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魔皇新生♪ルーツ・オブ・ザ・キング(前編) ◆MiRaiTlHUI





 圧縮された水の弾丸が戦場を駆け抜けて、次の瞬間にはその全てが弾けて消えた。
 それをやってのけたのは、「全てを喰らい尽くす牙」を体現する剣、ガオウガッシャ―。
 ガオウが振るった剣は寸分違わずに、キバの放った水の弾幕を全弾撃墜せしめたのだ。
 一発撃ち落とす度に急激にキバとの間合いを詰めたガオウは、肉薄した瞬間に一太刀を叩き込む。
 そうすればキバは左腕の剣でそれを受け止めるが、そんなものはただ反射的に剣を受けただけに過ぎない。
 熟練の牙王相手に、そのような付け焼刃……ましてや銃と剣の二刀流など、子供の遊びのようにも思えた。
 一合目でエンジンブレードを握る手を弾き落したガオウは、続けて二合目でキバの胸部を大きく切り裂く。
 声にならない嗚咽を漏らして、キバは大きく仰け反り、それでも銃口を構える。

「つまらねえな。こんなに喰い甲斐のねえ相手は初めてだ」

 放たれた銃弾をガオウガッシャーで叩き落しながら、嘆息と共に言った。
 その動きを見るに、どうやら目の前の“獲物”は片足を怪我しているらしい。
 その上変身したライダー自体の戦闘能力も矮小で、とてもガオウに叶う程ではない。
 そんな奴は素直に剣一本か、銃撃戦だけで戦うべきだと思うが、恐らくこいつはそれでも三下以下だ。
 もっと別な戦い方をすれば、それも補えるのかもしれないが、現状ではどうしようもない。
 既に目の前の敵の限界が見えてしまっていて、これ以上の興味も沸かなくなって居た。

 あっと言う間に再びキバの間合いまで急迫したガオウは、乱暴に刃を叩き付ける。
 二度三度と切り裂かれたキバの装甲からは派手な火花が舞い散って、その場で片膝をついた。
 ガオウの刃がキバの喉元に突き付けられて、キバはびくんと身体を強張らせた。
 ゲームセットだ。ガオウの完全勝利に、この戦いは終わる。
 ……が。

「くだらねえ」

 突き付けられた刃はしかし、キバにトドメは刺さず。
 ちゃき、と音を立ててゆっくりとキバの喉元に触れた。
 完全に身動きを封じられたキバの仮面を覗き込み、ガオウは問う。

「おい、お前はそれが全力か」
「……何ですって?」
「他に力はねえのかって聞いてんだよ、もっと使い慣れた奴だ」
「あるって言ったら、どうするのかしら」
「そいつを使ったお前を喰らう。今のままじゃ腹の足しにもならねえからな」

 ガオウの牙は、全てを喰い尽くす為だけに存在しているのだ。
 力を発揮出来ない敵を一方的にいたぶって殺した所で、それを喰い尽くしたとは言わない。
 言うなればそれは、まだ食える肉がびっしりとこびりついた骨をゴミ箱へ捨てる様なものだ。
 一拍の後、目の前で身動きを封じられたキバが、仮面の下でくすりと笑った。

「そうね、あの力さえ使えれば、貴方なんかに遅れは取らないんじゃないかしら」
「なら、その力ってのはどこにある?」
「あそこよ」

 キバの銃口が、彼方で戦う二人へと向けられた。
 片方は白い蛇の鎧を身に纏った仮面ライダーで、赤い鞭を振り回していた。
 片方は変身する事もせず、白い仮面ライダーの鞭捌きを回避し続けていた。
 あれじゃ嬲り殺しも良い所だ、とガオウは思う。
 白いライダーがその気になれば、あの程度の小僧一人なら軽く殺せるだろう。
 だが、奴は逃げ惑う獲物を追い込む様に振舞う事で、一種の優越感に浸って居る様子だった。

「どっちだ」
「変身していない方が私の力を持ってるわ」
「そうか……いいぜ、あの白いのなら喰い甲斐がありそうだ」

 つまり、襲われている方に加勢して、白いライダーを喰えば、後から残りの二人も食えるという訳だ。
 こんなに美味しい話は他にないと思ったし、この自分があの程度の敵に負ける訳がないという自信もあった。
 たったそれだけの単純な行動方針で、ガオウは剣を振り上げ、白いライダーへ向かって駆け出して言った。


