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嘆きの龍騎 ◆7pf62HiyTE




 むかしむかし、あるところにひとりのおとこのこがいました。


 あるひ、おとこのこはこうえんでひとりであそんでいました。


 きがつくとみたことのないおんなのこがたっていて、ふたりはいっしょにあそぶことになりました。


 それはとてもたのしいじかんだったのです。


 おとこのこはおんなのことやくそくしました、またあしたもここであおうと。


 しかしつぎのひはあめ、そのためおとこのこはいきませんでした。


 ところがとつぜんおんなのこがへやにあらわれました。


 おとこのこはおどろいたもののまだこどもだったこともありとにかくあそぶことにしました。


 そのときにふたりはいっしょにてるてるぼうずをつくるなどしてあそびました。


 ところがきがつくとおんなのこはいなくなっていました。


 さよならをいうこともなく、けむりみたいに……


 それはそれはゆめみたいなふしぎなおはなしでしたとさ。





 ◇ ◇ ◇





「……で、これがFINAL VENTのカードね、大体わかったわ」



 仮面ライダーアビスに変身できるカードデッキの中身を確認し小沢澄子はそう口にした。
 城戸真司と小沢はG-4にてヒビキから小沢の知り合いである津上翔一が助けが必要な仲間を捜す為E-2の住宅地に向かったと聞きそこへ向かった。
 早足で移動したものの翔一と合流する事も他の参加者とも遭遇する事無く2人はE-2の住宅地に到着した。
 そして、2人は翔一達を探していたわけだが、その最中小沢がアビスのデッキを貸してと言いだした。
 大まかな説明自体は既に真司から聞いていたものの実際に手に持ったわけではないので詳しく手にとって調べたいというのが理由の1つ。
 もう1つはもし敵と出くわした時に変身する必要が出てくるかもしれないからだ。
 真司としてはライダーとは無関係な女性にデッキを持たせて変身させ戦わせたくはない為、躊躇はした。
 だが、真司が龍騎に変身している状況でアビスのデッキを遊ばせる理由は無いと小沢から説明を受け渋々デッキを渡したというわけだ。
 とはいえ、小沢自身は内心では、



「(貸してくれた事自体は良いけど流石に人が良すぎるわね……氷川君と似たタイプだから予想は付いたけど……
  でもこういうのって、他人に色々利用されるタイプなのよね……後でバカ見る事にならなきゃ良いけど……)」



 真司の人の良さを心配していた。
 真司が渋った理由は前述の通り小沢を戦わせたく無い為だ。だが、本来ならば自分の戦力をむやみに他人に渡す事は極力避けるべきだろう。
 しかし、真司はそういう理由で渋ってはいない。ある意味では小沢を信頼していると言って良いだろう。
 だが、もし小沢が悪人であればバカを見るのは真司だ。それ故に、安易に自分を信用した真司の人格を心配したのである。



「うーん……」



 一方の真司は自身のもう1つの支給品であるトランプのカードを見つめ何か考えていた。それ故に小沢の声も聞こえていない様だった。



「城戸君? 聞いているの?」
「あ、はい……」
「そのトランプに何か気になる事でもあったのかしら?」



 先程小沢はトランプがカードを使って戦う真司達に対する当てつけという推測し説明している。真司もそれについては納得していたものの、



「このトランプがモンスターになるのかなって考えて……」



 そのトランプは通常と違い牛や鷹、山羊など動物が描かれ『MAGNET』、『FUSION』、『ABSORB』などという英文が入っている。少なくても一般的なトランプとは違うのは誰の目にも明らかだ。
 しかし、真司が口にしたのはトランプがモンスター、小沢視点で言えばアンノウンになるのではという話だ。



「そんなバカな……と言いたい所だけど、そういうからには何か理由があるんでしょうね?」
「ちょっと優衣ちゃんの話を思い出して……」



 そう言って真司はこの場に連れて来られる前にライダーの戦いを取り仕切っている神崎士郎の妹である神崎優衣から聞いた話を小沢に説明する。



 幼き頃、両親を亡くし士郎とも離れ離れになった優衣は1人ずっと鏡の前でモンスターの絵を描いていた。
 モンスターが自分を守ってくれると願って――
 その後、1度だけ外に出た時にある少年と知り合いになり、また遊ぶ事を約束した。
 しかしその約束は果たされず、優衣は1人部屋で泣いていた。
 その時、鏡の中の優衣に誘われ鏡の世界に行きそこで楽しく遊んだ。
 そして2人はずっと楽しく遊んだが――



