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強敵金カブ◆LuuKRM2PEg




燦々と輝く太陽は、時間と共に沈んでいく。
青い空は段々と赤みを増し、辺りに闇が広がっていた。
太陽が地平線に向かうのと同時に、星も徐々に見えてくる。
辺りに吹く風もまた、冷たくなっていた。
空気の流れと、木の葉が揺れる音以外何も聞こえてこない。
沈黙を突き破るかのように、足音が聞こえた。
F-6エリア。
一切の気配が感じられない町の中を、一人の男が進んでいる。
岩のように逞しい身体を、軍服で包んでいた。
険しい表情からは、数多の戦場を生き延びてきた豪傑という雰囲気を醸し出している。
『クウガの世界』でリントの戦士、警察を数え切れないほど殺し、自らを『破壊のカリスマ』と称したグロンギ。
ゴ集団の中でもトップクラスに値する実力者、ゴ・ガドル・バ。
彼はたった一人、人気の感じられない町を進んでいる。
元の世界で行っていた、強者を狩るゲゲルを続行するため。
この世界に連れてこられた、多くの『仮面ライダー』と戦うため。
そしてこの世界の何処かにいるグロンギの王、ン・ダグバ・ゼバと戦うため。

(恐怖か……)

先程の出来事を、ガドルは思い返した。
ダグバと遭遇して、戦おうとする。
しかしお互い力を発揮する事が出来なかった。
その時に、ダグバは言う。
リントによって、自分は恐怖を教わったと。
本来ならば与える側の筈な王が、脆弱たる一族に与えられた。
そのようなリントが、異世界にいるなんて。
ならば、戦わないわけにはいかない。
そして勝つ。
未知なる強者への興味が、ガドルを動かしていた。

「ガドルさぁ~~~~ん! みっつけましたよぉ~~~!」

その最中、彼の耳に声が響く。
とても甲高く、陽気に満ちていた。
殺し合いという状況に、全く相応しくない明るい声。
ガドルはそちらに振り向く。
見ると、そこには一匹の龍が宙に浮かんでいた。
人の頭と同じサイズの全身が、眩い黄金に輝き、背中には彼の世界を象徴する赤い紋章が刻まれている。
それは『キバの世界』に存在する、仮面ライダーキバの力を解放する力を持つ龍。
大ショッカーの手によってガドルのデイバッグに封じ込められた、魔皇龍タツロット。

「お前か……」
「あっちにいたんですよ、参加者の人達が!」

淡々と呟くガドルとは対照的に、龍は歓喜したように身体を踊らせる。
先程デイバッグより飛び出してから、互いに情報を交換した。
この世界が戦場という、現状。
ダグバを初めとした、強者との戦いを求めるガドル。
元の世界の住民を捜すタツロット。
その際に、彼は語った。
自分は渡が変身する、キバの力を最大限に引き出す為のモンスターである事を。
紅渡、名護啓介、紅音也、キング。
同じ世界より連れてこられた四人はいずれも、鍛え抜かれた強者であると。
しかし音也とキングは、過去に飛んだ際に亡くなっている筈。
それがタツロットにとって、どうにも不可解だった。
だがガドルにとって、それは関心にない。
その四人が強者ならば、戦うだけだ。
加えて、タツロットは渡という男の力を発揮出来るらしい。
ならばそれまで、同行してもいいだろう。

「早く行きましょうよ! このままじゃ、遠くに行っちゃいますよ!」

タツロットは、ガドルを急き立てる。
彼は知らなかった。
ガドルが、この殺し合いに乗った危険人物であると。
自分が目の前の男に情報を与えた事で、渡の危険が増えてしまっていると。
ただ、勘違いをしてしまっていた。
ガドルは己を鍛えるために、戦いを望む気高き男である事を。
そして渡達と会うまで、この男の手伝いをしようと決意してしまった。
そんなタツロットを、ガドルは仏頂面で見つめている。

「わかった、行くぞ」
「了解です~~! 案内しますよ、びゅんびゅんびゅ~~~んっ!」

空を飛ぶ龍の後ろを、男はついていった。
タツロットは、同行人の願いを叶えるため。
ガドルは、更なる参加者と戦うため。
それぞれ動き出した。

「ガドルさん、頑張ってくださいよ~!」

タツロットの語りを無視して、ガドルは思う。
この先にいるのは、如何なるリントの戦士か。
自身を満足させるような強者か。
最初に戦った不自然なクウガのような弱者か。
だがどちらにしても、最後に殺せば良いだけだ。
もしも何も出来ない者ならば、無視すればいい。

