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そして、Xする思考◆LQDxlRz1mQ



 黄色の仮面ライダー電王が、吹き飛ばされたその身を起こす。
 バード・ドーパントにはそのまま逃げてしまったらしい──まあ、さほど遠くにいるというわけでもなさそうだが。
 斧を飛ばして手元に戻るような距離でないのは確かであった。


──今は逃がそう、キンタロス──

「どうしてや、良太郎? あいつ、あのまま放っておいたら……」

──まずは、もっとやることがあるでしょ?──


 そう、目先の戦闘によって忘却の彼方にあったが、そういえば二人の少女の存在がこのホテルにはあったのだ。
 下手に二人を単独行動させるわけにはいかない。──亜樹子はともかく、もう一人の少女に関しては信頼感すら沸いていないのだ。
 それは、亜樹子にとっても、あきらにとっても危険。


「よし、あいつはとりあえず後回しや」


 ──そして、今。
 良太郎は眼前のドアをノックする。亜樹子でない方の少女は、つまるところの全裸シーツ。
 ウラタロスとしては随分そそる姿なのだが──この扉の向こう側では少女が着替えているらしいという事実は、良太郎には気まずい。彼は男でありながら、そういう性格なのだから。


「さっ、良太郎くんももう入っていいよ」


 ドア越しに、亜樹子のそんな声が聞こえた。
 一瞬、女性二人のいるホテルの一室に抵抗があってドアノブの前で手が止まるが、すぐに良太郎は彼女たちのいる部屋に向かった。そんなことを考えている場合ではない。

 そこにあったのは、ようやく落ち着いたといえる少女の姿である。
 ホテルにはあまり派手な服はなく、傍らの亜樹子に比べると地味めな印象を受けるが、その少女の印象には合致している。


──どうせ僕が、すぐにさっきの姿にしてあげるのにね──

──ウラタロス、こんな時に冗談はやめようよ……──

──本気も本気だよ。……と、こんな話は置いといて、この女の子の名前聞いとかなきゃね──


 そうだった、と良太郎はふと我に返る。
 良太郎がそれを聞こうとしたとき──


「ねえ、君の名前は何かな?」

こういう役回りをするのは当然、ウラタロスである。
 何が何でも女の子と話したいというのが彼の理想。というよりは、欲望。
 それに忠実なのがイマジン。ウラタロスは、甘い吐息を漏らしながら少女の体に近づいていく。


「天美あきらです。あの……野上良太郎さんですよね?」


 あきらという少女は一応、その名前を覚えていた。
 「八番目の世界」の人間は、「モモタロス」「リュウタロス」「ネガタロス」「牙王」と特殊な名前ばかりで、その中にあった「唯一まともな名前」だったから不思議と印象に残ったのだ。
 それは、特殊な人間の中にいる唯一の「常識人」を連想させる。


「ええ……もしかして僕の名前を気にしてくれたのかな?
 実は僕も、君の名前が気になってたんだ。まさかこれって運命──」


 パコッ。
 スリッパが良太郎の頭を叩く、鈍くて綺麗な音。
 当然だが、亜樹子の攻撃だ。あきらは困ったような顔をしながらも、少しだけ微笑んだ。


「まあ、とりあえず僕たちはしばらく一緒にいるってことでいいよね?」

「ええ。仲間は多い方が心強いです」


 先ほどのこの少女への不安などを吹き飛ばすかのように、あっさりとあきらは仲間になる。
 ウラタロスの理想であるハーレムが、早速ここに完成してしまったのである。

 そんな時、外の異様な騒がしさ──不思議な羽音が、良太郎たちの耳を打った。
 それはまさに、戦いの声。音の主は、最低でも二人いる。


「良太郎くん!」

「うん、わかってる……。僕は行って来るから、二人はここで待ってて」


 ウラタロスは二人の少女との至福のひと時を惜しみながら、戦いの場所を目指して走る。
 釣り──そんな可能性もあるが、二人がいる限りこの近辺を危険に晒すわけにはいかないのだ。


