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勝利か敗北か◆LuuKRM2PEg




静寂に満ちていたはずの病院は、音が響いている。
急患が来たことによる騒ぎや、医師や患者の話し声などではない。
それは、金属と金属が激突することによって響き渡る、冷酷な音だった。
つやが輝いているリノリウムで出来た、長い通路。
その中で、二人の人影が駆け抜けていた。
片や、不死の生命体・アンデッドが生息する『ブレイドの世界』を象徴する、己の運命と戦い続ける戦士。
ヘラクレスオオカブトの如く伸びた、銀色に輝く角。
灼熱のように赤い輝きを放つ、二つの瞳。
スペードの紋章が大きく刻まれた、身体を守る鎧。
その下に存在する、群青のスーツ。
そして、腰に巻かれたベルトには、装甲と同じようにスペードのマークが健在していた。
『ブレイドの世界』には、アンデッドと戦うBOARDと呼ばれる組織が存在する。
ライダーシステム第二号機、仮面ライダーブレイド。
その装着者の名は、剣崎一真。

「でえぇぇぇぇぃっ!」

ブレイドに変身している剣崎は、醒剣ブレイラウザーを振るった。
殺し合いに乗った、目の前の仮面ライダーを止めるために。
ブレイラウザーの刃は、仮面ライダータイガの胸に、当たろうとした。
しかし、それは防がれる。
タイガの持つ、白召斧デストバイザーによって。
火花が飛び散り、薄暗い廊下がほんの少し照らされる。
その瞬間、タイガは後ろに飛んで距離をとった。
ブレイドから離れて、カードデッキから一枚のカードを取り出す。
そして、デストバイザーに差し込んだ。

『STRIKE VENT』

白召斧から、音声が発せられる。
刹那、タイガの両腕に巨大な爪が出現した。
デストクローと名付けられた獲物を見て、ブレイドは目を見開く。
自分の世界と同じように、この仮面ライダーもカードを使って戦うという事実に。
しかし、驚いている暇は無い。
巨大な爪を構えながら、タイガは迫る。
頭上に大きくデストクローを掲げて、振り下ろした。

「くっ!」

だが、ブレイドは後ろに飛んで、爪を避ける。
そのまま、ブレイラウザーを横に振るった。
刃は横一文字に、タイガの胸に傷を刻ませる。
痛みは中にいる東条にも伝わって、悲鳴が漏れた。
それを聞いた瞬間、ブレイドの中で罪悪感が芽生える。
相手はかつて、ライダー同士の戦いを止めようとしていた。
そんな立派な信念を持った彼を傷つけるのは、やはり心苦しいところがある。
だからこそ、止めなければならない。
彼はこの戦いに乗ってしまった。
これ以上、間違いを犯させたりはしない。
その為に今は、全力で戦う。

「はあぁぁぁぁっ!」

思いを胸に、ブレイドは剣を振るった。
だが、そう易々に通らない。
ブレイラウザーの刃は、右腕に装着されたデストクローの爪に遮られた。
この瞬間、ブレイドの勢いが止まる。
動き出そうとするが、遅かった。
タイガはもう片方の腕に装着されたデストクローで、ブレイドの腹を突き刺した。

「がはっ!」

悲鳴と共に、彼の身体は吹き飛んでいく。
腹部から火花が迸って、痛みによる熱を感じた。
そのまま、背中から勢いよく床に叩きつけられる。
痛みと冷たさが伝わるが、感じている暇は無い。
ブレイドは瞬時に、顔を上げる。
目の前からは、タイガが迫っているからだ。
起き上がるのと同時に、ブレイドはブレイラウザーを振るった。
斜めより繰り出されたその一閃は、タイガの身体を切り裂く。
とっさの攻撃に対応しきれず、彼の体制は崩れてしまった。
よろめいた隙を突き、ブレイドは一歩前に踏み出す。
そして、ブレイラウザーを横に払った。

「でえいっ!」

仮面の下から、叫びが聞こえる。
タイガの右腕に装着されたデストクローを、弾き飛ばした。
続くようにブレイドは力を込めて、ブレイラウザーを振るう。
その一撃によって、もう片方のデストクローもまた、床へ落とされた。
二つの獲物が音を立てながら、転がっていく。
一度跳ねる度に、廊下の床に傷が付いた。
しかし、二人はそれに目を向けない。
互いに睨み合うだけだった。
そんな中、タイガは再びデストバイザーを手に取る。
続くようにデッキからカードを取り出して、斧に入れた。

