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『クウガ』と『アギト』◆LQDxlRz1mQ


 疲労が、ただゴオマの体の動騒を奪っていた。
 体の節々が自分のものではないかのように、立ち上がることもままならない苛つきを隠せなかった。
 彼の属するグロンギという集団は、戦いと殺しがその人生といっても過言ではない。
 そんな闘争本能に従えない彼に、価値は無いと言っていい。
 それを自覚している以上、ゴオマはその「価値」を取り戻すための思考を始めた。

 何をすべきか。
 周りを見渡すが、使えそうなものは何もない。
 外出の必需品である傘は手元にあるが──それを杖に立つことさえ、体は許さなかった。
 彼に立ち上がるだけの力を与えようというものは、この場には無い。
 そこで、デイパックの中を探る。先ほどの「ガイアメモリ」に体力を回復させる効果が無い──むしろ、それを奪うものであるというのは人でない彼にも理解ができた。

 そっとジッパーに手をかけ、中身を探っていく。
 一部の道具たちは、おそらく全員に支給されたものだろう。
 そんなものはいい、とゴオマは手を動かす速度を上げる。彼が探すのは、見たことのあるものではなく、個々に渡されたはずの道具なのだから。


「ボセグ ゴセン ヅビバ (これが おれの 武器か)」


 見覚えのない道具は、たったひとつ。
 眠りにつく、たった一匹の蝙蝠の寝息である。
 デイパックの闇から解放された赤と黒のそれは、漏れた光を不快がるように、目を開けた。

 蝙蝠──それは、ゴオマにとって近しい存在である。
 かといって、それと群れはしない。しかし、不思議とそれを見つけたことは彼の頬を緩ませた。


「コラッ! 昼間から起こすな。…………なんだ、お前は?」

「ボン ヅビパ ザバグボバ(この 武器は 話すのか)」

「日本人じゃないのか……?」


 蝙蝠は全身黒というゴオマの姿、そして言葉を警戒した。
 濁音にまみれた言葉の暴力性。それをなんとなく感じ取った。
 ……が、言葉の通じない相手に、ゴオマは咄嗟にリントの言葉で対応する。


「おまえに、用がある」

「……俺に何の用だ」

「誰かを、ここに連れて来い」


 今の動けないゴオマにとって、必要なものは使える支給品と、人の屍だった。
 助けなどではなく、少しでも使える力を殺人に奮い、その支給品を奪う。逆に相手に殺されることは絶対に考えない。
 それがダグバの力を手に入れた今の彼の、自信というものだった。


「ふざけるな。……と言いたいところだが、お前の様子を見る限りでは助けがいるようだな」

「助けなど、いらん」

「無理するな。人が要るんだろう? ならば、呼んできてやる」


 ゴオマの考える意図とは違っているが、意思は伝わったらしい。
 人を呼んでもらえれば、それで大いに構わないのだ。目の前で起こる「死」に、この蝙蝠がどう反応するかはわからないが。


「お前は、俺が守ってやる。ありがたく思え」


 そう言い残して、蝙蝠は軽やかに空中を遊泳し、光の漏れる場所へと消えていく。
 彼の向かった先を、見つめようともせずにゴオマは笑みを浮かべた。
 ここに来る獲物を惨殺する未来を想像しているのか、それともその反動を忘れて強い力におぼれているのか──。
 工場の闇に黒服を溶かし、笑い声だけがそこに残っていた。



△ ▽



(長いな~、やっぱり……)


 津上翔一は、ゆっくりと近づいてくる街並みを遠く見上げた。
 道路に立ち上がる彼は、この場所で「護るべきもの」を探している。
 戦場に怯える弱き人々を──その命を、護るために、長い道のりを歩いてきたのだ。
 この街並みの中に、怯える人間がいるかもしれない。隠れている人間がいるかもしれない。
 そんな人間が存在してしまう現実を呪いながら、彼は街へと近づいていった。


「……俺も、シャキッとしないと」


 ヒビキという男と出会った彼は、人を護る人がどんな顔をするのか──それを確かに知った気がした。
 微かな不安を帯びながら、しかし人の持つ大切なものを護ろうと、そんな気概を感じるまっすぐな瞳。
 それを、人の前に出たときも忘れてはいけないだろう。
 翔一は、その頬を意気込みとともに軽く叩いた。
 自分はアギトだ。そうである以上、人を殺させない。
 そんな、護りし者の気合。それを外に逃がさないため。


「おい、そこの男」


 翔一は背後からかけられた声に、顔を顰める。
 先ほどまでは、確かに四方のどこにも人間なんていなかった。だというのに、こんなに近くから聞こえる声は何か。
 足音も、気配さえも殺して近づいたそれは何か。

 後ろを向いたとき、そこにあったのは蝙蝠──と言うには、不自然な体をしているが、それ以上の呼び名を考えようもない生物が空中を浮遊していた。
 一秒ごとに揺れる羽。羽音は小さい。気づくはずも無いだろう。


