※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

三様 ◆7pf62HiyTE



 参加者に支給された物の中に名簿が存在する。
 そこには参加者の名前が描かれている事は言うまでもない。
 当然まず確認するべきは自分の知り合いあるいは身内の有無の確認だ。





 名簿をざっと確認しても五代雄介、一条薫等という風に日本人の名前が大半を占めるのは誰の目にも明らかだろう。
 片仮名の名前もあるがそれは極々一部だ。
 しかし、これらの名前の中に3つ程明らかに異質な名前が存在している。
 ズ・ゴオマ・グ、ゴ・ガドル・バ、ン・ダグバ・ゼバの3つの事だ。これらの名前は固有名詞の前後に1~2文字の片仮名が付いている。
 これだけを見てもこの3人が関係者と推測する事が可能だろう。それは正解だ。
 彼等はある世界の超古代に存在し封印されたものの現代に蘇った種族グロンギである。
 彼等はリントという超古代に存在していた民族を標的としての殺人ゲームゲゲルを行っており、蘇った現代においても人間達をリントと見なし彼等を標的にしてゲゲルを行っている。
 そしてそのグロンギと戦うのがリントの戦士クウガであり、青年五代雄介が発掘されたベルトを身に着けた事で現代にクウガが蘇ったというわけだ。
 もっとも、現代社会においては彼等は異質な存在である。故にグロンギは一般には未確認生命体と呼称され当初はクウガも未確認生命体として扱われていた。
 未確認生命体は確認された順に第1号、第2号とナンバリングされていった。
 ズ・ゴオマ・グが第3号、ゴ・ガドル・バが第46号、そしてン・ダグバ・ゼバが第0号である。
 第0号というのは第1号が確認される前の映像において全ての未確認生命体を復活させた最初の存在故にそう呼称されている。
 ちなみにクウガは初めて確認された時の白い姿が第2号、赤い姿が第4号として世間一般では認知されている。

 今回の殺し合いは同一世界の参加者は同じチームとなっている。故にクウガこと五代雄介、彼をサポートする刑事一条薫、そして未確認生命体ことグロンギの3人は一応味方同士という扱いだ。
 しかし、彼等が組む事は有り得ない。五代にしても一条にしても殺し合いに乗るつもりは全く無いが、グロンギ3人は共にこの地でも各々殺し合いに乗りそれを楽しもうとしている。
 彼等が相容れる事は有り得ないという事だ。
 それ以前に、五代にしても一条にしても彼等の本名すら知らないのだ、名簿を見た所で3人が未確認生命体の誰かという所までしかわからないだろう。
 では、グロンギ3人同士ならばどうか? 結論から言えばそれも有り得ない。
 彼等には協力し合うという概念が存在しないのだ。グロンギ同士であってもゲゲルの中においては敵同士でしかない。
 彼等にとっては他のグロンギも最終的には倒すべき敵ということだ。
 気が狂っている? そう思う方も多いだろうが彼等にとってはゲゲルは神聖なものであり同時に極上の遊戯なのだ。理解出来ない者も多いだろうがそれがグロンギということなのだろう。
 ともかく、3者のグロンギにとっては他のグロンギも倒すべき敵でしかないという事だ。





 ガドル、ダグバ、ゴオマ、3人のグロンギはそれぞれの場所でそれぞれのゲゲルに挑んでいる。
 彼等の思惑は三者三様、リント――人間から見れば同じ様に見えてもグロンギである彼等にとっては大きく異なっている――








【F-2 路上 03:14 p.m.】





「おい……」



 そう、津上翔一の背負うデイパックから声が響く。



「え? もしかして気が付きました?」



 翔一はその声の主が今現在背負っている男性だと思ったが、



「違う、俺だ」
「あ、キバット。起こしちゃったかな?」



 声の主はキバット族の名門、キバットバット家の二代目キバットバット二世だ。もっとも、傍目から見れば小型の蝙蝠型モンスターでしかない。
 彼は数十分程前、翔一のデイパックの中に入り昼寝をしていた筈である。