「それにしても、ガドルさんみたいなお強い人を出会えるなんて……感激ですよ!」
(それにしても……)

足を進める中、ガドルは心の中で呟いた。
このタツロットとかいう奴は、甲高い声でやたらに喚く。
無視すれば良いだけだが、やかましい事には変わりはない。
始末する事も出来るが、参加者を捜すのにも役に立つ。
だから、我慢しなければならないが。

「ああっ、渡さん達にも会わせてみたいですねぇ~! ガドルさん、私はあなたを応援してますよ~!」
(こいつは黙る事は出来ないのか?)

ガドルは溜息を漏らす。
そんな彼の思いを知らずに、タツロットは飛び続けた。






日の光は徐々に薄くなり、闇が広がっていく。
規則的に並んでいる電柱柱から、次々と明かりが灯っていった。
そんな中を、二人の男が歩いている。
『555の世界』を代表する、ウルフオルフェノクとして覚醒し、人間とオルフェノクを守り抜いた仮面ライダーファイズに変身する青年。
乾巧。
『カブトの世界』を代表する、天の道を往き全てを司る男と自称する、仮面ライダーカブトに選ばれた男。
天道総司。
先程紅音也と別行動を取ってから、大ショッカーを打倒するために彼らは仲間を探していた。
同じ世界から連れてこられた住民達。
同じ志を持つ者達。
しかし、天道は最も信頼を寄せる男と出会えない事を、知ってしまった。

(加賀美……)

加賀美新の相棒である、ガタックゼクターがベルトと共に飛んでいるのを見て。
それが示すのは、資格者に何かがあった。
恐らく、既にこの世にいない可能性が高い。
それでも、挫ける事は許されなかった。
そんな事になってしまっては、何も守る事は出来ない。
不条理な殺し合いに巻き込まれた、多くの命。
平行して存在する、数多の世界。
みんなが生きる、自分の世界。
これ以上、何一つだろうと取りこぼすわけにはいかない。

(やれやれ、暗くなってきたな)

天道の隣を歩く巧は、辺りの警戒を強めていた。
時間からして、今はとても暗い。
こんな状況を利用して、汚い不意打ちを企む連中がいる可能性がある。
そうならないためにも、あまり気を抜けない。
オルフェノクの持つ驚異的な五感の内、二つを集中させた。
視覚と聴覚。
暗闇から誰かが現れる気配や、近づいてくる足音は感じられない。

(にしても、死人を生き返らせるか……ふざけんじゃねえよ)

その最中、巧は内心で毒を吐く。
こんな戦いを開いた大ショッカーは、優勝した暁には死者の蘇生も叶えると言った。
事実、それは真実かもしれない。
ここに来る前に、もう死んでしまったはずと言っていた音也や園崎霧彦。
木場勇治を初めとした、名簿に書かれている死者の名前。
しかし、巧にとってそれは悪趣味な行為にしか見えなかった。

(殺し合う為に生き返らせた……舐めてるのかあいつらは)

限られた命を、まるでゲームのリセットボタンを押すかのように、再び生き返らせる。
理由は、世界を救うという大義名分の、殺し合いをさせる為。
そう考えた途端、彼の中で憤りが生まれた。
死んだ人間が生き返ったところで、ロクな事にならない。
それはもう人ではなく、別の何かだ。
一度人間としての命を失い、オルフェノクとして覚醒してしまった自分には、一層そう感じられる。
事実それが原因で、自分の世界では数え切れないほどの悲劇が生まれた。
人間とオルフェノクの共存を目指したが、人間に絶望した末に命を落とした木場。
オルフェノクを研究しているという一部の警察に捕らわれて、最後には絶命してしまったと聞いた長田結花。
その強大な力に溺れて、数え切れないほどの命を奪った多くのオルフェノク。
道を踏み外したオルフェノクを利用して、悪事を働いたスマートブレイン。
結局、死者が蘇生したところで良い事などあるわけがない。

(気に入らねぇな……畜生)

過去の経験と今の状況にストレスを感じて、巧は道端の石ころを蹴った。
それで何かが解決するわけでも、苛立ちが晴れるわけでもない。
しかし、やらずにはいられなかった。

「…………ん?」

小石が地面を跳ねる中、巧は歩みを止める。
オルフェノクの発達した聴覚が、遠くより足音が響くのを察知した為。
方角は東。しかもかなり近い。
迫り来る気配に気づいたのか、天道もまた足を止める。