──こういう時は、頼んだよ、キンちゃん──

──おう、任しとき──


 ドアの先にあるのは、U良太郎ではなくK良太郎。


 ──そして、あきらはいつの間にか、それを追うように扉に向かっていた。
 この先、自分が必要となっている場所がある気がして。
 そこに人がいるというのなら、助けを求めている可能性もあると考えて。
 とにかく、あきらはそれを追いたくて追いたくて仕方がないのだ。


「……あ~もう! 二人とも行っちゃうなんて、私聞いてない!」


 部屋に残ったのは亜樹子ひとり。だが、こうしてはいられない。
 ひとりでこんなところにいても仕方ないのだ。
 すぐに亜樹子もドアの向こうへ駆けて行った。


「えろう根性の据わった女やな。だが、気をつけろよ」


 追いついてきた二人の少女を追い返す術を、キンタロスの憑いた彼は知らない。
 いや、知ってはいるが──その少女たちの支援を煩わしく思うような男ではなかった。ただそれだけの話である。


 三人の行く末にあったのは────


△ ▽


 空を飛ぶのは緑の怪人。──バード・ドーパント。
 その姿を変えたのは、村上峡児である。


 空気を切って、空を飛ぶ高揚感に見舞われ、思わず自分が逃走をしていることさえ忘れている。
 異世界の怪人が使う、その不思議な力。オルフェノクには及ばないが、やはり人類の進歩・進化が生み出した快感に打ちひしがれてしまう。
 人の科学の進歩は人を異形に変え、空を飛ぶ力を生み出した!
 もしかすれば、開発したのは異世界で同じように進化を果たした人類の力なのかもしれない。
 だが、もはやそんなことは関係ない。空を飛ぶことなど、宙を浮くことのできる彼には難しいことではないはずなのに──不思議な快感が頭の中の、縫合されていた何かをほどいていく。



 ガイアメモリの力。
 地球の持つ記憶の素晴らしさ。
 表面上は、そんなものに溺れている感覚。
 ──内面を巡っているのは、そんな圧倒的な力。
 敵を吹き飛ばし、地面を離れたこの感動。



 そんなバードの真横を、白い障害が遮り、一瞬だがバードの飛行を妨害する。
 バードはバランスを崩すが、体勢を立て直してその敵を目で捕捉する。


 空から落ちる、もうひとつの何か。
 それは、薙刀である。誰がどこから落としたのか。
 とにかく、見下ろすとそれを拾う白の戦士がいた。


 仮面ライダーファム。バードは知らないが、その戦士にはそんな名前があった。
 バードの体を、真下から槍のように投げられた剣がぶつかる。
 刃ではなく柄だが、その力を前に、バードの重みは簡単に地面に落とされた。真下は草原。土でなければ、バードがすぐに起き上がることはなかっただろう。
 そうして起き上がったバードを、仮面ライダーファムがもう一つの剣──ブランバイザーが襲う。
 絶体絶命である。
 敵の正体を知らないままここで負けるというのは、村上のプライドが廃ってしまう。──だが、オルフェノクの時と同じ要領で真横に避けようとした彼は、それをうまくかわすことができなかった。
 力が足りない。
 上級オルフェノクという「強すぎる力」では、それに比べて弱い力を制御するのが難しかったのか。


 避けるのが一瞬遅れる。
 ファムはそのサーベルをバードの腹に向けて突き出し、死を与えるために向かっていく。



「ぐっ……!」



 一瞬だけその腹に刺されたような痛みを感じるが、それは本当に一瞬の出来事であった。
 何が起こったか──上空に放たれたソードベントの薙刀は、ブランバイザーの真上に落ち、それを弾き返していた。
 ファムはどうやら、自らの攻撃によって止めを反らしたらしい。
 だが、すぐにまた止めを刺しに来るに違いない。そう思い、バードは構える。

