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*Jの男達/世界を守るために ◆LuuKRM2PEg F-5エリア。 ここには『555の世界』に存在する、高級マンションと酷似した建物が建てられていた。 オルフェノクで結成された世界的大複合企業、スマートブレインの所有物。 今は亡き木場勇治や、長田結花や海堂直也の住まいでもある。 そこのロビーで今、二人の男が体を休めていた。 戦いで蓄積された疲れを癒すために。 「本当に無事で良かったぜ、相川さん」 左翔太郎は、安堵の笑みを向けていた。 先程、カブト虫とよく似た怪人に襲われていた青年、相川始を助けた事で。 敵には逃げられたが、人の命を守れただけでも何よりだ。 こんな事を繰り返すなど、あってはならない。 木場勇治のように、誰かを守れないのは。 「……ジョーカーの男、何故俺を助けた?」 始は何処か警戒を含んだ瞳で、翔太郎を見つめる。 つい数時間前、異世界の怪物に狙われた自分を助けた、ジョーカーの男。 そして、この世界に放り込まれてから、初めて戦った戦士。 「言ったろ、俺はもう犠牲を出したくないって」 翔太郎は、少し寂しげな表情で呟く。 自分は救えなかった。 守らなければならない、人の命を。 後悔と悲しみで押し潰されそうになった。 それでも戦わなければならない。 だから、始を助けた。 そこに特別な理由など存在しない、シンプルな行動方針。 「甘いな、俺とお前は敵同士だ……お前は自分の世界を救う気はないのか?」 「救ってやるさ」 始の疑問を、翔太郎はあっさりと遮った。 「俺は仮面ライダーだからな」 仮面ライダージョーカーに変身して戦った時の言い分を、再び告げる。 そのまま、翔太郎は続けた。 「俺の世界だけじゃない。あんたや、こんな戦いに連れてこられたみんなの世界……俺は仮面ライダーとして、絶対に救ってみせる」 彼の抱く理想を聞いた事で、始は胸が痛むのを再び感じる。 やはり、この男は似ていた。 自分が一番信頼を寄せる親友、剣崎一真と。 恐らく彼も、この男と同じように戦うのだろう。 そして全てに救いの手を差し伸べて、戦うはずだ。 しかしだからこそ、始の中で罪悪感が広がっていく。 自分がやっている事は、剣崎が決して望まないからだ。 理由はどうあれ、他者の命を奪ったことに変わりはない。 それはつまり、彼を裏切っている事になる。 「…………やはり甘いな」 でも、もう決めたのだ。 どんな汚い手段を使ってでも、自分は戦いに勝ち残ると。 剣崎や栗原親子が生きる世界を、何としてでも救うために。 その為ならば、例え外道と罵られようとも一向に構わなかった。 そして、全ての甘い考えを捨てる。 冷たい思いを胸に、始は口を開いた。 「例え全ての世界を救うとして、お前はどうする? 運命を変える方法があるとでも言うのか」 大ショッカーはこの戦いを、世界をあるべき姿に戻すための選別と言う。 それを証明するための映像を、開幕の時に見せた。 衝突する数多の世界。 滅び行く生命。 そして、それを防ぐために自分達は戦わなければならない。 他の世界に生きる、命を踏み台にして。 「いや、それはまだ分からない……」 始の疑問に、翔太郎は憂いを含んだ言葉を告げる。 しかしそれでも、絶望はしていなかった。 彼は始の顔を見据えながら、口を開く。 「でも俺は、絶対にそれを見つけてみせる。そんなのが運命なら、絶対に変えなきゃいけねえからな」 翔太郎は真剣な表情で、力強く言った。 自分が生まれ育った、風都が存在する世界を守るのに嘘はない。 だが、それは誰だろうと同じ。 木場さんも自分が生きる世界を守るために、殺し合いを止めようとした。 きっとあの人が、故郷に対して抱いていた思いは自分と同じだろう。 始もきっと、自分が生きる世界を守りたいと思っているはずだ。 けれど、それが他者を犠牲にしていい理由にはならないし、なってはいけない。 木場さんもそう望んでいたはずだから。 それに対して、始は何も言う事が出来ない。 翔太郎の信念を聞けば聞くほど、剣崎の事を思い出してしまうのだから。 