魔皇新生♪ルーツ・オブ・ザ・キング(後編) ◆MiRaiTlHUI




 次第に日が傾き始めて来たこの平原では、未だに因縁の二人が戦いを続けていた。
 白銀の鎧を纏ったサガは、余裕の態度を崩す事無く、赤のロッドを敵へと突き付ける。
 されど、実際は余裕などでは無かった。如何にキングと言えど、蓄積されたダメージが大きすぎるのだ。
 まず、最初に戦った黒の金のクウガとのダメージが未だに尾を引いているのが大きい。
 その後で戦った相手は、圧倒的な技量を持った仮面ライダー、ガオウ。
 どちらとの戦いも、キングの体力を削るには十分過ぎた。
 そして、その上でキングが今、相手にしているのが。

「ンンンガアアアアッ!!」
「チィッ……!」

 仮面ライダーキバ・ドッガフォームが振り放ったハンマーの一撃に、堪らずキングは舌を打った。
 低い唸りと共に振るわれた紫のハンマーが、遠心力で以て更なる加速を得て、サガへと殺到する。
 身を捻って回避をしようとするも、ロッドを構えて飛び込んだ末のカウンターであるが故に、回避もままならない。
 結果として、紫の魔鉄槌は、サガの装甲を脇腹から大きく薙ぎ払った。
 どごん! と大きな音が響いて、派手な火花と共にサガが吹っ飛ぶ。
 地べたを二度三度転がって、それでも起き上がったサガは思考する。

(封印されても尚この俺に盾突くとは、忌々しい魔族共め)

 ドッガはかつて、キングがこの手で封印したアームドモンスターだ。
 ドッガ単体ならばキングの敵ですら無かったが、その命が丸ごと武器となったなら、また話は別だ。
 奴の生命は今や、どんな攻撃をも跳ね返し、どんな鉄壁をも打ち砕く魔鉄槌。
 それ以上でもそれ以下でもなく、それを使うのは王の鎧たるキバだ。
 王の力とアームドモンスターの力が合わされば、サガであろうとこんなにも苦戦を強いられる。
 だけれども、そんな現実は認めない。真の王は、こんな所で潰されはしないのだ。
 そして王は、ここまで自分をコケにしてくれた紅渡を赦す事だって、もう出来はしない。

「キバ……紅渡ッ……貴様だけは、赦してはおけん!」

 その言葉に、キバは答える気すらないらしかった。
 返事の代わりに、ゆっくりと歩き出したキバへ、サガはジャコーダーを突き出す。
 赤の鞭となったそれは、再びキバへと急迫して、その魔鉄槌へと絡みついた。
 このまま身動きを封じてやろうと考えるが、やはりサガでは力不足。
 紫のキバが力一杯にハンマーを引けば、キバの元へと手繰り寄せられたのはサガの方であった。
 どれだけ馬鹿力なんだと胸中で毒吐きながらも、サガは眼前のキバへと拳を打ち込む。
 が、重厚な手甲で覆われたキバの腕によって、サガの拳は容易に阻まれ、逆に拳を叩き込まれ。
 圧倒的な破壊力で以て繰り出された一撃は、再びサガを遥か後方へと吹っ飛ばした。

「一気に決めるぜ、渡! ドッガ! バイトォッ!!」

 自分を裏切った蝙蝠と、よく似た声が再び響いた。
 地べたを殴って無理矢理起き上がったサガは気付く。
 自分達二人を取り巻く周囲が、漆黒の闇に包まれている事に。
 まだ夕方の筈なのにどうして、なんて間抜けな事を考えはしない。
 キバの鎧を持つ者が、その魔皇力を解き放った時、周囲は昼夜関係無く闇に包まれるのだ。

「させるか……!」

 なれば、自分も同じ事をしてやればいい。
 ウェイクアップを発動し、この身に宿る本物の王の魔皇力を解き放ってやればいいのだ。
 姿勢を立て直し、ジャコーダーをベルトのサガークへと、挿入しようとするが。
 それよりも早く、どすん! と、響く重厚な音が、サガの耳朶を叩いた。
 前方を見遣れば、巨大な満月をバックに、キバが魔鉄槌を垂直に構えていた。
 しまった、と思った時には既に遅い。既にサガの身体は、ぴくりとも動かなくなっていた。

「フンンンッ!!!」

 ゴゴゴ、とか、ギギギ、とか。
 それはそういう、如何にも重厚そうな鉄の音に聞こえた。
 サガの前方で、垂直に構えられた魔鉄槌の拳が、ゆっくりと開いてゆく。
 それが完全に開き切った時、サガを見詰めて離さなかったのは、一つの瞳だった。
 それは、赤くて、大きくて、異様なプレッシャーを放つ、あまりにも異質過ぎる瞳。
 瞳から放たれた圧倒的な量の魔皇力が、サガの身体の動きを封じているのだと気付いた時には、もう遅かった。

(拙い……!!)