 しかし、ファムは何かに気づいたようにバードに背を向けた。
 バードはその「何か」が気にかかり、周囲をきょろきょろと見回す。



「そこまでよ、ドーパント!」



 バードが後ろを振り向くと、そこにあるのは三人の男女の姿である。
 戦いの中で、逃避を忘れたバードは多少の焦りを感じながら、三人と対峙する。



「もう一回いくで! 変身!」



 デンオウベルトを撒いて、ライダーパスを通過させる良太郎。
 仮面ライダー電王としての姿を望んだキンタロスであったが、──その体は装甲が包んではくれない。
 彼の姿は、野上良太郎の姿を維持しているのである。
 滑稽にも、変身ポーズは取っただけで終ってしまう。



「どういうことや!?」


「なにやら、策が外れたようですね」



 バードは再び、羽根を交えた突風を三人に送る。
 変身していない彼らは、あっという間に風に押されてしまった。
 だが、村上の目的は彼らの殺害ではない。このまま放っておいても村上に害はなく、むしろ弱者に手を下すことの方が遥かに──上の上の者としては小物すぎる。
 彼らがこうして視界を奪われている間に逃げようと、バードは彼らに背を向け、翼を開いた。


 ──だが、そんな彼の眼前から駆けて来る一人の戦士。



「ウガァァァァァァッ!!!」


 そんな咆哮とともに、葦原涼の変身した銀色の仮面ライダー──ガイが、ギルスの要領で猛獣のようにバードに飛び掛った。
 その武器は己の体。それのみであった彼のパンチが突き刺さるように痛いのは当然であった。



(全く次から次へと……ついていないですね)



 反撃するには、バードの能力は少なすぎた。
 その腹、胸、顔を次々と殴打する緑の怪人に対抗する術を、バードは持っていないのだ。
 その体を突き刺す一撃、一撃を黙って食らうしかない。
 そのもどかしさを痛感する。



 その瞬間──。
 バードのメモリは、彼の首輪から落ちて行く。
 十分間。それだけの時間が、この戦いでは過ぎてしまったのだ。
 ガイが殴ろうとしたのは、バード・ドーパントではなく村上という一人の男性。
 その体を、ガイは一瞬の躊躇とともに殴り飛ばした。



 村上の体は軋むような痛みとともに、後方へ吹き飛んでいく。
 そこにいるのは二人の女性と一人の男性。
 ──絶体絶命だ、と村上は感じた。



「……村上さん」



 そんな村上に、あきらが一言声をかける。
 村上はその姿を見上げるが、そこにいるのは彼女だけである。
 よく見れば、彼女がいるのはガイと村上の間。まるで、ガイが村上を攻撃することに抵抗しているかのように。
 ガイは村上に掴みかかろうとした足を止める。


 そういえば、始めは仲間になるつもりで彼女に近づいたんだったか。
 考えの違いから、激突する形になってしまったが。



「私、言いましたよね? 私は困ってる人を助けるって」


「言ったでしょう? それは、この場では下の下の考えだと」


「人を助けようという気持ちや、何かを護ろうという気持ちに、格なんてありません」



 あきらの言葉に感銘などは受けない。それが、オルフェノクとドーパントの二つの力に溺れた人間の性なのだから。
 だが、彼女の言葉に負の感情を抱くこともなかった。
 一理ある、と言えるからだ。それに、その思考が結果的にあきら自身も、村上も傷つけていない。
 人を守る精神などで、自分の身を犠牲にすれば愚かしい話で、笑ってしまうところだが、結果的にこの状況ではあきらこそが正しかったのだろう。



「礼を言いましょう、天美さん。あなたの考えはもしかしたら、正しいのかもしれません。
 ですが、念を押して忠告しておきましょう。……あなたは、いつかその考えで身を滅ぼすことになる」


「構いません。それに、私は死にません」



 そんなあきらに、銀の仮面ライダーは歩み寄った。
 一瞬、四人の人間がそれを警戒する。彼らはまだ、彼の目的を認識していないのだから。


「……よく言ったな」



 ガイ──いや、葦原涼はそう告げ、あきらの肩を軽く叩いて村上に向かっていく。
 屈み込み、倒れた村上に目線をあわせ、涼は一言だけ彼に言った。
 彼が今、本当にすべきことはそれなのだ。