 さて一方で、サガの鎧を身に纏ったキングは現在、圧倒的有利な状況にあった。
 鞭を振るえば紅渡はそれを回避するしかないし、回避する度にその動きは重たくなってゆく。
 渡と一緒に居た女がキバに変身して戦っている事を考えれば、今の渡はキバにはなれないらしい。
 となれば、これは積りに積もった鬱憤を晴らす為の絶好のチャンスだった。
 かつての仲間の口癖を借りるならば、これこそまさに「絶滅タイム」。
 恐怖と絶望でとことんまで追いつめて、最後にはこの手で縊り殺してくれる。

「どうした紅渡。キバが無ければろくに戦えないか」

 処刑人の鞭が唸りを上げて地面を抉る。
 渡はというと、地べたを転がる事で紙一重で回避。
 回避した所へ再び迫る赤の鞭を、渡は這々の体で何とかかわす。
 徐々にペースを上げていけば、いつかはこいつも回避が出来なくなる筈だ。
 これはその瞬間まで、渡の精神を追い詰める為の一種のゲーム。

「どうだ。嬲り殺しにされる気分は」
「やめて、下さいっ……! 僕達は、仲間じゃないですか!」
「一度は俺の命を奪ったお前が、どの面を下げてそんな事を言う」
「何の話をっ……!?」

 今にも泣き出しそうな表情で罪を逃れようとする渡に、更なる殺意が芽生えた。
 こいつは俺から真夜を奪うどころか、一度はキングたるこの俺を殺したのだ。
 その上でこいつは、あろう事かそれすらもとぼけようと言うのだ。
 ただの腑抜けに成り下がっただけではない。
 こいつにはもう、王の敵と成り得る資格すらない。
 一度は自分に勝利した男が、こうも惨めに命乞いをする姿を、これ以上見ていたくはなかった。
 もういい。もう終わりだ。これが本当の、絶滅タイムだ。

「王の判決を言い渡す」
「えっ……!?」
「死だ」

 ジャコーダービュートが空中でしなって、まるでフェンシングの剣の様に硬質化した。
 獲物を仕留めんとする長槍となったジャコーダーロッドが、神速で以て渡に急迫してゆく。
 ……しかし、この手に感じた手ごたえは、人の身体を貫く際のそれではなく。

「いいぜ、お前は美味そうだ」

 最早身動きの取れぬ紅渡の断末魔の叫びの代わりとなったのは、低い男の声だった。
 何事かと見遣れば、渡の前に立ち塞がる様にして現れたのは、銅色の仮面ライダー。
 全身に生えるは、牙、牙、牙。とにかくどこもかしこも、牙だらけ。
 仮面も装甲も、牙だけで出来た仮面ライダーが、その大剣で以て王の裁きを受け止めていたのだ。

「……貴様、何者だ」
「俺の名は牙王。全てを喰らう“牙”だ」
「貴様も“キバ”を名乗り、あまつさえこの俺に盾突こうと云うか」

 サガの仮面の下で、ぎり、と音を立てて歯噛みする。
 どいつもこいつも、キバの鎧を身に纏う者は自分の邪魔ばかりをする。
 この手を去った闇のキバも、未来から来た黄金のキバも――。
 そして今また現れた眼前の敵、全てを喰らう“キバ”もだ。
 最早この王に盾突くキバを、これ以上赦しておく事は出来ぬ。
 サガの握るジャコーダーのグリップに、力が込められた。

 神速で以て振るわれた連続でのジャコーダーの突き。
 しかしそれらを全て受けて、互角以上の力で打ち落とすのは牙の剣。
 一合、二合、三合、四合……激しい金属音を掻き鳴らして激突する二人の剣。
 一撃をぶつけ合う度に二人の距離は縮まって、ついには二人の腕が届く間合いに到達。