『ADVENT』

広がるかと思われた静寂は、破られる。
デストバイザーから音声が響いて、ブレイドは反射的に構えた。
だが、それは意味を成さない。

『GAAAAAAッ!』
「なっ!?」

突如、不気味な咆吼が聞こえる。
それを耳にして、ブレイドはそちらへ振り向いた。
すると、白虎を思わせる巨大な魔獣が、窓ガラスから現れるのが見える。
『龍騎の世界』に存在するミラーモンスターの一種、デストワイルダーだった。
あまりにも唐突すぎる出来事に、ブレイドは対応することが出来ない。
鏡より現れたデストワイルダーの体当たりを、無惨に受けてしまう。

「ぐうっ!」

二八〇キロの巨体に、彼の身体は耐えられなかった。
受け身を取る暇すら無く、ブレイドは壁に叩きつけられる。
しかし、それだけでは止まらない。
突進の衝撃波は凄まじく、背中に位置するコンクリートに亀裂が走る。
そのまま、壁が粉々に砕け散ってしまい、ブレイドは隣の部屋に放り込まれた。
瓦礫となったコンクリートが、音を立てて落下する。
微かな粉塵が、辺りに広がった。

「痛ッ…………!」

身体の節々に痛みを感じながらも、ブレイドは立ち上がる。
空いた穴の向こうからは、タイガとデストワイルダーがこちらを見つめていた。
そして、一歩踏み出してくる。
ブレイドは、この部屋を見渡した。
白いシーツが敷かれたベッドが、いくつも見られる。
窓には、同じ色のカーテンが掛けられていた。
どうやら大人数用が共同で使える病室のようで、広さもそれなりにある。
だが、戦いに影響を与えるとは思えない。
唯一の出入り口は、敵に塞がれている。
追いつめられたと言っても、過言ではない。
だからといって、必殺技を無闇に使うことは出来なかった。


(あいつも、俺の世界と同じようにカードを使うライダーか……!)

目の前に立つ異世界の仮面ライダーを見て、ブレイドは考える。
タイガも、自分の世界と同じように、カードを使った戦い方が特徴のようだ。
違いを挙げるなら、武器やモンスターの召喚。
だが、相手はまだ何か手を残してるかもしれない。
無理に突っ込んだところで、返り討ちになる可能性も充分にある。
こちらのラウズカードは七枚だけ。
スペードのAから6と、9のカードしか手元にない。
ブレイラウザーのAP5000を考えれば、必殺技を使えることには使える。
敵の数から、ライトニングブラストとライトニングスラッシュを、それぞれ一発ずつ使う事は出来た。
しかし万が一、あのような巨大な怪物がもう一体いたらどうする。
APが足りなくなった隙を付かれるのがオチだ。

(いや、そんなことは関係ない! 今は彼を止めることだけを考えろ!)

頭の中で芽生え始めた、後ろ向きな考えを振り払う。
自分が今やるべき事は何か。
こんな所で、不安に駆られていることではない。
東條を止めて、分かり合うことだ。
ブレイドは自らにそう言い聞かせると、地面を蹴る。
部屋に入ってきた敵に向かって、突進を開始した。

『GYAAAッ!』

耳を劈くような咆吼と共に、デストワイルダーもまた床を蹴る。
二メートルを超える巨体からは想像できないほど、素早い速度だ。
勢いに任せながら巨大な爪を掲げて、振り下ろす。
しかしブレイドは、身体を捻って紙一重の差で避けた。
かぎ爪は空を切ると、床に大きな傷を刻む。
その隙を付いて、ブレイドはデストワイルダーの懐に潜り込んだ。

「だあっ!」

掛け声と共に、ブレイラウザーを下腹部から縦に切り刻む。
硬質感の溢れるデストワイルダーの肌が、抉られた。
それに激痛を感じ、鈍い悲鳴を漏らす。
だが、ブレイドの攻撃はこれで終わらない。
彼は続けざまに、軌道を戻すように剣を振るった。
続いて一閃。左から右に薙ぎ払う。
そこから反撃の隙を与えないために、ブレイラウザーを振るい続けた。
左肩から右脇腹へ。右の胴から左の胴へ。返すように、胸部を一閃。続けるように、右肩から左脇腹へ。
合計六回の斬撃を受けて、デストワイルダーが硬直する。
その瞬間、ブレイドは左足を軸に一回転をした。
生じた勢いを利用して、デストワイルダーの腹部に蹴りを放つ。
すると、その巨体は大きく蹌踉めいた。
ブレイドが放つ一回のキック力は、480のAPを誇る。
数字で直すと、4.8トンの重さがあった。
いかにミラーモンスターといえども、何度も刃を浴びたことで腹部が脆くなっている。
加えて鋭い蹴りを受けては、吹き飛ぶのも当然だった。