「もう、人を襲うなよ」


「さあ、それはわかりません」


「それなら、俺がお前を見張る。それだけの力を持ちながら、なんでお前は人を護ろうとしないんだ」


「私には私の、授かった使命というものがあるんですよ。それに殉じる為には、そんな馬鹿な考えは捨てなければならない」



 彼はオルフェノクとなったその日から、悪へと変わった。
 狡猾で、冷酷。人の死など気にも留めず、他人の命を奪うことは厭わない──むしろ、人の命と引き換えに僅かな確立で行われる使徒再生こそが村上の目的なのだから。



「これ以上、人を襲うというのなら、俺はお前を潰す」


「……とりあえず、もう人は襲わないと言っておきましょうか。真実とは限りませんが」


「それが真実じゃなかったときは……俺が、そんなことさせない」



 涼は村上を睨むが、堪える様子は無かった。村上の表情は真顔のまま、変わらない。
 ただ、彼は『必要とあれば』敵を潰すのみである。



「村上さん、あなたは私たちが支えます。人を襲ったりなんて、もうさせないようにさせてみせますから」


「支える、ですか……。面白い表現ですね」



 村上は自嘲するように笑って、痛んだ体を立ち上がらせる。
 できれば、情報交換や必要時の共闘以上の関係は築きたくは無かったが、彼らはそういう方針で自分を仲間に引き入れようとしているらしい──当然、村上の意思は彼らとは真逆のものとなっているのだが。



「あなた方の正義感には関心しますよ。ただ、これ以上私のように『信用できない人』を仲間に引き入れようとするのなら、私はここを抜けます」


「構いません。ただ、しばらくはあなたをみんなで監視します」


「なんか、うまく話がまとまったみたいやな」


「フッ……。多勢に無勢というところですか。
 大ショッカーは不愉快な人間ばかり、たくさん集める……」



 村上は今の状況を皮肉って、そう呟いた。




△ ▽



 ──人を助けようという気持ちや、何かを護ろうという気持ちに、格なんてありません

 亜樹子の中から離れない、あきらのそんな言葉。
 確かに良い言葉だと、亜樹子は思う。だが、亜樹子はこの言葉の宿る『別の意味』を心の中で探っていた。

 人の何かを護ろうという気持ちに格はないと言う。
 誰かを護ろうという気持ちにも、格はない。
 それを、彼女は『敵を守る』という形で果たした。誰の命も護りたいという気持ちの表れなのだろうか。

 人を護りたいという気持ちが人それぞれなら、今亜樹子が護りたいと思っているものは何なのか。

 良太郎たちか。──いや、これは護りたいんじゃなくて、『傷つけたくない』というだけの感情だった。


 亜樹子が本当に護りたいものを浮かべると、浮かんでくるのは会って間もない彼らの顔ではない。

 翔太郎。フィリップ。竜。そして父、壮吉。──彼らと、彼らが護ってきた風都という街の、気の良い住人たち。
 彼らとの楽しい思い出たち。
 おどけた住人たちとの、何気ない時間。

 それを浮かべたとき、再びあきらの言葉が思い浮かんでしまうのだ。


 個々の持つ、誰かを護ろうという気持ち。そういう気持ちに偽りはなく、格はない。
 みんなを護りたいというあきらの気持ちと、風都を護りたいという亜樹子の気持ちにも格差などないのだ。

 傷つけたくないという気持ちと、守りたい気持ちのジレンマが、彼女の中で交錯する。
 翔太郎やフィリップ、竜はどう行動しているのだろうか──。
 彼らに会ったとき、彼らの護りたいものは何か。最早、そんなものは関係ないのかもしれない。


 そして、彼らの顔を思い出すたびに膨らんでしまうのは決意であった。

 ──私はやっぱり、風都を護りたい──

 風都という街を、愛する人たち。亜樹子もまた、その一人であった。
 だから、その愛がどうしても、他の何かに勝らない。

 それでも、彼女に良太郎を傷つけることはできなかった。


「私、やっぱりみんなと一緒に行けないよ」


 亜樹子は、思わずそう呟いてしまった。



△ ▽


「……え?」


 あきらは、亜樹子の言葉を聞いて振り返った。
 凍り付いていく時間。四人が、皆亜樹子を見ていた。
 その威圧感に、先ほどの言葉を撤回したくなるが、やはりそれが亜樹子の気持ちだったのだ。