「俺の牙で、骨まで残らず喰い尽くしてやるよ」
「あろう事かこの王を喰らおうなどと吠えるとは……身の程を知らぬ狗だ」

 二人の言葉が交差して、一瞬の後には赤と銅の剣が激突した。
 巨大なソードを手にするガオウと、細身のロッドを手にするサガ。
 どちらの方が俊敏かと問われれば、答えは考えるまでもなくサガだった。
 一度目の激突でお互いを弾き合って、サガは突き刺す様にロッドを突き出した。
 赤の魔皇力迸る一撃を胸部で受けたガオウは、その身から火花を散らし、しかし引き下がりはしない。
 サガの一撃によるダメージを物ともせずに、ガオウは力任せに牙の剣を叩き付けた。

「グッ……!」

 運命の鎧が火花を上げて、堪らず数歩後退する。
 追撃を仕掛けようと迫るガオウに、サガはロッドを突き出した。
 ガオウの剣はそれを弾き返すが、構う事なくもう一撃。
 二度目も弾かれるなら、三度目。それでも駄目なら四度目だ。
 それはなるほどフェンシングのスタイルと表現するのが正しかった。
 連続で繰り出される攻撃は、ガオウの大振りな動きでいつまでも対処するのは不可能。
 たった一瞬の隙を見付ければ、サガはガオウの剣の弾幕を掻い潜って、そのオーラ―アーマーに一撃を叩き込む。

「チッ……!」

 仰け反ったガオウに出来た隙は、サガから見れば絶好過ぎる程の好機だった。
 怒涛の勢いで以て、連続で打ち出されるのはフェンシングの突き。
 片腕の力一つで、サガの猛烈なラッシュがガオウの装甲を突く、突く、突く。
 それでも対抗しようと剣を振り上げたガオウであるが。

「無駄だ!」

 びゅん、としなったジャコーダービュートが、ガオウガッシャーを絡め取った。
 そのままガオウの腕ごと思いきり弾き上げて、完全な隙となった懐へ飛び込む。
 しかし、そこに待ち受けていたのは、強烈なガオウの前蹴りだった。
 どすん! と音が響いて、サガの胴に重たいキックが抉りこまれた。

「剣がなきゃ戦えないとでも思ったか? 甘えんだよ」

 前のめりになったサガの襟を掴み上げたガオウは、嘲笑う様にそうのたまった。
 すぐにジャコーダービュートをしならせて、眼前のガオウを弾き飛ばそうとするが、既に手遅れ。
 ガオウの拳がサガの仮面を思いきり殴り付けたかと思えば、解放されたガオウガッシャーが振るわれていた。
 剣はまさしく、サガの鎧を噛み砕かんとする牙の様に、何度も何度も叩き付けられた。
 思わず姿勢を崩して倒れ込みかけた所で、今度はガオウに蹴り上げられる。

「ケッ、王様ってのはこの程度なのかよ」
「……貴様、ナメた真似をしてくれる……!」

 地べたを転がって距離を取ったサガが、立ち上がり様に叫んだ。
 二人の戦力は、現状で語るなら、ほぼ互角だった。
 そもそも純粋にスペックで語るなら、サガが圧倒的に上である筈なのだ。
 しかし、それを補ってあまりあるガオウの強さの秘密は、まず第一に変身者にある。
 牙王の純粋な戦闘スキルは、それこそキングと同等と言っても差支えはないレベルだ。
 そんな相手と戦えば、当然サガの鎧で得たアドバンテージも帳消しにされてしまう。
 おまけに、現状では先程戦った黒の金のクウガに与えられたダメージも蓄積されている状態だ。
 奴に与えられた数々のダメージは、キングの動きを掣肘する足枷となっているのだった。

「どうした? この程度じゃねえんだろう、王様よ?」

 そんな事実を知ってか知らずか、ガオウは迫る。
 当然の事、誇り高きファンガイアの王が舐められたままで良い訳が無い。
 自分は、ファンガイア族の未来を護る為、たった一人で他の十三魔族を滅ぼしてきた本物の王なのだ。
 装着者を選ぶ闇のキバを使いこなし、ゴブリン族も、レジェンドルガ族をも滅ぼして来た勇者なのだ。
 なればこど、こんな下らない戦いで負けていい筈がない。負ければファンガイア族の面汚しだ。
 戦力差だって、埋められない差ではないのだ。上手く立ち回れば、この程度の敵は十分に倒せる。
 軋む身体に鞭打って、サガはゆらりと立ち上がった。