『GU……ッ!』

数歩ほど、デストワイルダーは後退してしまう。
そのままベッドに足を躓かせてしまい、背中から大きく倒れた。
デストワイルダーの重量によって、床が音を立てながら僅かに沈む。
振動が部屋に伝わる中、ブレイドは後ろへ振り向いた。
視界の先からは、タイガが跳び上がりながらこちらに迫っているのが見える。
彼の両腕には、先程弾き飛ばした二つのデストクローが、顕在していた。

「ふんっ!」

迫り来る爪を前に、ブレイドはブレイラウザーを頭上に掲げる。
それによって、異なる二つの獲物が激突した。
接触面から鋭い音が響き、火花が散る。
刹那、ブレイドは剣を握る腕に力を込めて、一気に突き出した。
デストクローを装着するタイガは、押し合いに負けて体勢を崩す。
そして、ブレイドは空いた腹部を目指し、ブレイラウザーで突きを繰り出した。

「うわあっ!」

タイガの胸に、輝きを放つ刃が突き刺さる。
ブレイラウザーの刃先を受けて、その身体が吹き飛んだ。
穴が空いた壁に激突し、廊下へ転がる。
床の上で転がるが、すぐに起きあがった。
そして、デストバイザーを手に取る。
続くように、デッキの中からカードを取り出して、白召斧にセットした。

『FINAL VENT』

デストバイザーより、声が発せられる。
瞬間、デストワイルダーが起きあがった。
ブレイドの後頭部を掴んで床に叩き付けられる。
そのままデストワイルダーは、獲物を引きずりながら主の方に向かった。
必殺の一撃である、クリスタルブレイクを決めるために。

「うわあぁぁっ!?」

ブレイドはそれに反応することが、出来なかった。
身体が床と擦れ合い、火花が飛び散る。
焼け付くような痛みを感じるが、ブレイドは耐えた。
そして、足掻き続ける。
しかしデストワイルダーの握力は凄まじく、振り解くことが出来ない。
視界の先では、タイガがデストクローを構えながら立ちはだかっているのが見えた。

(このままじゃ…………!)

ブレイドの中で、焦りが生じる。
両手に床を付けるが、魔獣の進行は止められない。
この状況では、ラウズカードを使うことも出来なかった。
かといって、放置していたら負けは確実。
何とか現状を打破しようと思考を巡らせるが、浮かばない。
タイガとの距離が徐々に縮んでいき、目前にまで迫ろうとした。

「なっ!?」

その瞬間。
首の裏に感じていた圧迫感が、急に消える。
同時に、ブレイドの進行が止まった。
何事かと思い、彼は後ろに顔を向ける。
先程まで自分を掴んでいたデストワイルダーが、姿を消していた。
身体に熱を感じながらも、ブレイドは立ち上がる。

「どういう事…………!?」

一方で、タイガは身体をわなわなと震わせていた。
戻した覚えもないのに、デストワイルダーが消えてしまった事実によって。
この殺し合いに参加させられたライダー達に科せられた、制限の影響だった。
『龍騎の世界』からやって来た戦士は、ミラーモンスターを使役している。
だが、制限の効果によって彼らは、この世界に一分間しかいることが出来ない。
タイガがデストワイルダーを召喚してから、既にそれだけの時間が経過している。
タイムリミットが訪れたことで、ミラーモンスターは消滅してしまったのだ。
無論、この事実を知る者は誰一人としていない。

「お前、こんなことはもう止めるんだ! こんな戦いを続けて、一体何になるんだ!」

ブレイドは、何とか説得を試みる。
人の尊厳を奪う巨悪に屈して、誰かを殺して何になるのか。
大ショッカーは願いを叶えると言っていたが、そんな事があり得るわけがない。
そもそも、こんな訳の分からない戦いを強要させる連中が、真実を言うのか。
否、可能性は限りなく低い。
例え世界の崩壊が真実だったとしても、奴らに何の権利があってこんな事をさせるのか。
こんな不条理に満ちた戦いを、認めるわけにはいかない。
その思いを胸に、ブレイドは叫ぶ。

「言ったでしょ? 僕は英雄になるって。その為に、君は死んでよ!」

しかし、その言葉はタイガには届かなかった。
彼が戦う理由。
それは『英雄』という、称号を得る為。
彼は恩師である香川英行より、英雄の覚悟を学んだ。
『多くの者を救うためには、一つの者を犠牲にしなければならない勇気』が、必要であると。
つまり、自分の世界を救うために、参加者を皆殺しにする事だ。
そして英雄になって、皆から崇められる。
これがタイガを、動かす信念だった。
英雄への願望を胸に、デストクローを横薙ぎに振るう。