「ほら、敵を仲間にすれば、チームは分裂するんですよ」


 状況が状況ならば、亜樹子の心境を知らずに「村上とは行動できない」と認識するのは無理もない話であった。
 勝手に村上を仲間に引き入れてしまったあきらと涼は、彼女にかける言葉が見当たらない。
 そんな二人の様子を察して、良太郎──キンタロスが聞く。


「亜樹子、やっぱりこの男が信用できんのか?」

「違う……違うよ良太郎くん。私が……私が悪いんだよ。やっぱり、私は風都を捨てられない」


 亜樹子がそう言うことで、誰も傷つかないで済むように場を去ろうとする。
 村上の名前を利用して、この場を抜けることもできたが──それはフェアじゃない。
 亜樹子は今、とにかく誰かと関わりたくなかった。
 誰かと関われば情が移ってしまう。風都を守ることが難しくなってしまうから。


「一体、何があったの? 亜樹子ちゃん。さっきから顔色が変だよ」


 それをウラタロスの憑依した良太郎が問い返す。
 女性に関しては、ウラタロスに任せるのが一番と思っての判断だろう。
 だが、彼の言葉を素直に受け取ることができない。彼が心配してこういう言葉をかけているのは、亜樹子にもわかっているのだが──


「こんなときにふざけないで!」


 そんなきつい言葉を返してしまう。
 こんなに迷っている亜樹子とは対照的に、『芸』をするだけの余裕がある良太郎に、苛立ちを隠せない。
 怒号は響き、さらにその場を重くする。


「……ばいばい、良太郎くん。こんな状況じゃなければ、良太郎くんの芸も楽しく笑えたかもしれないのにね」


 亜樹子の頬を、気づかぬうちに熱い液体が流れていく。
 そんな顔を見られたくないし、──それ以上に彼らを見ていたくなかった。

 彼らが同じ世界の住人だったなら、こうして戦うことにはならなかったのに……。
 そんな、どうしようもない悲しみを抱きながら、亜樹子は走り出した。


 この先で誰かを見かけたなら、亜樹子はその相手を殺さなければならない。
 たとえ、良太郎や翔太郎、フィリップや竜のような人間であったとしても。そんな性格を知る前に、殺すしかない。


 まっすぐ、まっすぐ、まっすぐ、亜樹子は走る。
 その右手には支給された、小さな剣を握りながら。


 少し走ると、亜樹子の目は女性の姿を捉えた。
 その女性もこちらを見ていて、こちらの様子に気づいているらしい。


「ごめんなさいっ!!」


 間合いを狭めて、亜樹子はその剣を女性に向けて振るう。
 が、その女性は身を翻してそれを避け、亜樹子のわき腹に鉄パイプの一撃を送る。
 刃先が自分の方を向いている以上、それを避けるのは難ではないのだ。
 亜樹子は剣を手放して腹を押さえ、倒れこむ。
 スピードを出して走ってきた彼女には、尚更重い一撃であった。


(人間が相手なら、案外使えるんだね)

「うぅっ……」


 倒れこむ亜樹子を、彼女──霧島美穂は黙って見つめていた。
 先ほど、ファムに変身して敵を殺そうとしたのは、紛れも無い彼女である。
 その仮面が外れ、正体を知られることを恐れてあの場は撤退したのだが──



(戦う女は私だけじゃないんだね……。でも、私は勝たなきゃいけない。
 彼女に同情なんて、してる余裕はないんだ!)