『もう帰れない、帰れる時間は過ぎちゃったから。元の世界に戻ったら死んじゃうよ』



 その言葉に泣き出す優衣に対し、もう1人の優衣が自分の命をあげると言った。その代わりとしてモンスターの絵を求めたのだが――

 そのモンスターの絵が実体化したものが人々を脅かすとともに、仮面ライダーのデッキの力の源になるモンスターとなっていた。
 優衣によるとモンスターが人を襲うのは彼等自身に命が無いから生きる為に襲っているらしいが――



「にわかには信じがたい話ね……」
「やっぱり?」



 小沢の反応も無理はない、小沢視点で言えばアンノウンや未確認生命体の様な怪物が年端もいかない少女の絵から生まれていたという事になるからだ。
 真面目な話、優衣もアギトの一種なんじゃないかと考えずにはいられない。



「その話が真実だとしたら、それが貴方の世界の戦いの切欠になっているのは間違いないわね」
「そりゃそうだろうけど……でも理由が……」



 そう、ここまでの話だけではモンスターが出没する理由はわかってもライダー同士の戦いが行われる理由にはなりえない。
 何故、神崎は優衣の絵を元にしたモンスターの力を宿したデッキで戦わせようとしているのだろうか?



「(でもなんだろう、何かひっかかるな……)」



 考える事が苦手な真司にはその理由がわからない。しかし、今の話に何処か引っかかる所があったのを感じていた。



「まぁ、その話の真偽がどうあれ、そのモンスターの様にトランプに書かれている動物も実体化して暴れるんじゃないかって考えているわけね。
 心配するのはわかるけど、そこまで気にしてもしょうがないわね」
「え?」
「モンスターが何処から出てくるにせよ、城戸君がする事が変わるわけじゃないでしょ」



 そう、モンスターの正体が如何なるものであっても、真司がすべき事はモンスターの脅威から人々を守り、仮面ライダー同士の戦いを止める事である事に変わりはない。
 故にトランプに描かれた動物が実体化した所で、それが人々に仇なすならば倒すという事に違いは無いということだ。
 それ以前に、真司の懸念自体が杞憂である可能性もある。最初の推測通り、真司に対する当てつけの為に大ショッカーがわざわざ動物の描かれたトランプを支給した可能性も否定出来ない。
 どちらにしても、長々と頭を抱える意味は無いという事だ。



「そんなモンスターよりも、ある意味では人間の方がよっぽど怖いかも知れないわよ」
「モンスターよりも……人間が?」



 小沢によると、アンノウンは超能力者……いや、アギトとなる可能性の高い人間を襲っている。また真司の知る通りモンスターは餌とする為に人間を襲っている。
 勿論、襲われる側から見ればたまったものではないが実体が分かればまだやりようはある。
 だが、人間はそうではない。



「善人ぶった様に見えるけど実は極悪人、そんな奴は幾らでもいるわよ」
「そりゃ……まぁ」



 真司にも心当たりはある。彼の出会った仮面ライダーの中にもそういった人物が数多くいたのだ。
 警察官だったにも拘わらず裏で悪事を働き殺人を犯した須藤雅史、
 普通の大学生だったのにゲーム感覚で人々を殺し合わせようとした芝浦淳、
 ここまで極端では無いが弁護士の北岡秀一も色々悪名が轟いていたし、霧島美穂に至っては幾度となく詐欺を繰り返し真司も何度も騙されていた。
 また浅倉威も家族の情に訴えた様に見せかけ弟を惨殺している。
 そういうのを目の当たりにしている以上、真司は小沢の言葉を否定する事は出来ない。