 野上良太郎の身体を借りたウラタロスは、憂慮に満ちた溜息を零した。
 いつの間にか掛けられていた眼鏡をくいと押し上げ、状況を整理する。
 現状で仲間と呼べるのは、天美あきら、村上峡児、志村純一の三人だ。
 当然この馬鹿げた殺し合いを打破せんと動くチームではあるが……何分、不安要素が多い。
 まず天美あきらだ。彼女はろくな戦闘能力を持って居ないが、殺し合いには乗って居ないと断言出来る。
 次に村上峡児。こいつは一応は味方であるが、危険人物である事を隠しもしない危険人物。
 そして最後に、志村純一。表向きには善人だが、ウラタロスはこの男を信頼してはいない。

「さて、どうするかな」
「どうかしたんですか、良太郎さん」
「どうもしないよ。これからどうするかを考えていたのさ」

 人の良さそうな笑顔で尋ねて来る志村に、同じく笑顔で返す。
 志村とは違い、薄笑いとも取れる様な笑顔で、しかし爽やかに。
 再び眼鏡を押し上げれば、青の瞳は志村を真正面から捉えた。
 志村は屈託のない笑顔で居ながら、何処か信用ならない影を持っている。
 そのアンバランスさが不釣り合いで、妙に気持ち悪いとすら感じる笑顔だった。

「葦原さんを待つんじゃないんですか?」
「そのつもりなんだけど、あれからもう結構時間が経ったからね」
「もしかしたら、もう帰って来ないかも知れませんね」

 村上が、腕を組んだ姿勢のまま言った。

「忘れた訳ではないでしょうが、ここは殺し合いの場です。いつ敵に襲われるかは解りませんからね」
「葦原さんの身に何かあったって言いたい訳?」
「端的に言えば、もう死んでいるかもしれない。そう言いたいのです」

 村上の言葉を聞いたあきらが、その表情に影を落とした。
 葦原涼は、自分達を助けてくれた男なのだ。
 もしかしたらもう死んでいるかもしれない、なんて言われて虚心で居られる訳がなかった。
 そんなあきらの気持ちをすぐに察したU良太郎は、あきらに向き直る。

「大丈夫だよ、あきらちゃん。彼は強いんだから」
「そうだよ。俺はその人の事知らないけど、きっと帰って来てくれる。だから元気を出して」

 良太郎の言葉に、志村が続いた。
 この志村という男、善人ぶっているだけの事はある。
 一応は人格者らしく、落ち込む誰かを慰めるくらいの事はするようだ。
 もしかしたら勘繰り過ぎなのかも知れないが、それでもウラタロスは警戒を解きはしない。

(なあ亀の字、やっぱりお前の考え過ぎなんちゃうんか?)
(僕の目には、志村さん、悪い人には見えないよ……)

 頭の中に響いて来る二人の声に、ウラタロスはうーむと唸って見せる。
 確かに現状では志村は絶対に尻尾を出さないだろうし、勘繰るだけ空気が悪くなる可能性だってある。
 しかし、志村を信用し味方として作戦を立てた場合、思いもよらぬ裏切りにあって破滅、なんてのは御免だ。
 出来る事なら、もう少しこのチームに動きが出るまでは志村を警戒しておきたいと思う。

 開け放たれた窓から、甲高い金属の激突音が聞こえてきたのは、そんな時だった。
 恐らくここから、距離にして数百メートルといった所か。少なくとも、それ程遠くではない。
 何者かの武器と武器が、何度も何度も激突する、ある意味では聞きなれた音だった。
 それを聞き付けたこの場の全員が、表情を変えてお互いの顔を見合せる。

「この音は……戦闘、ですか」
「そうみたいだね。さて……どうしたものかな」

 若干の不安さを持ったあきらに、U良太郎が答える。
 どうしようか、というのはつまり、自分達はどう動こうか、という意味である。
 今まさに警戒している通り、このチームの内半分は危険人物だ。
 そしてもう半分は、自分を抜いて考えると、戦力としては心許ない少女。
 葦原涼を待つ都合を考えても、普通に考えればチームを二つに割るのが得策だ。
 戦場に行くのが、戦える二人。残って待つのが、あきらと、もう一人。
 だけど、そんな分け方をすれば、あきらの身に危険が及ぶ可能性がある。
 かといって、女の子を戦場に向かわせたくはないとも思う。