「そうではない。気になる事があってな」
「気になる事?」
「率直に言うぞ……今何が起こっている?」









【G-6 路上 03:19 p.m.】





 軍服を着た男ゴ・ガドル・バはF-6にある市街地を目指し道路を歩いていた。
 数十分程前漆黒の戦士、そして黒の仮面ライダーとの戦いを終えた彼は更なる激闘を求め、粗方探索を終えた市街地を離れ、別の市街地へ向かっていたのだ。
 これまでに遭遇したのはクウガと灰色の怪人に変身しオレンジの甲冑を身に着けた男、そして前述の2人の黒の戦士だけだ。
 ガドルにとってのゲゲルは戦うリントを殺害する事、
 故に他の戦うリントや仮面ライダー、あるいは戦士を探す為に移動していたというわけだ。

 殺し合いに乗っているのはある意味では自分の世界を守る為ではある。だが、ガドルにとって重要なのはそこではない。
 最終的な目的はザギバスゲゲルに勝利し最強となる事だ。
 この殺し合いはその前哨戦でしか無いという事だ。



「クウガ……」



 だが、気になる事が無いではない。この地で出会ったクウガに違和感を覚えていたのだ。



「ガセパ ゾンドグビ バボバ クウガ? (あれは本当にクウガなのか?)」



 その時のクウガは何故か元の世界で戦った時よりもずっと弱体化していた。『あの力』を使う事もなく戦い方もずっと未熟だった。
 更に言えば声等にも何処か違和感を覚えていた。
 真面目な話をすればあのクウガが同じゴであるゴ・バベル・ダやゴ・ジャーザ・ギを倒したとは思えないのだ。
 クウガだがクウガではない、そう思えてならないのだ。



「ラガギギ ザソグガ ババソグガ バンベ キバギ クウガ (まあいい、クウガだろうがなかろうが関係ない)」



 だが、その事など些細な事でしかない。次に戦った時に殺せば良いだけの話だ。
 この地にはクウガ以外にも数多の戦士や仮面ライダーが存在する。クウガに拘る必要など皆無だ。
 それ以前に、クウガ自体ガドルにとっては前哨戦でしかない。
 クウガと戦う前にクウガが得た『あの力』をガドルが得たのも全てはその先の為、
 そうザギバスゲゲル、ン・ダグバ・ゼバとの戦いの為なのだ。




「ラデデギソ ダグバ…… (ダグバ、待っていろ……)」







【F-2 路上 03:23 p.m.】





「世界を賭けた殺し合い……随分と悪趣味な話だな」



 キバットは翔一から今行われている殺し合いを聞きそう呟いた。



「本当ですよね、だから俺達がこの殺し合いを止める仲間を集めている所なんですよ」
「その為に街に向かおうとした所、俺が呼び止めたというわけだな。邪魔だったか?」
「いえ、むしろ感謝しています。だって、こうやって『アギト』を助ける事が出来ましたから。そうだ、キバットには誰か仲間とか知り合いとかいないんですか?」



 暫し間をおいて、



「……真夜」
「真夜さんですか? ちょっと待ってください……」



 と、翔一はデイパックから名簿を出し確認を行う。キバットもその時だけデイパックから出て後ろから名簿を覗き込む。



「いない……よかったですね、彼女は巻き込まれてないですよ。他に誰かいないんですか?」
「……」



 キバットからの答えはない。翔一は他に知り合いはいないと判断し名簿をデイパックに仕舞う。そのタイミングでキバットもデイパックの中に戻る。
 そして、再び歩き出す。



「せめて手当て出来る道具があれば良かったのに……」



 翔一が気にしているのは背負われている男性の事だ。彼の傷は見た目以上に深い。病院に行く前に応急処置を施したかったが自分と男性、そして廃工場にあった物ではそれすらままならなかった。



「……もう1つ聞かせろ、お前はこの男を『アギト』と呼んでいたな。『アギト』とは何だ?」







【G-6 T字路 03:23 p.m.】





「ダグバ……」
「ガドル……」





 それは偶然の出会い、T字路をそのまま直進しようと前進していたら前方に白い服を着た少年が姿を見せたのだ。
 だが、ガドルはその少年を知っている。同時に少年もガドルを知っている。
 そう、少年こそがグロンギの王ン・ダグバ・ゼバだったのだ。