「それに、私や貴方の知り合いが殺し合いに乗っている可能性は否定出来ないわ」
「だからそれを止めて……」



 浅倉や東條悟はともかく、秋山蓮、美穂、北岡ならば自分の話に耳を傾け、戦いを止めて貰えると真司は考えている。しかし、



「仮にも1年の間延々と説得を続けたにも関わらず聞き届けてくれなかったんでしょ、そんな簡単に聞いて貰えるならこの1年は何だったの? って話になるでしょ」
「うっ……」



 出会って間もない美穂はともかく、蓮と北岡とは約1年の付き合いだ。それまでずっと戦いを止めないでいたのに、ここで止めるという確証は何処にもない。
 更に言えば蓮にはどうしても戦いに勝たなければならない理由が存在する事を真司は知っている。だからといって戦いを止めさせる事に違いはないものの、蓮の戦いの重みを知る以上、それが難しい事は理解している。
 もしかすると、北岡や美穂、果ては浅倉や東條にも同様にそういう理由があるのかも知れない。



「それでも俺は……ん、そういえば小沢さんの知り合いも殺し合いに乗っている可能性があるって……」
「津上君はまず大丈夫だろうけど、葦原涼に木野薫がどうするかはわからないわ」



 葦原涼と木野薫、両名とも翔一と同じくアギトの力を持つ者だ。
 ちなみに小沢の話では木野は少し前に死亡したらしいが、真司は浅倉や東條同様、大ショッカーの不思議な力で生き返っているのだろうと判断しそこまで気に留めていない。
 また、小沢もまた理由はどうあれ木野がいるらしいという事実を認識する程度に留めている。
 何にせよ、2人のアギトがどういう行動を取るかは小沢にも予測が不可能だ。アギトの力に溺れて暴れ回っている可能性は否定出来ない。



「……北條透って人は?」
「あのバカはね……きっとまたよからぬ事を考えているわよ。まぁ、それならそれで手痛いしっぺ返し喰らうだけだろうけど」



 とりあえず、北條透についてはそれ以上触れない事にした。



「でも、最後のライダーの事は伝えないと……もしかしたらこの場所にいるかも……」



 蓮達がこの地でも願いを叶える為殺し合いに乗っているとはいえ、最後のライダーがアビスという情報は伝えたいと考えている。



「ああ、それならいないわよ。仮にいたとしてもそこまで気にする必要は無いわ」
「え、どうして?」
「城戸君の手に貴方自身のデッキがある事が証拠よ」



 真司の手元に龍騎のデッキがある事が証拠? それを聞いても真司にはわからない。



「デッキはそれぞれの持ち主に支給されている可能性が高いわ。デッキが無かったら戦えない以上、当然よね」
「そりゃまぁ……」
「じゃあ、このアビスのデッキも本来の持ち主の手元にあるべきだと思わない?」
「あ!」
「それがここにあるという事は、アビスの持ち主はいないって事よ。仮にいた所でデッキが無ければ戦う力を持たない無力な人間でしかないわけだけど」



 真司の手元に龍騎のデッキがあるならば、恐らく蓮の手元にナイト、北岡の手元にゾルダ、そして美穂の手元にファムのデッキがあるだろう。
 つまりデッキは持ち主の手元にあるということだ。そこから考えるにアビスのデッキも本来ならば持ち主の手元にある筈だ。
 しかし実際は真司の手元にある。つまりこれはアビスのデッキの持ち主はいないという状況証拠になりうる。もし仮にいたとしてもデッキが無ければ戦えない普通の人間である。



「問題はどうして城戸君に2つもデッキを持たせたかよ……龍騎のデッキがある以上、使う必要性が低い筈よ……」
「予備とかじゃ……」
「城戸君を有利にする……大ショッカーがそんな殊勝な事するわけもないわね……」
「サバイブのカードも無かったしなぁ……」



 小沢に説明する際、カードの中身を見せながら説明した為、その際に強化形態であるサバイブ体に変身する為のサバイブのカードが無くなっている事を確認した。



「まぁ、長々と考えても仕方ないわね。とりあず今は津上君を探しましょう」



 気になる事が多いとはいえ、現状は翔一との合流を優先すべきだ。
 ヒビキの話ではE-2周辺の住宅地で仲間を集め、今から8時間半ぐらい後の深夜0時にE-4の病院で集まる手筈となっている。
 故に当面はこの辺り4エリアを散策し、時間が来ればE-4に向かえば良いだろう。
 仮に会えなくてもお互いに生きているならば最悪E-4で遭遇出来る可能性が高い。