 鉄パイプが、次の一撃を送ろうとする。
 ……が、その手が止まった。

 女性の姿をしているということが相手を騙すスキルだというのは、美穂の経験上、覚えのある話である。
 特に、この場によくいる『バカ』ならば当然、女性の姿に引っかかってしまう。
 この相手を、利用しない手はないだろう。


「……私と、手を組みましょう」


 美穂はそう、亜樹子にけしかけた。
 わき腹を押さえる亜樹子も、激痛と戦いながら美穂の言葉を聞く。


「女が二人もいれば、男はきっと食いついてくる。ここにはバカがいっぱいいるからさ」

「……私は……」

「そういう能力がないと、この場を渡っていくのは大変ね。どんな手を使っても勝つ……。
 そうでないと、ライダーバトルを生き残るなんて無理だ」

「殺せる……わけないよ、……親しくなった人を……」

「──大丈夫。私が全部、教えるから」


 用済みになったら、この女も殺す。
 そんな思惑を抱きながら、美穂は笑顔で亜樹子に近づいた。


(たとえ同じ女でも、絶対に同情なんてしない。私は、勝たなきゃいけないんだから!)


【1日目 午後】
【C-5 草原】


【霧島美穂@仮面ライダー龍騎】
【時間軸】映画死亡後
【状態】健康。ファムに1時間変身不可
【装備】鉄パイプ@現実
【道具】支給品一式×2、ファムのデッキ@仮面ライダー龍騎、サバイブ「烈火」@仮面ライダー龍騎、不明支給品×0~3(確認済み)
【思考・状況】
1:あらゆる手を使い他の世界の参加者を倒す
2:秋山蓮、北岡秀一、東條悟と接触、協力。
3:浅倉威は許さない、見つけ次第倒す。
4:城戸真司とは会いたいけれど…
5:今は亜樹子を利用して、一緒にステルスとして参加者を減らす。



【鳴海亜樹子@仮面ライダーW】
【時間軸】番組後半
【状態】わき腹を打撲 精神に深い迷い
【装備】ツッコミ用のスリッパ@仮面ライダーW
【道具】支給品一式、装甲声刃@仮面ライダー響鬼、不明支給品(0~1)
【思考・状況】
1:風都を護るため、殺し合いに乗る。
2:情を移さないため、あまり人と接触しない。
3:美穂と行動する。人を騙す術を教えてくれるらしいが…
4:良太郎やあきらとはなるべく会いたくない。
5:知り合いと合流し、そのスタンスを知りたい。
【備考】
※ 良太郎について、職業:芸人、憑依は芸と誤認しています。


△ ▽


「私を仲間にしたのは良いですが、仲間が一人減りましたよ? 彼女はきっと……死ぬ、でしょうね」


 こうして複数人で行動する村上、あきら、良太郎、涼はそれぞれ安全圏にいると言っていい。
 だが、ライダーの力も持たない少女が一人で行動するということは──それだけ殺されやすい状況にいるということである。


「私、やっぱり追ってきます」


 あきらは真っ先にそう言う。が、それを涼は制止した。
 彼はただ一言、彼女に問うた。


「……この男を、一人で止めることはできるか?」

「え?」

「できるなら、俺があいつを探してくる」


 あきらがこのまま行っても、同じように危険だというのを涼は理解していた。
 亜樹子もあきらも、見た目の年齢はあまり変わらない。それぞれが一人で行動することが、等しく危険なことだというのはわかり切っている。


「できます」

「わかった。また、近いうちにここで会おう。一応、名前を聞いておくがいいな?」

「天美あきらです」

「……野上良太郎だよ」

「あきらに良太郎か。俺は葦原涼。あいつの名前は?」

「鳴海亜樹子ちゃん、だよ。くれぐれも、女性の扱いには気をつけてね」


 涼はウラタロスの言葉を冗談と受け取ったのか、それとも本気と受け取ったうえでか、それを無視して彼らに背を向ける。
 涼にもかつて恋人はいたが……その女性の扱いというものが悪かったと自覚している。
 ほとんど、会うこともない時期があり……やがてギルスの姿を前に、彼女は涼を拒絶した。
 正直、そういうものは苦手だったが、だからこそ、今度こそ失いたくないと彼を突き動かすのだ。
 涼が走り出した。彼らはただ、それを見送るのみ。
 やがて、彼が帰ってくるときまで、ここで待ち続けることしかできない。