 予期せぬ遭遇にガドルの体に緊張が奔る。





「ドブゾ ボパガサゲ ゲガゴビ ギデブ セスボ ガドル? (ガドルが僕を怖がらせ笑顔にしてくれるの?)」





 ダグバの表情からは笑みが零れているのが見て取れる。
 ガドルは理解した、ダグバは自分と戦おうとしているのだと。
 しかし同時に奇妙な話ではある。本来ならば自分のゲゲルの最中の筈だ。
 今まだダグバとの戦いザギバスゲゲルではない。
 つまり、今はまだ戦う時ではないはずだ。





 そう思考するガドルを余所にダグバは手を出して構える。それはダグバが戦闘態勢に入ったという事だ。





「ゾグギダボ? ボパガ サゲジョ ドブゾ (どうしたの? 僕を怖がらせてよ)」






 ダグバは誘っている。自分と戦えと――
 確かにダグバと戦う事自体は望む所だ。少々時期尚早ではあるがそれ自体に異論はない。





「ギギザソグ…… (いいだろう……)」




 故にガドルもまた戦闘態勢に入る。だが――





「バゼザ? (何故だ?)」





 自身の姿が変化しない。そう、怪人態とも言うべき本来の姿に変化しないのだ。






「バゼバパサン! ラガバ…… (何故変わらん! まさか……)」




 ガドルの表情に焦りが現れる。
 大ショッカーが課した制限の影響か1回で変身出来る時間は10分という事は把握出来ている。
 だが、この様子では他にも制限が課せられていると考えて良い。1度変身すればある程度時間をおかなければ再変身出来ないという事だ。
 確か前に変身してからまだ1時間経過していない、1時間程度では変身不能は解除されないという事なのか?





 だが、今はそんな事などどうでも良い。重要なのは目の前のダグバだ。変身出来なければ『あの力』も使いようがない。
 このまま戦いにもならない蹂躙という形でダグバに殺されるしかないだろう。






 だが――





「……バビ?(……何?)」





 ダグバの方も本来の姿に変化していない。もしやダグバもつい数十分前に変身したばかりだというのか?
 しかしダグバの表情は変わらない。変わらず楽しそうな笑みを浮かべている。
 理解しているのか? ここで自分が変身すれば一方的に殺されるだけなのだぞ?





 そんな思惑を余所にダグバはゆっくりとガドルに近付きその距離を詰めていく、





 9――





 6――





 3――





 2――





 1――













「……バゼザ? (……何故だ)」




 ガドルは自分を通り過ぎたダグバに問う。何故、戦わないのかと――





「ボパガサ ゲダシ ゲガゴビ ギダシゾ ビバビド ゴロダダバサ ギランジャ ガドル……ヅビビ ガダダドビ ラドドヅ ジョブバドド ドブゾボ パガサゲデ ゲガゴビ ギデジョ
 (今のガドルじゃ怖がらせたり笑顔にしたり出来ないと思ったから……次に会った時もっと強くなって僕を怖がらせて笑顔にしてよ)」




 その答えで理解した。ガドルは見逃されたのだと。
 屈辱ではある。それでもこの場はそれを受け入れる事にした。





「バビグ ガドド? (何があった?)」





 ガドルはダグバにそう問いかける。
 ダグバの顔には誰かに殴られた跡があり、腹部には見慣れないベルトが巻かれていた。
 更に言えばダグバの言動を見る限り『恐怖』を求めている風に感じたのだ。





「リントグ ゴギゲデブ セダンザ 『ボパギ』デデ ギグボ ドゾベ……ボボデスドロ リントグ ヅブダダ ロボザジョ
 (リントが教えてくれたんだ、『怖い』っていう事をね……このベルトもリントが作ったものだよ)」
「ゴボラゼ ギパゲス ドパバビ ダグバ…… (ダグバにそこまで言わせるとはな……)」