「すぐに行きましょう! 俺達で、救える命があるかも知れない!」

 志村が、グレイブバックル片手に叫んだ。
 果たして何処までが演技で、何処からが本心なのか。
 未だに踏ん切りが付かなくて、ウラタロスの判断を鈍らせる。

(どうしたんや亀の字! はよ行かな、手遅れになってまうで!)
(そんな事は解ってるよ。今考えてるんだから、キンちゃんはちょっと黙ってて)

 顎に手を当て、再び唸る様に考える。
 志村は自分の意思で戦場に行くと言うが、それはそれで信用ならない。
 邪推が過ぎるかも知れないが、もしも志村が殺し合いに乗っていたとするなら、どうだろう。
 今戦っている奴らの変身が解除された瞬間を狙って、漁夫の利で仕留める……これは最悪のパターンだ。
 ならば自分も一緒に行こうかと思うが、それならそれで、あきらと村上を二人きりにする事になる。
 逆に村上と志村を一緒に行かせた場合も考えるが、危険人物二人の組み合わせは出来れば遠慮したい。
 何が起こるか、それこそウラタロスにも想像がつかないからだ。

「先程からこの戦闘に対する身の振り方を考えている様ですが……果たして、答えは出ましたか、野上さん?」
「一つ聞かせて貰いたいんだけど、いいかな? 村上さん」
「ええ、何でしょう」

 どんな嘘をも見破ると自負する青の瞳で、村上を見据え、問う。

「単刀直入に言うけど、生憎、僕はまだ貴方を完全に信用した訳じゃないんだよねえ。
 仮に、もしあきらちゃんと二人きりになっても、絶対に手出しはしないって保証でもあるかな?」
「保証、ですか」
「何を言ってるんだ野上さん! 俺達は今、仲間割れなんかしてる場合じゃない筈だ!」

 必死の形相で怒鳴る志村に、U良太郎はさもありなんといった様子で頷いた。

「だから聞いてるんだよ。彼が信用に足る人物かどうかをね」
「貴方も愚かな質問を繰り返す人だ。私は一度、言った筈です。
 もう人は襲わない、と……それが真実がどうかは解りませんがね」
「大丈夫です。村上さんには、私がこれ以上は誰も襲わせませんから」
「あきらちゃん……」

 あきらの言葉に、U良太郎は困った様に額を押さえる。
 どうやらこの天美あきらという少女、それなりに村上を信用しているようだった。
 こんな危険人物をそこまで信用する要素が一体何処にあったのかは些か疑問だが。
 ともあれ、このまま尋問を繰り返していても、あきらの中での良太郎の評価が下がるだけだろう。
 それはウラタロスにとって、非常に芳しくない事であった。

「わかった、僕が戦闘の様子を見に行ってくるから、皆は留守番をしていてくれるかな」
「そんな、野上さん一人じゃ危険だ! 俺も一緒に!」
「君はどうしてそんなに戦場に行きたがるのかな?」

 問われた志村が、突然表情に陰りを落とした。
 悲しそうな、今にも泣き出しそうな表情で俯いて、ゆっくりと語り出す。

「俺は……誰かが傷つくのを、これ以上見たくない。本当なら、こんな下らない殺し合いだって、する事ないんだ。
 だから俺は、この殺し合いでこれ以上誰かが犠牲になるのなら、例えこの命を投げ出してでも、その命を救いたいと思ってる」

 ウラタロスは内心で、ふぅんと頷いた。中々やるね、とも思う。
 泣き出しそうな表情で告げる志村の所為か、この場の空気が急にしんみりとした気もする。
 仮にこれが本当なのだとしたら、志村は正真正銘本物の聖人君主だ。
 だが、仮に演技だとしたら……尚更こいつを戦場に出す訳には行かなくなる。
 だってそうだろう。そこまでして嘘を吐いてでも、戦場に行きたい訳なのだから。
 ならばとばかりに、相対するU良太郎もまた、悲しげな瞳で以て、志村を見詰め返した。