「乾」
「ああ……近いな」

一言、互いに声をかけた。
そして振り向く。
自分達に近づいてくる、存在の方へと。
薄暗い闇の中からは、軍服を身に纏った一人の男が現れる。
その瞳は鋭く、武人と呼ぶに相応しい雰囲気を醸し出していた。
男が放つ視線を浴びて、二人は反射的に構えを取る。

「何者だ」

天道は静かに口を開いた。
厳しく、警戒するような声で。
しかし男は、彼の言葉に眉一つたりとも動かさなかった。

「リントの戦士達か……」
「リント……だと?」

聞き覚えのある単語に、巧は疑問の表情を浮かべる。
リント。
それは霧彦を殺した、あの白い服を纏った男も口にした言葉。
あの時の戦いを思い出して、巧は確信する。
目の前の男は、奴と同じ世界の住民である事を。

「俺と戦え」

威圧感の籠もった声で、男は呟く。
その直後、鍛え抜かれた肉体が音を鳴らしながら、形を変えていった。
『クウガの世界』で人々を襲い続けた、暴力を振るう存在。
グロンギと呼ばれる戦闘民族。
カブト虫の物に酷似した角、鍛え抜かれた肉体を覆う外骨格、胸に飾られた銅の装飾品、金色に輝く腹部のバックル。
数え切れない程のゲゲルを乗り越えた破壊のカリスマ、ゴ・ガドル・バ。

「なるほどな……」

異形の姿へと変わった男を見て、天道は確信する。
異世界の住民である相手は、この戦いに乗っていると。
天道は傍らに飛ぶカブトゼクターを、右手で掴んだ。

「やれやれ……仕方ねえな」

同じように、巧も銀色の輝きを放つ携帯電話、ファイズフォンをバッグから取り出す。
その表面には、ファイズの仮面を思わせるような紋章が象られたカードキー、ミッションメモリーが装着されていた。
巧はその表面を開いて、コードを打ち込む。
自らの存在を証明する『5』の数字を、三回押した。
一度入力される度に、高い音が鳴る。
最後に、彼は『ENTER』のボタンを入力した。

『Standing by』

一連の動作によって、ファイズフォンから電子音声が発せられる。
巧はそれを耳にすると、握る腕を高く掲げた。
オルフェノクとは違う異世界の怪人と、戦うために。

「「変身ッ!」」

天道と巧は、同じ言葉を大声で紡ぐ。
今とは違う姿に、変身するために。
戦う姿への変身を、果たすために。
彼らの腰には、それを行うのに使うベルトが、銀色に輝いていた。
天道はカブトゼクターをライダーベルトに。
巧はファイズフォンをファイズギアに。
それぞれ、長い間共に戦ってきた相棒をセットした。

『Hensin』
『Complete』

カブトゼクターとファイズフォンから、異なる音声が発せられる。
そして、それぞれから内部に蓄積された物質が吹き出し、装着者の全身を駆け巡った。
カブトゼクターから噴出されるタキオン粒子が、天道の身体を包み込む。
ファイズフォンから流れ込むフォトンブラッドが、赤い線となって巧の全身を走り、輝きを放った。
ベルトから発せられる二つの光が、夜の闇を照らす。
それによって、ガドルは一瞬だけ目を細めた。
一方、中央にいる天道と巧の全身に、装甲が包まれていく。
光が収まる頃には、彼らは既に姿を変えていた。

「ほう……やはり仮面ライダーか」

そう、数多に存在する世界の象徴とも呼べる戦士。
仮面ライダーへと。
ガドルの前に立つ二人は、それぞれの世界を代表する戦士の姿となっていた。
片や天道が変身したのは、マスクドライダーシステム第1号である『カブトの世界』を象徴する仮面ライダー。
重厚感溢れる銀色の装甲と黒いスーツに身を覆い、単眼が青い輝きを放っている。
世界をワームから守り抜いた、太陽の神と呼ばれた戦士、仮面ライダーカブト・マスクドフォームへと天道総司は姿を変えていた。
片や巧が変身したのは、スマートブレイン社が開発したライダーズギアの一種である『555の世界』を象徴する仮面ライダー。
ギリシャ文字のφを象ったようなマスク、胸部と四肢を守る銀色の装甲、黒い強化スーツに走る赤いライン。
本来は、オルフェノクの王を守るために作られたベルトの戦士。
しかし巧は、人間を守るためにそれを使い戦った。
人間とオルフェノク。
種族の未来を守るために戦った戦士、仮面ライダーファイズへと乾巧は姿を変えていた。

