「G線上のアリア/リレーション・ウィル・ネバーエンド」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

G線上のアリア/リレーション・ウィル・ネバーエンド」(2018/10/14 (日) 00:36:53) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

*G線上のアリア/リレーション・ウィル・ネバーエンド ◆MiRaiTlHUI  光の速度すらも超越して、ハイパーカブトは時空を翔ける。  最早肉眼でも認識出来る程にタキオンの翼は眩く輝いて、羽撃たく度に時間を追い越して行く。  総司の目の前で繰り広げられる時間軸が、一瞬ごとに巻き戻されていた。とんでもない力だ。  これが天道とカブトの存在を最強たらしめた「ハイパー」の力なのかと認識するが、同時にこの身体に掛かる負荷も尋常ではない事に気付く。  たったの一秒でも時間を遡る度に、強烈な疲労と過負荷が総司の身体を苛んで、すぐにでも意識を喪失してしまいそうになる程だった。  だけれども、名護だって、翔太郎だって、どんな無理にも耐えて、何度も限界を越えて見せたではないか。自分がここで挫けてどうする。 (……だって、僕はもう、仮面ライダーなんだから)  だから、どんな苦痛に道を阻まれようとも、戦って行ける。何度でも立ち上がる事が出来る。  ようやく自分だけに出来る事を見付けて、ようやく自分に出来る事を成そうとしているのだから、苦しいからと言ってやめられる訳がない。  数十秒程の時間を巻き戻し終えた時には、ハイパーカブトの身に蓄積された疲労は、既に耐えがたいものとなっていたが、それでも総司は倒れない。  これが、海堂が名護が翔太郎が示してくれた仮面ライダーの在り方だ。そして仮面ライダーとしての熱い魂がある限り―― 「――僕はまだ、戦えるッ!!!」  裂帛の気迫を込めた叫びと共に、ハイパーカブトはイクサとガドルの間へと飛翔した。  イクサの装甲を砕かんと突き出されたガドルの拳を片手で受け止めると同時、全身から放出され続けていた無尽蔵のタキオンの輝きは漸く収まった。  眼前のガドルが、背後のイクサが、その後ろで見ていた名護が、驚愕する。同時に名護は、先程までそこに居た総司の姿が消え去った事にも驚愕しているようだった。  どうやら時空を越えれば、その時間軸の自分は消滅するらしい。タイムパラドックスの一種だろうが、今はそんな事はどうだっていい。  イクサはまだ立っている。翔太郎はまだ生きている。自分自身の手で仲間一人の命を救う事が出来たなら、この程度の疲労感は屁でもない。  そう自分に言い聞かせる事で、既にこの場で倒れ伏しそうになる程の苦痛を堪え、ハイパーカブトは驚愕するガドルの頬を殴り飛ばした。 「ぬぅ……っ!?」  呻きを漏らすガドル。  効いている。総司の一撃は、確かにガドルに届いている。  先程までとは比べ物にならない程の手応えを感じながら、矢継ぎ早に二度三度とガドルを殴りつけた。  一撃殴られる度後退するガドル。元々傷だらけの身体に、ハイパーカブトによる打撃は堪えるのだろう。が、相手はあの破壊のカリスマ。そう簡単に勝たせてくれる程甘い相手でも無い。  幾度か殴られはしたものの、すぐにハイパーカブトの攻撃を見切ったガドルは、突き出されたハイパーカブトの拳を絡め取って、無理矢理に肉薄する。 「貴様……さっきの仮面ライダーモドキか」 「モドキじゃない。僕は、天の道を継ぐ男――仮面ライダーカブトだ!」 「天の道……? 仮面ライダーカブト、だと……?」 「僕はもう逃げない。ここでお前を倒す! そして、みんな守ってみせる!」  面食らった様子で驚愕するガドルの顔面に、もう片方の拳を叩き込んだ。  堪らず仰け反ったガドルだが、すぐに体勢を立て直し、拳を振り上げ前進して来る。  両者の拳が振り抜かれたのは、全くの同時だった。二人の拳が二人の胸部にブチ当たり、お互いの脚が揺れる。  ハイパークロックアップによる疲労の蓄積した総司の身体にも、連戦で傷付いたガドルの身体にも、お互いの攻撃は堪えた。  続く二撃目は、両者同時に振り上げたハイキックの激突だった。キックとキックが激突して、両者堪らず後方へと吹っ飛ぶ。  ガドルはハイパーカブトよりも僅かに早く起き上がり、ようやく身を起こしたばかりのハイパーカブトへと肉薄。その襟首を掴み上げ、無理矢理に起き上がらせた。 「……どうやら、貴様の事を真の仮面ライダーと認めざるを得ないようだな」  そう言って、ガドルは強靭な右腕を振り上げ、ハイパーカブトの装甲を砕こうと突き出す――が、 「ぐぅっ――!?」  呻き声を上げたのは、ハイパーカブトではなく、ガドルの方だった。  何事かと思うが、すぐに察しが付いた。拳を振り抜く瞬間に、連戦による傷跡が急激に疼き出したのだろう。  総司は知らぬ事だが、その傷跡は、先の戦いでブレイドのファイナルフォームライドによって切り裂かれた大傷。  仮面ライダーブレイドによって与えられた傷が、まるで意思を持っているかのように、このタイミングで疼き出したのだ。  それはまるで、剣崎を殺めてしまった罪をも背負って正義の為に生きて行くと決めた総司の背を、同じく正義の為に戦った剣崎の意思が後押ししてくれているかのようだった。  あの破壊のカリスマがこれだけ大きな隙を見せる事など、今を置いては恐らく他にない。   「ハアッ!!」  今しかないとばかりに突き出されたハイパーカブトの蹴りがガドルの胴に直撃して、ガドルの身体が後方へと吹っ飛んでゆく。  最早、疲弊し切ったガドルにも猶予は残されてはいまい。お互いがお互いに、この戦いこそが本当の意味での決着であるのだと悟ったその時、先に行動を起こしたのはガドルの方だ。  胸元の装飾品を引き千切り、それを巨大な大剣へと変化させるガドル。散々自分達を傷め付け続けてくれた、あの強力無比な剛の剣だ。  どんな装甲をも斬り落とすあの刃の前に、流石に生身では分が悪いかとも思うが、今の総司に逃げるという選択肢などは有り得ない。  ならば、戦うしかない。どんなに不利だと分かっていても――剣崎や海堂、名護や翔太郎がそうしたように。今度は、自分が背後の二人を守るのだ。  眼前のアスファルトに空から降って来た黄金の剣が突き刺さったのは、ハイパーカブトが走り出そうとした直後の事だった。 「これは……っ!」 「今の総司さんなら使いこなせる筈です! 負けないで、総司さん!」  頭上を旋回しながら、黄金の小竜が総司を激励する。  それは、ファンガイアの王に代々受け継がれる、この世で最も強力な剣と謳われた魔剣――ザンバットソードだった。  タツロットから託された黄金の剣を握り締め、アスファルトから引き抜くと同時、剣自体の強大なエネルギーが総司の心を侵食する。だけれども、既に天の道を継ぐ仮面ライダーとして生きるのだと決めた総司の心を蝕む事は、どんな魔剣であっても不可能だ。守りたいものと戦う理由を強く思い描いた総司の心は、ザンバットの呪いをも弾き返した。  びゅん、と音を立てて剣を振り抜いたハイパーカブトは、歩を進め出したガドルに真っ向から向かって行く。  刹那のうちに二人の距離は再びゼロとなった。同時、黄金の魔剣と黒金の大剣が激突し、火花を散らす。  一撃二撃と剣をぶつけ合わせ、僅かに押されたハイパーカブトが、じりじりと後方へと追い詰められてゆく。 「どうした、その程度か? それでこの破壊のカリスマから何を護れるというのだ、仮面ライダー!」  剣戟と共に、ガドルから浴びせられる罵声。  人類の守護者たる仮面ライダーの宿敵でも気取っているつもりなのだろうが、ガドルの都合など総司には関係ない。  例え敵に何を言われようとも、総司は仮面ライダーだ。仮面ライダーを名乗ると決めたのだ。故にもう、そんな言葉に惑わされはしない。どんな逆境でも、総司は仮面ライダーを貫き続ける。そして、そんな総司には、ガドルには無い最高の武器がある。 「総司くん! 剣の腕では相手が上だ! 真っ向からでは勝てないぞ!」 「生真面目に相手なんかすんな! もう一度そいつに、お前のマキシマムドライブをぶつけてやれ!」  後方から聞こえる二人の“仲間”からの応援。  そう、自分は一人で戦っているのではない。掛け替えのない仲間が、どんな時も一緒に戦ってくれているのだ。それはガドルでは決して持ち得ぬ、最高にして最高の武器だ。  ならばこれ以上、仲間が待つ後方へは一歩たりとも進ませる訳には行かない。自分に出来るのは、翔太郎の言うマキシマムドライブで、こいつに一太刀を浴びせる事。  だけれども、この魔剣の使い方など総司は知らない。不自然に巨大な蝙蝠が刀身に噛み付いてはいるが、これをどうすればいいのかも、分からない。 「総司さん! 魔皇力さえあれば、そのザンバットバットで刃を研いで、必殺技を放つ事が出来ますよ!」  魔皇力。それは、キバの鎧を始めとするファンガイア一族に纏わる武装に漲る魔のエネルギーだ。  レイに変身した時に使って、この身体に強烈な負荷をかけてくれたあの魔力……それさえあれば、こいつに一撃を叩き込む事が出来る。  だけれども、ZECTが開発したマスクドライダーに、そのようなエネルギーが運用されている訳もない。魔皇力のチャージアップなど、出来る訳がない。  全く無駄な能力ではないかと、内心でやや憤慨するが――否、ないならないで、いくらだってやりようはある。  今の自分ならば、どんな不可能だって可能に出来る筈だ。根拠は何処にも無いが、それくらいの自信が、今の総司には満ち溢れているのだ。  