 キバが振るう魔鉄槌の動きに合わせて、巨大な魔皇力で出来たハンマーが宙を旋回する。
 ファンガイアの王をして圧倒的と言わしめる程の、膨大な魔皇力の量だった。
 目視できる程の波動となった魔皇力は、やはりサガに自由を与えはしない。
 そして、そんなサガの鎧を押し潰さんと迫るは、巨大な雷の鉄槌。

「やれると……思うなっ!!」

 しかし、ここでただ黙ってやられるキングでは無かった。
 ぐぐぐ、と身体を動かし、ついにはサガの魔皇力が、キバの魔皇力を上回った。
 だけれども、それでも圧倒的な魔皇力に拘束されていたこの身体は、やはり重たい。
 黒の金のクウガや、ガオウから刻み付けられた傷が足枷となって、キングの移動を妨げる。
 結果として、致命傷を避ける事は出来ても、キバの一撃を完全に回避する事は不可能だった。

「――――――ッ!!?」

 今まで感じたことも無い程の、強烈な一撃だった。
 雷の鉄槌に薙ぎ払われたサガの身体は、後方の大木に激突して、ずり落ちる。
 サガークがベルトから弾かれるようにして離れた事で、サガの鎧は消失した。
 宿敵キバの目の前で生身を晒して、しかしキングも余裕の態度は崩さない。
 痛む身体に鞭打って、痩せ我慢で以て不敵な笑みを浮かべてみせる。

「紅渡……貴様では絶対にこの俺に勝てないという事を、教えてやる」

 デイバッグから取り出したディスカリバーを、キバへと突き付けた。
 恐らく奴は知らない。この場では、変身能力を多く残した者が最終的な勝者となるのだ。
 変身時間だって限られている以上、既に変身後それなりに時間が経過したキバは不利。
 サガであれだけ追い込んだのに他の姿に変身しなかった事を考えると、恐らく別の姿もないのだろう。
 ならば、必勝法は、ある。

「まさかこの俺が、人間共が造った鎧を纏う事になるとは思わなかったがな」

 きらりと光を反射して煌めくディスカリバーの刀身に、緑のカードデッキを翳した。
 刹那、鏡から反射するようにして現れたベルトの形の虚像が、キングの腹部で形を作る。
 先程自分が殺した緑の銃撃手を真似れば、これの使い方も大体解るというもの。
 緑のカードデッキを、現れたVバックルに装填し、不敵に言い放った。

「変身」

 刹那、現れた虚像は幾重にもオーバーラップ。
 その身を緑の鎧で覆い隠し、キングは異世界の仮面ライダーへと変身を果たした。
 その男、ゾルダ。それこそが、キングが勝利し、奪い取った力の名である。
 既に連戦で傷ついた身体ではあるが、変身時間の残り少ないキバを仕留めるには十分だ。
 ここにファンガイアの王族による戦いの、第二ラウンドが幕を開けた。

 最初に攻撃を仕掛けたのは、ゾルダだった。
 手にしたマグナバイザーで以て、紫のキバへと銃撃を仕掛ける。
 異世界のライダーの銃は、高速で弾丸を撃ち出し、キバへと迫るが。
 その全ては、回避すらしようとしないキバの胸部に当たって、弾けて消えた。
 ゾルダの銃弾は、キバの鉄壁の鎧を破るには至らないが、構わず銃撃を続ける。
 この広い平原を縦横無尽に駆け回り、あらゆる方向から撃って撃って、撃ちまくる。
 キングとしては些か不本意な戦い方ではあるが、キバの変身時間制限を待つのが目的ならば十分だ。
 少なくとも、速度では圧倒的に劣る紫のキバは、接近しなければゾルダに攻撃を仕掛ける事は出来ない。
 平原を駆け廻りながら銃撃を続けるキングは、不意に一つの事実を思い出した。

(……そういえばあの人間、カードを使っていたな)

 このデッキの元々の持ち主の戦い方や武器を思い出して、キングはベルトに手を伸ばした。
 どうせ勝利は確定しているのだ。今後の戦いの事も考えて、ここで使い方を覚えておくのも悪くはない。
 まずは手始めに、目の前のキバをもっと苦しめる事が出来る戦術は無いかと思考し、カードを引く。
 引いたカードに描かれていた図柄は、巨大なランチャーの絵だった。

 ――SHOOT VENT――

 電子音声が鳴り響いて、空から降って来たのは果たして、図柄通りの大砲だった。
 今まではまともなダメージを与えられぬ銃撃ばかりであったが、これならばどうか。
 さしもの鎧のキバと言えど、巨大な砲弾の一撃を受けては堪ったものではあるまい。
 真正面からギガランチャーを向け、キバに照準を合わせ、砲弾を発射する。
 びりびりと身体に伝わる振動は、それだけ砲弾の威力を物語っていた。

「フンンンッ!!」

 キバは自分目掛けて飛んでくる砲弾に向けて、紫の魔鉄槌を構え直した。
 鋼の魔鉄槌で以て、砲弾を受け切るつもりだ。それだけその防御力には自信があるのだろう。
 ならばとばかりに、ゾルダはギガランチャーの照準を再び合わせ、狙い過たずもう一度発射。
 二撃目に発射された砲弾に続けて、更に追撃のもう一撃。
 当然、いかな鉄壁の鎧と言えど、三連弾の砲撃を真正面から受け止めきれる筈も無く。

「ガアアアアアッ!?」

 この耳朶を打つのは、キバの絶叫。
 一撃目はキバが構えた魔鉄槌の守りを崩した。
 二撃目はキバの胸部の鎧に炸裂して、その身体を後方へと吹っ飛ばした。
 三撃目は吹っ飛ぶキバの鎧をさらに抉って、馬鹿でかい爆発で以てキバを襲った。
 巻き起こった爆煙は爆風によって煽られて、キバの周囲の何もかもをも覆い隠す。
 やったか、と思うが、しかしキバの亡骸はまだ見て居ないのだから、油断は出来ない。
 この手で敵を討ち取る勝利の感覚が掴めぬ銃器は、やはり扱い慣れぬものだと思う。
 なれば今はまず、爆煙が晴れるのを待つのが、王たる者に相応しい威厳と余裕だ。
 一秒、二秒、と沈黙が続いて、それを引き裂き現れたのは――緑色のキバだった。