戦おうと思えば、この場でカリスに変身する事が出来た。 しかしそれをする気にはなれない。 始の中で、何かがそれを止めていた。 彼自身にも分からない、何かが。 『みんなぁーーーー! あたしの話を聞いてーーーーーー!』 翔太郎と始の間で、沈黙が広がっていく時。 突如として、耳を劈くような大きな声が、外より響いてきた。 まるで拡声器を使ったような、女の声。 それは翔太郎にとって、よく知る人物の物だった。 「この声は……亜樹子か!?」 『こんな戦いはもうやめて! 自分の世界を守りたいからって、他の人達を殺すなんておかしいよ!』 そう、鳴海探偵事務所の所長を自称する鳴海荘吉の娘、鳴海亜樹子。 彼女が今、宣言をしていた。 これ以上戦わないでと。 仮面ライダーは、みんなのために戦うヒーローだと。 東京タワーまで来て、一緒に世界を救う方法を探そうよと。 「やめろ、亜樹子!」 『こんな戦いを仕組んだ奴らに負けないで! みんなの世界を救うために戦って! 人類の味方、仮面ライダアァァァァァァーーーッ!』 翔太郎は止めようと叫ぶが、届くわけがない。 その叫びを最後に、亜樹子の言葉は終わった。 彼女の言葉を聞いて、翔太郎の顔に動揺が生まれている。 亜樹子もまた、世界を救うために戦おうとしていた。 その為に、参加者を呼びかける。 「亜樹子の奴……無茶しやがって!」 だが、翔太郎は喜ぶ事など出来なかった。 無事を確認出来たのは、何より嬉しい。 しかしあれだけ大声で叫ぶなんて、自殺行為だ。 この世界には木場さんを殺した黒いライダーや、先程戦った軍服を纏った怪人のような危険人物がたくさんいる。 加えて亜樹子は、自分がいる場所も教えた。 これでは、殺し合いに乗った連中の餌食にされるに決まってる。 「ジョーカーの男、行かないのか?」 不安に駆られている中、始の声が聞こえた。 翔太郎はそちらに振り向く。 気がつくと、始は既に荷物を纏めていた。 「その亜樹子とかいう女は、お前が生きる世界の住民だろう。このままだと、殺されるだろうな」 「相川さん……」 「お前は運命を変えると言ったな、それは嘘だったのか」 「いや、嘘じゃねえ!」 「嘘じゃないなら、早くしろ。お前が本当に世界を守るのか、見届けさせて貰う」 そう言い残すと、彼は翔太郎に背を向ける。 そのまま、出口に向かって歩いていった。 始を追うように翔太郎も、足を進める。 マンションから出た二人は、駐車場に停められていた乗り物に目を向けた。 黒と金の二色に彩られた、巨大なサイドカー。 側面には『SMAET BRAIN』の文字が、ロゴのように輝いている。 翔太郎も始も知らないが、それは『555の世界』に存在する、サイドバッシャーと呼ばれる高性能マシン。 乗り物の上には、説明書と鍵が置かれていた。 「スマートブレイン……か」 英語を読み上げる翔太郎は、暗い表情を浮かべる。 ここにあるのは、木場さんが言っていたスマートブレインに関係する物なのだろうか。 だが、今はそんな事を言っていられない。 このままでは、亜樹子が危険に晒されてしまう。 一刻も早く、東京タワーまで向かわなければならなかった。 既に始も、サイドカーに乗っている。 残された運転席に、翔太郎も乗り込んだ。 彼は鍵を差し込んで、勢いよく回す。 すると薄暗い道にライトが点滅して、エンジンが轟音を鳴らした。 そしてサイドバッシャーは、凄まじい勢いで進行を始める。 ジョーカーの名を背負う、男達を乗せて。 (やはり、この男は甘いな) サイドカーに乗る相川始は、揺れを感じながら考えていた。 やはり、すぐ隣にいる左翔太郎は甘い。 この殺し合いに乗っている自分を、一切疑っていないようだ。 だが、逆を言えば自分にとっても利用しやすい。 ここには、先程戦った怪人のように、圧倒的強さを誇る敵がいる。 忌むべきジョーカーの姿で戦えばともかく、普通にやっても生き残れるとは思えない。 ならばここは、翔太郎を最大限に利用すべきだ。 恐らくこの男は、自分に心を許している。 だったら、戦力にもなるかもしれない。 強大な敵がいるなら、一時的に共闘する。 もしも途中で倒れたり、致命傷を負ったのならば、その時に殺せばいい。 (バッグの中には、幸いにもその為の道具がある……) 始は、デイバッグに目を移した。 最初に木場という男を殺した後に、中身を確認する。 先程はダメージが深かった故、戦いの中で存在を失念してしまったが、仮面ライダーの力が一つだけあった。 彼は知らないが、それは本来の時間とは違う『ブレイドの世界』で、新世代の仮面ライダーと呼べる物。 仮面ライダーラルクに変身するためのバックルが、始に配られていた。 本来ならば、彼がその存在を知る事はない。 理由は、剣崎一真と戦った末にジョーカーとして封印されたため。 カリスの姿を翔太郎に見せるわけにはいかない、始にとっては最高の代物だった。 現状では、彼がいる前ではラルクとして戦う。 本来の力を使うのは、チャンスが来てから。 それまではこの男に協力する。 卑怯な手段だが、死神と呼ばれる自分には相応しい。 (東京タワーには、恐らく大勢の参加者が来るだろうな……利用させて貰うぞ、ジョーカーの男) 自分のやるべき事を、始は改めて考えた。 まずは翔太郎と一緒に、東京タワーまで行く。 先程大声で叫んだ、少女を見つけるために。 恐らく、他の参加者も聞いている可能性が高いはずだ。 殺し合いに乗った連中も。 確実に東京タワーは、戦場になる。 そこに向かうため、あえて翔太郎を焚きつけた。 どれだけの人数が揃うにしても、負傷は避けられない。 潰し合いで疲弊したところを、狙えばいいだけだ。 『仮面ライダーは、みんなのために戦うヒーローでしょ! 少なくとも、あたしの世界ではそうだった!』 『こんな戦いを仕組んだ奴らに負けないで! みんなの世界を救うために戦って! 人類の味方、仮面ライダアァァァァァァーーーッ!』 思案を巡らせる中、不意に始は思い出す。 翔太郎と同じ世界の住民である、亜樹子と呼ばれた女の言葉を。 戦場ではただの綺麗事にかならない、理想。 だが、始はそれを聞き流す事は出来ない。 そして、決して忘れてはいけない言葉のようにも思えた。 (剣崎も、同じ事を言うだろうな……) 心の中でそう考える。 翔太郎も亜樹子とかいう女も、とんでもない馬鹿だ。 だが同時に、とんでもないお人好しでもあるかもしれない。 全ての世界を救おうとして、全ての参加者と手を取り合おうとする。 しかし、そこまで世界は都合良く出来ていない。 そんな甘さに付け込んで、襲いかかる奴など星の数ほどいる。 これでは、自殺するような物だ。 (いや、余計な事は考えるな……この戦いに勝ち残るためだけを、考えろ) 自分にそう言い聞かせるが、耳から離れない。 仮面ライダーはみんなのために戦うヒーローだと。 仮面ライダーは人類の味方であると。 仮面ライダーはみんなの世界を救うために戦わなければならないと。 これは、自分にも向けられた言葉。 翔太郎と亜樹子は、死神である自分を信じている。 そんな思いが、始の中で広がっていた。 (相川さん……あんた、こんな馬鹿な戦いに乗ってるのか?) サイドバッシャーを運転する左翔太郎は、揺れを感じながら考えていた。 自分の事を『ジョーカーの男』と呼ぶ、すぐ隣にいる相川始。 ジョーカーの名を持つ仮面ライダーに変身するから、ジョーカーの男。 素晴らしいセンスだが、呑気な事は言っていられない。 まさか彼は、世界を守るために他者を犠牲にしようとしているのか。 だが、それではいけない。 きっと始の世界に生きる人々も、幸せな毎日を送っているのだろう。 自分だって、風都に住むみんなの為に他人を殺そうと、一時は思った。 だから、始が殺し合いに乗っても、気持ちは理解出来る。 しかし、納得してはいけない。 木場さんはそれを教えてくれたのだから。 (いや、例え誰かを殺そうとしても……俺が止めれば良いだけだ、仮面ライダーとして!) 仮面ライダーは、人類の味方。 誰かが危機に陥ったら、何としてでも助けるみんなのヒーロー。 亜樹子も木場さんも、それを教えてくれた。 ならば二人の思いに、答えなければならない。 今までだって、フィリップや照井と一緒に町を守るヒーローとして戦ってきた。 それと同じように、仮面ライダーとして誰かを守る。 