「行くぞ」
「ああ」

変身を果たした彼らは、再び声をかけ合う。
カブトは、己の武器であるカブトクナイガンをアックスモードにして。
ファイズは、ファイズフォンからミッションメモリーを取り出し、ファイズショットに差し込んで。
それぞれの武器を握り締めながら、疾走を開始した。
彼らは二手に分かれ、左右から攻撃する事を選ぶ。
ガドルはそれを察すると、左手で胸の装飾品を一つ取り出す。
すると、飾りは肥大化して、一瞬の内に無骨な剣へと変わった。

「ハアッ!」
「ヤアッ!」

右からカブトが、左からファイズが。
それぞれ斧と拳を、力強く振るう。
対するガドルは、それを迎え撃った。
剣と右手を、掲げる事によって。
すると、互いの得物が激突し、金属音と火花を散らせた。
そのままガドルは、両腕に力を込めて二人を押し返す。

「くっ!」
「うわっ!」

カブトとファイズは、蹌踉めきながら後退した。
彼らは体勢を立て直すが、遅い。
その僅かな隙を付いて、ガドルは走りながら剣を振るった。
まずは、カブト。

「グッ!」

ガドルが横薙ぎに振るった剣を受けて、仮面の下から呻き声を漏らす。
そのまま、カブトの身体は地面に叩き付けられていった。
マスクドフォームの堅牢な鎧があってしても、身体に伝わる衝撃は凄まじい。
痛みのあまりに、中にいる天道の頬から汗が流れた。
倒れたカブトに目を向けず、ガドルはファイズに振り向く。
鋭い瞳を向けながら、剣を縦に振るった。

「フンッ!」

迫り来る、銅色の刃。
ファイズはそれを見て、体勢を一歩分ずらす。
それによって、剣先を掠ることなく回避に成功した。
しかし、続くようにガドルは獲物を振るう。
上から下、右から左、そして斜め。
縦横無尽に迫る刃を、ファイズは避ける事しかできなかった。
しかも完全には至らず、時折掠っている。

「ちっ!」

怒濤の勢いで振るわれる剣を見て、ファイズは舌打ちをするしかできない。
下手に反撃をする事も、出来なかった。
相手の剣は、重厚感溢れる鎧に包まれたカブトすらも、軽々と吹き飛ばした。
軽い装甲しかない自分があれを受けては、一溜まりもない。
今は致命傷を受けていないが、このままではどうなるか。
ガドルが振るう剣を、ファイズは避けながら考える。
反撃のチャンスを。
切り抜ける手段を。

「どうした、その程度か!?」

怒号と共に、ガドルは剣を掲げる。
そのまま勢いよく、ファイズに目がけて振り下ろした。
刃は彼の薄い装甲を、切り裂こうと迫る。
その直後、銃声が鳴り響いた。

「ヌッ!?」

ファイズに振り下ろされた剣は、届かない。
ガドルの動きが、唐突に止まったため。
それを見たファイズは、拳を強く握り締めた。

「ラアッ!」

勢いよく、ストレートの一撃をガドルに向けて放った。
鍛えられた胸板に叩き込まれ、巨体が少しだけ後退する。
しかし、手応えはあまり感じられない。
むしろ逆に、ファイズの拳が痛みを感じていた。

(硬え……何だよこいつの身体は!)

殴った手をぶらつかせながら、彼は舌打ちする。
分かっていた事だが、目の前の相手は強い。
スマートブレイン社にいる、ラッキークローバーにも匹敵するかもしれなかった。
特に、ドラゴンオルフェノクやこの会場の何処かにいるローズオルフェノク。
奴らと同等の力を、相手は持ってると確信した方が良い。
ファイズが戦慄する一方、ガドルは振り向いた。
先程吹き飛ばしたカブトの方へと。
銀色の鎧に包まれた戦士は、その手に拳銃を持っている。

「その程度か」

ガドルは何でもなさそうに、あっさりと言い放った。
熱と衝撃が、ほんの僅かだけ背中に感じる。
しかし、それだけ。
如何にカブトクナイガンから放たれるイオンビームでも、ガドルに傷を負わせる事は出来なかった。