「またマーマン族の生き残りの力か……小賢しい!」
「緑の銃には緑の銃だ! まだまだ勝負はこれからだぜ!」

 忌々しいキバット族が、キバの腹部で上機嫌そうに叫んだ。
 ゾルダは構わずギガランチャーを向けるが、最早キバの速度は先程までの比では無い。
 ちょこまかと動き回るキバを相手に、ギガランチャーは少々大振り過ぎた。
 それでも構わず数発の砲弾を放つが、俊敏に走り回るキバには当たらない。
 ええいと唸ったゾルダはギガランチャーを放り出して、マグナバイザーを構え直した。
 平原を駆ける二人が構えた緑の銃口が、互いに互いへと照準を合わせる。
 タイミングはほぼ同時。お互いに跳び退りながら、引き金を引いた。
 ゾルダの弾丸と、バッシャーの弾丸が空中で交差して、互いへと急迫する。
 後は弾に当たらぬ様に、お互い縦横無尽に走り回り、距離を取り合い、時には木々を盾にして、激しく撃ち合う。
 銃撃戦には慣れぬとはいえ、キングの戦闘センスはズバ抜けている。ゾルダの使い方も、すぐに飲み込めた。
 されど、相手もさるものだ。バッシャーの魂を宿したキバは、言わば銃撃戦だけに特化した姿。
 言い方を変えれば、ゾルダは相手の土俵の上に上がってしまったようなものだった。

「はぁっ!!」

 キバが何処か軽妙な声色で叫びながら、銃弾の嵐を見舞った。
 受けて成るものかと、相対的に走り込みながら、ゾルダも銃弾を発射する。
 されど、キバはすぐに木々の影へと隠れ、ゾルダの弾丸は全て木々で以て防がれた。
 小賢しい。そう感じたゾルダは、二枚目のカードをマグナバイザーへと装填する。

 ――SHOOT VENT――

 電子音声に次いで、具現化したのは巨大な二門の大砲だった。
 ギガキャノンと呼ばれるそれは、ゾルダの背部と接続され、両肩に背負われる。
 間髪入れずに、両肩の砲門は圧縮されたエネルギーの砲弾を発射した。
 轟音と共に放たれたそれは、キバが隠れた木々を丸ごと吹き飛ばした。
 爆風で木の破片が舞い上げられて、キバの身体も一緒に宙を舞うのが見える。
 これは面白いとばかりに、ゾルダは続けて砲門からの射撃を続けた。

「うわぁああああああああああっ!!」

 キバの絶叫が響いて、周囲を爆風と爆炎が覆った。
 一面緑しかなかった平原は、今となっては過去の話。
 火の海となった戦場で、ゾルダは勝利を確信した。
 しかし。

「バッシャー、バイトッ!」
「――何!?」 

 爆炎と爆煙で覆い隠された視界から響いたのは、忌々しい絶叫だった。
 気付いた時には、再び周囲の夕焼けは夜の闇に掻き消されて居て、キングは歯噛みする。
 平原を燃やし尽くさんと拡がって居た炎は、足場を飲み尽くそうと拡がる水に掻き消された。
 素晴らしい暁も、心を焦がす炎も、何もかもがバッシャーのアクアフィールドに飲み込まれていた。
 相手はここで勝負に出るつもりだ。ならば、王はそれを正面から叩き潰すのみ。

 ――FINAL VENT――

 電子音が響いて、地中から、というよりも水面から、鋼の巨人が現れた。
 身の丈はライダーをも超える巨大さを誇る、グリーンメタリックのモンスター。
 ゾルダの真正面で佇むキバがマグナムを掲げれば、周囲の水が巻き上げられて、巨大な竜巻となっていた。
 対抗するように、ゾルダも眼前で待機する緑のモンスターの背中の穴に、マグナバイザーを挿入する。
 そうすれば、ゾルダの指示に応える様に、マグナギガの全身の砲門が一斉に開いた。
 ミサイルやガトリング、レーザーにビーム。数え切れない程の重火器が、キバに照準を定めていた。
 一方で、キバが構える銃口で渦を巻くのは、巻き上げられた膨大な魔皇力。
 今にも弾けそうなエネルギーの塊を、後は発射するだけだった。

「終わりだ、キバ――!」

 仮面の下でそう嘲笑して、引き金を引く。
 緑のキバが引き金を引いたのも、ほぼ同じタイミングだったのだろう。
 マグナギガの全身に備えられた圧倒的な量の重火器が、全てを破壊せんと火を放った。
 数え切れないミサイルが轟音を伴って殺到する。収束されたビームが閃光となって押し寄せる。
 視界さえも覆い尽くす兵器の弾幕は、次の瞬間には巨大な魔皇力の塊とぶつかり合って――

 ――大爆発を巻き起こした。

 轟音は爆音となってゾルダの耳を劈き、爆風は颶風となってこの身体を煽る。
 圧倒的なまでの破壊の余波に、この身体全てを持っていかれそうな錯覚にすら陥ってしまう。
 アクアフィールドを蒸発させてあまりある爆炎は、容赦なくゾルダの装甲を嬲って、その威力の絶大さを誇示する様だった。
 やはり莫大な数の重火器と、凝縮された魔皇力の衝突によって生じる爪痕は凄まじい。
 これにはさしものキバも一たまりもあるまい、と思うが、それでもゾルダは前へ踏み出した。
 油断など出来はしない。状況はどうなったのだと周囲を見遣るが、そこにキバの姿は無かった。
 この荒野に居るのはゾルダ只一人で、何処を見渡したって、そこには誰の姿もなく。
 流石にこれは勝ったか、と思うが……否、そんな筈はない。
 そう。姿は無くとも、死んでいる訳がないのだ。
 何故なら……何故なら――!