フィリップも、亜樹子も、照井も、霧彦も、始も、始の世界に生きる人達も、木場の世界で生きる人達も、風都で生きるみんなも、こんな戦いに放り込まれた人達も。 みんな、この手で助けてみせる。 今までも、そしてこれからも。 だから始が誰かを殺そうとしても、それを全力で止めてみせる。 そんな思いが、翔太郎の中で広がっていた。 左翔太郎と相川始。 ジョーカーを背負う、二人の男。 人々を守る仮面ライダーとして戦う事を決めた、左翔太郎。 人々を襲う死神として戦う事を決めた、相川始。 自らが選んだ手段は正反対でも、思いは同じだった。 自分が生きる世界を守るために戦う。 そんなジョーカーの男達を乗せながら、サイドバッシャーは走った。 仮面ライダーを待つ、女の思いを叶えるために。 東京タワーへと。 そこに罠が仕掛けられているのを知らずに。 切り札と鬼札は、ただ走った。 彼らが一体、どのような運命を背負うのかは、誰にも分からない。 【1日目 夕方】 【F-5 平原】 【左翔太郎@仮面ライダーW】 【時間軸】本編終了後 【状態】疲労(小)、悲しみと罪悪感、それ以上の決意 【装備】ロストドライバー&ジョーカーメモリ@仮面ライダーW 【道具】支給品一式×2(翔太郎、木場)、翔太郎の不明支給品(0~2)、木場の不明支給品(0~2) 、ゼクトバックル(パンチホッパー)@仮面ライダーカブト、首輪(木場)、サイドバッシャー@仮面ライダー555 【思考・状況】 1:仮面ライダーとして、世界の破壊を止める。 2:出来れば相川始と協力したい。 2:カリス(名前を知らない)を絶対に倒す。 3:フィリップ達と合流し、木場のような仲間を集める。 4:『ファイズの世界』の住民に、木場の死を伝える。(ただし、村上は警戒) 5:ミュージアムの幹部達を警戒。 6:もしも始が殺し合いに乗っているのなら、全力で止める。 7:始と共に東京タワーに急ぐ。 【備考】 ※ 木場のいた世界の仮面ライダー(ファイズ)は悪だと認識しています。 ※ 555の世界について、木場の主観による詳細を知りました。 ※ オルフェノクはドーパントに近いものだと思っています(人類が直接変貌したものだと思っていない)。 ※ ミュージアムの幹部達は、ネクロオーバーとなって蘇ったと推測しています。 ※ また、大ショッカーと財団Xに何らかの繋がりがあると考えています。 ※ ホッパーゼクターにはまだ認められていません。 ※ 東京タワーから発せられた、亜樹子の放送を聞きました。 【相川始@仮面ライダー剣】 【時間軸】本編後半あたり 【状態】疲労(小)、罪悪感、若干の迷い 【装備】ラウズカード(ハートのA~6)@仮面ライダー剣、ラルクのバックル@劇場版仮面ライダー剣 MISSING ACE 【道具】支給品一式、不明支給品×1 【思考・状況】 1:栗原親子のいる世界を破壊させないため、殺し合いに乗る。 2:左翔太郎をこの戦いで利用する……? 3:当面は左翔太郎の前では、カリスに変身しない。 4:東京タワーに向かう。 【備考】 ※ ラウズカードで変身する場合は、全てのラウズカードに制限がかかります。ただし、戦闘時間中に他のラウズカードで変身することは可能です。 ※ 時間内にヒューマンアンデッドに戻らなければならないため、変身制限を知っています。時間を過ぎても変身したままの場合、どうなるかは後の書き手さんにお任せします。 ※ 左翔太郎を『ジョーカーの男』として認識しています。また、翔太郎の雄たけびで木場の名前を知りました。 ※ 東京タワーから発せられた、亜樹子の放送を聞きました。 【全体備考】 ※F-5エリアにある建物は、高級マンション@仮面ライダー555です。 |057:[[仕掛けられたB/響き渡る声]]|投下順|059:[[Round ZERO ~ WORM INVASIVE]]| |057:[[仕掛けられたB/響き渡る声]]|時系列順|059:[[Round ZERO ~ WORM INVASIVE]]| |036:[[二人のジョーカー]]|[[左翔太郎]]|| |036:[[二人のジョーカー]]|[[相川始]]|| ----