 その最中、



「それにしても……妙に冷えるわね」
「そういえば……わっ!」



 と、真司が転倒し地面を滑りそのまま前方数メートル程滑っていった。



「何やっているのよ……」
「だって急に滑……」



 と、後方にいる小沢の方へ振り向きながら立ち上がろうとするが、白い怪物が小沢のすぐ横まで迫っているのが見えた。



「小沢さん、危ない!」



 真司はとっさにデイパックを怪物へと投げつけた。



「……!」



 怪物は真司の行動に気付き飛んできたデイパックをその手に掴む。
 そして、怪物の存在に気付いた小沢が距離を取ろうとするが、足元が滑り転倒した。



「……なっ……凍っているっていうの!?」



 怪物は転倒した小沢に迫るが、



「モンスターか……こうなったら……」



 真司は何とか立ち上がり、懐から龍の紋章が入ったデッキを取り出し、すぐ近くにある建物の窓ガラスに映す。
 すると、Vバックルが出現し真司に装着され、



「変身!」



 Vバックルにカードデッキを挿入、すると真司の全身に銀と赤の甲冑が纏われ、仮面ライダー龍騎へと変身した。



「ッシャァッ!」



 そう言って、足元に気を付けつつ、すぐさま怪物へと組み付く。



「小沢さん今の内に!」
「わかったわ!」



 そういって小沢も何とか2人から離れ建物の陰まで移動した。その間にも怪物は拘束を振り解き龍騎を地面に叩き付ける。



「くっ……」


 地面が凍結しているが為、龍騎の身体はそのまま滑っていく。その間にも怪物は龍騎に迫る。凍結した地面を滑る様に移動する為その速度は速い。



 ──SWORD VENT──



 龍騎は怪物が迫る前に1枚のカードを左手甲に装備されているドラグバイザーへと挿入した。
 その後、バイザーから音声が響くと同時に龍騎の右手に契約モンスター無双龍ドラグレッダーの尾を模した剣ドラグセイバーが装備される。
 そして迫る怪物をドラグセイバーで迎撃しようと――



 龍騎と怪物が戦いを繰り広げる中、少し離れた場所から小沢は戦いの様子を見ていた。
 その手には神経断裂弾が装填されたコルト・パイソンが握られている。
 だが、小沢は恐らく通用しないと考えている。
 神経断裂弾は未確認生命体に対し絶大な力を持っている。
 しかし、後に現れたアンノウンに対しては対未確認用の装備が殆ど通じなかった。
 そして目の前の凍結能力を持った怪物はアンノウンの可能性が高い、それを踏まえるならば銃弾は相手の気を逸らす程度の力しかないだろう。
 その一方で考える。


 あの怪物は本当にアンノウンなのか――?


 アンノウンが襲うのはアギト及びアギトに目覚めようとする超能力者その血縁関係者達だ。
 しかし少なくても小沢と真司は超能力者でもその血縁関係者でもない。アンノウンに一方的に襲撃される理由はない。
 何よりも、目の前の怪物がデイパックを所持しているのが見えた。アンノウンがデイパックを抱えて移動する知性を持っているとは思えない。
 故に小沢は怪物がアンノウンではなく、アギトの力に溺れた参加者である可能性が高いと判断した。
 外見上はこれまでのアギトと全く共通項が見られない為、断定は不可能。それでもアギトと同等の力を持っていると考えて良いだろう。
 なお、目の前の怪物がアギトであったとしてもアンノウンと同等以上の力を持っているのは確かなので、どちらにしても対未確認の装備は通用しないと考えて良い。



「あの怪物は物体を凍らせる力を持っているわ、気を付けて城戸君!」



 どちらにしても自分に出来る事は龍騎に変身している真司のサポートだ。アビスに変身して介入するよりもそれが適切な判断だろう。



「凍ったぁー!?」
「だからそう言っているでしょ! ちゃんと聞きなさい!」



 怪物が手から放出した冷気によりドラグセイバーの表面が凍結していた。
 幸い凍結部位は剣だけなので龍騎本体にはダメージはない。もし、ドラグクローを装備しての攻撃であれば恐らく腕そのものが凍り付いていただろう。