再び剣をぶつけ合わせ、お互いの剣に伝わる反動を利用して後方へと跳び退いたハイパーカブトは、左腰のハイパーゼクターの角を押し倒した。  ――MAXIMUM RIDER POWER――  通常のマスクドライダーシステムのタキオン粒子とは比べ物にならない程のエネルギーが、ハイパーゼクターから全身へと供給される。  虹色に眩く輝くタキオンのエネルギーは、ハイパーカブトが握り締めたザンバットソードにも伝わり、その刀身をきらきらと煌めかせる。  そして確信する。これならば、行ける、と――! 「マキシマムドライブ……ッ!」  全く規格の異なる二つの武器を掛け合わせての必殺技だ。未だ技名などある筈もないのだから、翔太郎の言葉を借りるしかない。  マキシマムドライブと称し、その起動キーであるザンバットバットで刃を研磨する。それに伴って、透き通る様に美しいザンバットの刃全体にタキオンのエネルギーが充填されてゆく。虹色の光を乱反射させながら輝く刃は、ザンバットソードを夜空に煌めくどんな星よりも眩く美しい魔剣たらしめた。  光輝く虹の剣を振り上げたハイパーカブトは、一足跳びにガドルの懐へと飛び込んだ。  当然迎撃しようと大剣を振り下ろすガドルだが、ハイパーカブトはそれを真正面から受け止めんばかりの勢いで以て、左脇腹の位置で構えた剣を思い切り振り抜いた。   「――ハアアアアアッ!!!」  強いて名付けるとするならば、ハイパーザンバット斬、といったところだろうか。  それは、魔皇力を研ぎ澄まして放たれるファンガイアの王の力を、膨大なタキオン粒子で代用した一撃だった。  お互いの刃と刃は激突し――次の瞬間には、光輝く虹色の刃が鈍い黒金の大剣を斬り裂き、ガドルの身体をも薙ぎ払っていた。  ガドル自身も寸での所で身をよじらせ、ハイパーザンバット斬の直撃だけは防いだが、それでもこの一撃の威力は絶大。堪らず吹っ飛んだガドルは、数歩よろけた後――ハイパーカブトがザンバットバットで再び刃を研磨し光を収めると同時、がくりと崩れ膝をついた。 「さあ、決着を付けよう、ガドル――!」 「……ッ、望む、所だ……!」  ザンバットソードを頭上で一回転、ぶんと振り回したハイパーカブトは、勢いそのままにザンバットの切先をアスファルトへと突き刺した。どすん! と音を響かせて、ザンバットの刃が深くアスファルトに減り込む。  魔剣を手放したハイパーカブトと相対するガドルもまた、数歩後退し、距離を十分に取った。  ガドルの脚に、稲妻が宿る。今までの比ではない程の気迫が、ガドルの全身から滲み出ている。  恐らくはあれが、ガドルの持てる最強にして最高の必殺技なのだろう。武人を語る戦闘狂の自己満足に付き合ってやる義理はないが、それでも相手はあの破壊のカリスマ。此方も最高威力の必殺技で迎え討たねば、きっと勝利は掴めない。  もう一度左腰へと手を伸ばしたハイパーカブトは、勢いよく、銀のカブトムシの角を押し倒した。  ――MAXIMUM RIDER POWER――  二度目のマキシマムライダーパワー。  今度は総司の全身全霊を掛けた一撃をガドルにぶつけよう。  そして、このうんざりする程の因縁にも決着を付けてみせる。  海堂の仇を、ダークカブトゼクターの仇を、今此処で、この手で取るのだ。  そしてこれからも総司は、名護と翔太郎と共に戦い続ける。これはその為の第一歩だ。  ハイパーカブトが脚を踏み出すと同時、体中を駆け抜けるタキオン粒子を放熱させる為か、全身のカブテクターが展開を開始した。  全ての装甲が変型を追える前に、ハイパーカブトはバックルに装着されたカブトゼクターのボタンを三度押し込む。  ――ONE TWO THREE―― 「ハイパーキックッ!!!」  ――RIDER KICK――  カブトの仮面の下で絶叫する総司と一緒に、カブトゼクターの電子音声がその技名を告げる。  それは、かの天道総司が最も信頼を寄せていたと思われる、仮面ライダーのみに許された究極の必殺技だった。  総司は知っている。その一撃は、ライダーキックは、どんな悪をも蹴り砕く正義の一撃。それは、こんな所でガドルに砕かれる程柔な技では無い。  カブトの右脚に、タキオンによる竜巻がさながら暴風雨のように発生する。向かい合うガドルの両足の稲妻も、一歩蹴り出す毎にその輝きを増してゆく。  ガドルが跳んだ。激しい錐揉み回転を加え、雷撃を撒き散らしながら、ガドルが急迫する。ほぼ同時、完全に変形を終えたハイパーカブトの光の翼が羽撃たいて、カブトの身体をガドルと同じ高度にまで跳び上がらせる。 「ハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」  絶叫と共に繰り出す、必殺のハイパーライダーキック。  天道総司が生涯そうしたように……天の道を往く者の誇りを胸に、全力を持って繰り出す一撃だ。  例え相手がどんなに強大な悪であろうと、この一撃を止められるものは世界中の何処にも居ないと、総司は確信していた。  今は亡きダークカブトゼクターが、剣崎が海堂が天道が、そして総司の勝利を信じて待つ名護と翔太郎――みんなの想いが総司を後押ししてくれる。  未来への希望に光輝く光の翼を広げ、虹の流星となったハイパーカブトが闇夜を翔ける。雷雲のように稲妻を撒き散らすガドルもまた、一直線にハイパーカブトを砕かんと急迫する。  ――刹那、全力全開で以て繰り出された二人の必殺技が、お互いの胸部に炸裂した。  竜巻を纏ったカブトの蹴りがガドルの胸部を抉り、稲妻を纏ったガドルの蹴りがカブトの胸部を砕いた。  互いが互いに叩き込んだ膨大な量のエネルギーは行き場を失って暴発し、両者の間に大爆発を引き起こすが、爆発よりも眩く輝くのはそのエネルギーだ。  ガドルが撒き散らした稲妻とハイパーカブトが放出した虹の輝きは、何よりも眩く、何よりも暴力的で、そして何よりも美しかった。  眩し過ぎる輝きは最早視界のあらゆるものを掻き消す白にしか見えない。閃光は総司の視界だけでなく、その場の全員の視界を覆い尽くした。 ◆  ――両者の激突の末、先に起き上がったのは、ゴ・ガドル・バの方だった。  未だ怪人態の姿のままではあるが、恐らくはこの変身もそう長く持たないだろう。変身制限によるものではなく、純粋な体力切れによって、だ。自分の身体の事は自分が一番良く解っていた。が、まだその時ではない。この激闘の末に、どちらが勝利したのかを見極めぬ限り、ガドルに安息は無かった。  仮にハイパーカブトが未だ顕在で、まだ戦えるというのなら――既に体力の限界を迎えたガドルに、勝ち目はないだろうという事もわかる。  だけれども、もしもハイパーカブトが既に散っているというのなら、その時は、この破壊のカリスマの勝利だ。  また一人、強き仮面ライダーを討ち取る事が出来たのだと、ガドルの名にも更なる箔が付くというもの。  周囲を見渡し、ハイパーカブトの姿を探し求め――そして、見付けた。  ガドルからは遠く離れた位置で、地を踏み締め、両の脚でしっかりと立つハイパーカブトの姿を。 「む……貴様」  しかし。  ガドルが一歩踏み出すと同時、ハイパーカブトの身体が揺れた。  まるで風に煽られるように、ふらっと傾き――その身体から、銀の装甲が剥がれ落ちた。重力に引かれて崩れ落ちる姿勢を、奴の仲間の名護啓介が、そっと受け止めた。  天道総司を名乗ったあの男は、意識を失っても尚、倒れる事無くその場に立ち続けていたのだろう。  思えばあの男、数時間前に戦った「天道総司」とは、変身前だけでなく、変身後の姿までもが酷似していた。あの男が変身していたカブトに総司が変身したという事は、恐らくはもう、あの男はこの世には居ないのだろう。  もう奴との戦いに決着を付ける日が来る事はないのか、と僅かに悲観するが、あの時天道が変身したカブトとの戦いで付けられなかった決着を、今ここで、天道総司を継いだ男が変身するカブトとの決戦によって付ける事が出来たのだと思えば、自ずと気分も晴れる気がした。  少し前までは仮面ライダーの名を語る紛い物でしかなかった総司が、今では随分と変わったものだと思う。今の奴には、助けてくれる仲間が居る。だから弱かった筈のあの男は、海堂直也と同じように、此処まで強く成長する事が出来たのだろう。  奴の振る舞いを内心でずっと否定して来たガドルだが、今では素直に認められる。翔太郎の言う通り、奴はもう、立派な仮面ライダーだ。それを侮辱するものが居るとするなら、今度は自分が、そいつを黙らせよう。  正義の仮面ライダーとなった総司は、確かにこの破壊のカリスマを此処まで追い詰めたのだ。倒すには至らなかったとはいえ、それは誇りに思っていい。   「……ッ!?」  ――否。そこで、自分の考えを否定する。  奴に蹴られた胸部に、ガドルは強烈なまでの違和感を感じたのだ。  その違和感はガドルの全身に張り巡らされた神経組織を伝って、体中へと伝播してゆく。痛みと苦痛が、ガドルの身体を今にも引き裂かんと、体内で蠢いているかのようだった。 「……そうか」  此処へ来て、ようやくガドルは気付いた。一歩及ばなかったのは、どうやら総司の方ではないらしい。  ハイパーカブトに蹴られた胸部から、大量のタキオン粒子が、この身体には叩き込まれているのだという事実に、ガドルはようやっと気が付いたのだ。  そして、それが何を意味するのかもガドルには分かる。クウガによって封印のエネルギーを叩き込まれたグロンギは、やがて体内からエネルギーに破壊され、やがてベルトを砕かれ爆死する。それと全く同じ原理だ。カブトによって叩き込まれたエネルギーが、今にもこの身を砕こうと体内で暴れ出しているのだ。  