「なるほどな」

仮面の下で、カブトは呟く。
先程吹き飛ばされた後、隙を見つけてクナイガンから弾丸を放った。
そして、ファイズは拳を叩き込む。
しかし効果はあまり見られない。
敵の骨格はそれほどまで、分厚いようだ。
加えて純粋な腕力は、マスクドフォームすらも上回る。

「オオオオオオォォォッ!」

カブトは考える中、ガドルは突貫してきた。
分厚く鋭い刃を、頭上に掲げる。
そのまま空気を震わすような勢いで、大剣を振り下ろした。
立ち向かうために、カブトもクナイガンを下から上に翳す。
刹那、異なる二つの刃が激突した。
金属音と、橙色の火花が周囲に広がる。
続くように、斧と剣が衝突を続けた。
一度ぶつかる度に、耳障りな音が闇の中で響く。
次々と生じる閃光が、微かに辺りを照らした。

「ハッ!」
「ダアッ!」

咆吼と共に、互いの武器が激突する。
一閃、二閃、三閃、四閃。
その度に、彼らの腕を衝撃が伝わっていた。
しかし、その勢いはガドルの方に傾いている。
相手の腕力は、規格外の物だ。
このまま真っ向からぶつかっても、勝てるわけがない。
数度に及ぶ刃の打ち合いの後、距離を取った。
三つの瞳が、互いに睨み合う。

(目には目を、歯には歯を、カブト虫にはカブト虫か)

敵意が激突する中、カブトは心の中で呟いた。
そして、腰に手を伸ばす。
赤い煌めきを放つゼクターの角を、掴んだ。

「キャストオフ!」
『Cast off』

宣言と共に、力強く反対側に倒す。
カブトゼクターは主人の言葉を復唱すると、中央から輝きを放った。
それによってベルトからは、電流が全身に流れていく。
すると、爆音と共に銀色の装甲が、カブトから吹き飛んでいった。
頭部、胴体、両腕。
装甲は弾丸の速度で、ガドルの肉体に激突する。
しかし、敵は微動だにしない。
蚊を差す程度の痛みすらも、感じなかった。
そんな中、カブトの顎から一本の角が、天に向かって伸びていく。
単眼を仕切るように、中央へ装着された。

『Change Beetle』

青い瞳の輝きが強くなった途端、ゼクターが強く叫ぶ。
カブトの姿は、先程とは大きく変わっていた。
軽量感溢れる鎧は、太陽のように赤く光っている。
『太陽の神』と呼ばれるに、相応しいほど。
そして何より、特徴的なのはその姿。
目の前で対峙するガドルと同じ、カブト虫をモチーフとしていた。
ライダーフォームと呼ばれる、仮面ライダーカブトのもう一つの姿。

「ほう」

姿を変えた敵を見て、ガドルは呟く。
一方でカブトは、クナイガンの持ち方を変えた。
銀色の斧は収納され、金色の刃が飛び出していく。
クナイモードとなった武器を、カブトは構えた。
そんな彼に向かって、ガドルは走る。
目前にまで迫った瞬間、刃と刃の激突が再び始まった。
しかし先程とは違い、カブトの速度が上がっている。
重厚な鎧を捨てた事で、その分身体が軽くなっていた。
故に、ガドルの攻撃を手数で捌く事や、回避する事が出来るようになる。

「「ハアッ!」」

二つの咆吼が、武器と共に激突。
ガドルが一度振るうのに対して、カブトは三度振るう事で相殺する。
相手の力を、手数で捌いていた。
しかし、だからといって有利になるわけではない。
速度が上がった分、防御力が下がっている。
故に、一度でも敵の攻撃を受けるわけにはいかなくなった。

「フンッ!」

ガドルは、巨大な得物を振り下ろす。
それをクナイガンで受け止める事を、カブトはしなかった。
頭部に到達しようとした瞬間、身体を横に捻る。
すると大剣は空振り、電柱を切り裂いた。
巨大な柱が倒れ、コンクリートで出来た道を少し砕く。
地面が震動する中、カブトは敵の左側に回り込んだ。
そして、脇腹に向かって蹴りを放つ。
7トンの力が、ガドルを微かに蹌踉めかせた。
すぐに体勢を立て直すも、遅い。

『Exceed charge』
「ッ!?」

直後、電子音声が響く。
その音源は、ファイズの方から鳴っていた。
ガドルはそちらに振り向く。
視界の先では、ファイズギアに蓄積させたフォトンブラッドが、赤い光を放ちながらフォトンストリームを通っているのが見えた。
エネルギーの行く先は、右手に握られたファイズショット。
拳から光が放たれた途端、ファイズは走り出した。