「やっぱり……君はそう言うだろうと思ってたよ」
「なら、俺の気持ちを解ってくれるなら、尚更――!」
「違うんだよ、志村……君がそんな考えだからこそ、僕は君に尚更戦って欲しくない」

 う、と息を飲んだのは、志村だった。
 構わずU良太郎は続ける。

「これ以上誰にも傷ついて欲しくない……その気持ちは僕だって同じさ。
 でも、だからこそ、僕はそんな気持ちで戦いに行って、君が傷つく姿も見たくない」
「それなら、その気持ちは俺だって同じだ! 俺は決めたんだ……人を護る為に仮面ライダーになるって!
 人を護るのなら、仮面ライダーを守ったっていい! 俺は、野上さんの事もこの手で護りたいんだ!」
「その為に自分を犠牲にしてもいいなんて思ってる人間を、僕は連れてはいけないな」
「俺は死なない! 必ず野上さんと一緒に帰って来ると約束する!」
「解らないかな……僕はね、それが軽いって言ってるんだよ」

 今度は語調を少し強めて続ける。

「君は賭ける命の重みを解ってない……僕は今の君とは、一緒に戦えないって言ってるんだ」

 そこまで言われた志村は、これ以上言い返す言葉も見当たらないのか、喋らなくなった。
 ただただ悲しげな表情のまま、志村は俯いて一歩身を引く。

「だから君には、村上さんと一緒に、ここであきらちゃんを守っていて欲しいんだ。
 ……それと、僕の帰る場所もね。帰って来た時に皆居なくちゃ、寂しいじゃない」
「解った……野上さんの帰る場所は、俺が必ず守ると約束する」

 志村純一の瞳には、再び先程までと同じ熱意が燃え上がって居た。
 これが本当であるなら、こんなに心強いものは無いと、ウラタロスも思う。
 だが、志村が喰えない男である以上、不本意ながらも今は村上を信じてこうするしかないのだ。
 あきらちゃんを頼むよ、と伝わるかも解らないアイコンタクトを村上へと送って、U良太郎は駆け出す。

「ちょっと待って下さい!」
「……まだ何かあるのかな、あきらちゃん?」
「行くなら、せめてコレを……無いよりは、心強いと思います」

 差し出されたのは、一振りの刀だった。
 紫と黒という毒々しい配色で、しかし無駄のない美しいデザインのそれは、如何にも機械らしかった。
 ただの刀ではなくて、何らかの技術が応用されていても可笑しくないその武器を、U良太郎は掴み取る。
 その場で軽く振ってみれば、刃がびゅんと音を立てて空気を切断する。
 なるほど刀としての切れ味も確かなようだった。

「こういうのは先輩の方が向いてる気がするけど、有り難く受け取っておくよ」

 あきらに対し、どんな女性をも虜にしてきた優しい笑みを浮かべると、U良太郎はそのまま駆けて行った。


 さてそんな野上良太郎を見送る志村純一は、やはり心中穏やかでなかった。
 志村純一にとって嘘を吐く事というのは、息を吸うのと同じくらいに慣れ親しんだ行為である。
 今回もいつも通り、嘘で塗り固めた「志村純一」という疑似人格で良心に訴えるつもりだったのだ。
 そうすれば、大抵の場合は志村の迫真の演技に押され、そのままペースを持っていかれると言うのに、奴は違った。

(あの野上良太郎とか言う男……中々に喰えないな)

 心中で悪態を吐く。
 それから一緒に居る二人を眇め見て、考える。
 天美あきらに関しては、別段考える事は何もないだろう。
 チャンスさえ来れば、グレイブでも、ジョーカーでも、殺す手段は何だってある。
 それよりも目下の問題は、もう一人の男――村上峡児についてだ。

(園田真理から聞いた情報だと、確かこいつは……)