これで一瞬でも自分が勝利したと思い込むなど、片腹が痛い。本当の勝者は自分ではないではないか。自分は、負けたのではないか。 「ゴセロ、ボボラゼバ(俺も、ここまでか)」  体内で光輝くタキオン粒子の光が、蹴られた胸部から薄く漏れ出していた。  この光がゲドルードに仕込まれた爆弾に到達した時、ガドルの五体は吹き飛ぶのだろう。そうなれば、この周囲は全て火の海となって、何もかもが消えてなくなる。  グロンギ族というのは、それ程までに危険な爆弾を抱えてゲゲルに挑む野蛮な民族だ。死を背負って戦い、最強の「ン」へと到達する為に己を研磨し続ける、それがガドルの生きる理由だ。  だから「ン」に辿り着くまで、ガドルが負ける事は許されなかった。負けた時は、周囲の全てを焼き尽くす程の威力を持った爆弾が、この身を焼滅させるのだから。  それを理解しているからこそ、自分の死期が近づいている事も分かる。自分はここで終わりなのだと思えば、悔しくて悔しくて堪らないが――それでも、不快ではない。  ガドルは最後に、このゴ集団最強の戦士をも打ち倒す強者――仮面ライダーと、全身全霊を掛けて戦う事が出来たのだ。自分は確かに全力を出し尽くした。それでも負けたのなら、それは自分の完全敗北だ。それを悔やんで相手を咎めるような無様を、ガドルはしない。強者には強者への、勝者には勝者への礼儀を以て接するのが、ガドルの流儀。  だが、奴らがこのゴ・ガドル・バに打ち勝ったというなら、次に奴らが戦うべき相手は、グロンギのルールに乗っ取るならば、「ン」だ。奴らはザギバスゲゲルに最も近かったガドルを下したのだから。  なれば、ゲドルードの爆発などという下らない理由で奴らが死んでしまうのは、絶対に許されない。このガドルに勝利した奴らが、ダグバにも届かずに終わってしまうのは、我慢がならなかった。  痛む胸を押さえながら、最後の力を振り絞って、ガドルにはやらねばならぬ事がある。   「仮面ライダーよ……良き戦いだった。この勝負、貴様らの勝ちだ」    そう言って、目の前で総司に肩を貸す二人の仮面ライダーを呼び止める。   「俺の命は、もうそう長くは持たん。俺が死に至る時、ベルトの爆弾が起爆する。  そうなれば、お前達諸共この一帯の全てを吹き飛ばす事になるだろう」 「何……っ!?」  名護と翔太郎が息を飲む音が、ガドルにまで聞こえた気がした。  無理もない。やっとの思いで勝ったと思ったら、次に爆発に巻き込まれると聞かされたのだから。  だが、と続けて、ガドルは自分のデイバッグを名護の足元へと放り投げた。   「俺に勝った貴様らが、そんな下らん理由で散る事だけは我慢ならん。  そこの鉄馬を駆り、今すぐにここを離れろ。そして、更なる強者と戦い、もっと強くなれ」  そして、その先に待つダグバと戦うがいい。言外にそう告げながら、ガドルは自分が乗って来たカブトエクステンダーを指差した。  勝者には敗者の全てを手に入れ、先へと進む義務がある。そしてその先の更なる強者と戦って、己の無力を思い知るか、それとも更なる強者にも打ち勝つのか、それはガドルにも分からない。  だけれども、奴らはこのガドルをも乗り越えて先へと進むのだから――負けて欲しくはない。柄にもなく、ガドルはそう思っていた。 「あんたは許せねえ野郎だったが……俺はあんたみたいな熱い漢、嫌いじゃないぜ。あんたがこんな殺し合いに乗ってさえなければ……」 「私もガドルさんの事は嫌いではありませんでした! 最初に出会った者同士のよしみもありますし、出来る事なら、ガドルさんにも強き仮面ライダーとして――」 「――俺はリントを護らんとする仮面ライダーの敵。そして俺はただ、強者には強者に見合った振る舞いをするのみ。そんな下らない話をするのはよせ」  翔太郎に続くタツロットのやかましい台詞を、ガドルは聞く耳持たぬとばかりに遮った。  ガドルにはガドルの矜持がある。己の分を弁え、その上で己を鍛え抜く事しか考えぬガドルにとって、そんな「もしも」の話には何の意味も無い。  そもそも、ガドルはこんなにも強い仮面ライダーの敵である事に誇りすら抱いていた。それを否定するような話をするのは、不愉快だった。  タツロットよりも早くガドルの意思を汲み取ってくれたのだろう翔太郎は、片手でタツロットを制し、言った。 「……ああ、そうだな。忘れてくれ」  片手でハットを押さえ、やや深く被り直しながら告げる翔太郎の声音が少しだけ寂しそうに聞こえたのは、きっと気のせいではないのだろう。  そういえばこの男も、数時間前にガドルとは一度戦ったなと思い出す。あの時は取るに足らない存在で、変身制限で命を永らえたようなものだったというのに……左翔太郎も、随分と強くなった。  あの名護啓介も、数時間前の戦いではこのガドルの足元にも及ばなかった。だけれども、奴らは互いに助け合い何処までも強くなった。正義の心で何度でも立ち上がり、最後にはこのガドルすらも越えた。  たった数時間の出会いではあったが、彼ら三人との戦いが、ガドルには随分と長い戦いだったように思えてならなかった。  そんな三人だからこそ、奴らはこのガドルの意思をも糧として、生き続けなければならないという義務がある。  元来二人乗りが限度のあのバイクに、三人で乗るのはちとキツいだろうが、それしか方法がないのなら、ガドルはその方法を提示するのみだ。本当なら、強者には強者に相応しい待遇があっても何ら可笑しくはないとは思うのだが。  やがてガドルのデイバッグを拾い上げた名護は、ガドルの思惑通りにカブトエクステンダーへと歩み寄り、ガドルを一瞥した。 「本当にいいのか」 「勝者には、敗者の全てを糧として生きる義務がある。  貴様らはこの破壊のカリスマを下し、生きる権利を掴み取ったのだ。誇りに思え」 「下らないな……実に下らない。だが、お前の気持ちは分かった。このバイクは有り難く受け取ろう」 「それでいい」  何ともないように会話を交わすが、そろそろ限界が近い。ガドル自身にも、それは分かっていた。  爆発までのタイムリミットは、持ってあと一、二分程度、と言ったところか。離脱するならば、今すぐでなければ間に合わない。  今にも身体を突き破られそうな痛みに耐えるガドルの容態の変化に気付いたのだろう、名護はもうそれ以上は言わずに、カブトエクステンダーに跨った。  翔太郎がその後ろに総司を乗せ、更にその後ろに無理矢理跨り、総司の身体が振り落とされぬようにと、総司の身体を両腕でしっかり支える。  が、最後にもう一つだけ、伝えるべき事があるのだと思い出したガドルは、エンジン音を轟かせ、バイクを急転回させ今にも走り出さんとする名護を呼び止めた。 「待て、強き仮面ライダーよ。最後にもう一つだけ、貴様らに伝えておく事がある」 「……何だ?」 「あの仮面ライダー……海堂直也の攻撃は、この破壊のカリスマにも確かに届いていた。  あの戦いに勝利していたのは、本来なら俺では無い。僅かに命が持たなかったが……それでも真の勝者は、海堂直也だった」 「なに……!?」  そう。このゴ・ガドル・バを敗北させた始めての仮面ライダーの名は、海堂直也だ。  あの男も、名護や翔太郎、総司と同じように、仲間を守る正義の心とやらで、何処までも強くなった。そして、このガドルをも打ち倒した、筈だった。  惜しむらくは、奴の命があと一歩の所で持たなかった事。もしも海堂があと一秒でも長く生きていたなら、ガドルはあの時、既に敗北し死んでいたのだ。  それが、ガドルのみが知る戦いの結末。誰にも知られる事無く散った勇敢な戦士の、本当の最期。奴もまた真の戦士となってこのガドルを討ち取ったというのに、それを語り継ぐ者が誰も居なくなってしまうというのは寂寥に過ぎる。  だからこの事実だけは、海堂直也を受け継いだ名護達には知っていて欲しかった。  ガドルから事実を聞いた名護啓介は、やがてふっと微笑んだ。 「そうか……直也くんは、最期まで正義を貫く事が出来たんだな」 「ああ。奴も貴様らと同じ、強き仮面ライダーだった。決して忘れてやるな、あの男の事を」 「そんな事は言われるまでもない。直也君の正義は、確かに俺達が受け継いだんからな」  その言葉が聞けたお陰で、ガドルにはもう、想い残すものは何もなかった。  もう時間がない。タキオンの輝きは胸部から神経を伝って、既に随分と腹部のゲドルードへと接近していた。  最後に勝者を見送って、それで一人で逝こうと、そう決めたガドルは、最後に残った力で叫んだ。 「もう行け……そして二度と振り向くな! 前を向いて進め、強き仮面ライダーよ!」  ガドルの絶叫を最後に、強く頷いた名護は、そのままカブトエクステンダーを駆り、何処かへと走り去って行った。  最後の最後で全力を出し尽くして戦い、そしてこのゴ集団最強の武人を打ち倒した戦士を見送って死ぬ事が出来るのだから、もうこれ以上を望みはしない。  きっと奴らはこの先、このゴ・ガドル・バよりもずっと恐ろしい敵と出会い、その度絶望の淵に立たされるだろうが……それでも奴らはきっと、諦めはしないだろう。  何せ奴らは、守りたいものがある限り、仲間がいる限り、何処までだって強くなる強き戦士――仮面ライダーなのだから。  今のままでは「ン」には届かないだろうが、それでも奴らなら、いつかはダグバすらも越える日が来るのだろう。  そんな日が来る事を夢想しながら、ガドルは自分の身が爆発してゆく音を聞いた。  腹部のゲドルードに到達したタキオン粒子が爆弾を起爆させ、ガドルを中心に、周囲の全てを焼き尽くさんと燃え広がる。ガドルを中心に発生した爆発は、何者の生存をも許さぬ炎の柱となって、遥か上空の雲を突き破り、天を貫いた。  