 そう言ってガドルは再び歩き出す。目的地はダグバが向かってきた方向にある市街地だ。
 ダグバにすら影響を与えたリントの戦士に会えるかも知れないのだ。






「マデデギソ ダグバ (ダグバ、待ってろよ)」




 それがダグバに対するガドルの挨拶だった。そして、ダグバもまた




「マデデスジョ (待ってるよ)」




 自分達の言葉でそう答えた。





【1日目 午後】
【G-6 T字路】
【ン・ダグバ・ゼバ@仮面ライダークウガ】
【時間軸】不明
【状態】疲労(小)、腹部にダメージ、顔面出血、苛立ち、5分変身不可(怪人体)、35分変身不可(ユートピアドーパント)
【装備】ガイアドライバー@仮面ライダーW
【道具】支給品一式
【思考・状況】
1:恐怖をもっと味わいたい。楽しみたい。
2:ガドルやリントの戦士達が恐怖をもたらしてくれる事を期待。
【備考】
※ガイアドライバーを使って変身しているため、メモリの副作用がありません。
※ユートピアメモリは破壊されました。





 ダグバとの遭遇はほんの数分だった。しかしガドルの全身からは汗が流れ出ていた。
 別に戦いになったわけではない。故に体に受けたダメージは皆無だ。
 だが、ダグバの全身からは強大な威圧感を感じた。変身していなくても強大な力を持っている事は明らかだ。

 確かに戦いにならなかったのは自身が変身出来なかったからだ。しかし、変身出来たとしてダグバと戦いになっただろうか?
 わからない? そう、わからないのだ。ゴの中でも最強で、同時にクウガすらも凌駕する力を得た自分でもわからないのだ。
 『あの力』を使った所でどうなるかは全くわからないのだ。
 戦いになるかも知れないしならないかも知れない、それがわからないぐらい強大だったということだ。






「ゴゴセ デギダ……ゴセグ……? (恐れていた……俺が……?)」




 ダグバが口にしていた『恐怖』……それを自分は感じていたのだろうか?
 真相はどうあれダグバを甘く見ていた事だけは確かだ。
 『あの力』を得てクウガをも圧倒し、この地においても基本的には相手を凌駕し続けていたがそれは甘かったという事だ。
 言ってしまえば天狗になっていたのかも知れない。




「ボセゼパ ラスゼ ゴオマ ザ(これではまるでゴオマだ)」




 脳裏にはずっと格下の存在のグロンギが。そいつはダグバのベルトの欠片を得た事で自身を強化し最強の存在になったといってダグバを殺そうとした。
 しかし自分達ゴは最初からダグバに勝てるとは思っておらず、実際ダグバに瞬殺された。それが現実である。
 だが、今の自分の姿は力を得ただけで調子に乗っていた愚者でしかない。これではあの男を馬鹿にする事など出来ない。

 自分の愚かしさに怒りすら覚える。それでこものタイミングで気付けた事は幸運だ。この教訓を胸に進むだけである。





「ゴセパ ザバギン ザシグラ ゴ・ガドル・バ ザ。ゴセパ ババサ ズンラゲ ビダヅ ダグバ
 (俺は破壊のカリスマゴ・ガドル・バだ。俺は必ずダグバの前に立つ)」









【F-2 道路 03:36 p.m.】





「……というわけなんですよ」



 アギトとそれを狙うアンノウンに関する説明が大体終わった。



「それでこの男が『アギト』で、あそこにいた鬼が『アンノウン』だと思ったわけだな?」
「はい、アンノウンはアギトを狙いますから」
「……では『クウガ』は何だ?」
「え? 『クウガ』ですか?」
「この男がお前のあの姿を見てそう呼んでいた。もっとも俺にはお前もこの男も似た様なものに見えたがな」
「さぁ、『アギト』の親戚……じゃないんですかね?」
「俺にとってはどっちでも良いがな。もう一眠りさせてもらうぞ」