「これじゃ、ドラグクローは使えない……」



 その間にも怪物は冷気を放射しつつ龍騎に仕掛けていく。龍騎はその攻撃をかわしながらドラグセイバーで反撃を試みる。
 だが、足場を滑る様に移動する怪物に対し、不安定な足場で思う様に戦えない龍騎、その差は大きく龍騎は一方的に押されていく。



「その場所にいたら勝てないわ、凍結していない所まで下がって!」



 小沢が凍結していない場所で戦う様に指示を出す。
 これまでの戦いを見る限り龍騎に変身した真司の動き自体は1年戦ってきただけの事もあり、G-3Xを装着した氷川誠に負けるとも劣らないものだ。
 足場の不利さえ無くなれば目の前の怪物とも十分に渡り合える筈である。



「よし、なんとか……」



 転倒する事無く凍結していない場所まで下がり体勢を整えようとする龍騎だったが、すぐさま怪物が眼前まで迫り地面へと冷気を急速に放出する。



「あ、足が!?」



 すると、龍騎の足が地面ごと凍結し張り付けられた。



「う、動けない!?」



 その間にも怪物は龍騎を一気に凍り付かせようと迫る。



「くっ……」



 龍騎は何とかカードをバイザーに装填しようとするが、それよりも怪物の攻撃の方が早く間に合わない。



 故に――



 だが、それよりも早く1つの影が怪物から1つのデイパックを奪い去り――



 その直後もう1つの影が怪物へと水を放出した。



「城戸君、今の内に!」



 怪物が振り向くと小沢がデッキを片手に構えながら出てきていた。
 小沢はデッキの契約モンスターであるアビスラッシャーとアビスハンマーを召喚し怪物へと差し向ける事で自分へと注意を向けさせたのだ。
 なお、拳銃を使わなかったのは前述の通り通じない可能性が高かったから、アビスに変身しなかったのは変身する時間すら惜しかったからである。



 ──ADVENT──



 だが、すぐさま怪物は2体のモンスターをかわし、モンスターを召喚した小沢に迫る。
 小沢は変身しようとデッキを構えるようとするがそれよりも怪物の動きは早い。
 生身の人間が怪物の冷気を受ければどうなるかなど語るまでも無い。



 だが――



「どうやら間に合ったみたいね」



 それよりも早く、ドラグレッダーが両者の間へと割り込んでいった。怪物はすぐさま後ろを振り向く。



 そこには凍結した足を溶かした龍騎が1枚のカードを構えて立っていた。
 小沢の行動により怪物の注意が自分から外れた隙を突き、カードを装填しドラグレッダーを召喚しその炎で凍結した地面を溶かした。その後、小沢を助ける為にドラグレッダーを飛ばしたのだ。



 そして、1枚のカードをドラグバイザーへと挿入し、



 ──FINAL VENT──



「はぁぁぁぁぁぁっ!!」



 龍騎が雄叫びと共に構え、同時にドラグレッダーが舞う。



 その後ドラグレッダーと共に駆けだし飛び上がり、



 ドラグレッダーの吐き出す炎を纏いその勢いを以て――



 白き怪物へと炎の蹴りを叩き込んだ――



 ドラゴンライダーキック、それが龍騎の必殺技である――







 爆煙が収まる――残されたのは龍騎と小沢だけ、怪物も、2人が召喚したモンスター達も姿を消している。



「はぁ……はぁ……やったか?」


 そこそこ疲労しているもののダメージは殆ど無い。相手を撃退出来たか気にはなるものの、


「いいえ、逃げられたみたいね」



 と、小沢が残された氷の欠片を手に取る。



「氷で身代わりを作って本体は逃走したって所ね」
「そっか……それにしても何だったんだあのモンスター……」
「参加者である事は確かね、それも殺し合いに乗った凶悪な……」















