社交辞令にしても、あまりに淡白な態度でそう答えた。純一を見ようともせず、その顔は終始無表情である。  志村純一という男に一切の興味を示さない彼の態度に、流石に苛立ちを覚えるが、純一はそれでも表情を笑顔で固めて、情報を得ようと声をかける。 「あの……大ショッカーは『世界の選別』と言ってましたが、世界が無数に存在するのって本当なんでしょうか?」 「さあ。しかし、それなら私とあなたの世界には何か『相違点』があるはずだ。  教えてもらいましょう、まずはあなたの世界について──」  純一は、まるで逆手にとられたかのような表情で彼を一瞬──ほんの一瞬だけ鬼神のごとき表情で睨んだ。  どうやら、目的はどうであれ井坂という男も同じことを望んでいたらしい。  異世界に興味を持つのは仕方がないことだが、こうなると目の前の男がだんだんと怪しく見えてくる。  目の前の人間が『黒』である可能性が出た瞬間、純一はその懐のグレイブバックルをさりげなく握った。 「──その体で」  ──ウェザー──  やはりか、と思いつつ純一はグレイブバックルを体に巻く。  ──Open up──  井坂の体が白のウェザー・ドーパントへ、純一の体が黒の仮面ライダーグレイブに変わる。  変身はおよそ、同時であった。 「それがあなたの世界の仮面ライダーですか。では、実験させてもらいましょう」  ウェザー・ドーパントの先手。  その猛吹雪がグレイブの体に直撃し、その体の表面を凍らせる。内部に通ってくる冷気も、純一の体に早速深刻なダメージを与えた。  機能を麻痺させたグレイブの装甲が、火花を散らす。 「……成る程、強度はこの程度ですか」  グレイブは反撃を試みるが、関節部までも凍ったグレイブの体は動かなかった。  アルビノジョーカーの姿だったならば、こんな風にグレイブの体が動かなくなることはない。だが、グレイブの姿を借りた以上、ここで躓いてしまうのは仕方のないことであった。  なんとか変身解除してアルビノジョーカーの姿になろうとするが、変身を解除するということは殺す隙を与えることに他ならない。 「では、雷によるダメージを与えてみましょう」  グレイブの真上に発生した小さな雲から、雷と豪雨が降り注ぐ。  水の浸透したグレイブの体中を、雷が襲う。たった一閃の雷は、轟音で耳を一瞬殺すと同時に、グレイブの機能を潰していた。  グレイブの体が、遥か後方へと吹き飛ばされる。 「……ウガァッッッ!!」  そのあまりの衝撃に思わずアンデッドとしての声が漏れた。  地面に叩きつけられた体が、グレイブの装甲の中で小さくバウンドする。体に強烈な痛みを感じつつも、自分が引いたジョーカーを純一は呪う。  体は先ほどの落雷で一時的に痺れた体は、頭で考えるように動くことを忘れていた。  どこから近づいてくるかもわからない井坂という男を、純一は恐れる。それを確認することさえできない恐怖。 「──異世界の仮面ライダー、どうやら取るに足らない存在というわけですね。  ……しかし、世界の存亡のためにも死んでもらいましょう」  急に舞い上がったグレイブの体。  首に温度を感じる。目の前には薄っすらとウェザーの姿が見える。  どうやら、首を掴まれ、持ち上がられたらしいというのを純一は感じた。  ……が、それは好機でもあった。  ──MIGHTY──  自らの首元を掴むウェザー・ドーパントの胴に光剣の斬撃が飛び込む。  高熱を帯びた剣が体表面を伝った。グレイブの首元を離さずに、しかし強大なダメージに体を支えきれずに膝がよろける。 「ウッ……!! 一撃でこれだけのダメージを与えるとは……攻撃力は並ではありませんね」  ウェザーの体に確かな一撃の痕が残っている。  深かった。  溶けたような痕が、陰に隠れて見えないほどに遠い。  ……ウェザーはその痛みに少しの焦りを感じる。この一撃は決定的とはならないものの、何度も食らえば致命傷となりかねない。  戦闘を続けるか、続かないか。その迷い。  折角、ここまで追い詰めた相手の息の根を止めずに放っておくのか。 (……いや、深追いすべき相手ではなさそうだ)  相手の裂傷を見て、ウェザーはその男を投げ捨てるように放った。  このままならば、放っておいても他の参加者にとって鴨となるのは間違いない。自分の行動は決して無駄ではなかったのだろう、とウェザーはグレイブが立ち上がる前に思考を飲み込んだ。 「良い実験になりましたよ、異世界の仮面ライダー」  そう言ってウェザー──いや、井坂深紅郎となった彼はグレイブの元を後にする。  ──だが、それは井坂の決定的なミスであった。  草原に倒れていたのは志村純一でもなく、仮面ライダーグレイブでもなく、──アルビノジョーカーという白い悪魔だったのだから。  自分を痛めつけた復讐。──そんな怨念に取り付かれたジョーカーは、鎌を掴んだまま井坂の下へと走る。 「……懲りないですね、あなたも」  再び、振り向きもせずに井坂がウェザーメモリを耳に挿し込む。が、そのメモリが音を発することはなかった。  そして、井坂の白衣も異形へは変わらない。  そこにあるのはドーパントではなく、ただの医者の姿であった。 「!? どういうことだ……!?」  一瞬焦ったアルビノジョーカーであったが、その変身が不可能となった井坂を前ににやけた。  その鎌──デスサイズは、二人目の命を吸い尽くそうと、井坂の眼前で振り上げられた。 (どうして……一体どうして!?)  