 キバットはそれきり黙り込んでしまった。そして翔一もまたキバット及び背負っている男性を起こさない様に再び病院へ向けて歩き出した。





 しかし、





「(全く……本当に悪趣味な話だ)」



 キバットは未だ眠りについてはいなかった。
 気が付いたら男性のデイパックの中にいて、起こされたと思ったらいきなり命令をされたのだ。誇り高きキバット家の主としては腹立たしいことこの上ない。
 一応は昼寝していたがその事が気になりまともに眠れずすぐに目が覚めた。故に翔一に事情を聞いたというわけだ。
 聞けば世界を懸けた殺し合いという話ではないか。恐らく自分の役割は自身が支給された先、即ち男性に『キバの鎧』を与える事なのだろう。
 確かにその男性は蝙蝠を模した怪人になっていた。そういう意味では『キバの鎧』が相応しい事は理解出来なくもない。



「(巫山戯るな……俺は連中の都合の良い道具ではない……)」



 キバットは道具ではない、立派な一つの生命体だ。道具扱いされて良い気などするわけがない。
 故に大ショッカーに対して強い怒りを感じていた。
 それ以前に、少なくてもこの男性に力を貸した所でキバットには何のメリットもない。
 この男性は自分の世界の人間ではない。つまり、この男が優勝した所で自分の世界が滅びるだけだ。
 何故に自分が自分の世界を滅ぼす為に戦わなければならないというのだ?
 少なくても真夜がいる世界を滅ぼしたいと思うわけがない。
 キバットが一番悪趣味に感じているのはそこなのだ。

 とはいえ現状、大ショッカーを打倒すると口にしている翔一に全面的に協力するつもりもない。
 真夜の世界を守りたいとはいえわざわざ人間に協力する義理などないからだ。正面から敵対するつもりも無いが協力するつもりもない。
 当面は静観させてもらうつもりだ。

 真面目な話、キバットにとってはあまりにも分が悪い話だ。
 真夜のいる世界を守る方法は大ショッカーを打倒するか、自分の世界の優勝だ。
 だが、自分の世界の優勝に関しては少なくとも自分がすることなどない。
 翔一は気付いていなかったが名簿を後ろからのぞき見た所、知っている名前が3つあった。

 紅音也――真夜を愛し、同時に真夜に愛された人間の男
 紅渡――未来からやって来たという真夜と音也の間に生まれた男
 キング――かつての自分が仕えていたファンガイアの男

 もしかすると真夜にボタンをくれた男がこの地にいるかもと多少は考えたが流石にそれは無いだろう。
 何にせよ優勝を目指すのならばこの3人と合流すれば良い筈だ。
 だが、真夜に非情な仕打ちをしたキングに今更力を与えるつもりは全く無い。
 また、渡には恐らく自分の息子という事になっているキバットバットⅢ世がいるだろう。少なくても自分が力を貸す必要は皆無だ。
 そして、音也――確かにこの男に力を貸す事に関してはある程度考えても良い。

 だがそれもやはり避けるべきだろう。
 確かに自分は『闇のキバの鎧』を与える事が出来る。
 しかしそれは決して都合の良い力ではない。その力は確かに絶大だが装着者が受ける反動もまた非情に大きく資格のない者が身に纏えばそれだけで死に至る。
 扱えるのはそれこそ最強のファンガイアとも言うべきキングクラスぐらいなものだ。
 そう、少し強い程度のファンガイアや人間が扱えるわけがないのだ。
 音也はキングから真夜そして真夜とキングの子である太牙を助ける為に自分の力を使い闇のキバの鎧を纏い、渡と共に戦いキングに勝利した。
 音也はその精神力で何とか生き続けたが所詮は人間、近い内に死ぬ事は確定的だった。

 この戦いは1人だけを倒せば済む話ではない。その状況で自分が音也に力を与えた所で無駄に奴を死なせるだけだろう。
 それで戦いが終われば良いがそんな都合の良い話はない。故に自分が音也に力を与えるわけにはいかないという事だ。

 そもそもの話、何故倒した筈のキングがいるのかという根本的な疑問もあるわけだがあまり深く考えても仕方が無いだろう。

 何にせよ、自分がすべき事は特にない。故に今は只静観させてもらうだけだ。多少は口を出しても良いがそれはあくまで気紛れ程度の事だ。





 そんな中、自分が支給された男について考える。
 恐らく自分が寝ていた間に男は鬼みたいな奴と激闘を繰り広げ殺したのだろう。
 翔一は鬼がアンノウンでアギトである男を襲ったと言ったが果たしてその通りなのだろうか?