「ふざけるなっ!」

しかし、それは呆気なく弾かれた。
怒号と共にブレイラウザーを振るった、ブレイドによって。
激情によって放たれた一閃により、タイガは右腕に痺れを感じる。
それに構うことなく、ブレイドは獲物を振り続けた。
あまりにも身勝手極まりない、相手の言い分に怒りを覚えて。
同じように、タイガも両腕の爪を使って斬りかかる。

「英雄だと? 人を殺そうとする奴の、何処が英雄だっ!?」
「分からない? 英雄になるためにはね、大切な人を殺さなきゃいけないんだよ」
「バカなことを言うな!」
「そっちこそ!」

互いの意見は、平行線を辿っていた。
言葉と合わさるように、彼らの武器は激突を続ける。
ブレイドは、ブレイラウザーを縦一文字を描くように振るった。
タイガは、それを右腕に装着されたデストクローで、防ぐ。
金属音が鳴った瞬間、もう一つの爪をブレイドに突き出した。
だが、それが触れることはない。
命中する直前に、ブレイドは後ろに飛んだ。
それによって、デストクローは空振りに終わる。
空いた距離を詰めるために、ブレイドは勢いよく飛んだ。
そして、渾身の力を込めてブレイラウザーで突きを繰り出す。
迫り来る攻撃を防ごうと、タイガは両腕を交差させた。
瞬間、ブレイラウザーとデストクローが衝突。
その衝撃によって、タイガはほんの少しだけ後退してしまう。
足元はふらついてしまうが、すぐに整えた。
日の光が差し込む薄暗い廊下で、二人は睨み合う。
ブレイドは、その瞳に怒りを込めて。
タイガは、その瞳に野望を込めて。
それぞれの視線が、激突した。
しかし、それはすぐに中断されてしまう。

「「なっ――!?」」

突如、足元の床が沈んだ。
その直後、轟音と共に崩壊する。
あまりにも唐突すぎる現象に、ブレイドもタイガも対処できない。
彼らを支えていた床は、一気に瓦礫と化していく。
ブレイドとタイガは、崩落する通路と一緒に落下した。








時間が、ほんの少しだけ遡る。
矢車想は、生気が感じられない暗い瞳で、この病室で戦う二人のライダーを眺めていた。
片や光夏海が変身する、正義を自称する白い仮面ライダー。
片や電王と呼ばれた、悪を自称する紫の仮面ライダー。
仮面ライダーキバーラと仮面ライダーネガ電王が、互いに剣を振るって戦っていた。
純白の刃と真紅の刃は、一度激突する度に金属音が、狭い部屋に響く。
敵意に満ちた戦いの空間で、矢車は生身を晒し続けていた。
先程、突然この病室に現れたライダー。
いきなり『善』か『悪』のどちらか、と訳の分からないことを聞いてきた挙げ句、仲間になれと言ってきた。
それを断ると、自分のことを殺そうとする。
自分は死の運命を受け入れた。
そうすることで、本当の地獄に堕ちる事が出来る。
だが夏海は、あの白いライダーに変身してそれを邪魔しようとした。

(…………何故、お前は戦う?)

キバーラが戦う姿を見つめながら、矢車は心の中で呟く。
あの女は何故、戦うのか。
こんな戦いをして、何の意味があるのか。
何故、自分の死を邪魔するのか。
『正義』とやらの為か。
高潔な名前を背負った自分に、酔っているのか。
そして薄汚い自分を救った、英雄を気取りたいのか。

(くだらない)

矢車は、鼻を鳴らす。
ライダーに変身した夏海の姿が、茶番にしか見えなかった。
いくら戦ったところで、何かが変わる訳ではない。
自分達は、大ショッカーに命を握られているのだから。
この首輪がある限り、死に抗うことなど出来るわけがない。
それでも生き残るのなら、方法は一つだけ。
大ショッカーの人形となって、殺戮者になること。
たった一つ。
そうすれば奴らは、願いを何でも叶えてくれると言っていた。
現に、自分に襲いかかったあのライダーは、戦いに乗っている。
その理由は、どうせ自分の願いを叶えるため。

(『仮面ライダー』なんてのは…………そんなもんだ)

仮面ライダー。
弟を殺した老人、死神博士は世界の象徴などと、大層な言葉を飾っていた。
だが実際は、願いという餌に釣られて他者を潰す、醜い存在。
自分の前で戦う黒いライダーが、その証拠だ。
ここに連れてこられた連中も、どうせそんな人間ばかりだろう。
矢車が空虚な視線を向けている一方で、剣戟はぶつかり続けていた。
それと同じように、持ち主であるライダー達の目線も、激突する。

「たあっ!」

キバーラは、純白の輝きを放つサーベルを振るった。
病院に現れた電王とよく似た、仮面ライダー。
しかし、その素性は自分の知る電王とは、似ても似つかない。
あの世界で出会った電王は、口は悪いが無意味に殺生をする者ではなかった。
だが、このライダーは明らかに危険人物。
放置していたら、犠牲者は必ず出る。
そんなことを、許すわけにはいかない。