「城戸真司に小沢澄子、そう簡単には倒せないか」



 そう口にする男性桐生豪の手にはあるものが握られていた。
 それはコネクタに挿し込む事でドーパントなる存在へと変身する力を与えるガイアメモリと呼ばれるものだ。
 桐生が手に持つのはその1つ、アイスエイジのメモリである。説明書きによると首輪にあるコネクタに挿し込むことでアイスエイジドーパントへと変身する事が出来るらしい。

 つい数十分程前金居との戦った後、桐生は単身住宅地へと入った。市街地へ向かえば決着を着けたい相手である橘朔也に出会える可能性もあると考えたのだ。

 いや、もしかすると彼の持つレンゲルに宿るスパイダーアンデッドの邪悪なる意志が参加者を皆殺しにしろと訴えていたのかも知れない――

 何はともあれ、桐生はD-2にて少し離れた所で真司と小沢が話しているのを見つけたのだ。
 そして2人に気付かれるよりも早くレンゲルに変身しようとしたがベルトは全く反応しなかった。
 これも大ショッカーが課した制限なのだろうと結論付けたが、このまま2人を放置するのも惜しかった。
 その時、ふと桐生は自分に支給されたガイアメモリの存在を思い出した。
 支給品そのものは三原修二及びリュウタロスと交戦後確認したが、今まで全く使う機会が無かったという事だ。
 説明書きを読み大まかな使い方は把握した。レンゲルも氷の技を使う事もあり、氷河期の記憶を宿したアイスエイジは自分に合っていると言えよう。

 そして、白き怪物アイスエイジドーパントへと変身しまずは2人に気付かれない様地面を凍結させた。
 相手の動きをある程度制限させ、その後奇襲を仕掛けるというものだ。
 もっとも、幸か不幸か真司が滑った事が切欠で奇襲は失敗に終わり戦闘になってしまったが。

 真司が自分達とは違うカードを使う仮面ライダーに変身した事に少し驚いたものの先に足場を押さえた事により戦闘は桐生が有利に進める事が出来た。
 見たところ真司の人格はどことなく橘の後輩である剣崎一真を彷彿させた。その動きは戦士としては未熟に思えたが、実際に戦い中々の強者に感じた。
 同時に炎の力を持つ龍騎は氷の力を持つレンゲル及びアイスエイジにとって相性の悪い相手だ。そういう意味でも厄介な相手だった。

 それだけではなく、小沢も真司と同じ様なデッキを所持し自分に仕掛けてきた。
 結果として2対1となり桐生が劣勢であるのは明らか、理想を言えば1人仕留めたかった所だが2人の連携によりそれは出来ず、逃走するしかなかった。幸い凍結させれば高速で動ける為、逃走自体は容易だった。

 だが、収穫が無いわけではない。
 最初に真司が小沢を守る為にデイパックを投げつけて来た事により真司のデイパックを手に入れる事が出来た。
 その代わり、小沢によって自身のデイパックが取られたが実の所影響はない。
 何しろ、レンゲルのベルトはデイパック内ではなくラウズカードと一緒に懐にいれており、同時にデイパックの中にある最後の支給品は完全に『ハズレ』だったからだ。
 更に三原から奪取したデイパックはそのまま手元にある。
 そして、真司のデイパックの中にはスペードのラウズカードが数枚あった。結果として更なる力を得る事が出来た事という事だ。



「さて、これからどうするか」



 戦おうにもレンゲルにもアイスエイジドーパントにも当分は変身出来ない。
 更に度重なる連戦やここまでの移動で疲労もそれなりに蓄積している。
 故に暫く何処かで休む事に決めた。地図を確認した所、現在位置はD-1、桐生が定めた目的地は――



「そうだな、病院にでも行くか」



 冷たい足取りのまま桐生は行く――



 アンデッドとガイアメモリの邪悪な毒に浸食されながら――



【1日目 午後】
【D-1 住宅街】
【桐生豪@仮面ライダー剣】
【時間軸】本編で橘と戦い敗れる直前
【状態】疲労(中)、スパイダーアンデッドに精神を支配されている、仮面ライダーレンゲルに1時間変身不能、アイスエイジドーパントに2時間変身不能
【装備】レンゲルバックル@仮面ライダー剣、ラウズカード(クラブA~10、ハート7~K、スペードの7,8,10~K)@仮面ライダー剣、ガイアメモリ(アイスエイジ)@仮面ライダーW
【道具】支給品一式×2、三原の不明支給品(0~1)
1:病院に向かい休む。
2:橘と決着を着ける
3:そのために邪魔になる者は全て倒す
【備考】
※変身制限に気づいています。