「ヤアアアアァァァァァッ!」

叫びながら姿勢を低くして、腰と右腕を軽く回す。
ファイズの拳は、更に輝いていた。
彼の右手が光って唸る。
敵を倒せと、輝き叫ぶ。
必殺、グランインパクトをファイズはガドルに叩き込んだ。

「グウッ……!」

胸部に、強い衝撃が走る。
フォトンブラッドが拳から流れ、敵の身体にφの紋章を刻んだ。
それでも、ガドルは呻くだけで大きなダメージにはなっていない。
鎖が縛られたかのように、四肢が動かない。
グランインパクトによって生じた、紋章の効果だとガドルは察した。
赤いマークを、力ずくで振り解こうとする。
しかし、それが隙となった。

『Rider kick』
「ムッ!」

力強く、機械で出来た男の声が鳴る。
ガドルは上を見上げた。
視界の先からは、跳躍したカブトが右足をこちらに迫っている。
彼はファイズがガドルの動きを止めている間に、全ての準備を整えていた。
この世の理はすなわち速さ。
物事を早く成し遂げれば、その分時間が有効に使える。
力に任せたガドルの戦法に対し、カブトとファイズは速度で立ち向かったのだ。
タキオン粒子を元とした、雷が纏われた必殺の蹴り。
ライダーキックが、ガドルに向かって放たれていった。

「ハアアァァァァァァァァァッ!」

咆吼と共に、カブトの一撃が到達する。
ファイズが刻んだ紋章の位置と、寸分の狂いも見せずに。
19トンもの重さが、ガドルの装甲に襲いかかった。
二重の必殺技を受けて、その巨体は轟音と共に吹き飛んでいく。
そのまま、家の壁を突き抜けていった。
すると、衝撃によって一軒家が崩れ落ちていく。
カブトとファイズは、瓦礫の山が出来る様子を見守っていた。

「乾」
「分かってるよ」

しかし彼らは、まだ気を抜いていない。
速さに任せたコンビネーションとは言え、これで勝てるのは有り得ないはず。
敵の力量は、それほど凄まじい。
数え切れないほどの戦いを乗り越えてきた彼らは、本能でそう感じ取っていた。

「オオオオオォォォォッ!」

瓦礫の中から叫びが聞こえる。
直後、その下からガドルが姿を現した。
そのまま、威風堂々とした雰囲気を放ちながら、佇む。
鋭い目線を向けられたカブトとファイズは、再び構えを取った。

「なるほど、な」

ガドルは呟く。
目の前の仮面ライダー達は、その速さを使って自身に傷を与えた。
クウガと最強最悪を自称した弱者。
二人の黒い仮面ライダー。
どちらの戦いで負ったダメージよりも、深かった。
その証拠として、胸の装甲に亀裂が走っている。
どうやら、下手に惜しむべき相手ではないかもしれない。

「いいだろう」

そして、ガドルは全身に力を込めた。
新たに得た力を、解放するため。
腰に輝くバックルから、電流がガドルの身体に迸る。
それに伴って、音を立てながら全身に変化が起こった。
瞳が金色に輝き、筋肉も同じ色に変わっていく。
身体に飾られた装飾品も、銅から黄金色に煌めいていった。

「ハアァァァァッ……」

変化が終わると同時に、ガドルは深く息を吐く。
本来は自身の世界で、ザギバスゲゲルに挑戦するために得た形態。
クウガが力を得る手段をヒントにして、ガドルは発電所の電気をその身に取り込んだ。
結果、更なる力を得るのに成功する。
電撃体と呼ばれる、金の力を。
姿を変えたガドルから、圧倒的な覇気が放たれる。
それはカブトとファイズにも突き刺さるが、彼らは気圧されない。

「行くぞ」

二人を目がけて、ガドルは突進する。
先程のカブトと同じように、跳び蹴りを放った。
ガドルの眼下に立つ二人は、瞬時に左右へ飛ぶ。
標的を失った蹴りは、地面に突き刺さった。
すると、轟音と共にコンクリートは砕かれていき、その下で守られた地面が陥没する。
ライジングマイティの力を手に入れた、クウガすらも打ち破る形態。
この程度の事など、造作もなかった。

「くっ!」
「うわっ!」

無論、その衝撃波も半端な物ではない。
直撃は避けられたが、余波はカブトとファイズを吹き飛ばした。
二人は地面を転がるも、すぐに立て直す。
すり鉢状の穴が道路に空いて、その中央でガドルは佇んだ。
一瞬の内に、五メートルものクレーターへと変貌する。