ガドルの命の炎とも云える爆炎は、月の光すらも朧げだった闇夜など容易く掻き消して、まるで太陽の輝きの如き光量で世界を眩く照らし出した。  破壊のカリスマゴ・ガドル・バは、最早一片の悔いも肉片すらも残さず、この世から焼滅したのだった。   &color(red){【ゴ・ガドル・バ@仮面ライダークウガ 死亡確認】} &color(red){ 残り33人}     【1日目 夜中】 【?-? ???】   【名護啓介@仮面ライダーキバ】 【時間軸】本編終了後 【状態】疲労(大)、ダメージ(大)、総司が正義に目覚めた事と海堂が最期まで正義を貫いていたという事実への喜び、仮面ライダーイクサに1時間45分変身不可 【装備】ガイアメモリ(スイーツ)@仮面ライダーW、 【道具】支給品一式×2(名護、ガドル)、ガイアメモリ(メタル)@仮面ライダーW、カブトエクステンダー@仮面ライダーカブト 【思考・状況】 基本行動方針:悪魔の集団 大ショッカー……その命、神に返しなさい! 0:この場所から離脱する 1:直也君の正義は絶対に忘れてはならない。 2:総司君と共に、津上翔一、城戸真司、小沢澄子を見つけ出し、伝言を伝える。 3:総司君のコーチになる。 4:首輪を解除するため、『ガイアメモリのある世界』の人間と接触する。 【備考】 ※時間軸的にもライジングイクサに変身できますが、変身中は消費時間が倍になります。 ※『Wの世界』の人間が首輪の解除方法を知っているかもしれないと勘違いしています。 ※海堂直也の犠牲に、深い罪悪感を覚えると同時に、海堂の強い正義感に複雑な感情を抱いています。 ※剣崎一真を殺したのは擬態天道だと知りました。 ※天道総司から制限について詳細を聞いているかは後続の書き手さんにお任せします。 【左翔太郎@仮面ライダーW】 【時間軸】本編終了後 【状態】ダメージ(極大)、疲労(大)、とても強い決意、強い悲しみと罪悪感、仮面ライダージョーカーに55分変身不可、仮面ライダーイクサに1時間50分変身不可 【装備】ロストドライバー&ジョーカーメモリ@仮面ライダーW、イクサナックル(ver.XI)@仮面ライダーキバ 【道具】支給品一式×2(翔太郎、木場)、トライアルメモリ@仮面ライダーW、木場の不明支給品(0~2) 、ゼクトバックル(パンチホッパー)@仮面ライダーカブト、首輪(木場) 【思考・状況】 基本行動方針:仮面ライダーとして、世界の破壊を止める。 0:この場所から離脱する。 1:名護と総司と共に戦う。 2:出来れば相川始と協力したい。 3:カリス(名前を知らない)、浅倉(名前を知らない)、ダグバ(名前を知らない)を絶対に倒す。 4:フィリップ達と合流し、木場のような仲間を集める。 5:『ファイズの世界』の住民に、木場の死を伝える。(ただし、村上は警戒) 6:ミュージアムの幹部達を警戒。 7:もしも始が殺し合いに乗っているのなら、全力で止める。 8:もし、照井からアクセルを受け継いだ者がいるなら、特訓してトライアルのマキシマムを使えるようにさせる。 9:総司(擬態天道)と天道の関係が少しだけ気がかり。 【備考】 ※木場のいた世界の仮面ライダー(ファイズ)は悪だと認識しています。 ※555の世界について、木場の主観による詳細を知りました。 ※オルフェノクはドーパントに近いものだと思っています(人類が直接変貌したものだと思っていない)。 ※ミュージアムの幹部達は、ネクロオーバーとなって蘇ったと推測しています。 ※また、大ショッカーと財団Xに何らかの繋がりがあると考えています。 ※ホッパーゼクターに認められていません(なおホッパーゼクターは、おそらくダグバ戦を見てはいません)。 ※東京タワーから発せられた、亜樹子の放送を聞きました。   【擬態天道総司(ダークカブト)@仮面ライダーカブト】 【時間軸】第47話 カブトとの戦闘前(三島に自分の真実を聞いてはいません) 【状態】疲労(極大)、ダメージ(大)、仮面ライダーダークカブトに1時間40分変身不可、ワーム態に1時間42分変身不可、仮面ライダーレイに1時間45分変身不可、仮面ライダーカブトに1時間50分変身不可 【装備】ライダーベルト(ダークカブト)+カブトゼクター@仮面ライダーカブト、ハイパーゼクター@仮面ライダーカブト、レイキバット@劇場版 仮面ライダーキバ 魔界城の王 【道具】支給品一式×2、ネガタロスの不明支給品×1(変身道具ではない)、デンオウベルト+ライダーパス@仮面ライダー電王、753Tシャツセット@仮面ライダーキバ、ザンバットソード(ザンバットバット付属)@仮面ライダーキバ、魔皇龍タツロット@仮面ライダーキバ 【思考・状況】 基本行動方針:天の道を継ぎ、正義の仮面ライダーとして生きる。 0:気絶中。 1:剣崎と海堂、天道の分まで生きる。 2:名護に対する自身の執着への疑問。 【備考】 ※天の道を継ぎ、総てを司る男として生きる為、天道総司の名を借りるて戦って行くつもりです。 ※参戦時期ではまだ自分がワームだと認識していませんが、名簿の名前を見て『自分がワームにされた人間』だったことを思い出しました。詳しい過去は覚えていません。 ※カブトゼクターとハイパーゼクターに天道総司を継ぐ所有者として認められました。 ※タツロットはザンバットソードを収納しています。 【全体備考】 ※E-1 市街地エリアで大規模な爆発が発生しました。空に向かって火柱が発生しているので、広い範囲で観測可能なものと思われます。 ※イクサシステムはオーバーヒートを起こしました。変身者に関わらず、四時間の間イクサは使用出来ません。 ※三人を乗せたカブトエクステンダーが今何処に居るのか、どの方角に進んでいるのかは後続の書き手さんにお任せします。    大地が揺れて、彼方から熱風が吹き付ける。  大規模な爆発は、天に向かって極大の火柱を発生させながら、周囲の全てを焼き払った。  かなりの規模の爆発だ。恐らくはエリア一つ分以上は離れているのであろうこの地区からでも、その光は容易に観測出来た。  グロンギ最強の王ン・ダグバ・ゼバは、燃え盛る炎を無邪気な瞳で見上げながら、ぽつりと呟いた。 「そっか……死んじゃったんだね、ガドル」  それがあの男の、ゴ・ガドル・バの死による爆発だという事は一目で分かる。  以前、クウガがガドルを打ち倒した時にも、これと全く同じ爆発を見た覚えがあったからだ。  否、どうでもいい事であるが故にうろ覚えではあるが、今の爆発は寧ろ、あの時よりもやや抑えられている気がしないでもない。大ショッカーによる何らかの制限だろうか……と、そこまで考えたダグバであるが、そんな取り留めの無い思考を働かせるのは時間の無駄でしかない事に気付く。  そもそもダグバは、自分よりも強い者にしか興味がない。負けた者には生きている価値などないし、負けた者がどんな死に方をしたかなんてもっとどうでもいい。だからダグバは、ガドルの爆発がどの程度の規模だったかも、正確にはうろ覚えなのだ。  今何よりも重要なのは、この場所で、かつてよりもさらに強くなった筈のガドルをも打ち倒す強者が、すぐ近くに居るという事。  それを考えた時、ダグバは自分の身が自然と震えるのを感じた。  武者震い、という奴だろうか。それとも、テラーによって植え付けられた恐怖心だろうか……と考えるが、まあ、どうでも良い事かと、ダグバはそれについて考える事すらも放棄した。 「ふふ、まだまだ僕を楽しませてくれそうだね」  白い悪魔ン・ダグバ・ゼバは、まるで無邪気な子供のように笑った。  あのガドルをも死に追いやる強者が居るという事実に興奮するダグバを煽るように、ガドルの死が齎した熱風は暖かく吹き付けていた。         【1日目 夜中】 【E-2 市街地跡地】 【ン・ダグバ・ゼバ@仮面ライダークウガ】 【時間軸】第46話終了後以降 【状態】ダメージ(小)、ガドルを殺した強者への期待、怪人態及びリュウガに1時間変身不可 【装備】ガイアドライバー@仮面ライダーW、モモタロスォード@仮面ライダー電王 、ブレイバックル@仮面ライダー剣、ラウズカード(スペードA~6.9)@仮面ライダー剣 【道具】支給品一式×3、不明支給品×1(東條から見て武器ではない)、音也の不明支給品×2、バギブソン@仮面ライダークウガ、ダグバのベルトの欠片@仮面ライダークウガ、ラウズアブゾーバー@仮面ライダー剣 【思考・状況】 基本行動方針:もっと強い相手と戦い、恐怖を味わって楽しみたい。 0:ガドルが死んじゃったか……。 1:もう一人のクウガとの戦いをまた楽しみたい。 2:ガドルを倒したリントの戦士達が恐怖を齎してくれる事に期待。 3:新たなる力が楽しめるようになるまで待つ。 4:余裕があれば残りのスペードのカードも集めてみる。 【備考】 ※ガイアドライバーを使って変身しているため、メモリの副作用がありません。 ※制限によって、超自然発火能力の範囲が狭くなっています。 ※変身時間の制限をある程度把握しました。 ※音也の支給品を回収しました。 ※東條の不明支給品の一つはラウズアブゾーバー@仮面ライダー剣でした。 |102:[[G線上のアリア/インヘリテッド・ハイパーシステム]]|投下順|103:[[闇を齎す王の剣(1)]]| |~|時系列順|105:[[やがて訪れる始まりへ]]| |~|[[ゴ・ガドル・バ]]|&color(red){GAME OVER}| |~|[[擬態天道]]|104:[[それぞれの道行(1)]]| |~|[[名護啓介]]|104:[[それぞれの道行(1)]]| |~|[[左翔太郎]]|104:[[それぞれの道行(1)]]| |~|[[ン・ダグバ・ゼバ]]|103:[[闇を齎す王の剣(1)]]| ----