「遅いっ!」

正義に相応しい熱い感情を胸に、繰り出すキバーラサーベル。
それはネガ電王の一閃により、弾かれた。
続くように、ネガデンガッシャーで突きを放つ。
切っ先は、キバーラの華奢な身体に進んでいった。

「キャアッ!?」

甲高い悲鳴が、仮面から漏れる。
紫色の刃は、彼女の右肩に刺さった。
鋭い衝撃を感じて、身体が宙に吹き飛ばされる。
そのまま背中から、壁を突き破っていった。
勢いは止まらず、キバーラは床に叩き付けられてしまう。
しかし、瞬時に立ち上がった。
彼女の目前では、ネガ電王が得物の先端を向けているのが見える。

「ハッ、まるで話にならねぇ。やはり強いのは『悪』だな…………」

そう言うと、ネガデンガッシャーが一瞬だけ煌めいた。
刀身は、まるで血の色を思わせるくらいに赤い。
そこに刻まれている模様。鎧と合わさって、禍々しさを引き立たせるスパイスとなっていた。
『最強の悪』を自負するライダー、ネガ電王。
全身から放たれる覇気を感じて、キバーラは戦慄した。

(強い……!)

仮面の下で、夏海の頬から汗が流れる。
先程から何度もキバーラサーベルを振るったが、弾かれるばかりだ。
たまに鎧を切り裂く事はあるが、効き目があるように感じない。
むしろ、こちらが攻撃を喰らってばかりだ。
しかもその一撃は、あまりにも重い。
このままでは、負ける可能性が高かった。
でも、退くことはしない。

(士君も、ユウスケも、大樹さんも、みんな諦めなかった! だから私も……!)

諦めたりしない。
頼れる仲間達はみんな、どんな窮地に立たされても、その度に切り抜けてきた。
ここで目の前のライダーに屈することは、彼らへの裏切りに他ならない。
何より、矢車さんが後ろにいる。
あの人に生きる気力を取り戻させるため、今は戦わなければならない。
病院に空いた穴から、一陣の風が入り込む。
埃が舞い上がる中、キバーラは地面を蹴った。
両足に力を込めたことで、ネガ電王に向かって突き進んでいく。
そして、キバーラサーベルを横薙ぎに振るった。

「フンッ!」

ネガ電王は、それをネガデンガッシャーで受け止める。
激突し、鍔迫り合いが始まった。
二つの刃が擦れ、鋭い音が響いていく。
力が拮抗して、互いに睨み合った。
その最中、ネガ電王は後ろに飛んで距離を取る。
そして、ネガデンガッシャーの形を変えた。
近距離で戦うためのソードモードから、遠距離用のガンモードへと。

(あれは…………!)

キバーラには、見覚えがあった。
『電王の世界』を代表するライダー、電王はフォームチェンジに合わせて、武器の形も変えている。
だがこの悪い電王は、フォームを変えなくてもそれを行った。
その理由はただ一つ。
察した彼女は、防御の構えを取った。
直後、ネガ電王はネガデンガッシャーの引き金を引く。
銃声が響くと同時に、弾丸が放たれた。
空気を引き裂きながら、凄まじい勢いで進んでいく。

「くっ!」

白い刃を振るって、弾丸を防ごうとした。
しかし完全に落とすことは出来ず、一部の弾丸が着弾する。
痛みを感じるも、彼女は堪えた。

『FULL CHARGE』

突如、電子音が響く。
それはライダーパスを手に取ったネガ電王が、ベルトに翳した事で鳴った音だった。
バックルからエネルギーが、紫色の輝きを放ちながら噴出していく。
そのまま、ネガデンガッシャーを握る右腕に流れていった。

「終わりだ」

ネガ電王は呟きながら、銃口を向ける。
キバーラはそれを目にすると、サーベルを握る腕に力を込めた。
相手の気配を感じて、反射的に。
本能で構えを取った。
その直後、彼女の背中から光り輝く翼が生じる。
それはまるで、天使のようだった。

「やあああぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「くたばりやがれ!」

二人の叫び声が、同時に重なる。
キバーラは地面を蹴って突撃を行い、ネガ電王は銃のトリガーを引いた。
キバーラサーベルからは、翼のように眩い光が放たれて。
ネガデンガッシャーからは、真紅の光弾が放たれて。
それぞれ、敵に目掛けて突き進み、激突した。
キバーラの使うソニックスタンプの一撃と、ネガ電王の使うネガワイルドショットの一撃。
凄まじい威力を持つ二つの技は、病室という戦場で押し合っていた。
されど、それはすぐに終わりを告げる。
数秒の時間が経過すると、激突面で爆発が起こった。