「何故だっ……何故月が消えん!?」

 ゾルダの周囲を覆い尽くすのは、闇。
 何処までも拡がる、圧倒的な闇と、空気に解けて充満した魔皇力。
 そして、漆黒の夜空で怪しい輝きを放ち続けるそれは、有り得ない程に巨大な魔性の月。
 これは見まごう事なく、キバが生成する、ウェイクアップによる夜の空間だ。
 しかし、奴が死んだのであれば、それも一緒になって消失する筈。
 何故だ、どういう事なんだ。狼狽するキングの耳朶を叩いたのは。

「ウェイクッ!! アァァァァァァァップ!!!」
「何ィッ!?」

 空からの絶叫だった。力の限りの絶叫だった。
 見上げれば、月の輝きに浮かぶシルエットは、たった一人の宿敵、キバ。
 真っ赤な鎧を身に纏い、圧倒的な魔皇力を内包した地獄への門を開放したその姿は、例えるならば処刑人。
 キバの右脚で唸りを上げる三つの魔王石の輝きは、キングを死へと誘うギロチンの輝きに見えた。
 だが、キングとてここで終わろう筈もない。こんな所で、むざむざやられるつもりもない。
 一縷の望みを駆けてバイザーに装填したカードは、身を護る為の鉄壁の盾。

 ――GUARD VENT――

 マグナギガの胸部を模した巨大な盾だった。
 どんな攻撃をも防ぎ切らんばかりの重厚さを持った盾を、ゾルダは眼前で構え、待ち受ける。
 刹那、ヘルズゲートを解放したキバの必殺の蹴りは、マグナギガの盾へと叩き込まれていた。
 全身吹っ飛ばされそうな、暴力的なまでの衝撃を受けて、それでも倒れぬキングの意地。
 ダークネスムーンブレイクは、ゾルダの盾を大きく凹ませて、そのままゾルダの身体を蹴り飛ばした。
 それでも踏ん張ろうとするゾルダの脚は、ずざざざざ、と音を立てて、平原に二本の傷跡を抉る。
 ようやく遥か後方の大木へとゾルダの身体は激突して――。
 どん! と大きな音が響いて、ゾルダの背中へと突き抜けたキバの紋章が、大木を木端微塵に破壊した。
 だけれども、それでも――!

「まだだッ……! まだ、終わらん!」

 王の心を折る事は、誰にも出来ぬ。
 そうだ。王が負けて良い訳が無いのだ。
 こんな紛い物のキバに負ける王など、ファンガイアの面汚しもいい所だ。
 巨大な盾を投げ捨てて、悲鳴を上げる身体に鞭を打って、それでもマグナバイザーを構える。
 この至近距離からキバを撃ち抜いて、奴のライフエナジーを吸い尽くしてくれる。
 そう考えて、銃口を突き付けたゾルダが見たのは。

 ――ENGINE MAXIMUM DRIVE――

「ハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
「なっ――」

 キバが振り上げた刃は、眩い程の赤の輝きを放っていた。
 それはさながら、王の命を焼き尽くさんと迫る灼熱の炎のようで。
 しかし、最早これ以上対抗し得る手段も持たず。
 持って居たとしても、間に合う筈もなく。

「グァァアアアアアアアアアアッ!!!」

 キバが振り抜いた刃は、ゾルダの装甲を灼熱の輝きで以て両断した。
 圧倒的なまでの力の奔流がこの身体に叩き込まれて、ゾルダは堪らず地に膝をつく。
 眼前に浮かび上がった巨大な輝きは、アルファベットの「A」にも見えた。
 が、それが見えたからといってどうという訳でもなく。
 一拍ののち、ゾルダの装甲は遂に限界を越え、爆発四散した。




 紅渡の瞳は、何を考えているのかも読めぬ、無感動な色をしていた。
 目の前で緑のライダーの鎧を失って、それでも立ち上がろうとするキングを、冷静に俯瞰する。
 この会場に仕掛けられた変身制限によって、キバの鎧が消失したのは、緑のライダーを撃破した直後だった。
 これだけの連続攻撃を受けてまだ生きて居られると言う事実に些か驚きはするが、もう終わりだ。
 確かに自分にもこれ以上の変身能力は無いが、キングにだってもう力は残されてはいない。
 ――少なくとも、紅渡は“勝手に”そう思い込んでいた。

「ハ、ハハ……ハハハ! 紅、渡……貴様の、負けだ!」
「何……?」

 不敵な笑みを浮かべるキングに、渡は僅かに焦慮する。
 こんなに全身をボロボロに痛めつけられて、それでもこれだけの自信を持つ理由はなんだ。
 と、そこまで考えて、ようやく渡は気が付いた。
 こいつがファンガイアの王だとするなら。