*Jの男達/世界を守るために ◆LuuKRM2PEg F-5エリア。 ここには『555の世界』に存在する、高級マンションと酷似した建物が建てられていた。 オルフェノクで結成された世界的大複合企業、スマートブレインの所有物。 今は亡き木場勇治や、長田結花や海堂直也の住まいでもある。 そこのロビーで今、二人の男が体を休めていた。 戦いで蓄積された疲れを癒すために。 「本当に無事で良かったぜ、相川さん」 左翔太郎は、安堵の笑みを向けていた。 先程、カブト虫とよく似た怪人に襲われていた青年、相川始を助けた事で。 敵には逃げられたが、人の命を守れただけでも何よりだ。 こんな事を繰り返すなど、あってはならない。 木場勇治のように、誰かを守れないのは。 「……ジョーカーの男、何故俺を助けた?」 始は何処か警戒を含んだ瞳で、翔太郎を見つめる。 つい数時間前、異世界の怪物に狙われた自分を助けた、ジョーカーの男。 そして、この世界に放り込まれてから、初めて戦った戦士。 「言ったろ、俺はもう犠牲を出したくないって」 翔太郎は、少し寂しげな表情で呟く。 自分は救えなかった。 守らなければならない、人の命を。 後悔と悲しみで押し潰されそうになった。 それでも戦わなければならない。 だから、始を助けた。 そこに特別な理由など存在しない、シンプルな行動方針。 「甘いな、俺とお前は敵同士だ……お前は自分の世界を救う気はないのか?」 「救ってやるさ」 始の疑問を、翔太郎はあっさりと遮った。 「俺は仮面ライダーだからな」 仮面ライダージョーカーに変身して戦った時の言い分を、再び告げる。 そのまま、翔太郎は続けた。 「俺の世界だけじゃない。あんたや、こんな戦いに連れてこられたみんなの世界……俺は仮面ライダーとして、絶対に救ってみせる」 彼の抱く理想を聞いた事で、始は胸が痛むのを再び感じる。 やはり、この男は似ていた。 自分が一番信頼を寄せる親友、剣崎一真と。 恐らく彼も、この男と同じように戦うのだろう。 そして全てに救いの手を差し伸べて、戦うはずだ。 しかしだからこそ、始の中で罪悪感が広がっていく。 自分がやっている事は、剣崎が決して望まないからだ。 理由はどうあれ、他者の命を奪ったことに変わりはない。 それはつまり、彼を裏切っている事になる。 「…………やはり甘いな」 でも、もう決めたのだ。 どんな汚い手段を使ってでも、自分は戦いに勝ち残ると。 剣崎や栗原親子が生きる世界を、何としてでも救うために。 その為ならば、例え外道と罵られようとも一向に構わなかった。 そして、全ての甘い考えを捨てる。 冷たい思いを胸に、始は口を開いた。 「例え全ての世界を救うとして、お前はどうする? 運命を変える方法があるとでも言うのか」 大ショッカーはこの戦いを、世界をあるべき姿に戻すための選別と言う。 それを証明するための映像を、開幕の時に見せた。 衝突する数多の世界。 滅び行く生命。 そして、それを防ぐために自分達は戦わなければならない。 他の世界に生きる、命を踏み台にして。 「いや、それはまだ分からない……」 始の疑問に、翔太郎は憂いを含んだ言葉を告げる。 しかしそれでも、絶望はしていなかった。 彼は始の顔を見据えながら、口を開く。 「でも俺は、絶対にそれを見つけてみせる。そんなのが運命なら、絶対に変えなきゃいけねえからな」 翔太郎は真剣な表情で、力強く言った。 自分が生まれ育った、風都が存在する世界を守るのに嘘はない。 だが、それは誰だろうと同じ。 木場さんも自分が生きる世界を守るために、殺し合いを止めようとした。 きっとあの人が、故郷に対して抱いていた思いは自分と同じだろう。 始もきっと、自分が生きる世界を守りたいと思っているはずだ。 けれど、それが他者を犠牲にしていい理由にはならないし、なってはいけない。 木場さんもそう望んでいたはずだから。 それに対して、始は何も言う事が出来ない。 翔太郎の信念を聞けば聞くほど、剣崎の事を思い出してしまうのだから。 戦おうと思えば、この場でカリスに変身する事が出来た。 しかしそれをする気にはなれない。 始の中で、何かがそれを止めていた。 彼自身にも分からない、何かが。 