「きゃあぁぁっ!?」
「ぐおおぉぉっ!?」

二つの悲鳴は、爆音に飲み込まれてしまう。
その衝撃によって大気は振るえ、キバーラとネガ電王は後ろに吹き飛んだ。
無論、余波は矢車にも及ぶ。
彼の身体は衝撃波で飛ばされてしまい、灰色の壁に叩き付けられた。
打ち所が悪かったのか、そのまま矢車の意識は消えていく。

「矢車さんっ!?」

気を失った彼の姿を見て、キバーラは狼狽した。
あの人を守るために戦っていたのに、巻き込んでしまうなんて。
彼女は急いで、倒れた矢車の元に駆け寄ろうとする。
誰も、気がつかなかった。
戦いの余波によって、天井に亀裂が走っていることを。
その影響で、コンクリートの粉が降り注いでいることを。
そして、限界が訪れていることを。
キバーラは前に一歩だけ、踏み出す。
その直後だった。

「うあああぁぁぁぁぁぁっ!」

突如、轟音と共に天井が崩れ落ちる。
それに混じって、男の悲鳴も振ってきた。
天井を構成するコンクリートは瓦礫と化して、床を容赦なく砕く。
そして、粉塵が辺りの視界を包んでいった。

「えっ!?」
「何だっ!?」

キバーラとネガ電王は、突然の出来事に驚愕する。
そんな中、煙はすぐに晴れていった。
そして、来訪者の姿を二人に映し出す。

「痛っ…………どうなってるんだ?」

現れた存在は、キバーラにとって見覚えがある者だった。
赤い瞳、銀色と青の鎧、バックルに刻まれたスペードのマーク。
それは『ブレイドの世界』を代表する仮面ライダー、仮面ライダーブレイドだった。

「貴方は…………ブレイド!?」
「えっ?」

ブレイドと目線を合わせたキバーラは、思わず名前を呼んでしまう。
彼は、あのブレイドなのか。
自分達が旅の途中で出会った、剣立カズマ。
いや違う。名簿には、彼の名前は書かれていない。
だとすると、もう一人の仮面ライダーブレイドなのか。
かつて、世界の崩壊を防ぐために士を襲った、ライダーの一人。
剣崎一真なのか。
その推測はある意味では正解で、ある意味では間違いだった。
目の前に立つ仮面ライダーブレイドは、確かに『剣崎一真』が変身している。
しかしこの『剣崎一真』は、ディケイドの事は何も知らない、別の時間からやって来た存在。
同じように、キバーラもこの『剣崎一真』の正体を、全く知らない。
この事実が、一体どのような運命を導き出すか。










(何で俺のことを……? それに、このライダー達は一体?)

廊下からこの階に落下したブレイドの中に、疑問が広がっていく。
タイガと戦っていたら、いきなり床が崩れた。
その先に現れたのは、見知らぬ二人のライダーと倒れている男がいる。
そして、自分の名前を知っている白いライダー。
何がどうなってるのか、今の彼には分からなかった。
しかしやるべき事が、一つ出来る。

(あのライダー……どうして俺の名前を知ってるんだ?)

そう、ブレイドの名前を呼んだ白いライダー。
声からして、女性と思われる。
まさか、BOARDの関係者なのか。
だが、考えていても始まらない。
まずはタイガを止めて、このライダーから話を聞くべき。
ブレイドの行動方針は、こうして決まった。








「おい、お前は『善』か? それとも『悪』か?」

ネガ電王は、目の前に現れたライダーへ声を掛ける。
白虎を思わせる姿のライダー、タイガに。
その理由はただ一つ、自分の戦力に加えるため。
もしも、正義を自称するなら叩き潰す。
もしも、悪を自称するなら迎え入れる。
二つに一つ。
シンプルで分かりやすい、望みだった。

「僕? 僕はどっちでもないよ…………だって『英雄』になるんだから」
「そうか」

タイガの答えを聞いて、ネガ電王は決める。
奴も、自分が潰さなければならない奴だ。
英雄。
自分にとって正義と同じくらい、憎むべき存在。
そんな奴を生かしておく理由など、全く無い。

「なら、てめえにも見せてやるよ! 最強の『悪』の力を!」
(ふふっ、僕は英雄に近づけるんだ…………!)