井坂の脳裏に、一人の女性の姿が浮かんだ。  どうやら、それが走馬灯というものらしいのは井坂にもわかった。  その幻影を振りほどいて、対処方法を考えたいところだが、その女性の姿は頭の中から離れない。  園咲冴子。  今の井坂には、何故この女性の顔が浮かんでしまうのかわからなかった。  ただ、彼女は園咲に近づくために利用したに過ぎないのに。  そのとき、何故自分が世界の存亡などというものを理由に戦おうとしたのか、全てがわかった。 (成る程……。私は、あなたを愛していたんですね……冴子さん)  デスサイズは重力に従うように、井坂の頭部に振り下ろされた。 △ ▽  彼のいた世界が一体、どの世界だったかはわからない。  ただ、井坂深紅郎という名前が名簿の下方にあるように、彼が別の世界の人間であるというのは間違いないだろう。  この時だけ、純一の笑顔は心底から出てくるものだったのかもしれない。  受けた屈辱を返した、その快感に顔も引きつるというものだ。  そんな笑顔を隠せないまま、純一は井坂のデイパックにある必要物を自分と真理のデイパックに移していた。流石に、大量のデイパックを所持していれば怪しまれるからだ。  その時、初めて純一はその支給品に『アタリ』と『ハズレ』があることに気づいた。  自分自身の支給品は、言うならば『中間』。  変身した相手を倒すことはまずできない道具である。  ひとつは、『ステルス』というスタンスをとった純一にはうってつけのもので、ペンとライターに分離するZECT-GUNである。一見して、ただの日用道具にしか見えない二つのユニットを組み合わせることで銃になるという代物だ。  もうひとつは、トライアクセラーという警棒である。どうやら、トライチェイサーあるいはビートチェイサーというバイクの始動キーともなるらしいが、そのバイクはどこにあるのかわからない。  最初に殺した少女・真理の支給品は、早くして死んだ彼女にしては『アタリ』であったことも意外であった。  ゼクターの力を借りて強力な一撃を放つパーフェクトゼクターという剣。  『オルタナティブ・ゼロ』という擬似ライダーに変身する道具。  そして、今殺した男の支給品は『ハズレ』ばかりであった。  インドネシアの魔除けのお面という、なんとも不気味な面が支給されている。  もう一つは、人を殺す刃物にすらならない美容師用のハサミやそのセット一式である。  当然、純一にこんなものは必要ない。デイパックと共に、井坂の死体に置いておくような代物である。  それから、──そう、井坂が変身に使用していた道具だ。  純一の世界では、あのような怪人への変身は道具など使わず、直接姿を変える。  だが、彼はそれぞれ一度の変身と変身未遂の際に、あの道具を使っている。 (力を発揮するための道具か……? どちらにせよ、ライダーシステムのようにはいかなそうだ)  井坂の使っていた道具は、二度目の変身を拒んだ。  井坂自体がウェザーとしての元の力を使い切ってしまった、ということだろうか。  どちらにせよ、それがライダーシステムやアルビノジョーカーに比べて使い勝手の悪い道具であるというのは間違いない。  肝心な部分で、井坂と同じ過ちで封印される可能性も考えられる。  その思考が導き出した答えは、ウェザー・メモリを「ハズレ」とすることであった。  全ての準備を終え、ジョーカーはいずこともなく歩いていく。  強力であるはずの武器を後にして。 &color(red){【井坂深紅郎@仮面ライダーW 死亡確認】} &color(red){※井坂の支給品のうち、純一が不要と判断したものはデイパックと共にC-6に放置されています。} &color(red){※ウェザーメモリと井坂のランダムアイテムである、インドネシアの魔除けのお面@仮面ライダークウガと真理の携帯美容師セット@仮面ライダー555はデイパックと一緒に放置されています。} 【1日目 午後】 【C-6 草原】 【志村純一@仮面ライダー剣MISSING ACE】 【時間軸】不明 【状態】全身の各所に火傷と凍傷 アルビノジョーカー及びグレイブに二時間変身不可 【装備】グレイブバックル@仮面ライダー剣MISSING ACE、オルタナティブ・ゼロのデッキ@仮面ライダー龍騎、パーフェクトゼクター@仮面ライダーカブト 【道具】支給品一式×3(ただし必要なもののみ入れてます)、ZECT-GUN(分離中)@仮面ライダーカブト、トライアクセラー@仮面ライダークウガ 【思考・状況】 1:自分が支配する世界を守る為、剣の世界を勝利へ導く。 2:人前では仮面ライダーグレイブとしての善良な自分を演じる。 3:誰も見て居なければアルビノジョーカーとなって少しずつ参加者を間引いていく。 【備考】 ※園田真理のデイバッグを奪いました。 ※555の世界の大まかな情報を得ました。 |026:[[止まらないB/もえるホテル]]|投下順|028:[[勝利か敗北か]]| |021:[[差し伸べる手]]|時系列順|028:[[勝利か敗北か]]| |018:[[白の鬼札]]|[[志村純一]]|050:[[Round ZERO ~KING AND JOKER ]]| |&color(cyan){GAME START}|[[井坂深紅郎]]|&color(red){GAME OVER}| ----

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