『みんなぁーーーー! あたしの話を聞いてーーーーーー!』 翔太郎と始の間で、沈黙が広がっていく時。 突如として、耳を劈くような大きな声が、外より響いてきた。 まるで拡声器を使ったような、女の声。 それは翔太郎にとって、よく知る人物の物だった。 「この声は……亜樹子か!?」 『こんな戦いはもうやめて! 自分の世界を守りたいからって、他の人達を殺すなんておかしいよ!』 そう、鳴海探偵事務所の所長を自称する鳴海荘吉の娘、鳴海亜樹子。 彼女が今、宣言をしていた。 これ以上戦わないでと。 仮面ライダーは、みんなのために戦うヒーローだと。 東京タワーまで来て、一緒に世界を救う方法を探そうよと。 「やめろ、亜樹子!」 『こんな戦いを仕組んだ奴らに負けないで! みんなの世界を救うために戦って! 人類の味方、仮面ライダアァァァァァァーーーッ!』 翔太郎は止めようと叫ぶが、届くわけがない。 その叫びを最後に、亜樹子の言葉は終わった。 彼女の言葉を聞いて、翔太郎の顔に動揺が生まれている。 亜樹子もまた、世界を救うために戦おうとしていた。 その為に、参加者を呼びかける。 「亜樹子の奴……無茶しやがって!」 だが、翔太郎は喜ぶ事など出来なかった。 無事を確認出来たのは、何より嬉しい。 しかしあれだけ大声で叫ぶなんて、自殺行為だ。 この世界には木場さんを殺した黒いライダーや、先程戦った軍服を纏った怪人のような危険人物がたくさんいる。 加えて亜樹子は、自分がいる場所も教えた。 これでは、殺し合いに乗った連中の餌食にされるに決まってる。 「ジョーカーの男、行かないのか?」 不安に駆られている中、始の声が聞こえた。 翔太郎はそちらに振り向く。 気がつくと、始は既に荷物を纏めていた。 「その亜樹子とかいう女は、お前が生きる世界の住民だろう。このままだと、殺されるだろうな」 「相川さん……」 「お前は運命を変えると言ったな、それは嘘だったのか」 「いや、嘘じゃねえ!」 「嘘じゃないなら、早くしろ。お前が本当に世界を守るのか、見届けさせて貰う」 そう言い残すと、彼は翔太郎に背を向ける。 そのまま、出口に向かって歩いていった。 始を追うように翔太郎も、足を進める。 マンションから出た二人は、駐車場に停められていた乗り物に目を向けた。 黒と金の二色に彩られた、巨大なサイドカー。 側面には『SMAET BRAIN』の文字が、ロゴのように輝いている。 翔太郎も始も知らないが、それは『555の世界』に存在する、サイドバッシャーと呼ばれる高性能マシン。 乗り物の上には、説明書と鍵が置かれていた。 「スマートブレイン……か」 英語を読み上げる翔太郎は、暗い表情を浮かべる。 ここにあるのは、木場さんが言っていたスマートブレインに関係する物なのだろうか。 だが、今はそんな事を言っていられない。 このままでは、亜樹子が危険に晒されてしまう。 一刻も早く、東京タワーまで向かわなければならなかった。 既に始も、サイドカーに乗っている。 残された運転席に、翔太郎も乗り込んだ。 彼は鍵を差し込んで、勢いよく回す。 すると薄暗い道にライトが点滅して、エンジンが轟音を鳴らした。 そしてサイドバッシャーは、凄まじい勢いで進行を始める。 ジョーカーの名を背負う、男達を乗せて。 (やはり、この男は甘いな) サイドカーに乗る相川始は、揺れを感じながら考えていた。 やはり、すぐ隣にいる左翔太郎は甘い。 この殺し合いに乗っている自分を、一切疑っていないようだ。 だが、逆を言えば自分にとっても利用しやすい。 ここには、先程戦った怪人のように、圧倒的強さを誇る敵がいる。 忌むべきジョーカーの姿で戦えばともかく、普通にやっても生き残れるとは思えない。 ならばここは、翔太郎を最大限に利用すべきだ。 恐らくこの男は、自分に心を許している。 だったら、戦力にもなるかもしれない。 強大な敵がいるなら、一時的に共闘する。 もしも途中で倒れたり、致命傷を負ったのならば、その時に殺せばいい。 (バッグの中には、幸いにもその為の道具がある……) 始は、デイバッグに目を移した。 最初に木場という男を殺した後に、中身を確認する。 