「あれ? 変身が解けた?」



 龍騎は変身を解除しないまま暫く周囲を警戒していたが、突然変身が解除されたのだ。それを見た小沢は語る。



「モンスターもいきなり消えた所を見ると、何かしらの制限がかけられていると考えて良いわね。暫くは変身出来ないと考えて良いわね」
「どうして?」
「貴方ね、変身が解けてもすぐに変身出来るんだったら意味ないでしょ。1回に変身出来る時間は大体10分、それでも戦いたいなら別の変身手段を使えって事ね。
 良かったわね、2つもデッキが支給された理由がわかったわ」
「いや、あんまり嬉しくは……」



 その最中、小沢が真司にデイパックを渡し、



「それからこれ、貴方が投げたデイパック取り返しておいたわよ」
「あ、どうも……って、これ俺のデイパックじゃないぞ?」
「あら? そういえば3つ程持っていたわね……間違えたかしら?」
「まぁ、取られたのはあのトランプだけだから問題は……」



 そう言いながら真司はデイパックの中身を確かめる。トランプは無くなったものの名簿などはあるので今後の行動に影響はない。



「それにしても問題はあの怪物ね……アンノウンにせよアギトにせよ、城戸君の持つライダーの様なものにせよ、また襲ってこないとも限らないわ。他にいないとも限らないだろうし早く津上君と合流し……」



 今後の事に頭を抱え真司に同意を求める小沢だったが、真司が固まって動かないのを見て言葉に詰まる。



「どうした?」



 真司の手にはてるてる坊主が握られていた。更に説明書きも握られていたので小沢はそれを手に取り確認する。



「神崎優衣のてるてる坊主……城戸君が話していた子ね……ってこんなもの支給してどうしろっていうのよ……」



 それは本当になんの変哲もないてるてる坊主だ。何の力も持っていないのは誰の目にも明らか、故に完全なハズレといえる。



 しかし、真司はずっと俯いたままだ。小沢にはそれがわからないでいた。



 そして、震える声で真司は言葉を紡ぎ出す。



「優衣ちゃんだったんだ……俺が出会った……あの女の子……」



 幼き日、真司は1人の少女と仲良くなった。その際、その翌日も遊ぶ約束をしていた。
 しかし翌日は雨、故に真司は外へ行かなかった。
 だが、突然部屋に少女が現れたのだ。真司は驚いたもののまだ子供だったが故に一緒にてるてる坊主を作る等して遊んだ。
 が、いつの間にか少女はさよならも言わずに煙みたいに消えたのだ。
 それはまさしく不思議な話であり、夢だったと言われれば否定する事の出来ない話だ。

 さて、この話と繋がる話を何処かで聞いていないだろうか? 先程の優衣の話がそれだ。
 優衣の話に出てきた少年は真司だったというわけだ、優衣のてるてる坊主が真司がかつて優衣と一緒に作ったものと同じようなものだったというのがその証拠だ。

 つまり、真司と優衣は遊ぶ約束をしていながら真司がその約束を破ったが故に、優衣は鏡の中へ行き、代わりの命と引き換えにモンスターの絵を渡す事となった。
 そしてそのモンスターが関わるライダーの戦いが始まった。

 勿論、神崎が何故ライダー同士の戦いを行っているのかについて、真司の知り得ない部分はまだある。
 だがこの一件が無ければライダー同士の戦いは起こらなかったと言って良い。

 モンスターによって蓮の恋人が眠り続ける事になり蓮を戦わせる事になったのも――
 多くのライダー達やその関係者、そして何の罪もない人々が犠牲になったのも――
 そしてこの世界に仮面ライダーが誕生した事により、世界を懸けた殺し合いに巻き込まれる羽目になったのも――