*G線上のアリア/リレーション・ウィル・ネバーエンド ◆MiRaiTlHUI  光の速度すらも超越して、ハイパーカブトは時空を翔ける。  最早肉眼でも認識出来る程にタキオンの翼は眩く輝いて、羽撃たく度に時間を追い越して行く。  総司の目の前で繰り広げられる時間軸が、一瞬ごとに巻き戻されていた。とんでもない力だ。  これが天道とカブトの存在を最強たらしめた「ハイパー」の力なのかと認識するが、同時にこの身体に掛かる負荷も尋常ではない事に気付く。  たったの一秒でも時間を遡る度に、強烈な疲労と過負荷が総司の身体を苛んで、すぐにでも意識を喪失してしまいそうになる程だった。  だけれども、名護だって、翔太郎だって、どんな無理にも耐えて、何度も限界を越えて見せたではないか。自分がここで挫けてどうする。 (……だって、僕はもう、仮面ライダーなんだから)  だから、どんな苦痛に道を阻まれようとも、戦って行ける。何度でも立ち上がる事が出来る。  ようやく自分だけに出来る事を見付けて、ようやく自分に出来る事を成そうとしているのだから、苦しいからと言ってやめられる訳がない。  数十秒程の時間を巻き戻し終えた時には、ハイパーカブトの身に蓄積された疲労は、既に耐えがたいものとなっていたが、それでも総司は倒れない。  これが、海堂が名護が翔太郎が示してくれた仮面ライダーの在り方だ。そして仮面ライダーとしての熱い魂がある限り―― 「――僕はまだ、戦えるッ!!!」  裂帛の気迫を込めた叫びと共に、ハイパーカブトはイクサとガドルの間へと飛翔した。  イクサの装甲を砕かんと突き出されたガドルの拳を片手で受け止めると同時、全身から放出され続けていた無尽蔵のタキオンの輝きは漸く収まった。  眼前のガドルが、背後のイクサが、その後ろで見ていた名護が、驚愕する。同時に名護は、先程までそこに居た総司の姿が消え去った事にも驚愕しているようだった。  どうやら時空を越えれば、その時間軸の自分は消滅するらしい。タイムパラドックスの一種だろうが、今はそんな事はどうだっていい。  イクサはまだ立っている。翔太郎はまだ生きている。自分自身の手で仲間一人の命を救う事が出来たなら、この程度の疲労感は屁でもない。  そう自分に言い聞かせる事で、既にこの場で倒れ伏しそうになる程の苦痛を堪え、ハイパーカブトは驚愕するガドルの頬を殴り飛ばした。 「ぬぅ……っ!?」  呻きを漏らすガドル。  効いている。総司の一撃は、確かにガドルに届いている。  先程までとは比べ物にならない程の手応えを感じながら、矢継ぎ早に二度三度とガドルを殴りつけた。  一撃殴られる度後退するガドル。元々傷だらけの身体に、ハイパーカブトによる打撃は堪えるのだろう。が、相手はあの破壊のカリスマ。そう簡単に勝たせてくれる程甘い相手でも無い。  幾度か殴られはしたものの、すぐにハイパーカブトの攻撃を見切ったガドルは、突き出されたハイパーカブトの拳を絡め取って、無理矢理に肉薄する。 「貴様……さっきの仮面ライダーモドキか」 「モドキじゃない。僕は、天の道を継ぐ男――仮面ライダーカブトだ!」 「天の道……? 仮面ライダーカブト、だと……?」 「僕はもう逃げない。ここでお前を倒す! そして、みんな守ってみせる!」  面食らった様子で驚愕するガドルの顔面に、もう片方の拳を叩き込んだ。  堪らず仰け反ったガドルだが、すぐに体勢を立て直し、拳を振り上げ前進して来る。  両者の拳が振り抜かれたのは、全くの同時だった。二人の拳が二人の胸部にブチ当たり、お互いの脚が揺れる。  ハイパークロックアップによる疲労の蓄積した総司の身体にも、連戦で傷付いたガドルの身体にも、お互いの攻撃は堪えた。  続く二撃目は、両者同時に振り上げたハイキックの激突だった。キックとキックが激突して、両者堪らず後方へと吹っ飛ぶ。  ガドルはハイパーカブトよりも僅かに早く起き上がり、ようやく身を起こしたばかりのハイパーカブトへと肉薄。その襟首を掴み上げ、無理矢理に起き上がらせた。 「……どうやら、貴様の事を真の仮面ライダーと認めざるを得ないようだな」  そう言って、ガドルは強靭な右腕を振り上げ、ハイパーカブトの装甲を砕こうと突き出す――が、 「ぐぅっ――!?」  呻き声を上げたのは、ハイパーカブトではなく、ガドルの方だった。  何事かと思うが、すぐに察しが付いた。拳を振り抜く瞬間に、連戦による傷跡が急激に疼き出したのだろう。  総司は知らぬ事だが、その傷跡は、先の戦いでブレイドのファイナルフォームライドによって切り裂かれた大傷。  仮面ライダーブレイドによって与えられた傷が、まるで意思を持っているかのように、このタイミングで疼き出したのだ。  それはまるで、剣崎を殺めてしまった罪をも背負って正義の為に生きて行くと決めた総司の背を、同じく正義の為に戦った剣崎の意思が後押ししてくれているかのようだった。  あの破壊のカリスマがこれだけ大きな隙を見せる事など、今を置いては恐らく他にない。   「ハアッ!!」  今しかないとばかりに突き出されたハイパーカブトの蹴りがガドルの胴に直撃して、ガドルの身体が後方へと吹っ飛んでゆく。  最早、疲弊し切ったガドルにも猶予は残されてはいまい。お互いがお互いに、この戦いこそが本当の意味での決着であるのだと悟ったその時、先に行動を起こしたのはガドルの方だ。  胸元の装飾品を引き千切り、それを巨大な大剣へと変化させるガドル。散々自分達を傷め付け続けてくれた、あの強力無比な剛の剣だ。  どんな装甲をも斬り落とすあの刃の前に、流石に武器無しでは分が悪いかとも思うが、今の総司に逃げるという選択肢などは有り得ない。  ならば、戦うしかない。どんなに不利だと分かっていても――剣崎や海堂、名護や翔太郎がそうしたように。今度は、自分が背後の二人を守るのだ。  眼前のアスファルトに空から降って来た黄金の剣が突き刺さったのは、ハイパーカブトが走り出そうとした直後の事だった。 「これは……っ!」 「今の総司さんなら使いこなせる筈です! 負けないで、総司さん!」  頭上を旋回しながら、黄金の小竜が総司を激励する。  それは、ファンガイアの王に代々受け継がれる、この世で最も強力な剣と謳われた魔剣――ザンバットソードだった。  タツロットから託された黄金の剣を握り締め、アスファルトから引き抜くと同時、剣自体の強大なエネルギーが総司の心を侵食する。だけれども、既に天の道を継ぐ仮面ライダーとして生きるのだと決めた総司の心を蝕む事は、どんな魔剣であっても不可能だ。守りたいものと戦う理由を強く思い描いた総司の心は、ザンバットの呪いをも弾き返した。  びゅん、と音を立てて剣を振り抜いたハイパーカブトは、歩を進め出したガドルに真っ向から向かって行く。  刹那のうちに二人の距離は再びゼロとなった。同時、黄金の魔剣と黒金の大剣が激突し、火花を散らす。  一撃二撃と剣をぶつけ合わせ、僅かに押されたハイパーカブトが、じりじりと後方へと追い詰められてゆく。 「どうした、その程度か? それでこの破壊のカリスマから何を護れるというのだ、仮面ライダー!」  剣戟と共に、ガドルから浴びせられる罵声。  人類の守護者たる仮面ライダーの宿敵でも気取っているつもりなのだろうが、ガドルの都合など総司には関係ない。  例え敵に何を言われようとも、総司は仮面ライダーだ。仮面ライダーを名乗ると決めたのだ。故にもう、そんな言葉に惑わされはしない。どんな逆境でも、総司は仮面ライダーを貫き続ける。そして、そんな総司には、ガドルには無い最高の武器がある。 「総司くん! 剣の腕では相手が上だ! 真っ向からでは勝てないぞ!」 「生真面目に相手なんかすんな! もう一度そいつに、お前のマキシマムドライブをぶつけてやれ!」  後方から聞こえる二人の“仲間”からの応援。  そう、自分は一人で戦っているのではない。掛け替えのない仲間が、どんな時も一緒に戦ってくれているのだ。それはガドルでは決して持ち得ぬ、最高にして最高の武器だ。  ならばこれ以上、仲間が待つ後方へは一歩たりとも進ませる訳には行かない。自分に出来るのは、翔太郎の言うマキシマムドライブで、こいつに一太刀を浴びせる事。  だけれども、この魔剣の使い方など総司は知らない。不自然に巨大な蝙蝠が刀身に噛み付いてはいるが、これをどうすればいいのかも、分からない。 「総司さん! 魔皇力さえあれば、そのザンバットバットで刃を研いで、必殺技を放つ事が出来ますよ!」  魔皇力。それは、キバの鎧を始めとするファンガイア一族に纏わる武装に漲る魔のエネルギーだ。  レイに変身した時に使って、この身体に強烈な負荷をかけてくれたあの魔力……それさえあれば、こいつに一撃を叩き込む事が出来る。  だけれども、ZECTが開発したマスクドライダーに、そのようなエネルギーが運用されている訳もない。魔皇力のチャージアップなど、出来る訳がない。  全く無駄な能力ではないかと、内心でやや憤慨するが――否、ないならないで、いくらだってやりようはある。  今の自分ならば、どんな不可能だって可能に出来る筈だ。根拠は何処にも無いが、それくらいの自信が、今の総司には満ち溢れているのだ。  再び剣をぶつけ合わせ、お互いの剣に伝わる反動を利用して後方へと跳び退いたハイパーカブトは、左腰のハイパーゼクターの角を押し倒した。  ――MAXIMUM RIDER POWER――  通常のマスクドライダーシステムのタキオン粒子とは比べ物にならない程のエネルギーが、ハイパーゼクターから全身へと供給される。  