 オルフェノクを影で操る、黒幕――とするならば、油断は出来ない。
 村上と自己紹介を交わしてからというもの、何も知らない体を通しているのは、相手の情報が殆どないが故。
 実際園田真理も、村上の事はそこまで知らなかったようだし、要注意人物くらいとしか聞いていなかった。
 少なくとも殺し合いには乗って居ないと村上本人はいうが、その言動はまるで読めやしない。
 これはもう少し、探りを入れる必要があるか、と思う。
 少なくとも、行動を起こすのはそれからだ。



【1日目 夕方】
【B-6 ホテル】


【天美 あきら@仮面ライダー響鬼】
【時間軸】 41話終了後
【状態】全身に軽度の怪我 
【装備】鬼笛@仮面ライダー響鬼
【道具】支給品一式、ニビイロヘビ@仮面ライダー響鬼、不明支給品(0~1 確認済)
【思考・状況】
基本行動方針:人を助けるため、自分に出来ることをやる。
1:ホテルで涼と良太郎の帰りを待つ。
2:知り合いと合流する。
3:村上が人を襲うことがあれば、止める。


【村上峡児@仮面ライダー555】
【時間軸】不明 少なくとも死亡前
【状態】腹部に痛み バードメモリに溺れ気味
【装備】オーガギア@劇場版 仮面ライダー555 パラダイス・ロスト
【道具】支給品一式、バードメモリ@仮面ライダーW 不明支給品×1(確認済み)
【思考・状況】
基本行動方針:殺し合いには乗らないが、不要なものは殺す。
1:まずはホテルで良太郎の帰りを待つ。
2:あきら、良太郎らと行動するが、彼らに情は移していない。
3:亜樹子の逃走や、それを追った涼にはあまり感心が沸かない。
4:志村に若干の警戒。
【備考】
※少なくとも良太郎が帰って来るまでは現状維持を考えています。

【志村純一@仮面ライダー剣MISSING ACE】
【時間軸】不明
【状態】全身の各所に火傷と凍傷
【装備】グレイブバックル@仮面ライダー剣MISSING ACE、オルタナティブ・ゼロのデッキ@仮面ライダー龍騎、パーフェクトゼクター@仮面ライダーカブト
【道具】支給品一式×3(ただし必要なもののみ入れてます)、ZECT-GUN(分離中)@仮面ライダーカブト、トライアクセラー@仮面ライダークウガ
【思考・状況】
基本行動方針:自分が支配する世界を守る為、剣の世界を勝利へ導く。
1:村上の目的や戦力から探りを入れて、次の行動を決める。
2:人前では仮面ライダーグレイブとしての善良な自分を演じる。
3:誰も見て居なければアルビノジョーカーとなって少しずつ参加者を間引いていく。
4:この集団の中に潜み、利用する。
【備考】
※555の世界の大まかな情報を得ました。
※電王世界の大まかな情報を得ました。
※ただし、野上良太郎の仲間や電王の具体的な戦闘スタイルは、意図的に伏せられています。


064:いつも心に太陽を(後編) 投下順 065:魔皇新生♪ルーツ・オブ・ザ・キング(中編)
064:いつも心に太陽を(後編) 時系列順 065:魔皇新生♪ルーツ・オブ・ザ・キング(中編)
047:加速度円舞曲♯王と牙の運命 紅渡 065:魔皇新生♪ルーツ・オブ・ザ・キング(中編)
047:加速度円舞曲♯王と牙の運命 園咲冴子 065:魔皇新生♪ルーツ・オブ・ザ・キング(中編)
047:加速度円舞曲♯王と牙の運命 牙王 065:魔皇新生♪ルーツ・オブ・ザ・キング(中編)
047:加速度円舞曲♯王と牙の運命 キング 065:魔皇新生♪ルーツ・オブ・ザ・キング(中編)
050:Round ZERO ~KING AND JOKER 志村純一 065:魔皇新生♪ルーツ・オブ・ザ・キング(中編)
050:Round ZERO ~KING AND JOKER 天美あきら 065:魔皇新生♪ルーツ・オブ・ザ・キング(中編)
050:Round ZERO ~KING AND JOKER 野上良太郎 065:魔皇新生♪ルーツ・オブ・ザ・キング(中編)
050:Round ZERO ~KING AND JOKER 村上峡児 065:魔皇新生♪ルーツ・オブ・ザ・キング(中編)