「蝙蝠さん、ですか……?」

「ああ。俺の名前はキバットバットⅡ世だ」

「俺、蝙蝠と話すのは初めてですけど、……なんか、変わってますね」


 相手がアンノウンではない。それは翔一の顔を緩ませるに充分であった。
 通常の人間とは、真逆の対応で返す翔一は、その存在を特殊とは知りつつも、いつも通りのマイペースで返す。


「お前も随分変わっていると思うが……まあいい、簡単に言ってやろう。……助けが必要な奴がいる」


 翔一はその一言を聞いて、顔色を変えた。
 今、翔一が護りたいと願っている存在が、助けを呼びに来たらしい。
 人が傷つくのは嫌いだが、もし傷ついた人間が助けを求めているときは、それに応じる。──それが津上翔一という男なのだから。


「ついて来られるか?」

「ええ。今すぐ助けに向かいます! で、場所は?」

「こっちだ!」


 キバットⅡ世の飛んでいく先は、翔一が向かってきた場所とは真逆である。
 翔一は、自分が向かおうとしていた場所の建物の群れを一瞬だけ、未練でもあるように振り替える。
 そこに助けを求めている人がいるかのような予感がして──。


(でも、俺が今やるべきことは人を助けることだから……俺、行かなくちゃ)


 翔一は草原を突っ切り、キバットの後を追っていった。



△ ▽



「おーい、助けを呼んできてやったぞ」


 やっとか、とゴオマは思う。
 キバットの向かった場所が非常に遠かったせいか、その時間の経過は非常に長かった。
 ゴオマにとっても、退屈しか呼ばない。節々の痛みも癒されぬまま長い時間が経過していたのだ。
 体中の痛みを我慢し続けるだけの一時間数十分──話す相手も、戦う相手もない、というのは我慢ならないものである。
 それは強いストレスであり、赤黒の蝙蝠に対する怒りにも繋がっていた。


「今、助けに行きますから!」

「こっちだ、翔一」


 遠くから聞こえてくるそんな声に、笑みを漏らす間もない。
 力を発動させる。そのためにゴオマは体に力を込める。

 ……が、彼はまだその姿を異形へと変えることができなかった。
 あとほんの数分、彼に与えられた時間は足りなかった。


「大丈夫ですか!?」


 と、ゴオマを見つけた翔一は瀕死の男に近づいた。
 ゴオマの姿は変わっていない。……そのため、翔一は相手を「人間」としたうえで近づいた。


「……大変だ、これだけの傷じゃあ歩けないでしょう……」


 ゴオマは、もう一度変身を狙う。が、またしてもその姿は人のまま変わることはない。
 蝙蝠としての自分を発揮できないのだ。


「……もしかして、こいつにやられたんですか?」


 そんなゴオマの思惑も知らない翔一は、先ほどから気になっていた「それ」に目をつける。
 赤い異形──その、ピクリとも動かない姿。
 それは、彼のいた世界で言うなら、アンノウンという存在に酷似していた。

 彼らは、アギトに覚醒する人間ばかりを狙う。
 決して人は殺さない。もし、この男がアンノウンに狙われたとしたなら。そして、そのアンノウンを倒したなら、きっと──


(この人はアギトだ。……それなら尚更、一緒にいてあげないと)


 この殺し合いにアンノウンが参加している以上、彼はまた狙われることになる。
 それを阻止する、それが彼の──仮面ライダーのやるべきことなのだから。


「でも、この人の怪我、ここにあるものじゃ治せそうにないな……」


 アギトならば、ある程度治癒力は高いはずだが、現状の彼はアギトに変身したことによって逆に強い疲労感に陥っている。
 例えるなら、ギルス──。不完全なアギト。


 そんな思考の中に潜り込んだ翔一を、──彼が何を考えているかは知らないが、ゴオマは嘲笑った。
 ようやく、ようやくだろう。
 不思議な力が血潮とともに、ゴオマの中を駆け巡っている。
 その力が、解き放たれた。
 彼は、その究極の力を使い、再び黒の蝙蝠へと変身した。


「──やっぱり、アギトだったんですね」


 翔一は、変身したゴオマを前にしても、妙に達観した姿勢で見守る。
 そう、彼は目の前の男のアギトとしての不完全な姿を見守っているのだ。
 ゴオマが、湧き上がる力とともに立ち上がり、翔一に右の拳を送り込んだ。
 その受身を取りながら、翔一の腰にオルタリングが光る──変身。

 仮面ライダーアギト。
 完全なアギトである彼が、目の前の「不完全なアギト」を止めるためにその力を目覚めさせた。


「クウガ!?」


 ゴオマがそう誤解するのも無理はない。
 その複眼、そのベルト、その金色の角。全てがゴオマらグロンギの宿敵に酷似していた。
 ──ゴオマにとっては、都合の悪い相手に他ならない。


