仮面ライダーになりたくない男◆LQDxlRz1mQ
「君は、俺に一体何をしたんだよ?」
三原は目の前の異形にそう訊く。
オルフェノクのような異形でありながら、殺人の意思を持たずに子供のように無邪気な神経を持つ目の前の怪人に、少しの恐れを抱きながらも、どこか安心しながらリュウタロスを眺める。
「何って、憑いただけだけど?」
「憑く?」
「うん、いつもは良太郎に憑いてるけど、お前弱っちいから早く良太郎に会いたいー」
こうして、当人を前にしても失礼な事を言えるあたりが、やはり子供だと思える。
そして──それが図星な以上、三原は何も反論することができなかった。
こんな子供に「憑く」とかいう行為で助けられた三原は、情けなさを痛感する。
「お前はどうして戦わないの?」
こんな言葉をかけられるほどだ。
戦いたくないから──そう答えることへは、抵抗を感じる。三原はリュウタロスを「子供」としか見ていない。
だから、大人としてそんな応答をするわけにはいかなかった。
「足が痛いんだ。それに、朝から熱っぽくて……」
「──お前、ふざけてるの?」
リュウタロスの口調は、遊びの口調から本気へと変わる。
三原の一言は、イマジンとの戦いを続けてきたリュウタロスを怒らせるに充分な言葉である。
良太郎は、弱くても言い訳などしなかった。良太郎は、弱くても戦うための努力をした。
三原は、自分の弱さから逃げている──いわば、本当の意味での弱虫なのだ。
言い訳して逃げて、それで安全圏にいようとする三原をリュウタロスは許せなかった。
「お前、修正するけどいいよね?」
「え……?」
「答えは聞いてないけど」
三原の頬を、リュウタロスの拳が殴った。
そのまま、三原は地面に体をぶつける。彼にとっては、倒れた衝撃よりも、頬に残った痛みが強い。それだけリュウタロスの心は強い怒りに包まれていた。
歯が折れてしまいそうなほどの強い拳を、三原は顔中で感じていた。唾に混じって、血が喉を通る。
「足が痛いんでしょ? 立ち上がれないんでしょ? それなら、ここでずっとしててよ。僕が、お前を潰しちゃうから」
リュウタロスは明らかな怒りを、三原に向ける。
リュウタロスは、そのままその手にリュウボルバーを握り、三原の眼前にその銃口を向ける。
異形に銃を向けられた人間は、その体中に嫌な汗を感じていた。
この怪物は、このまま自分を殺すかもしれない。この銃口から弾丸が放たれたとき──たったそれだけの動作で、三原は死んでしまうのだから。
「や、やめてくれよ。おい……俺が何したって言うんだよ! 俺は関係ないんだ、俺は何もしてない!」
「あと、三秒で撃つよ」
「俺は世界の崩壊なんて関係ないんだ……! そうだ、バイトがあるから家に帰らないと……! だから──」
「──二秒」
そんな、冷淡な一言に三原は狂気を感じた。
このまま本当に、僅かな時間が過ぎるとともに三原は殺される。
それなら、その僅かな時間で何ができるというのか。
三原は震える足で地面を蹴り、立ち上がった。
戦うためではなく、逃げるために──。
そんな三原をリュウタロスは許さない。
リュウボルバーで三原の体を強く、叩いた。痣になるほどの痛みが、三原の背中を襲う。
その痛みに打ちひしがれて、三原は再び地面に倒れこんだ。
今度は、リュウボルバーの銃口は三原に向かってはいない。……だだ、リュウタロスが険しい表情で三原の顔を見つめるだけである。
「お前、やっぱり本当はどこも痛くないんでしょ? 立って歩けるんでしょ? それだけの力があるのに、どうして戦わないの?」
「だって……俺は関係ないんだぞ!? 戦いたくなんてないのに、こんな場所に連れて来られて!」
「それならお前、どうして関係ない人を巻き込む大ショッカーを倒そうとしないの?」
「た……倒せるわけないだろ!? だって俺たちの首には──」
首輪。逆らう者を一掃する鉄の凶器。
それがあるうちは、誰も逆らうことはできない。
そんな恐怖が、何よりも三原の心を占めている。
「──答えは、聞いてない!」
リュウタロスが聞きたくなかったのは答えではなく言い訳である。
これだけ痛めつけられてもわからない三原には、殺意さえ覚える。
それでも、人は殺さないのがリュウタロスの今の信念である。
だから、リュウタロスは彼を消さずに、修正しようとしたのだ。
「お前、ここで鍛えてもらうけどいいよね? 勿論、答えは聞いてないけど」
広いサーキット会場。そこは、人を鍛えるには打ってつけの場所であった。
△ ▽
「駄目だ……もう無理だ……」
「だめだめぇ~!! やめたら、強くなれないじゃんか~!! あと一周するくらい根性見せろ~」
本来ならばバイクが走るコースであるサーキットを、三原は足で走っていた。
その腰にロープを巻き、さらにその先にタイヤを巻きつけた三原はもはや限界に近かった。
喉は潤いを消し去り、しかし体の表面を汗が覆っている。
特訓の中で、三原は死にそうなほど体の疲労感に見舞われていた。
足は棒のようになり、腰にロープが食い込んでいる。視界はもはや、汗が入って歪んでいた。
太陽が自分を見下しているのを、嫌というほど強く感じてしまうほどだ。
「足が……本当に動かない……」
サーキットの僅かな傾斜も、三原の足はもう登ることができなかった。
三原はそのまま倒れ伏す。
土が、汗のせいで顔にくっついたが、土の冷たさが心地よかった。
足の疲れも、そのお陰で少しずつ抜けていく。
「……もう仕方が無いなぁ。特訓おわり! これで戦えるよね?」
「……ああ、……とりあえず……やってみるさ……俺に何ができるかは……わからないけど……」
息も切れきれの三原が、「もうどうにでもなれ」とばかりにリュウタロスにそう言う。
次に他の参加者に会ったとき──彼は特訓の成果を見せることができるのだろうか。
この一時、彼は決意と呼ぶには、あまりにも弱弱しい言葉を発した。
【1日目 午後】
【B-1 サーキット場】
【三原修二@仮面ライダー555】
【時間軸】初めてデルタに変身する以前
【状態】疲労(極大)、筋肉痛 、 地面に倒れてます
【装備】デルタドライバー、デルタフォン、デルタムーバー@仮面ライダー555
【道具】なし
1:疲れた……
2:草加や巧、真理と合流したい
3:戦いたくないが、とにかくやれるだけのことはやる
【備考】
※リュウタロスに憑依されていても変身カウントは三原自身のものです。
【リュウタロス@仮面ライダー電王】
【時間軸】本編終了後
【状態】胸にダメージ(小)
【装備】リュウボルバー@仮面ライダー電王
【道具】支給品一式×、不明支給品(0~2)
1:三原を鍛える
2:良太郎に会いたい
3:大ショッカーは倒す
【備考】
※人間への憑依は可能ですが対象に拒否されると強制的に追い出されます。
最終更新:2011年01月03日 19:50