「まだ……ファンガイアの姿に、変身出来る……!?」
「そういう、事だ……!」

 眼前のキングの姿が、見る見るうちに変貌してゆく。
 強力な魔皇力がキングの身体を包みこんで、その姿は見た事もない凶悪な姿へと。
 蝙蝠を連想させるその姿から放たれる威圧感は、明らかに今まで戦って来た敵とは違う。
 一言で言うなら、異質。凶悪過ぎるその波動は、渡の肌を粟立てる様だった。
 次いで命の危険を感じた時には、もう遅い。
 渡の真上には、ライフエナジーを吸い尽くす為の吸命牙が二つ、浮かび上がっていた。
 吸命牙は、渡の命を吸収しようと、この身へと急迫する――が。

「んなろっ、させるか! 渡ぅぅっ!!」
「キバット――!?」

 言い終える前に、キバットが渡の襟に噛み付いて、その身を後方へと引き摺り出した。
 渡が居なくなった場所へ吸命牙は殺到し、何もない宙を裂いたそれは、地べたに突き当たる。
 程なくして消失した吸命牙を見た渡は、肝を冷やす思いで、瞠目に目を見開いた。
 このままでは、殺される。変身も出来ない脆弱な命など、すぐに吸い尽くされてしまう。
 だけれども、別にそれでも構わないか、と諦める自分が居るのも確かだった。
 これは、ファンガイア王族の血を引いていながら、同族を殺し続けて来た自分に相応しい、裁きだと思う。
 どうせこの世界は、どうしようもなく辛い事しかない、最低な世界なのだ。
 加賀美も、冴子も、こんな自分の為に死んでしまったのだ。
 そして、渡が唯一愛した彼女も居ない今――。

「深央さん……」

 しかし、そこまで考えた所で、もう一度渡の中で何かが燻るのを感じた。
 キバットが、口煩く何事かをまくし立てる。キングが、何事かを言いながら迫って来る。
 だけど、もうそんな雑音は一片たりとも、この頭には入っては来なかった。
 そうだ。思い出せ。自分は何の為に戦うと決めたのかを。
 何の為に、冴子や加賀美を犠牲にしたのかを。

 深央さんが居ない世界に生きる価値は確かに無いが、それでもやらねばならぬ事はある。
 自分の存在が周りを不幸にするのなら、何としてでも自分が生き残って、自分自身の存在を消さねばならない。
 そして、その為には、他の世界の参加者を皆殺しにしなければならないのでは無かったのか。
 見失いかけた目的を、再度心中で燃やして、渡の瞳は再び強い輝きを放つ。
 それは、冴子を失った時の、冷酷な輝きであった。

「そうだ……僕は、生きる!」

 生きなければ、ならない。
 この悲願を成就する為には、生きて、戦わねばならない。
 自分一人が悪に堕ちる事で、全てを救う事が出来るのならば、喜んで悪にもなろう。
 自分一人が殺戮者になる事で、この世界の悪意を払拭出来るのであれば、喜んで業を引き受けよう。
 そうだ。それが今、たった一つ、紅渡を突き動かす、命の動力源なのだ。
 渡の胸にはまだ、戦うだけの決意が熱く燃え滾っているのだ。
 ならば、やらねばならない。ここで死んでは何にもならない。
 次の瞬間、何を思ったか、渡は高らかに絶叫していた。

「サガークッ!!!」

 瞳は強く輝かせて、声は冷たく響かせて。
 王にのみ傅く僕(しもべ)の名を、高らかに呼ぶ。
 そうすれば、キングのデイバッグから、円盤型の小さな下僕が飛び出した。
 考えてやった訳ではない。こうすればサガークが現れると、渡は直感で感じたのだ。

「貴様……まさか!」
「お、おい渡ぅ、何言ってんだよ!?」
「来い、サガークッ!!!」

 二人の言葉など意にも介さず、渡はサガークを睨み付け、再度叫ぶ。
 サガークは困惑した様子で宙をふよふよと浮かび、渡とキングを眇め見た。
 運命の鎧サガは、王の為に造られし、王の為の鎧だと聞く。
 それがキバの試作型とも呼べる存在であるなら、渡にだって使える筈だ。
 何せ、この身に流れているのは、どんなファンガイアをも黙らせる、冷酷無比な王族の血。
 渡は王族でしか使えぬ黄金のキバを使いこなし、更には一族の王たるキングをもここまで追い詰めたのだ。
 資格は十分。覚悟も十分。なればこそ、この紅渡を「王」と認めずして何とする。
 渡の瞳からは、最早数時間前までの不甲斐なさなどは消え去っていた。
 たった一つの目的の為だけに輝くその眼光は、キングにも似た冷酷な輝きを放っていて。

「聞こえないのかサガーク! 新たな王の命令だ!」
「貴様……言うに事欠いて、この俺の前で新たな王だと!?」

 憤慨するキング。
 狼狽するサガーク。
 この場に居るのはまさしく二人のキングだった。
 とはいっても、片方は変身制限で、最早変身すら出来ない。
 もう片方は、今でこそ生身であるが、その瞳に宿った意思は本物。
 それも、紅渡はサガを装着したキングを、それよりも劣るキバで撃破せしめたのだ。
 なれば、サガークはどちらの王の方が自分の鎧を有効に使ってくれるかを考えて――。

「サガークッ!!!」

 再三の渡の呼び声に、ついにサガークは動いた。
 円盤の身体を高速回転させ、キングのデイバッグを突き破る。
 飛散した幾つかの中身の内、かつて太牙が用いた専用武器を、渡の方向へと弾き飛ばした。
 ぱしっ、と音を立ててジャコーダーを掴み取った渡は、不敵にキングを睨み付ける。
 渡の腰に張り付いたサガークは、黒いベルトで以て、渡の胴へと装着された。