「とんでもない展開になってきたな……。俺は知らんぞ」


 キバットは天上にその足をつけて二人から距離を置く。
 戦いを避けつつも、蝙蝠の怪人には何か──キバの面影を思い出さざるを得ない。
 全く別の変身方法、全く別の形状とはいえ、蝙蝠のシルエットは同じである「それ」の姿を見つめる。


(この人、あんまり攻撃できないな……)


 傷だらけの体で攻撃をするゴオマに、アギトは防御の姿勢を固める。
 倒すのが目的でない戦いは、なかなか難しいものがあるのだ。
 一撃、一撃、一撃。突き刺さるように痛い──が、反撃はできない。


「クウガ ヂバサゾ ヅバパバギボバ(クウガ 力を 使わないのか)」


 アギトの耳に流れる、意味不明な言語。
 もう一度、「クウガ」という単語が聞こえている。
 そのフレーズが、頭のどこかでつっかかってくる。

 だが、ゴオマはその思考から何かを取り外す間も与えなかった。
 次の一撃。最早、グランドフォームの彼では防御し切れない攻撃であった。


「すみません!! 誰だか知らないけど──」


 ゴオマの傷を抉るような、アギトのパンチ。
 その、たった一撃でゴオマは全身にしびれるような痛みを帯び、その体を床に倒した。


「少し痛いけど、我慢してもらいます」


 倒れた彼に、馬乗りになってその首筋に軽いチョップを見舞わせる。
 と、全身傷だらけに疲労という危機的状態であったゴオマは意識を失い、その体を人のものへと戻らせた。

 最早、彼にはモモタロスによって変身すらままならない傷を受けていたのだ。
 これから先の戦いに響く、重大な傷の数々を。


「容赦ないな」

「これくらいやらないと、この人は止まらないかもしれないから」

「まあ、妥当な判断だろうな」


 倒れたゴオマを、アギトの変身を解いた翔一が背負った。
 流石に重いようで、平均を保つには数秒の間をおくことになる。
 だが、彼を背負った翔一に迷いはなかった。


「キバット、俺、この人を連れて病院に行ってくる」


 病院のあるエリアは遠く、どれだけ時間がかかるかわからないが、このまま工場などにいてもまず彼は助からないだろう。


「なら、俺はバッグの中で昼寝をさせてもらう」

「ああ、キバットは休んでて」


 そのまま、キバットは翔一のデイパックの中へと消えて行った。
 津上翔一──彼はその遠い道程を越えて、不完全なアギトを救おうとしていた。


 それがかつて世間を騒がせた未確認生命体である、ということさえ知らずに──。


【一日目 午後】
【G-1 廃工場の一室】


【ズ・ゴオマ・グ@仮面ライダークウガ】
【時間軸】第39話「強魔」、ダグバに殺害される前
【状態】疲労(極大)右頬に軽度の裂傷、左掌に軽度の裂傷、右足に重度の裂傷。気絶中。翔一に背負われてます。ズ・ゴオマ・グ究極体に二時間変身不可
【装備】なし
【道具】支給品一式、ガイアメモリ(スミロドン)、不明支給品0~1
【思考・状況】
※以下、気絶前の思考です。
基本思考:優勝する。できればダグバは自分が倒す。
1:とりあえず休む
2:クウガ……?
【備考】
※怪人体には究極体にしかなれず、強化形態の制限時間に準じます。
※ルールブックは粗方読み終わりました。


【津上翔一@仮面ライダーアギト】
【時間軸】本編終了後
【状態】健康 二時間変身不能(アギト)
【装備】なし
【道具】支給品一式、コックコート@仮面ライダーアギト、ケータロス@仮面ライダー電王、ふうと君キーホルダー@仮面ライダーW、キバットバットⅡ世@仮面ライダーキバ
【思考・状況】
1:打倒大ショッカー
2:殺し合いはさせない
3:この男性(ゴオマ) を病院に連れて行く。
4:大ショッカー、世界崩壊についての知識、情報を知る人物との接触
5:木野さんと会ったらどうしよう?
【備考】
※ふうと君キーホルダーはデイバッグに取り付けられています。
※響鬼の世界についての基本的な情報を得ました。
※ゴオマを「不完全なアギトに覚醒した男」、モモタロスを「アンノウン」と認識しています。


【共通備考】
※G-1の廃工場の一室にモモタロスの死体(首輪付き)と、モモタロスォード、モモタロスのデイパック(不明支給品無し)があります。


028:勝利か敗北か 投下順 030:Xの可能性/悲しみを背負い
028:勝利か敗北か 時系列順 030:Xの可能性/悲しみを背負い
014:二人の船出 津上翔一 042:三様
022:代償 ズ・ゴオマ・グ 042:三様