「なんて馬鹿力だよ……!」

ガドルが起こした破壊を見て、ファイズは呆れたように呟いた。
分かってはいたが、敵は強い。
その上、こんな隠し球まで持っていた。
最も、逃げるつもりは毛頭無い。

「奴の力が格段に上がっている……一発でも当たったら致命傷と思え」
「言われなくても、分かってる!」

カブトは冷静に語り、ファイズは強く返答する。
静と動。
対極に値する二つの感情を、それぞれ胸に秘めて進んだ。

「来い!」

ガドルもまた、クレーターの真ん中から地面を蹴る。
瞬時に、二人の目前まで迫った。
そして金色の拳を、勢いよく振るう。
ファイズは重い一撃を、体勢を低くして紙一重で避けた。
続くように、ガドルの拳はカブトへ迫る。
それも、回避されてしまった。
反撃の一撃を、カブトとファイズは放つ。
クナイガンの刃。
ファイズショットの拳。
金と銀の武器は音を鳴らしながら、ガドルの皮膚に傷を付ける。
しかし、手応えは感じられない。
矢継ぎ早に、二人は攻撃を続けた。
だがガドルは、それらを弾く。
そこから、カブトとファイズに拳を打ち込んだ。
だが、またしても避けられる。
ガドルから、二人は距離を取った。

「乾、俺が時間を稼ぐ。その隙にお前は準備をしろ」
「ああ」

カブトの提案に、ファイズは頷く。
この数秒間で、彼らは次のステップを立てていた。
やり取りを終えて、カブトはクナイガンを片手に疾走する。

「同じ手を、食うと思ったか!」

対するガドルも、怒号と共に走り出した。
その心中には、怒りが沸き上がっている。
先程のように赤い戦士が一人で、自分に向かった。
大方その間に、もう一人が必殺技の準備をするのだろう。
所詮、それ以外の戦いを知らない未熟者だったという事か。
微かな落胆を覚えながらも、ガドルは拳を振るう。

「誰が同じと言った?」

身体を横にずらして重い一撃を避けながら、カブトは呟いた。
そのまま全身を一回転しながら、ガドルに振り向く。
そして、腰に手を伸ばした。

「クロックアップ!」
『Clock up』

宣言と共に、ベルトの脇に備わったスイッチを叩く。
するとカブトゼクターが、復唱した。
『カブトの世界』に存在する全てのマスクドライダーに搭載された、超高速移動機能。
クロックアップシステムが、発動する。
カブトの周りで流れる時間の流れが、一気に減速する。
風が、流れる雲が、沈む太陽が、崩れ落ちる瓦礫の破片が、ガドルの拳が、ファイズの動きが。
全てが、スローモーションに映る。
誰もいない時間の中で一人、カブトはガドルの懐に潜り込んだ。

(クロックアップの時間は短い。ならば、一気に決めるべきか)
『One』

思案する中、カブトゼクターのボタンを叩く。
数時間前、負傷した巧達を連れて撤退した際、クロックアップを使った。
だがその効果が、途中で途切れる。
こちらから解除したわけでもないのに。
恐らく大ショッカーが、何らかの仕掛けを施したと見て間違いないだろう。
ならば、急がなければならない。

『Two』

二番目のスイッチを叩いて、クナイガンの刃を振るった。
一度だけでなく、二度三度と。
ガドルの皮膚から、火花が飛び散る。
相手は微かに揺らぐだけ。
しかし、それで充分だった。

『Three』

超高速の世界で、最後のカウントが響く。
そんな中、カブトはゼクターの角を反対側に倒した。
必殺の蹴りを、もう一度決めるために。

「ライダー……キック!」
『Rider Kick』

静かで、それでいて力強く口を開く。
再びゼクターホーンを、反転。
カブトゼクターから宣言と共に、大量のタキオン粒子が吹き出していった。
エネルギーは稲妻のように轟きながら、カブトの身体を流れる。
胴体から角に流れ、青い瞳を一層輝かせた。
そのままタキオン粒子の塊は、右足に到達する。

「ハアッ!」

左足を軸に、身体を回転させながら回し蹴りを放った。
その勢いによって、ガドルの身体は宙を舞う。
19トンの威力を持つ、ライダーキックによって。
ゆっくりとだが、進んでいった。
グランインパクトを放つ準備を終えた、ファイズの方へと。