先程はダメージが深かった故、戦いの中で存在を失念してしまったが、仮面ライダーの力が一つだけあった。 彼は知らないが、それは本来の時間とは違う『ブレイドの世界』で、新世代の仮面ライダーと呼べる物。 仮面ライダーラルクに変身するためのバックルが、始に配られていた。 本来ならば、彼がその存在を知る事はない。 理由は、剣崎一真と戦った末にジョーカーとして封印されたため。 カリスの姿を翔太郎に見せるわけにはいかない、始にとっては最高の代物だった。 現状では、彼がいる前ではラルクとして戦う。 本来の力を使うのは、チャンスが来てから。 それまではこの男に協力する。 卑怯な手段だが、死神と呼ばれる自分には相応しい。 (東京タワーには、恐らく大勢の参加者が来るだろうな……利用させて貰うぞ、ジョーカーの男) 自分のやるべき事を、始は改めて考えた。 まずは翔太郎と一緒に、東京タワーまで行く。 先程大声で叫んだ、少女を見つけるために。 恐らく、他の参加者も聞いている可能性が高いはずだ。 殺し合いに乗った連中も。 確実に東京タワーは、戦場になる。 そこに向かうため、あえて翔太郎を焚きつけた。 どれだけの人数が揃うにしても、負傷は避けられない。 潰し合いで疲弊したところを、狙えばいいだけだ。 『仮面ライダーは、みんなのために戦うヒーローでしょ! 少なくとも、あたしの世界ではそうだった!』 『こんな戦いを仕組んだ奴らに負けないで! みんなの世界を救うために戦って! 人類の味方、仮面ライダアァァァァァァーーーッ!』 思案を巡らせる中、不意に始は思い出す。 翔太郎と同じ世界の住民である、亜樹子と呼ばれた女の言葉を。 戦場ではただの綺麗事にかならない、理想。 だが、始はそれを聞き流す事は出来ない。 そして、決して忘れてはいけない言葉のようにも思えた。 (剣崎も、同じ事を言うだろうな……) 心の中でそう考える。 翔太郎も亜樹子とかいう女も、とんでもない馬鹿だ。 だが同時に、とんでもないお人好しでもあるかもしれない。 全ての世界を救おうとして、全ての参加者と手を取り合おうとする。 しかし、そこまで世界は都合良く出来ていない。 そんな甘さに付け込んで、襲いかかる奴など星の数ほどいる。 これでは、自殺するような物だ。 (いや、余計な事は考えるな……この戦いに勝ち残るためだけを、考えろ) 自分にそう言い聞かせるが、耳から離れない。 仮面ライダーはみんなのために戦うヒーローだと。 仮面ライダーは人類の味方であると。 仮面ライダーはみんなの世界を救うために戦わなければならないと。 これは、自分にも向けられた言葉。 翔太郎と亜樹子は、死神である自分を信じている。 そんな思いが、始の中で広がっていた。 (相川さん……あんた、こんな馬鹿な戦いに乗ってるのか?) サイドバッシャーを運転する左翔太郎は、揺れを感じながら考えていた。 自分の事を『ジョーカーの男』と呼ぶ、すぐ隣にいる相川始。 ジョーカーの名を持つ仮面ライダーに変身するから、ジョーカーの男。 素晴らしいセンスだが、呑気な事は言っていられない。 まさか彼は、世界を守るために他者を犠牲にしようとしているのか。 だが、それではいけない。 きっと始の世界に生きる人々も、幸せな毎日を送っているのだろう。 自分だって、風都に住むみんなの為に他人を殺そうと、一時は思った。 だから、始が殺し合いに乗っても、気持ちは理解出来る。 しかし、納得してはいけない。 木場さんはそれを教えてくれたのだから。 (いや、例え誰かを殺そうとしても……俺が止めれば良いだけだ、仮面ライダーとして!) 仮面ライダーは、人類の味方。 誰かが危機に陥ったら、何としてでも助けるみんなのヒーロー。 亜樹子も木場さんも、それを教えてくれた。 ならば二人の思いに、答えなければならない。 今までだって、フィリップや照井と一緒に町を守るヒーローとして戦ってきた。 それと同じように、仮面ライダーとして誰かを守る。 フィリップも、亜樹子も、照井も、霧彦も、始も、始の世界に生きる人達も、木場の世界で生きる人達も、風都で生きるみんなも、こんな戦いに放り込まれた人達も。 みんな、この手で助けてみせる。 