「(俺には『アギト』と『アンノウン』の戦いとは思えないがな……むしろあの男が殺し合いに乗り、あの鬼と戦い殺したといった所だろう)」



 少なくてもキバットはそう感じた。自分が接触した限り、あの男は異常なまでに好戦的だった。傷付いてもなお他者を殺したいという風に見えた。
 そして翔一が助けに来てやろうとした事は翔一を襲う事、客観的に見ればどう見ても危険人物だ。
 だが、キバットは敢えて口を出すつもりはない。実際に翔一の言う通りという可能性もあったし、全く別の真相もあるだろう。
 それ以前に翔一に対してそこまで助けてやる義理もないからだ。仮にこの男が再び翔一を襲い殺したとしても翔一が馬鹿を見るだけだ。



「(せいぜい寝首をかかれない様に気を付けろ)」



 そう内心で呟いた。
 そんな中、自分が支給された事について改めて考える。いうまでもなく、自分を支給した理由はこの男に『闇のキバの力』を与える為だ。
 だが、キバットにはこの男がその力に耐えられるとは思えなかった。
 むしろ、男自身の持つ力ですらも持て余している様に感じた。身の丈に合っていないと言っても良い。
 そんな男が自分の力を得た所でその先に待つのは死だけだ。
 大ショッカーは何を考えて自分をこの男に支給したのか? 蝙蝠繋がりというだけで支給したなら本当に悪趣味としか言いようがない。



「(本当に悪趣味な話だな……もっとも、同情はしないがな)」



 そう言って、今度こそキバットは眠りについていった。







 その男はダグバのベルトの欠片を得た事で強大な力を得た。しかしそれは自身の体をも変質させる程の危険な強化であった。
 彼の支給品の1つであるスミロドンのガイアメモリ、強大な力を持つゴールドメモリのそれも彼に非常に強い負担を与えた。
 そして、もう1つの支給品であるキバットが与えし『闇のキバの鎧』は生命を脅かす危険な物だ。



 それらはグロンギの中でも下級のズの者であるズ・ゴオマ・グにとってはあまりにも身の丈に合わない者だった。
 だが、その事を当の本人だけは知らない。



「ゴセグ……ボソグ……クウガ……ダグバ…… (クウガ……ダグバ……俺が殺す……)」



 誰にもその寝言の意味を理解される事無く、ゴオマは静かに眠り続けていた。





【1日目 午後】
【F-2 道路】
【ズ・ゴオマ・グ@仮面ライダークウガ】
【時間軸】第39話「強魔」、ダグバに殺害される前
【状態】疲労(極大)右頬に軽度の裂傷、左掌に軽度の裂傷、右足に重度の裂傷。気絶中。翔一に背負われてます。1時間変身不能(ズ・ゴオマ・グ究極体)
【装備】なし
【道具】支給品一式、ガイアメモリ(スミロドン)、不明支給品0~1
【思考・状況】
※以下、気絶前の思考です。
基本思考:優勝する。できればダグバは自分が倒す。
1:とりあえず休む
2:クウガ……?
【備考】
※怪人体には究極体にしかなれず、強化形態の制限時間に準じます。
※ルールブックは粗方読み終わりました。