「……あの男、私を無視するとは、下の下ですね」


 村上は、そんな小さな苛立ちをかみ締めた。



△ ▽



「……あいつ、どこまで行ったんだ?」


 涼はあれからだいぶ走っていたが、亜樹子の姿を見つけることはできなかった。





【1日目 午後】
【C-5 草原】

【葦原涼@仮面ライダーアギト】
【時間軸】本編36話終了後
【状態】中程度の疲労、胸元にダメージ 、仮面ライダーガイに1時間変身不可
【装備】ガイのデッキ@仮面ライダー龍騎
【道具】支給品一式、不明支給品×0~2(確認済み)
【思考・状況】
0:今は亜樹子を追う
1:殺し合いに乗ってる奴らはぶっつぶす
2:人を護る
3:あきらや良太郎の下に戻ったら、一緒に行動する
4:鉛色と深緑の怪人を警戒
【備考】
※支給品と共に名簿も確認していません。



△ ▽

「遅いですね、彼も」


 村上は含みのある笑いと共にそう言った。
 ホテルの一室。三人の男女が椅子なりベッドなり、そこにあるものに座っている。


「いつまで待つ気ですか?」

「あの人が帰ってくるまでです」


 やはり、と村上は小さく笑った。



【1日目 午後】
【B-6 ホテル】


【天美 あきら@仮面ライダー響鬼】
【時間軸】 41話終了後
【状態】全身に軽度の怪我 あきら変身体1時間変身不可
【装備】鬼笛@仮面ライダー響鬼
【道具】支給品一式、ニビイロヘビ@仮面ライダー響鬼、サソードヤイバー@仮面ライダーカブト、不明支給品(0~1 確認済)
【思考・状況】
0:ホテルの付近で涼を待つ。
1:人を助けるため、自分に出来ることをやる。
2:知り合いと合流する。
3:村上が人を襲うことがあれば、止める。



【野上良太郎@仮面ライダー電王】
【時間軸】第38話終了後
【状態】頭痛 電王1時間変身不可
【装備】デンオウベルト&ライダーパス@仮面ライダー電王
【道具】支給品一式、不明支給品
【思考・状況】
1:とりあえず、殺し合いには乗らない。
2:あきら、村上と一緒に行動する。涼が戻ってくるのを待つ。
3:亜樹子が心配。一体どうしたんだろう…
4:モモタロス、リュウタロスを捜す。
5:殺し合いに乗っている人物に警戒
6:電王に変身できなかったのは何故…?
【備考】
※ ハナが劇中で述べていた「イマジンによって破壊された世界」は「ライダーによって破壊された世界」ではないかと考えています。確証はしていません。
※ キンタロス、ウラタロスが憑依しています。



【村上峡児@仮面ライダー555】
【時間軸】不明 少なくとも死亡前
【状態】腹部に痛み 1時間変身不可(バード、ローズ) バードメモリに溺れ気味
【装備】なし
【道具】支給品一式、バードメモリ@仮面ライダーW 不明支給品×2(確認済み)
【思考・状況】
1:殺し合いには乗らないが、不要なものは殺す。
2:あきら、良太郎らと行動するが、彼らに情は移していない。
3:亜樹子の逃走や、それを追った涼にはあまり感心が沸かない。


032:カンタータ・オルビス 投下順 034:動き出す闇
031:ただの人間 時系列順 034:動き出す闇
024:Sへの想い/踊る緑の怪人 霧島美穂 045:亜樹子オン・ザ・ライ
026:止まらないB/もえるホテル 鳴海亜樹子 045:亜樹子オン・ザ・ライ
024:Sへの想い/踊る緑の怪人 葦原涼 059:Round ZERO ~ WORM INVASIVE
026:止まらないB/もえるホテル 天美あきら 050:Round ZERO ~KING AND JOKER
026:止まらないB/もえるホテル 野上良太郎 050:Round ZERO ~KING AND JOKER
026:止まらないB/もえるホテル 村上峡児 050:Round ZERO ~KING AND JOKER