ネガ電王とタイガは、互いに武器を構える。
そして、彼らは地面を蹴った。
ネガデンガッシャーとデストクローは、金属音を鳴らしながら激突する。








彼は、天に向かって真っ直ぐに伸びる、巨大な赤い塔から目を背けるように歩く。
日本に住む者なら、誰でも知っている東京タワー。
そして、空から降り注ぐ太陽の輝き。
それがまるで、自分の最も忌むべき男を象徴しているかのように見えた。
だから彼は、それら二つから目を背ける。
本当なら自分の姿も、反吐が出るような物だった。
自分が存在する『カブトの世界』を代表する男、天道総司をそのまま複製したような、この身体。
だが奴と自分の境遇には、天と地ほどの差がある。
奴は太陽の下、ぬくぬくと人生を過ごした。
だが自分は望んでもいないのに、こんな姿にされた挙げ句、あらゆる自由と尊厳を奪われた。
いつからこうなったのかは、もう覚えていない。
覚えたところで、何の意味もないからだ。

「天道、総司…………ッ!」

憎悪に満ちた声で、名前を呟く。
これは自分が潰そうとしている男の名。
これは自分から全てを奪った男の名。
これは自分の全てを否定した男の名。
何故奴が太陽の下を歩けて、自分が歩けない。
何故奴が全てを手に入れて、自分は何も手にすることが出来ない。
何故奴が人間として生きられて、自分は蛆虫同然の生き方しかできない。
何故世界は奴を受け入れて、自分を受け入れない。
自分と奴で、何が違う。
姿も声も身体も、全て同じだ。
奴が普通の人間で、自分がワームだからか。
それだけか。
たったそれだけの、小さな理由でか。

(僕は、好きでこんな姿になった訳じゃないのに?)

自分は、望んでこんな姿になった訳じゃない。
それなのに、世界は自分を受け入れないのか。
そういうことなら、そんな世界は必要ない。
壊してしまえばいいだけ。
本当なら、こんな姿でいることにも耐えられなかった。
出来るならば、この顔の皮膚を全て剥いでやりたい。
だが、自分の目的は違う。
この会場に集められた全ての命を潰し、全ての世界を滅ぼすことだ。
特にあの男、天道総司は徹底的に苦しめてから、殺す。
ただで殺すことはしない。
自分の受けた仕打ちを全て、味わわせても足りない。
手足を千切り、目を潰し、骨を砕く。
こうなってはあの男も、薄汚い本性を現すはずだ。
そして、惨めな姿で自分に命乞いをするだろう。
だがそうなっても、許すつもりはない。
血の一滴が枯れるまで、痛めつける。

「僕に与えた仕打ち…………そのまま返してあげるよ」

彼の瞳は、まるで幽鬼のようだった。
そのままゆっくりと、足を進める。
『天道総司』への、尽きることがない憎しみを全身に込めて。
やがて、彼は見つけた。
自分の犠牲となる、哀れな生け贄が集う場所を。
それは、病院。
耳を澄ませると、音が聞こえる。
どうやら、騒ぎが起こっているようだ。
なら、自分のやることは一つ。
彼は手に取った。
自分の相棒とも呼べる黒いカブト虫、ダークカブトゼクターを。
既に、銀色に輝くライダーベルトを腰に巻いていた。
いつものように、言葉を口にする。

「変身」
『HENSIN』

ダークカブトゼクターから、鈍い声が発せられた。
その直後、ベルトからタキオン粒子が吹き出してくる。
一瞬で全身を包んで、ヒヒイロノカネと呼ばれる金属へと形を変えた。
そして、銀色に輝く重量感溢れる鎧に、変貌。
巨大な瞳は、金色の輝きを放った。
こうして、彼は変身を果たす。
仮面ライダーダークカブト マスクドフォームの名を持つ、マスクドライダーシステムが生み出した、戦士へと。
闇のカブトに選ばされた彼は、動き続けた。
全ての世界を、破壊するために。





【1日目 午後】
【E-4 病院/一階診察室】
※診察室の天井と壁が破壊されています。
※二階の廊下が破壊され、一階診察室と繋がっています。
※二階の病室の壁が、破壊されています。





【剣崎一真@仮面ライダー剣】
【時間軸】第40話終了後
【状態】疲労(小)、ダメージ(小)、仮面ライダーブレイドに変身中
【装備】ブレイバックル@仮面ライダー剣、ラウズカード(スペードA~6.9)@仮面ライダー剣
【道具】支給品一式、ガイアメモリ(ヒート)@仮面ライダーW、ケータッチ@仮面ライダーディケイド
【思考・状況】
基本行動方針:人々を守り、大ショッカーを倒す。
0:キバーラから話を聞いて、東條を止める。
1:橘朔也、相川始と合流したい。
2:何故、桐生さんが?……
3:Wとディケイドが殺し合いに否定的ならアイテムを渡したい。
4:龍騎の世界で行われているライダーバトルを止めたい。
【備考】
※龍騎の世界について情報を得ました。
※ブレイドに変身してから、5分の時間が経過しました。