虹色に眩く輝くタキオンのエネルギーは、ハイパーカブトが握り締めたザンバットソードにも伝わり、その刀身をきらきらと煌めかせる。  そして確信する。これならば、行ける、と――! 「マキシマムドライブ……ッ!」  全く規格の異なる二つの武器を掛け合わせての必殺技だ。未だ技名などある筈もないのだから、翔太郎の言葉を借りるしかない。  マキシマムドライブと称し、その起動キーであるザンバットバットで刃を研磨する。それに伴って、透き通る様に美しいザンバットの刃全体にタキオンのエネルギーが充填されてゆく。虹色の光を乱反射させながら輝く刃は、ザンバットソードを夜空に煌めくどんな星よりも眩く美しい魔剣たらしめた。  光輝く虹の剣を振り上げたハイパーカブトは、一足跳びにガドルの懐へと飛び込んだ。  当然迎撃しようと大剣を振り下ろすガドルだが、ハイパーカブトはそれを真正面から受け止めんばかりの勢いで以て、左脇腹の位置で構えた剣を思い切り振り抜いた。   「――ハアアアアアッ!!!」  強いて名付けるとするならば、ハイパーザンバット斬、といったところだろうか。  それは、魔皇力を研ぎ澄まして放たれるファンガイアの王の力を、膨大なタキオン粒子で代用した一撃だった。  お互いの刃と刃は激突し――次の瞬間には、光輝く虹色の刃が鈍い黒金の大剣を斬り裂き、ガドルの身体をも薙ぎ払っていた。  ガドル自身も寸での所で身をよじらせ、ハイパーザンバット斬の直撃だけは防いだが、それでもこの一撃の威力は絶大。堪らず吹っ飛んだガドルは、数歩よろけた後――ハイパーカブトがザンバットバットで再び刃を研磨し光を収めると同時、がくりと崩れ膝をついた。 「さあ、決着を付けよう、ガドル――!」 「……ッ、望む、所だ……!」  ザンバットソードを頭上で一回転、ぶんと振り回したハイパーカブトは、勢いそのままにザンバットの切先をアスファルトへと突き刺した。どすん! と音を響かせて、ザンバットの刃が深くアスファルトに減り込む。  魔剣を手放したハイパーカブトと相対するガドルもまた、数歩後退し、距離を十分に取った。  ガドルの脚に、稲妻が宿る。今までの比ではない程の気迫が、ガドルの全身から滲み出ている。  恐らくはあれが、ガドルの持てる最強にして最高の必殺技なのだろう。武人を語る戦闘狂の自己満足に付き合ってやる義理はないが、それでも相手はあの破壊のカリスマ。此方も最高威力の必殺技で迎え討たねば、きっと勝利は掴めない。  もう一度左腰へと手を伸ばしたハイパーカブトは、勢いよく、銀のカブトムシの角を押し倒した。  ――MAXIMUM RIDER POWER――  二度目のマキシマムライダーパワー。  今度は総司の全身全霊を掛けた一撃をガドルにぶつけよう。  そして、このうんざりする程の因縁にも決着を付けてみせる。  海堂の仇を、ダークカブトゼクターの仇を、今此処で、この手で取るのだ。  そしてこれからも総司は、名護と翔太郎と共に戦い続ける。これはその為の第一歩だ。  ハイパーカブトが脚を踏み出すと同時、体中を駆け抜けるタキオン粒子を放熱させる為か、全身のカブテクターが展開を開始した。  全ての装甲が変型を追える前に、ハイパーカブトはバックルに装着されたカブトゼクターのボタンを三度押し込む。  ――ONE TWO THREE―― 「ハイパーキックッ!!!」  ――RIDER KICK――  カブトの仮面の下で絶叫する総司と一緒に、カブトゼクターの電子音声がその技名を告げる。  それは、かの天道総司が最も信頼を寄せていたと思われる、仮面ライダーのみに許された究極の必殺技だった。  総司は知っている。その一撃は、ライダーキックは、どんな悪をも蹴り砕く正義の一撃。それは、こんな所でガドルに砕かれる程柔な技では無い。  カブトの右脚に、タキオンによる竜巻がさながら暴風雨のように発生する。向かい合うガドルの両足の稲妻も、一歩蹴り出す毎にその輝きを増してゆく。  ガドルが跳んだ。激しい錐揉み回転を加え、雷撃を撒き散らしながら、ガドルが急迫する。ほぼ同時、完全に変形を終えたハイパーカブトの光の翼が羽撃たいて、カブトの身体をガドルと同じ高度にまで跳び上がらせる。 「ハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」  絶叫と共に繰り出す、必殺のハイパーライダーキック。  天道総司が生涯そうしたように……天の道を往く者の誇りを胸に、全力を持って繰り出す一撃だ。  例え相手がどんなに強大な悪であろうと、この一撃を止められるものは世界中の何処にも居ないと、総司は確信していた。  今は亡きダークカブトゼクターが、剣崎が海堂が天道が、そして総司の勝利を信じて待つ名護と翔太郎――みんなの想いが総司を後押ししてくれる。  未来への希望に光輝く光の翼を広げ、虹の流星となったハイパーカブトが闇夜を翔ける。雷雲のように稲妻を撒き散らすガドルもまた、一直線にハイパーカブトを砕かんと急迫する。  ――刹那、全力全開で以て繰り出された二人の必殺技が、お互いの胸部に炸裂した。  竜巻を纏ったカブトの蹴りがガドルの胸部を抉り、稲妻を纏ったガドルの蹴りがカブトの胸部を砕いた。  互いが互いに叩き込んだ膨大な量のエネルギーは行き場を失って暴発し、両者の間に大爆発を引き起こすが、爆発よりも眩く輝くのはそのエネルギーだ。  ガドルが撒き散らした稲妻とハイパーカブトが放出した虹の輝きは、何よりも眩く、何よりも暴力的で、そして何よりも美しかった。  眩し過ぎる輝きは最早視界のあらゆるものを掻き消す白にしか見えない。閃光は総司の視界だけでなく、その場の全員の視界を覆い尽くした。 ◆  ――両者の激突の末、先に起き上がったのは、ゴ・ガドル・バの方だった。  未だ怪人態の姿のままではあるが、恐らくはこの変身もそう長く持たないだろう。変身制限によるものではなく、純粋な体力切れによって、だ。自分の身体の事は自分が一番良く解っていた。が、まだその時ではない。この激闘の末に、どちらが勝利したのかを見極めぬ限り、ガドルに安息は無かった。  仮にハイパーカブトが未だ顕在で、まだ戦えるというのなら――既に体力の限界を迎えたガドルに、勝ち目はないだろうという事もわかる。  だけれども、もしもハイパーカブトが既に散っているというのなら、その時は、この破壊のカリスマの勝利だ。  また一人、強き仮面ライダーを討ち取る事が出来たのだと、ガドルの名にも更なる箔が付くというもの。  周囲を見渡し、ハイパーカブトの姿を探し求め――そして、見付けた。  ガドルからは遠く離れた位置で、地を踏み締め、両の脚でしっかりと立つハイパーカブトの姿を。 「む……貴様」  しかし。  ガドルが一歩踏み出すと同時、ハイパーカブトの身体が揺れた。  まるで風に煽られるように、ふらっと傾き――その身体から、銀の装甲が剥がれ落ちた。重力に引かれて崩れ落ちる姿勢を、奴の仲間の名護啓介が、そっと受け止めた。  天道総司を名乗ったあの男は、意識を失っても尚、倒れる事無くその場に立ち続けていたのだろう。  思えばあの男、数時間前に戦った「天道総司」とは、変身前だけでなく、変身後の姿までもが酷似していた。あの男が変身していたカブトに総司が変身したという事は、恐らくはもう、あの男はこの世には居ないのだろう。  もう奴との戦いに決着を付ける日が来る事はないのか、と僅かに悲観するが、あの時天道が変身したカブトとの戦いで付けられなかった決着を、今ここで、天道総司を継いだ男が変身するカブトとの決戦によって付ける事が出来たのだと思えば、自ずと気分も晴れる気がした。  少し前までは仮面ライダーの名を語る紛い物でしかなかった総司が、今では随分と変わったものだと思う。今の奴には、助けてくれる仲間が居る。だから弱かった筈のあの男は、海堂直也と同じように、此処まで強く成長する事が出来たのだろう。  奴の振る舞いを内心でずっと否定して来たガドルだが、今では素直に認められる。翔太郎の言う通り、奴はもう、立派な仮面ライダーだ。それを侮辱するものが居るとするなら、今度は自分が、そいつを黙らせよう。  正義の仮面ライダーとなった総司は、確かにこの破壊のカリスマを此処まで追い詰めたのだ。倒すには至らなかったとはいえ、それは誇りに思っていい。   「……ッ!?」  ――否。そこで、自分の考えを否定する。  奴に蹴られた胸部に、ガドルは強烈なまでの違和感を感じたのだ。  その違和感はガドルの全身に張り巡らされた神経組織を伝って、体中へと伝播してゆく。痛みと苦痛が、ガドルの身体を今にも引き裂かんと、体内で蠢いているかのようだった。 「……そうか」  此処へ来て、ようやくガドルは気付いた。一歩及ばなかったのは、どうやら総司の方ではないらしい。  ハイパーカブトに蹴られた胸部から、大量のタキオン粒子が、この身体には叩き込まれているのだという事実に、ガドルはようやっと気が付いたのだ。  そして、それが何を意味するのかもガドルには分かる。クウガによって封印のエネルギーを叩き込まれたグロンギは、やがて体内からエネルギーに破壊され、やがてベルトを砕かれ爆死する。それと全く同じ原理だ。カブトによって叩き込まれたエネルギーが、今にもこの身を砕こうと体内で暴れ出しているのだ。  これで一瞬でも自分が勝利したと思い込むなど、片腹が痛い。本当の勝者は自分ではないではないか。自分は、負けたのではないか。 「ゴセロ、ボボラゼバ(俺も、ここまでか)」  体内で光輝くタキオン粒子の光が、蹴られた胸部から薄く漏れ出していた。  