今までも、そしてこれからも。 だから始が誰かを殺そうとしても、それを全力で止めてみせる。 そんな思いが、翔太郎の中で広がっていた。 左翔太郎と相川始。 ジョーカーを背負う、二人の男。 人々を守る仮面ライダーとして戦う事を決めた、左翔太郎。 人々を襲う死神として戦う事を決めた、相川始。 自らが選んだ手段は正反対でも、思いは同じだった。 自分が生きる世界を守るために戦う。 そんなジョーカーの男達を乗せながら、サイドバッシャーは走った。 仮面ライダーを待つ、女の思いを叶えるために。 東京タワーへと。 そこに罠が仕掛けられているのを知らずに。 切り札と鬼札は、ただ走った。 彼らが一体、どのような運命を背負うのかは、誰にも分からない。 【1日目 夕方】 【F-5 平原】 【左翔太郎@仮面ライダーW】 【時間軸】本編終了後 【状態】疲労(小)、悲しみと罪悪感、それ以上の決意 【装備】ロストドライバー&ジョーカーメモリ@仮面ライダーW 【道具】支給品一式×2(翔太郎、木場)、翔太郎の不明支給品(0~2)、木場の不明支給品(0~2) 、ゼクトバックル(パンチホッパー)@仮面ライダーカブト、首輪(木場)、サイドバッシャー@仮面ライダー555 【思考・状況】 1:仮面ライダーとして、世界の破壊を止める。 2:出来れば相川始と協力したい。 2:カリス(名前を知らない)を絶対に倒す。 3:フィリップ達と合流し、木場のような仲間を集める。 4:『ファイズの世界』の住民に、木場の死を伝える。(ただし、村上は警戒) 5:ミュージアムの幹部達を警戒。 6:もしも始が殺し合いに乗っているのなら、全力で止める。 7:始と共に東京タワーに急ぐ。 【備考】 ※ 木場のいた世界の仮面ライダー(ファイズ)は悪だと認識しています。 ※ 555の世界について、木場の主観による詳細を知りました。 ※ オルフェノクはドーパントに近いものだと思っています(人類が直接変貌したものだと思っていない)。 ※ ミュージアムの幹部達は、ネクロオーバーとなって蘇ったと推測しています。 ※ また、大ショッカーと財団Xに何らかの繋がりがあると考えています。 ※ ホッパーゼクターにはまだ認められていません。 ※ 東京タワーから発せられた、亜樹子の放送を聞きました。 【相川始@仮面ライダー剣】 【時間軸】本編後半あたり 【状態】疲労(小)、罪悪感、若干の迷い 【装備】ラウズカード(ハートのA~6)@仮面ライダー剣、ラルクのバックル@劇場版仮面ライダー剣 MISSING ACE 【道具】支給品一式、不明支給品×1 【思考・状況】 1:栗原親子のいる世界を破壊させないため、殺し合いに乗る。 2:左翔太郎をこの戦いで利用する……? 3:当面は左翔太郎の前では、カリスに変身しない。 4:東京タワーに向かう。 【備考】 ※ ラウズカードで変身する場合は、全てのラウズカードに制限がかかります。ただし、戦闘時間中に他のラウズカードで変身することは可能です。 ※ 時間内にヒューマンアンデッドに戻らなければならないため、変身制限を知っています。時間を過ぎても変身したままの場合、どうなるかは後の書き手さんにお任せします。 ※ 左翔太郎を『ジョーカーの男』として認識しています。また、翔太郎の雄たけびで木場の名前を知りました。 ※ 東京タワーから発せられた、亜樹子の放送を聞きました。 【全体備考】 ※F-5エリアにある建物は、高級マンション@仮面ライダー555です。 |057:[[仕掛けられたB/響き渡る声]]|投下順|059:[[Round ZERO ~ WORM INVASIVE]]| |057:[[仕掛けられたB/響き渡る声]]|時系列順|059:[[Round ZERO ~ WORM INVASIVE]]| |036:[[二人のジョーカー]]|[[左翔太郎]]|071:[[愚者のF/幕間劇]]| |036:[[二人のジョーカー]]|[[相川始]]|071:[[愚者のF/幕間劇]]| ----

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