【矢車想@仮面ライダーカブト】
【時間軸】48話終了後
【状態】気絶中、弟たちを失った事による自己嫌悪、あらゆる物に関心がない
【装備】カードデッキ(リュウガ)@仮面ライダー龍騎
【道具】支給品一式、不明支給品(0~1)
0:…………(気絶中)
1:光夏海と行動するが、守る気はない。
2:殺し合いも、戦いの褒美もどうでもいい。
3:天道や加賀美と出会ったら……?
【備考】
※支給品は未だに確認していません。
※ディケイド世界の参加者と大ショッカーについて、大まかに把握しました。
※ゼクトバックルは床に放置しています。


【光夏海@仮面ライダーディケイド】
【時間軸】MOVIE大戦終了後
【状態】疲労(中)、ダメージ(中)、仮面ライダーキバーラに変身中
【装備】キバーラ@仮面ライダーディケイド
【道具】支給品一式、不明支給品(0~2)
【思考・状況】
0:まずは目の前の謎の電王を倒す。
1:矢車と行動する。放っておけない。
2:士、ユウスケ、大樹との合流。
3:おじいちゃんが心配。
4:キバーラに事情を説明する。
5:このブレイドは一体…………?
【備考】
※支給品は未だに確認していません。
※矢車にかつての士の姿を重ねています。
※矢車の名前しか知らないので、カブト世界の情報を知りません。
※大ショッカーに死神博士がいたことから、栄次郎が囚われの身になっていると考えています。
※キバーラは現状を把握していません。
※目の前にいるブレイドが、自分の知るブレイドとは別人であると知りません。
※キバーラに変身してから、5分の時間が経過しました。



【ネガタロス@仮面ライダー電王&キバ クライマックス刑事】
【時間軸】死亡後
【状態】疲労(小)、ダメージ(小)、強い怨念 仮面ライダーネガ電王に変身中
【装備】デンオウベルト+ライダーパス@仮面ライダー電王
【道具】支給品一式、不明支給品(0~2)
【思考・状況】
1:最強の悪の組織を作る。
2:まずは目の前の正義と英雄を倒し、矢車を殺す。
3:キバに似てる……?
4:様々な世界の悪を捜す。
5:大ショッカーは潰すか、自分の組織に招き入れる。
6:電王、キバのほか善は全て倒す。
【備考】
※ネガ電王に変身してから、5分の時間が経過しました。


【東條悟@仮面ライダー龍騎】
【時間軸】インペラー戦後(インペラーは自分が倒したと思ってます)
【状態】疲労(小)、ダメージ(小)、仮面ライダータイガに変身中(デストワイルダー二時間召還不可)
【装備】タイガのデッキ@仮面ライダー龍騎
【道具】支給品一式、不明支給品0~2
【思考・状況】
1:全ての参加者を犠牲にして、ただ一人生還。英雄になる。
2:自分の世界の相手も犠牲にする。
3:まずは剣崎と紫のライダー(ネガタロス)を犠牲にして強くなる。
4:基本的には病院で参加者を待ち伏せてから殺す(二階の廊下が気に入ってます)。
【備考】
※剣の世界について情報を得ました。
※タイガに変身してから、5分の時間が経過しました。


【擬態天道総司(ダークカブト)@仮面ライダーカブト】
【時間軸】第47話 カブトとの戦闘前(三島に自分の真実を聞いてはいません)
【状態】健康 情緒不安定気味 仮面ライダーダークカブトに変身中
【装備】ライダーベルト(ダークカブト)@仮面ライダーカブト
【道具】支給品一式、不明支給品
【思考・状況】
0:病院にいる参加者達を、全員殺す。
1:天道総司を殺し、『天道総司』に成り代わる。
2:全ての世界を破壊するため、手当たり次第全員殺す。
3:特に優先的に『カブトの世界』の五人を殺害する(最終的には自分も死ぬ予定)。
4:僕はワームだった……。
【備考】
※ 名簿には本名が載っていますが、彼自身は天道総司を名乗るつもりです。
※ 参戦時期ではまだ自分がワームだと認識していませんが、名簿の名前を見て『自分がワームにされた人間』だったことを思い出しました。詳しい過去は覚えていません。


027:Iは流れる/朽ち果てる 投下順 029:『クウガ』と『アギト』
027:Iは流れる/朽ち果てる 時系列順 029:『クウガ』と『アギト』
019:near miss 剣崎一真 041:悪の組織は永遠に
019:near miss 東條悟 041:悪の組織は永遠に
019:near miss 矢車想 041:悪の組織は永遠に
019:near miss 光夏海 041:悪の組織は永遠に
019:near miss ネガタロス 041:悪の組織は永遠に
002:My name is 擬態天道 041:悪の組織は永遠に