「馬鹿なっ……!? 貴様まで、この俺を裏切ると云うのか!?」

 キングの声は震えていた。
 表情はわからないけれど、その事実がキングにとっては赦せぬ事だという事だけは解る。
 だが、なればこそだ。赦して貰う必要などないし、渡は望んで赦されぬ存在になろうとも思う。
 ここまで来れば、もう後に引き返す道など、何処を探したってありはしないのだ。
 故にこそ――渡はジャコーダーをサガークに突き刺して、無感動に告げた。

「変身」

 瞬間、渡の身体を覆ったのは、白銀の鎧。
 揺るがぬ王(キング)の意思を持った者にのみ許される、運命の鎧。
 次第に闇に落ちて行くこの会場の中でも、サガの蒼い複眼は不気味に煌めいていた。
 圧倒的な威圧感。闇の色を集め纏う、オーラの如き闇の波動。
 紅渡による「サガへの変身」が意味する事とは、つまり。

「今、この瞬間から――この僕がキングだ!」

 王の威厳を以て叫ばれたその言葉に、キバットとキングは狼狽する。
 しかしそれもほんの一瞬で、キングはすぐに身を震わせて叫んだ。

「ふざけるなよ、貴様……俺をナメるのもいい加減にしろ!」
「ファンガイアの歴史は力の歴史。文句があるなら掛かって来い」

 サガの仮面を通じて淡々と告げられたその声に、遂にキングは感極まったらしい。
 怒りに震える両腕を突き出して、魔皇力で出来たエネルギーの塊をサガへと放った。
 相対するサガは、息一つ吐き出して、ジャコーダービュートを振るう。
 びゅん、と音を立ててしなったそれは、二つの光弾を真っ二つに引き裂いて、サガの後方へ飛んで行った。
 着弾したエネルギー弾は後方で派手な爆音を上げるが、サガはそれすらも追い風に、バットファンガイアの懐へと飛び込んで。

「ハァッ!!」

 怒涛の勢いで突き出されるは、ジャコーダーロッドによる乱舞。
 連戦で疲弊したファンガイアの王では読み切れぬ速度で、赤の剣を振るった。
 魔皇力で彩られた剣が、バットファンガイアの赤い身体を突いて、裂いて、刺しまくる。
 最早後退するしか出来ぬバットファンガイアであるが、それでもお構いなしだった。
 暫くサガによる蹂躙が続いて、サガは渾身の力を込めて、ジャコーダーを正面へ突き出す。

「グァァ!?」

 後方へと吹っ飛んだバットファンガイアの王へ、サガは更なる猛威を振るった。
 再び赤の鞭となったジャコーダーで、かつての王の身体を、叩いて叩いて、叩きまくる。
 今までの鬱憤すら込められているのではと思う程の勢いで、赤い鞭は乾いた音と火花の音を響かせて。
 終いにはその鞭でバットファンガイアの身体を絡め取って、遥か後方の岩場へと叩き付けてやった。
 次いでサガは、流れる様な動きで、ジャコーダーの柄をサガークへと突き刺して、悠々とのたまう。

「王の判決を言い渡す」

 ジャコーダービュートに、再び絶大なる魔皇力が注ぎ込まれた。
 それは不気味な音色を掻き鳴らして、周囲を再び漆黒の闇で包んで行く。
 サガは最早立って居るのもやっと、という様子で立ち上がるバットファンガイアに、ジャコーダーを突き付けた。
 ちゃき、と音を立てて、ジャコーダーの切先がバットファンガイアに向けられるのを確認して、サガは言い放つ。

「死だ」

 それは、兄である登太牙の言葉。
 先程は目の前の元キングも告げた言葉である。
 処刑人となったサガは、魔皇力迸るジャコーダーを力の限り突き出した。
 それは赤い輝きを振り撒きながら、バットファンガイアの胸部を確かに貫いて見せる。
 手応えアリだ。これで本当に、渡は戻っては来れぬ場所まで行ってしまうのだ。
 上空に現れた巨大なキバの紋章はまるで、そんな渡を受け入れる魔への扉の様だった。
 サガは構わず高らかに跳び上がり、紋章へと突入。
 ジャコーダービュートを紋章に通して、サガはすぐに着地した。
 赤き閃光に吊るし上げられたバットファンガイアが、それでも苦しげに呻くが、容赦はしない。
 まるで見せしめの様に敵を吊るし上げたサガは、魔皇力の漲るジャコーダーを、つい、となぞった。
 サガの持てる最大の必殺技を受けたバットファンガイアの身体は、ステンドグラスの如く、美しく煌めいた。




 最早戦う力などは残って居ない。
 全身は軋んで、積み重なった疲労が今にも王の身体を突き破りそうだった。
 だけれども、それでも。王の威厳だけを拠り所に、キングは再び立ち上がった。
 例え変身能力も失っても、例え戦う力を失っても……これは最早、理屈では無いのだ。
 ファンガイアの英雄たるこのキングが、ただやられるだけであって言い訳がないではないか。
 そうだ。自分は王として、宿敵キバに最後の最後まで抗って見せねばならないのだ。
 倒れる時は、前のめりだ。でなければ、幾千幾万の同胞達に、示しが付かない。
 それは例えちっぽけでも、本物の王であるが故の誇り(プライド)だった。
 それこそが、民に英雄と崇められた男の、誰にも譲れぬ誉れであった。