「全部……俺のせいじゃないか……優衣ちゃんが鏡の中に行ったのも……



 ラ……ライダーの戦いが始まったのも、全部……俺が約束を守らなかったせいじゃないか……」



 全ての元凶が自分にある事を知った者は嘆く――



 その彼に吹き付ける風は――



 氷河期の様に冷たかった――





 ◇ ◇ ◇





 むかしむかしあるところにひとりのおんなのこがいました。


 おやをなくしあにともはなればなれになり、おんなのこはひとりさびしくかがみのまえでえをかいていました。


 そんなあるひ、そとにでたときにおとこのことしりあいになり、またあそぼうとやくそくしました。


 しかしおとこのこはやくそくをまもることなくきてくれませんでした。


 ずっとないていたおんなのこでしたが、かがみのなかのおんなのこがあそびにさそってくれました。


 おんなのこはかがみのなかのせかいでもうひとりのおんなのこといっしょにあそびました。


 それはとてもたのしいじかんでした。


 しかし、もうひとりのおんなのこからつたえられたのはざんこくなことばでした。


 もうかえれず、もどったらしんでしまうと、


 なきだしたおんなのこにもうひとりのおんなのこはじぶんのいのちをあげるといいました。


 そのかわり、おんなのこのかいたえをくれるとたのんだのでした。





 ですが、はなしはこれでおわりではありませんでした。


 そのいのちはおんなのこがおとなになったらきえるものでした。


 にじゅっかいめのたんじょうびがきたときにきえるいのちだったのです。


 しかし、おんなのこのおにいさんがあたらしいいのちをあたえようします。


 じゅうさんにんのかめんらいだーをたたかわせ、いちばんつよいいのちをえらびそれをおんなのこにあたえようと……


 それはまさしくじゅんすいなねがいだったのです。





 しかし、それがきっかけでせかいをかけたたたかいにまきこまれることとなりました。


 はたしてだれがわるいのでしょうか?


 ひとりさびしくえをかいたおんなのこでしょうか?


 おんなのこにいのちをあたえるべくたたかいをおこしたおにいさんでしょうか?


 それとも、おんなのことのやくそくをやぶったおとこのこでしょうか?





 そして、そのことにきづいたおとこのこはどうすればよいのでしょうか?


【D-2 住宅街】
【城戸真司@仮面ライダー龍騎】
【時間軸】劇場版 霧島とお好み焼を食べた後
【状態】疲労(小)、愕然、仮面ライダー龍騎に2時間変身不能
【装備】龍騎のデッキ@仮面ライダー龍騎、
【道具】支給品一式、優衣のてるてる坊主@仮面ライダー龍騎
【思考・状況】
1:俺のせいで……
2:小沢と一緒に津上翔一に会いに行く
3:ヒビキが心配
4:絶対に戦いを止める
5:蓮、霧島、北岡にアビスのことを伝える
6:大ショッカーは許せない
【備考】
※支給品がトランプだったことを、カードを使って戦う龍騎に対する宛てつけだと認識しました。
※アビスこそが「現われていないライダー」だと誤解しています。
※アギトの世界について認識しました。


【小沢澄子@仮面ライダーアギト】
【時間軸】本編終盤(第46話終了後以降)
【状態】健康、アビスハンマーとアビスラッシャー2時間召喚不可
【装備】コルト・パイソン+神経断裂弾@仮面ライダークウガ、アビスのデッキ@仮面ライダーディケイド
【道具】支給品一式、トリガーメモリ@仮面ライダーW、ガルルセイバー(胸像モード)@仮面ライダーキバ
【思考・状況】
1:真司と一緒に津上翔一に会いに行く
2:殺し合いには乗らない
3:打倒大ショッカー
【備考】
※真司の支給品がトランプだったことを、カードを使って戦う龍騎に対する宛てつけだと認識しました。
※龍騎の世界について大まかに把握しました。

【真司と小沢の共通備考】
※1日目0時、E-4エリアの病院屋上で合流する予定です。


047:加速度円舞曲♯王と牙の運命 投下順 049:メモリと勘違いと呪い
047:加速度円舞曲♯王と牙の運命 時系列順 049:メモリと勘違いと呪い
023:人を護るためのライダー 城戸真司 053:強魔(前編)
023:人を護るためのライダー 小沢澄子 053:強魔(前編)
037:敵か味方か? 桐生豪 053:強魔(前編)