【津上翔一@仮面ライダーアギト】
【時間軸】本編終了後
【状態】健康 1時間変身不能(アギト)
【装備】なし
【道具】支給品一式、コックコート@仮面ライダーアギト、ケータロス@仮面ライダー電王、ふうと君キーホルダー@仮面ライダーW、キバットバットⅡ世@仮面ライダーキバ
【思考・状況】
1:打倒大ショッカー
2:殺し合いはさせない
3:この男性(ゴオマ) を病院に連れて行く。
4:大ショッカー、世界崩壊についての知識、情報を知る人物との接触
5:木野さんと会ったらどうしよう?
【備考】
※ふうと君キーホルダーはデイバッグに取り付けられています。
※響鬼の世界についての基本的な情報を得ました。
※ゴオマを「不完全なアギトに覚醒した男」、モモタロスを「アンノウン」と認識しています。









【F-6 市街地 03:45 p.m.】





 先に結論を言おう。
 ガドルとダグバが戦闘にならなかったのは幾つもの幸運と不運が重なったからだ。
 そう、ガドルが変身不能だったのと同様にダグバもその時点では変身不能だったのだ。
 しかしあと10数分遭遇が遅ければダグバは変身可能になっていた。そうなれば変身出来ないガドルはただ蹂躙されるだけだっただろう。
 が、実を言えば場合によってはガドルがここでダグバを仕留める事の出来る可能性もあった。
 ガドルの手元には未確認の支給品が幾つか存在していた。それらを使えば状況が変わるかも知れなかったという事だ。
 だが、ガドルはここに至るまで概ね順調だった事もありまともに支給品の確認をしていない。故に使い方も全く把握出来ていない。
 使えない道具など無いのと同じ、その失敗が今回の結果を引き起こしたというわけだ。

 しかし、ダグバとの遭遇で大きな収穫を得た。
 ダグバにも影響を与えた程のリントの存在と強力な道具の存在。
 屈辱的な敗北ではあったが、その事実は更なる闘争を予感させる為、ガドルの胸を大いに高ぶらせた。
 故にF-6の住宅地に入りガドルは遂にデイパックの中身を確認する事にしたのだ。
 ダグバが身に着けていたのは何かのベルト。そういえばあの灰色の怪物に変化した男も何かのベルトでオレンジの甲冑を身に着けていた。
 恐らく、リントの中にはそういう力を与える道具が支給されているのだろう。確か黒の戦士も何かのカードで体を変化させていた。



「ゴロギソギ……」



 そして自分にもそういう道具が支給されている可能性は否定出来ない。無論そういう道具に頼り切るつもりはないが、変身出来ない状況に陥る事も多い、あるに越した事はないだろう。

 ガドルはデイパックを開け中にある支給品の1つ『ある物』を取り出した。

 その『ある物』はキバットバットⅢ世が持つ『キバの鎧』を強化する為のもの、
 現状ではガドルにとっては無用の長物でしかない。
 だが、仮に『キバの鎧』を持つ者に渡せばその者は強化される事になる。
 普通の参加者にとっては望む事ではない。しかし強者との戦いを望むガドルにとってはむしろ好都合、当たりと言っても良い。

 そのモノとは――



「びゅんびゅーん! フィーバー♪」
「バンザ ボセパ? (何だコレは?)」



 魔皇龍タツロットである。



【1日目 午後】
【F-6 市街地】
【ゴ・ガドル・バ@仮面ライダークウガ】
【時間軸】第45話 クウガに勝利後
【状態】疲労(中)、1時間変身不可(怪人態)
【装備】無し
【道具】支給品一式、魔皇龍タツロット@仮面ライダーキバ、不明支給品×2
【思考・状況】
1:デイパックの中身を確認、その後ゲゲルを続行する。
2:強い「仮面ライダー」及びリントに興味。
【備考】
※デイバッグの中はまだきちんと調べていません。
※変身制限がだいたい10分であると気付きました。





041:悪の組織は永遠に 投下順 043:太陽と天候
041:悪の組織は永遠に 時系列順 044:Rの定義/心に響く声
029:『クウガ』と『アギト』 津上翔一 053:強魔(前編)
029:『クウガ』と『アギト』 ズ・ゴオマ・グ 053:強魔(前編)
036:二人のジョーカー ゴ・ガドル・バ 055:強敵金カブ(前編)
038: ン・ダグバ・ゼバ 056:3人×3人×3人(前編)