「紅……渡ッ――」

 眼前のサガへと、震える腕を突き出すが、それはもう誰にも届かない。
 紅渡にも、自分を裏切ったサガにも。愛する妻や、部下たちへさえも。
 敵対する種族を全て根絶やしにし、ファンガイアの誇りに生きた王は、ここで潰える。
 視界すらも朦朧としてゆく中で、キングの脳裏に蘇るのは、走馬灯の如き記憶の奔流。
 今キングは、忘れていた記憶も、忌々しい記憶も、全てを思い出した。
 嗚呼。これで、死ぬのは三度目になるのか、と思う。

 一度目は、愛する妻を奪い、闇のキバすらも奪った紅音也と、その息子、紅渡に。
 二度目は、忌々しい混血・紅渡と、この王が全てを託した筈の純潔の息子・太牙によって。
 そして三度目は、またしても、赦されぬ存在である紅渡と、王を裏切ったサガによって、だ。

 紅の血を引く者は、ここまで王を愚弄するのか。
 愛する妻も、信じた息子も、闇のキバも、運命のサガも、何もかもが自分を見捨てる。
 なれば自分は、一体何の為に戦って来たのだ。何の為に、英雄と謳われたのだ。
 今まで必死にファンガイアの繁栄の為、働き続けて来た自分は何だったのだ。
 やり切れぬ思いを抱え、それでもキングは、眼前の新たな王に問うた。

「貴様は……王の力で、何を成す」
「世界を救う為、他の全ての世界を破壊する」
「ハ、ハハ……ハハハハハ――」

 最早乾いた笑いしか生まれはしなかった。
 なるほど確かに、こいつが纏うオーラは、見まごう事なき王の風格だった。
 このファンガイアの王と同じ目的を以て、全ての世界を破壊しようと言うのだ。
 確かに忌々しい宿敵ではあったが、終わってみれば、紅渡も底知れぬ闇を抱えた男ではないか。
 なればこそ、不本意ではあるが、世界を救う英雄は、世界を救う王の役目は、彼に任せてもいいのかも知れない。

「ならば……貴様に、キングとして、命令する」
「はい」
「俺達の、世界を……ファンガイアの世を、その力で、救って見せろ!」

 キングの命令に、サガは、小さく頷いた。
 もう、声を出す事すらも苦痛に感じられる。
 されど、これだけは成さねばならない。王の力を持つ者として。
 我が世界に生きる、数多のファンガイアの民の未来を守り抜く為に。
 王は最後の最後で、忌々しい宿敵を認め、その身体をステンドグラスへと変えて行く。
 嗚呼、喜ぶがいい。悔しいが、どうやら紅渡が希った力を、王自らが認めてやらねばならぬらしい。
 故にこそ、最期の瞬間だけは、何としてでも王としての威厳と風格を保たねばならぬ。
 王を名乗るに足る器を持ったこの男に、散りゆく王自らが宣言しなければならぬ。
 本来ならば出来る筈もない「襲名の儀」を、この王の最期の仕事とするのだ。
 それだけが、今のキングに残された、たった一つの……そして、最期の拠り所。

「新たな王は、貴様だ……紅、渡――!」

 腹の底から、重く、鋭い声を響かせて。
 英雄キングは、硝子の欠片となって砕け散った。




 心の中は、不思議とからっぽだった。
 最期の瞬間まで、王の誇りを貫いて散った彼を、渡は立派な男だったと思う。
 渡はファンガイアの王を名乗る彼の事を知らないが、それでも彼は、本物の王だった。
 何を考えていたのかだって、今となってはもう誰にもわからないけれど。
 彼が、王の配下の民を救おうとしていたその気持ちは、本物だった筈だ。
 だから渡は、彼の最期の瞬間で、許せぬ筈の彼に対してさえも敬いを見せた。
 そして暁に散りゆくキングの表情は、何処か満足げだったとも思う。

「貴方の意志は、この僕が継ぎます」

 ステンドグラスの破片を一つ手にとって、渡は祈る様に告げた。
 ファンガイアの世界の為だけに戦え、というのは無理かもしれないけれど。
 せめて世界を救う事くらいは、新たな王として、やってみせようと思う。
 自ら世界の悪意となって、世界を救った後で、自分を消せばいいのだ。
 そうして、ファンガイアと人間が共存出来る世界を創って――
 後は、太牙兄さんがきっと、全て上手くやってくれると思う。

「おい、渡、冗談だろ!? 冗談だって言ってくれよぉ!」
「ごめんキバット。僕はやらなくちゃいけないから」

 それだけ言って、渡はキバットをむんずと掴んで、デイバッグに叩き込んだ。
 ずっと一緒に戦ってくれたキバットにも、申し訳ないと思う。
 だけれど、不器用な渡はこうするしかもう、思い付かなかった。
 先代キングが持って居た武器を回収して、渡は思考する。
 確か、牙王とか言う奴がまだ、この近くで戦っていた筈だと。
 全ての世界を破壊するのなら、手始めに新たな王に盾突いた奴から仕留めてやるべきだと思う。
 しかし、戦力は――

「これは」

 キングが所持していたデイバッグを漁って、一本のベルトを見付けた。
 緑と黒でデザインされたそれは、腰に当たるホルダーに、数枚のカードを忍ばせたデザインだった。
 ゼロノスベルトと呼ばれるそれは、変身する度に、変身者に関する記憶を消すベルトである。
 だけど、今この瞬間から世界の悪意となって、他の全てを滅ぼそうとする渡には、調度いいのかも知れない。
 どうせ最終的に世界と愛する人を救った後には、自分の存在を消滅させるつもりなのだから。
 紅渡は、瞳の色を無感動な黒色で塗りつぶして、歩を進める。
 新たな王の使命を得た渡に、もう迷いは無かった。