この光がゲドルードに仕込まれた爆弾に到達した時、ガドルの五体は吹き飛ぶのだろう。そうなれば、この周囲は全て火の海となって、何もかもが消えてなくなる。  グロンギ族というのは、それ程までに危険な爆弾を抱えてゲゲルに挑む野蛮な民族だ。死を背負って戦い、最強の「ン」へと到達する為に己を研磨し続ける、それがガドルの生きる理由だ。  だから「ン」に辿り着くまで、ガドルが負ける事は許されなかった。負けた時は、周囲の全てを焼き尽くす程の威力を持った爆弾が、この身を焼滅させるのだから。  それを理解しているからこそ、自分の死期が近づいている事も分かる。自分はここで終わりなのだと思えば、悔しくて悔しくて堪らないが――それでも、不快ではない。  ガドルは最後に、このゴ集団最強の戦士をも打ち倒す強者――仮面ライダーと、全身全霊を掛けて戦う事が出来たのだ。自分は確かに全力を出し尽くした。それでも負けたのなら、それは自分の完全敗北だ。それを悔やんで相手を咎めるような無様を、ガドルはしない。強者には強者への、勝者には勝者への礼儀を以て接するのが、ガドルの流儀。  だが、奴らがこのゴ・ガドル・バに打ち勝ったというなら、次に奴らが戦うべき相手は、グロンギのルールに乗っ取るならば、「ン」だ。奴らはザギバスゲゲルに最も近かったガドルを下したのだから。  なれば、ゲドルードの爆発などという下らない理由で奴らが死んでしまうのは、絶対に許されない。このガドルに勝利した奴らが、ダグバにも届かずに終わってしまうのは、我慢がならなかった。  痛む胸を押さえながら、最後の力を振り絞って、ガドルにはやらねばならぬ事がある。   「仮面ライダーよ……良き戦いだった。この勝負、貴様らの勝ちだ」    そう言って、目の前で総司に肩を貸す二人の仮面ライダーを呼び止める。   「俺の命は、もうそう長くは持たん。俺が死に至る時、ベルトの爆弾が起爆する。  そうなれば、お前達諸共この一帯の全てを吹き飛ばす事になるだろう」 「何……っ!?」  名護と翔太郎が息を飲む音が、ガドルにまで聞こえた気がした。  無理もない。やっとの思いで勝ったと思ったら、次に爆発に巻き込まれると聞かされたのだから。  だが、と続けて、ガドルは自分のデイバッグを名護の足元へと放り投げた。   「俺に勝った貴様らが、そんな下らん理由で散る事だけは我慢ならん。  そこの鉄馬を駆り、今すぐにここを離れろ。そして、更なる強者と戦い、もっと強くなれ」  そして、その先に待つダグバと戦うがいい。言外にそう告げながら、ガドルは自分が乗って来たカブトエクステンダーを指差した。  勝者には敗者の全てを手に入れ、先へと進む義務がある。そしてその先の更なる強者と戦って、己の無力を思い知るか、それとも更なる強者にも打ち勝つのか、それはガドルにも分からない。  だけれども、奴らはこのガドルをも乗り越えて先へと進むのだから――負けて欲しくはない。柄にもなく、ガドルはそう思っていた。 「あんたは許せねえ野郎だったが……俺はあんたみたいな熱い漢、嫌いじゃないぜ。あんたがこんな殺し合いに乗ってさえなければ……」 「私もガドルさんの事は嫌いではありませんでした! 最初に出会った者同士のよしみもありますし、出来る事なら、ガドルさんにも強き仮面ライダーとして――」 「――俺はリントを護らんとする仮面ライダーの敵。そして俺はただ、強者には強者に見合った振る舞いをするのみ。そんな下らない話をするのはよせ」  翔太郎に続くタツロットのやかましい台詞を、ガドルは聞く耳持たぬとばかりに遮った。  ガドルにはガドルの矜持がある。己の分を弁え、その上で己を鍛え抜く事しか考えぬガドルにとって、そんな「もしも」の話には何の意味も無い。  そもそも、ガドルはこんなにも強い仮面ライダーの敵である事に誇りすら抱いていた。それを否定するような話をするのは、不愉快だった。  タツロットよりも早くガドルの意思を汲み取ってくれたのだろう翔太郎は、片手でタツロットを制し、言った。 「……ああ、そうだな。忘れてくれ」  片手でハットを押さえ、やや深く被り直しながら告げる翔太郎の声音が少しだけ寂しそうに聞こえたのは、きっと気のせいではないのだろう。  そういえばこの男も、数時間前にガドルとは一度戦ったなと思い出す。あの時は取るに足らない存在で、変身制限で命を永らえたようなものだったというのに……左翔太郎も、随分と強くなった。  あの名護啓介も、数時間前の戦いではこのガドルの足元にも及ばなかった。だけれども、奴らは互いに助け合い何処までも強くなった。正義の心で何度でも立ち上がり、最後にはこのガドルすらも越えた。  たった数時間の出会いではあったが、彼ら三人との戦いが、ガドルには随分と長い戦いだったように思えてならなかった。  そんな三人だからこそ、奴らはこのガドルの意思をも糧として、生き続けなければならないという義務がある。  元来二人乗りが限度のあのバイクに、三人で乗るのはちとキツいだろうが、それしか方法がないのなら、ガドルはその方法を提示するのみだ。本当なら、強者には強者に相応しい待遇があっても何ら可笑しくはないとは思うのだが。  やがてガドルのデイバッグを拾い上げた名護は、ガドルの思惑通りにカブトエクステンダーへと歩み寄り、ガドルを一瞥した。 「本当にいいのか」 「勝者には、敗者の全てを糧として生きる義務がある。  貴様らはこの破壊のカリスマを下し、生きる権利を掴み取ったのだ。誇りに思え」 「下らないな……実に下らない。だが、お前の気持ちは分かった。このバイクは有り難く受け取ろう」 「それでいい」  何ともないように会話を交わすが、そろそろ限界が近い。ガドル自身にも、それは分かっていた。  爆発までのタイムリミットは、持ってあと一、二分程度、と言ったところか。離脱するならば、今すぐでなければ間に合わない。  今にも身体を突き破られそうな痛みに耐えるガドルの容態の変化に気付いたのだろう、名護はもうそれ以上は言わずに、カブトエクステンダーに跨った。  翔太郎がその後ろに総司を乗せ、更にその後ろに無理矢理跨り、総司の身体が振り落とされぬようにと、総司の身体を両腕でしっかり支える。  が、最後にもう一つだけ、伝えるべき事があるのだと思い出したガドルは、エンジン音を轟かせ、バイクを急転回させ今にも走り出さんとする名護を呼び止めた。 「待て、強き仮面ライダーよ。最後にもう一つだけ、貴様らに伝えておく事がある」 「……何だ?」 「あの仮面ライダー……海堂直也の攻撃は、この破壊のカリスマにも確かに届いていた。  あの戦いに勝利していたのは、本来なら俺では無い。僅かに命が持たなかったが……それでも真の勝者は、海堂直也だった」 「なに……!?」  そう。このゴ・ガドル・バを敗北させた始めての仮面ライダーの名は、海堂直也だ。  あの男も、名護や翔太郎、総司と同じように、仲間を守る正義の心とやらで、何処までも強くなった。そして、このガドルをも打ち倒した、筈だった。  惜しむらくは、奴の命があと一歩の所で持たなかった事。もしも海堂があと一秒でも長く生きていたなら、ガドルはあの時、既に敗北し死んでいたのだ。  それが、ガドルのみが知る戦いの結末。誰にも知られる事無く散った勇敢な戦士の、本当の最期。奴もまた真の戦士となってこのガドルを討ち取ったというのに、それを語り継ぐ者が誰も居なくなってしまうというのは寂寥に過ぎる。  だからこの事実だけは、海堂直也を受け継いだ名護達には知っていて欲しかった。  ガドルから事実を聞いた名護啓介は、やがてふっと微笑んだ。 「そうか……直也くんは、最期まで正義を貫く事が出来たんだな」 「ああ。奴も貴様らと同じ、強き仮面ライダーだった。決して忘れてやるな、あの男の事を」 「そんな事は言われるまでもない。直也君の正義は、確かに俺達が受け継いだんからな」  その言葉が聞けたお陰で、ガドルにはもう、想い残すものは何もなかった。  もう時間がない。タキオンの輝きは胸部から神経を伝って、既に随分と腹部のゲドルードへと接近していた。  最後に勝者を見送って、それで一人で逝こうと、そう決めたガドルは、最後に残った力で叫んだ。 「もう行け……そして二度と振り向くな! 前を向いて進め、強き仮面ライダーよ!」  ガドルの絶叫を最後に、強く頷いた名護は、そのままカブトエクステンダーを駆り、何処かへと走り去って行った。  最後の最後で全力を出し尽くして戦い、そしてこのゴ集団最強の武人を打ち倒した戦士を見送って死ぬ事が出来るのだから、もうこれ以上を望みはしない。  きっと奴らはこの先、このゴ・ガドル・バよりもずっと恐ろしい敵と出会い、その度絶望の淵に立たされるだろうが……それでも奴らはきっと、諦めはしないだろう。  何せ奴らは、守りたいものがある限り、仲間がいる限り、何処までだって強くなる強き戦士――仮面ライダーなのだから。  今のままでは「ン」には届かないだろうが、それでも奴らなら、いつかはダグバすらも越える日が来るのだろう。  そんな日が来る事を夢想しながら、ガドルは自分の身が爆発してゆく音を聞いた。  腹部のゲドルードに到達したタキオン粒子が爆弾を起爆させ、ガドルを中心に、周囲の全てを焼き尽くさんと燃え広がる。ガドルを中心に発生した爆発は、何者の生存をも許さぬ炎の柱となって、遥か上空の雲を突き破り、天を貫いた。  ガドルの命の炎とも云える爆炎は、月の光すらも朧げだった闇夜など容易く掻き消して、まるで太陽の輝きの如き光量で世界を眩く照らし出した。  破壊のカリスマゴ・ガドル・バは、最早一片の悔いも肉片すらも残さず、この世から焼滅したのだった。   &color(red){【ゴ・ガドル・バ@仮面ライダークウガ 死亡確認】} &color(red){ 残り33人}     【1日目 夜中】 【?-? ???】   【名護啓介@仮面ライダーキバ】 【時間軸】本編終了後 【状態】疲労(大)、ダメージ(大)、総司が正義に目覚めた事と海堂が最期まで正義を貫いていたという事実への喜び、仮面ライダーイクサに1時間45分変身不可 【装備】ガイアメモリ(スイーツ)@仮面ライダーW、 【道具】支給品一式×2(名護、ガドル)、ガイアメモリ(メタル)@仮面ライダーW、カブトエクステンダー@仮面ライダーカブト 【思考・状況】 基本行動方針:悪魔の集団 大ショッカー……その命、神に返しなさい! 0:この場所から離脱する 1:直也君の正義は絶対に忘れてはならない。 2:総司君と共に、津上翔一、城戸真司、小沢澄子を見つけ出し、伝言を伝える。 3:総司君のコーチになる。 4:首輪を解除するため、『ガイアメモリのある世界』の人間と接触する。 【備考】 ※時間軸的にもライジングイクサに変身できますが、変身中は消費時間が倍になります。 ※『Wの世界』の人間が首輪の解除方法を知っているかもしれないと勘違いしています。 ※海堂直也の犠牲に、深い罪悪感を覚えると同時に、海堂の強い正義感に複雑な感情を抱いています。 ※剣崎一真を殺したのは擬態天道だと知りました。 ※天道総司から制限について詳細を聞いているかは後続の書き手さんにお任せします。 【左翔太郎@仮面ライダーW】 【時間軸】本編終了後 【状態】ダメージ(極大)、疲労(大)、とても強い決意、強い悲しみと罪悪感、仮面ライダージョーカーに55分変身不可、仮面ライダーイクサに1時間50分変身不可 【装備】ロストドライバー&ジョーカーメモリ@仮面ライダーW、イクサナックル(ver.XI)@仮面ライダーキバ 【道具】支給品一式×2(翔太郎、木場)、トライアルメモリ@仮面ライダーW、木場の不明支給品(0~2) 、ゼクトバックル(パンチホッパー)@仮面ライダーカブト、首輪(木場) 【思考・状況】 基本行動方針:仮面ライダーとして、世界の破壊を止める。 0:この場所から離脱する。 1:名護と総司と共に戦う。 2:出来れば相川始と協力したい。 3:カリス(名前を知らない)、浅倉(名前を知らない)、ダグバ(名前を知らない)を絶対に倒す。 4:フィリップ達と合流し、木場のような仲間を集める。 5:『ファイズの世界』の住民に、木場の死を伝える。(ただし、村上は警戒) 6:ミュージアムの幹部達を警戒。 7:もしも始が殺し合いに乗っているのなら、全力で止める。 8:もし、照井からアクセルを受け継いだ者がいるなら、特訓してトライアルのマキシマムを使えるようにさせる。 9:総司(擬態天道)と天道の関係が少しだけ気がかり。 【備考】 ※木場のいた世界の仮面ライダー(ファイズ)は悪だと認識しています。 ※555の世界について、木場の主観による詳細を知りました。 ※オルフェノクはドーパントに近いものだと思っています(人類が直接変貌したものだと思っていない)。 ※ミュージアムの幹部達は、ネクロオーバーとなって蘇ったと推測しています。 ※また、大ショッカーと財団Xに何らかの繋がりがあると考えています。 ※ホッパーゼクターに認められていません(なおホッパーゼクターは、おそらくダグバ戦を見てはいません)。 ※東京タワーから発せられた、亜樹子の放送を聞きました。   【擬態天道総司(ダークカブト)@仮面ライダーカブト】 【時間軸】第47話 カブトとの戦闘前(三島に自分の真実を聞いてはいません) 【状態】疲労(極大)、ダメージ(大)、仮面ライダーダークカブトに1時間40分変身不可、ワーム態に1時間42分変身不可、仮面ライダーレイに1時間45分変身不可、仮面ライダーカブトに1時間50分変身不可 【装備】ライダーベルト(ダークカブト)+カブトゼクター@仮面ライダーカブト、ハイパーゼクター@仮面ライダーカブト、レイキバット@劇場版 仮面ライダーキバ 魔界城の王 【道具】支給品一式×2、ネガタロスの不明支給品×1(変身道具ではない)、デンオウベルト+ライダーパス@仮面ライダー電王、753Tシャツセット@仮面ライダーキバ、ザンバットソード(ザンバットバット付属)@仮面ライダーキバ、魔皇龍タツロット@仮面ライダーキバ 【思考・状況】 基本行動方針:天の道を継ぎ、正義の仮面ライダーとして生きる。 0:気絶中。 1:剣崎と海堂、天道の分まで生きる。 2:名護に対する自身の執着への疑問。 【備考】 ※天の道を継ぎ、総てを司る男として生きる為、天道総司の名を借りるて戦って行くつもりです。 ※参戦時期ではまだ自分がワームだと認識していませんが、名簿の名前を見て『自分がワームにされた人間』だったことを思い出しました。詳しい過去は覚えていません。 ※カブトゼクターとハイパーゼクターに天道総司を継ぐ所有者として認められました。 ※タツロットはザンバットソードを収納しています。 【全体備考】 ※E-1 市街地エリアで大規模な爆発が発生しました。空に向かって火柱が発生しているので、広い範囲で観測可能なものと思われます。 ※イクサシステムはオーバーヒートを起こしました。変身者に関わらず、四時間の間イクサは使用出来ません。 ※三人を乗せたカブトエクステンダーが今何処に居るのか、どの方角に進んでいるのかは後続の書き手さんにお任せします。    大地が揺れて、彼方から熱風が吹き付ける。  大規模な爆発は、天に向かって極大の火柱を発生させながら、周囲の全てを焼き払った。  かなりの規模の爆発だ。恐らくはエリア一つ分以上は離れているのであろうこの地区からでも、その光は容易に観測出来た。  グロンギ最強の王ン・ダグバ・ゼバは、燃え盛る炎を無邪気な瞳で見上げながら、ぽつりと呟いた。 「そっか……死んじゃったんだね、ガドル」  それがあの男の、ゴ・ガドル・バの死による爆発だという事は一目で分かる。  以前、クウガがガドルを打ち倒した時にも、これと全く同じ爆発を見た覚えがあったからだ。  否、どうでもいい事であるが故にうろ覚えではあるが、今の爆発は寧ろ、あの時よりもやや抑えられている気がしないでもない。大ショッカーによる何らかの制限だろうか……と、そこまで考えたダグバであるが、そんな取り留めの無い思考を働かせるのは時間の無駄でしかない事に気付く。  そもそもダグバは、自分よりも強い者にしか興味がない。負けた者には生きている価値などないし、負けた者がどんな死に方をしたかなんてもっとどうでもいい。だからダグバは、ガドルの爆発がどの程度の規模だったかも、正確にはうろ覚えなのだ。  今何よりも重要なのは、この場所で、かつてよりもさらに強くなった筈のガドルをも打ち倒す強者が、すぐ近くに居るという事。  それを考えた時、ダグバは自分の身が自然と震えるのを感じた。  武者震い、という奴だろうか。それとも、テラーによって植え付けられた恐怖心だろうか……と考えるが、まあ、どうでも良い事かと、ダグバはそれについて考える事すらも放棄した。 「ふふ、まだまだ僕を楽しませてくれそうだね」  白い悪魔ン・ダグバ・ゼバは、まるで無邪気な子供のように笑った。  あのガドルをも死に追いやる強者が居るという事実に興奮するダグバを煽るように、ガドルの死が齎した熱風は暖かく吹き付けていた。         【1日目 夜中】 【E-2 市街地跡地】 【ン・ダグバ・ゼバ@仮面ライダークウガ】 【時間軸】第46話終了後以降 【状態】ダメージ(小)、ガドルを殺した強者への期待、怪人態及びリュウガに1時間変身不可 【装備】ガイアドライバー@仮面ライダーW、モモタロスォード@仮面ライダー電王 、ブレイバックル@仮面ライダー剣、ラウズカード(スペードA~6.9)@仮面ライダー剣 【道具】支給品一式×3、不明支給品×1(東條から見て武器ではない)、音也の不明支給品×2、バギブソン@仮面ライダークウガ、ダグバのベルトの欠片@仮面ライダークウガ、ラウズアブゾーバー@仮面ライダー剣 【思考・状況】 基本行動方針:もっと強い相手と戦い、恐怖を味わって楽しみたい。 0:ガドルが死んじゃったか……。 1:もう一人のクウガとの戦いをまた楽しみたい。 2:ガドルを倒したリントの戦士達が恐怖を齎してくれる事に期待。 3:新たなる力が楽しめるようになるまで待つ。 4:余裕があれば残りのスペードのカードも集めてみる。 【備考】 ※ガイアドライバーを使って変身しているため、メモリの副作用がありません。 ※制限によって、超自然発火能力の範囲が狭くなっています。 ※変身時間の制限をある程度把握しました。 ※音也の支給品を回収しました。 ※東條の不明支給品の一つはラウズアブゾーバー@仮面ライダー剣でした。 |102:[[G線上のアリア/インヘリテッド・ハイパーシステム]]|投下順|103:[[闇を齎す王の剣(1)]]| |~|時系列順|105:[[やがて訪れる始まりへ]]| |~|[[ゴ・ガドル・バ]]|&color(red){GAME OVER}| |~|[[擬態天道]]|104:[[それぞれの道行(1)]]| |~|[[名護啓介]]|104:[[それぞれの道行(1)]]| |~|[[左翔太郎]]|104:[[それぞれの道行(1)]]| |~|[[ン・ダグバ・ゼバ]]|103:[[闇を齎す王の剣(1)]]| ----

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: