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差し伸べる手◆LQDxlRz1mQ



 私の名前は間宮麗奈──。
 自分の名前を頭の中で反芻させる。それが自分の名前である、という実感を得るために。
 まるで他人の名前のように、その名前の響きは冷徹だった。気が狂いそうなほど、その名前は連鎖される。
 脳内で交錯する名前を、なんとか掴み取ろうとして──そのたびに素通りする感覚。


「私は──」


 麗奈は今、ウカワームではなく人間だった。
 確かに彼女はウカワームなのだが、その記憶の中では、彼女は間宮麗奈。
 間宮麗奈として生まれ、育ち、人に恋をする記憶がずっと頭の中を巡っていた。


 だから、今彼女の名前の中で固く結ばれたまま、解くことの出来ない男に助けを求めてどこかの民家のテーブルの下に隠れていた。
 もしかしたら、この家の主はここにいないのかもしれない。それでも、この家の主がここに来たとき、泥棒か何かと疑われるのは怖い。
 周りの人間に軽蔑され、叱咤されるのは、彼女の内に強いストレスを溜め込むだけだった。


(私の名前は間宮麗奈……私の名前は間宮麗奈……私の名前は……)


 彼女は歌うことも忘れて、脳内にその言葉をひたすらに連呼させた。

 すると、フローリングの床を踏む音が聞こえてきた。
 一閃の恐怖──。

 この家の主か、それとも殺し合いの参加者か。
 どちらにせよ、それが近づいてくることは恐怖以外の何物でもない。
 殺し合いの参加者ならば、きっと殺し合いに乗っている──何故なら、それぞれが自分の世界を背負っているのだから。
 世界がどうなってもいい、なんていう希少な人間と出会うことはないだろう。
 人間が凶暴な生物だ。人を殺すことに躊躇いなんてないんだ。だから、自分の世界を消さないためには、相手を殺すようなことも平気だろう。

 麗奈は自分に支給された道具を再び思い返す。
 今、敵を倒すのに使える支給品は何か。
 もはや、相手が同じ世界の住人であろうと関係はない。自分に害を及ぼすようなら、殺すしかない。


 デンカメンソードという胡散臭い剣が支給されていたが、剣として使うには重過ぎる。余計な装飾品がついているのがネックだろう。剣以上に、鈍器として使えるが、まずそこまで接近するのは彼女の恐怖とストレスを煽るだけだ。
 『長いお別れ』という本も支給されているが、これは武器ですらない。

 ここで一番使えるのは、ファンガイアバスターという銃。他の支給品は武器には向いていない。


 が、それを握ろうとしたとき────手が震える。
 人差し指を引き金にかけることさえできない。
 銃口は床に向いてしまう。


 人を殺す、或いは、人に殺される。
 そのどちらも恐ろしい。その、どこから溢れるかわからない恐怖が彼女の震源地だった。


 震える指からファンガイアバスターが解け、床に引かれていく。
 唯一使える武器は今、地面に落ちてしまった。震える手はそれを再び手に取ることを許さない。


「誰か、いるのか……?」


 今の音が聞こえた──。
 そのせいで、誰か……近づいてくる。
 声から考えれば、相手は男だ。力では劣る。ならば、ファンガイアバスターを拾うしかない。
 だが、手が動いてくれない。


「いたら返事してください。俺は……誰かを殺すつもりはないから」


 麗奈が信用するはずがない。
 そんな甘い言葉があるわけない。自分に言い聞かせ、ただそれを拾うことに集中する。
 しかし、そこには何の障害もないというのに、拾うことはまだできなかった。
 そして、彼の言葉を信用したいという気持ちが彼女に武器を取らせる力を……完全に失わせた。


「……俺の名前は桐矢京介。あなたとは違う世界の人間かもしれないけど、俺は人は殺さない。
 何かの事情で動けなかったり、返事ができないなら俺が手を貸します。……それが、俺の仕事ですから」


 乗るな……っ!!
 そんな言葉、信用できるはずがない。
 ただ、近づいてきたらファンガイアバスターで仕留める……それでいいんだ。


「警戒しないでください。支給品は渡します」


 テーブルの下に、デイパックが滑り向かってきたことで、京介という少年が麗奈の居場所を把握していることに気づく。やはり、ファンガイアバスターを落としてしまったことに気づいたのだろうか。
 だが、一方で麗奈には収穫があった。デイパックとともに、ファンガイアバスターも滑り向かってきたのだ。
 これで、距離が近づきファンガイアバスターを手に取ることができた。

 ──が、彼女が取れた理由は単純に距離が近づいたからではない。
 どこか、相手を信用してしまったからである。そして、それは同時に相手を殺す気も完全に消え去ってしまったということだった。


「……私の名前は間宮麗奈」

「間宮さん、ですか……。デイパックはそちらで持っていて構いませんから、姿を現してくれませんか?」

「ええ……」


 テーブルの下から、ゆっくりと麗奈は日向に出る。
 ガラス越しから浴びせられる日当たりが心地よかった。
 二つのデイパックを両肩に背負い、指先にファンガイアバスターを絡めた麗奈は、久々に立ち上がった気分だった。


「ずっとここにいたんですか?」

「ええ……連れて来られた時から」

「もう、この殺し合いが始まってから、二時間も経ってますよ」

「! そんなに……?」


 それだけ長い間、麗奈はこの狭いテーブルの下で隠れていたというのか。
 そう思うと、だんだん足に痺れを感じてくる。


「……俺、これでも鍛えてますから、大ショッカーを倒すことはできなくても、あなたを守ることくらいならできます。
 人を守るのが、俺の仕事なんです。……だから、安心してください」


 京介はそう諭す。
 そんな京介が本当に何も持っていないことに気づいた麗奈は、慌ててデイパックを返した。


「あの……これ」

「ああ、持たせてしまってすみません」

「いえ……」

「しばらくは俺と一緒に行動しましょう。ここには本当に化け物がいるみたいです」


 京介はこの殺し合いが始まったときに見付けた、赤鬼や龍の化け物のことを忘れてはいない。
 彼らは魔化魍のような化け物なのかもしれないのだから。


「化け物……」


 麗奈は、本人も気づかぬうちに、そう呟いていた。


【1日目 午後】
【E-1 民家】

【間宮麗奈@仮面ライダーカブト】
【時間軸】第40話終了後
【状態】健康 人間不信 ワームの記憶喪失
【装備】ファンガイアバスター@仮面ライダーキバ
【道具】支給品一式、デンカメンソード@仮面ライダー電王、『長いお別れ』ほかフィリップ・マーロウの小説@仮面ライダーW
【思考・状況】
0:化け物……?
1:とりあえず京介についていく。
2:他人が怖い。
3:殺さなければ殺される……。
【備考】
※ウカワームの記憶を失っているため、現状では変身することができませんが、何かの拍子で思い出すかもしれません。


【桐矢京介@仮面ライダー響鬼】
【時間軸】最終回後
【状態】健康
【装備】変身音叉@仮面ライダー響鬼
【道具】支給品一式、不明支給品×0~2
【思考・状況】
1:人を守る。
2:麗奈を守る。
3:化け物(イマジン)が気になる。


020:巡り会う世界 投下順 022:代償
032:カンタータ・オルビス 時系列順 027:Iは流れる/朽ち果てる
GAME START 間宮麗奈 044:Rの定義/心に響く声
GAME START 桐矢京介 044:Rの定義/心に響く声