【1日目 夕方】
【C-6 平原】


【紅渡@仮面ライダーキバ】
【時間軸】第43話終了後
【状態】ダメージ(小)、疲労(中)、返り血、キバ及びサガに二時間変身不可
【装備】サガーク+ジャコーダー@仮面ライダーキバ、キバットバットⅢ世@仮面ライダーキバ、
    エンジンブレード+エンジンメモリ@仮面ライダーW、ゼロノスベルト+ゼロノスカード@仮面ライダー電王
    ゾルダのデッキ@仮面ライダー龍騎、ディスカリバー@仮面ライダーカブト
【道具】支給品一式×3、GX-05 ケルベロス(弾丸未装填)@仮面ライダーアギト、
    バッシャーマグナム@仮面ライダーキバ、ドッガハンマー@仮面ライダーキバ、北岡の不明支給品(0~2)
【思考・状況】
基本行動方針:王として、自らの世界を救う為に戦う。
1:手始めに牙王とか言う奴から倒すか……?
2:何を犠牲にしても、大切な人達を守り抜く。
3:加賀美の死への強いトラウマ。
【備考】
※過去へ行く前からの参戦なので、音也と面識がありません。また、キングを知りません。
※キングの最後の支給品はゼロノスベルト+ゼロノスカードでした。
※ゼロノスカードが何枚付属しているかは、後続の書き手さんにお任せします。



 誰も居なくなった平原で、むくりと起き上がる影が一つ。
 夕闇に落ちた平原は、見渡してもあまり視界が良いとは言えなかった。
 それは起きたばかりで視界が今だ霞んで居るから、というのも理由としてはあるのだろう。
 園咲冴子は、痛む身体を起こして、周囲を見渡し、呟いた。

「どうやら、あの子がやってくれたようね」

 絶体絶命と言える状況であったが、園咲冴子は一つの賭けに出た。
 それは、端的に言うならば「死んだフリ」と呼ばれる、至って簡単な手段。
 されど、あの状況で紅渡は本当に園咲冴子が死んだのか、なんて確認をするとは思えなかった。
 仮にされたとしても、命からがら生きていたと言えば、あの甘ちゃんはきっと安心した事だろう。
 ともあれ、園咲冴子は見事に紅渡のスイッチを押すきっかけとなったのだった。

「さて、どうしようかしらね」

 歩き出そうとするが、やはり身体は重たい。
 それこそ、今すぐにでも再び倒れ伏してしまいそうな程。
 どうやら、一般人のキバへの変身というのは、やはりそれなりに疲労するらしかった。
 それが元々怪我人の冴子ともなれば、尚更だ。
 こんな状況で、殺し合いに乗った誰かに会うのは非常に拙い。
 タブードーパントに変身すれば、怪我をした脚は使わないのでまだ応戦は出来るだろうが。
 それでも無理は禁物だし、今は被害者側を演じた方が、殺し合いに反対する集団には上手く溶け込めるとも思う。
 その事についても、今後の身の振り方をじっくり考えねばならない。
 冴子は重たい身体を引き摺って、一先ずはホテルに向かおうと歩き出した。



【1日目 夕方】
【C-6 平原】


【園咲冴子@仮面ライダーW】
【時間軸】第16話終了後
【状態】左の太ももに刺し傷(応急処置済)、ダメージ(小)、疲労(極大) キバに一時間四十分変身不能
【装備】ガイアメモリ(タブー)+ガイアドライバー@仮面ライダーW、ファンガイアスレイヤー@仮面ライダーキバ
【道具】支給品一式×2、加賀美の支給品0~1
【思考・状況】
基本行動方針:最後まで生き残り、元の世界に帰還する
1:一先ずはホテルで休みながら今後の事を考えたい
2:もしも殺し合いに否定的な集団を見付ければ、被害者のフリをして取り入る。
3:同じ世界の参加者に会った場合、価値がある者なら利用する。
【備考】
※照井と井坂を知らない時期からの参戦です。
※ガイアドライバーを使って変身しているため、メモリの副作用がありません。



【キング@仮面ライダーキバ 死亡確認】
 残り42人


065:魔皇新生♪ルーツ・オブ・ザ・キング(中編) 投下順 066:暁に起つ(前編)
065:魔皇新生♪ルーツ・オブ・ザ・キング(中編) 時系列順 066:暁に起つ(前編)
065:魔皇新生♪ルーツ・オブ・ザ・キング(中編) 紅渡 067:第二楽章♪次のステージへ
065:魔皇新生♪ルーツ・オブ・ザ・キング(中編) 園咲冴子 067:第二楽章♪次のステージへ
065:魔皇新生♪ルーツ・オブ・ザ・キング(中編) 牙王 067:第二楽章♪次のステージへ
065:魔皇新生♪ルーツ・オブ・ザ・キング(中編) キング GAME OVER
065:魔皇新生♪ルーツ・オブ・ザ・キング(中編) 志村純一 067:第二楽章♪次のステージへ
065:魔皇新生♪ルーツ・オブ・ザ・キング(中編) 天美あきら 067:第二楽章♪次のステージへ
065:魔皇新生♪ルーツ・オブ・ザ・キング(中編) 野上良太郎 067:第二楽章♪次のステージへ
065:魔皇新生♪ルーツ・オブ・ザ・キング(中編) 村上峡児 067:第二楽章♪次のステージへ


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最終更新:2018年03月24日 16:51