『Clock over』

終焉を伝える音声が、ゼクターより響く。
瞬間、クロックアップが終わりを告げて、カブトの時間が元に戻った。
辺りの動きが、一気に上昇する。
無論、ライダーキックを受けたガドルも例外ではなかった。

「ぬうっ……!」

凄まじい速度で空中に浮かぶ。
呻き声を漏らすガドルに向かって、ファイズは駆けていた。
その手に、輝きを放つファイズショットを握って。

「オラアァァァァァッ!」

フォトンブラッドが纏われた拳を、ガドルに叩き込んだ。
無防備な肉体に、グランインパクトが炸裂する。
衝撃とエネルギーが、ガドルの中で暴走。
一瞬の内に、盛大な爆発を起こしていった。
耳を劈くような轟音が響き、薄闇が一瞬だけ晴れる。
ガドルの身体は建物に吹き飛び、再び瓦礫の山を生み出した。
建築材が崩れ落ち、粉塵が辺りに広がっていく。
敵は倒れたか。
ファイズがそう考えた瞬間、煙から一つのシルエットが飛び出してくる。
つい先程、吹き飛ばしたはずのガドルだった。

「何ッ!?」
「ゼンゲビ――」

跳躍する異形は、両足を驚愕するファイズに向ける。
そして、ドリルのように身体を高速回転させた。
ガドルの足に、電撃が纏われていく。
一度回転するたびに、その量は増していった。

「クッ!」

ファイズに迫るガドルを見て、反射的にカブトは走る。
本能が警告を発していた。
あの一撃は拙い、と。
クロックアップをしようとしたが、反応しない。
恐らく、大ショッカーが仕組んだ罠だろう。
ならば自力で走るしかない。

「――ビブブッ!」

雷のような速度で、ガドルはファイズに迫っていた。
横から半端に攻撃を仕掛けても、止められる物ではない。
そして、反撃を仕掛けられる隙も与えない。
凄まじい威力を誇る電撃キックが、敵を砕こうと迫った。
ファイズとガドルの距離が、徐々に縮む。
しかし、その蹴りが目標に当たる事はなかった。
カブトがファイズを突き飛ばしたため。

「なっ!」
「ムッ!」

驚愕の声が、二つ響く。
ファイズの瞳に、突き飛ばしたような体勢を作るカブトが見えた。
だが、それは一瞬で消える。
ガドルの蹴りが、赤い装甲に到達したため。
衝撃によって鎧が歪むと、カブトは吹き飛ばされていった。

「ガ……ハッ!」

悲痛な呻き声と共に、地面に叩き付けられる。
その直後、ダメージの限界を迎えて、ベルトからカブトゼクターが離れた。
ヒヒイロノカネがパラパラと崩れ落ち、カブトの鎧が崩壊。
変身が解けて、天道の姿を晒した。
身体に重い衝撃を感じるが、まだ意識は保っている。

「天道!」

ファイズは、倒れた天道の元に駆け寄ろうとした。
しかし、そのような行為は戦場において、致命的な隙となる。
それをガドルは見逃さず、拳をファイズに振るった。

「ぐあっ!」

重い一撃が、銀色の胸板に突き刺さる。
その衝撃によって、ファイズの身体は軽々と吹き飛ばされた。
ガドルの一撃を受けて、彼は割れた道路を転がる。
そして、カブトのようにファイズもダメージが蓄積されて、変身が限界を到達。
フォトンブラッドが霧散して、鎧が消滅する。
そのまま、巧は元の姿に戻ってしまった。
ここに立っているのは、ガドルただ一人だけ。
『仮面ライダー』達に勝ったという、証明だった。

「くっ……!」
「リントの戦士よ、見事だった」

天道は、何とかして立ち上がろうとする。
しかし身体の痛みが、それを邪魔していた。
そんな彼の元に、ガドルは近づいてくる。
完全なる勝利を得るため、トドメを刺そうとして。

「……待てよ」

それを止める声が、聞こえる。
ガドルは足を止めて、振り向いた。
蹌踉めきながらも立ち上がる、巧の方へと。

054:閃光の刻 投下順 055:強敵金カブ(後編)
053:強魔(後編) 時系列順 055:強敵金カブ(後編)
051:綺想曲♭もう一人のカブトと音也 天道総司 055:強敵金カブ(後編)
051:綺想曲♭もう一人のカブトと音也 乾巧 055:強敵金カブ(後編)
042:三様 ゴ・ガドル・バ 055:強敵金カブ(後編)