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第一回放送 ◆MiRaiTlHUI




 夕方の会場の空を、数隻の巨大な飛行船がゆっくりと横切ってゆく。方向は縦横無尽だった。
 コンドルのマークが描かれたそれらの飛行船には、液晶の巨大モニターが幾つも取り付けられていた。
 屋外に居る限りは、何処に居る参加者にでもモニターの映像が見られる様にという主催側の配慮だろう。
 一方で、飛行船の姿が見えぬ参加者の為には、会場中の全ての映像機器にも同じ映像が配信されていた。
 全施設と民家、街中の大画面液晶、店先のテレビ。兎に角、種類を選ばず、ありとあらゆる媒体からである。
 それに伴い、音声も会場中のあらゆるスピーカーから……それのみならず、首輪からも発せられる仕組みだった。
 つまり、何処に居ても、意識を保っている限りは、大ショッカーからの情報を受けられる状態が、ここに完成したのである。

「やあ、仮面ライダーのみんな。……それから、怪人と一般人のみんなも、だね。
 今この放送を見れてるお前らは、とりあえず最初の六時間は生き延びれたって事さ。喜びなよ?
 ……っと、自己紹介がまだだったね。僕の名前はキング……一番強いって意味の、キング。宜しくね」

 映像の中で、ニュース番組を彷彿とさせるテーブルに着席した金髪の少年は、不敵にその名を名乗った。
 赤いジャケットを纏った彼の名はキング。ピアスやらネックレスやらを過多に装着した、軽薄そうな若者である。
 そんなキングの背後では、大ショッカーの戦闘員たる全身タイツに覆面の男が二人、物言わず直立していた。

「さて。世界の命運を賭けた、最っ高にハイレートなデスゲームの方は楽しんで貰えてるかな?
 これから皆お待ちかね、このゲームで死んじゃった参加者名と、今後の禁止エリアを発表するよ。
 当然、二度目はないからしっかり聞きなよ? メモを取っておくのもいいかもね?」

 嘲笑う様にそう告げて、キングはパチンと、乾いた指の音を鳴らした。
 背後にいた二人の戦闘員が、巨大なモニターを覆い隠していた垂れ幕を勢いよく払い除ける。
 キングの背後の巨大な液晶に所狭しと羅列されているのは、二十人にも及ぶ参加者の名前だった。
 やがて一人一人の名前がアップで映し出され、それに伴ってキングが順にその名を読み上げていく。

「ズ・ゴオマ・グ、木野薫、北条透、北岡秀一、東條悟、霧島美穂、木場勇治、園田真理、海堂直也、剣崎一真、
 桐生豪、財津原蔵王丸、加賀美新、モモタロス、ネガタロス、キング、光夏海、照井竜、園咲霧彦、井坂深紅朗
 以上、二十人。……いや、僕も死神博士もびっくりしたよ。まさか皆がここまで必死に殺し合ってくれるなんてさ?
 これからも僕らの期待に応えられる様に頑張ってね、みんな。死神博士もみんなの事、応援してるってさ」

 それから、何かに気付いた様に「あっ」と呟いて、

「そういえば、僕と同じ名前の奴が死んじゃったみたいだけど、そいつ僕とは何も関係ないから、勘違いしないでね。
 一応言っておかないと、誤解されたらムカつくからさ。ってか、僕だったら最初の六時間で死んだりしないし!」

 誰の激情を誘うかも考えず、キングはそう言って嘲笑った。
 だけれど、そんな上辺だけの笑いはすぐに止め、それに伴って映像も切り替わる。
 次に表示されたのは、それぞれの世界の名。その隣には、何らかの順位と数字が表示されていた。
 上から順に、クウガの世界、剣の世界、キバの世界、龍騎の世界、カブトの世界、アギトの世界、という並びである。
 それが一体何の順位であるかを説明するのは、やはり軽薄な笑みを浮かべるキングであった。

「ちなみにこれ、世界別の殺害数ランキングね。見ての通り、クウガの世界が七人殺害で断トツの一位!
 他の世界の皆ももうちょっと頑張ってくれないと……このままじゃクウガの世界が優勝しちゃうよ?
 ま、こっちは別にそれでもいいんだけど、ワンサイドゲームって見ててもあんまり面白くないからさ」

 一番上に書かれたクウガの世界の表記の隣には、「7」と表示されていた。
 その下に並んだ剣、キバ、龍騎の三世界の殺害数は「3」で、同率の二位である。
 これだけ見れば、クウガの世界の殺害数は二位の二倍以上という事になるのだから恐ろしい。

「それじゃ、続いて禁止エリアなんだけど……皆があんまり頑張り過ぎるから、二時間に一箇所ずつじゃ追い付かなくなっちゃった。
 これ、異例中の異例だからね。皆の頑張りはこっちにとってもそれだけ予想外だったって事さ。これ、褒め言葉だからね?」

 それは何者に対してだろうか。
 侮蔑すら感じられる笑みを浮かべたキングは、数秒間の間を置いて続ける。

「……メモの準備は出来た? それじゃ、発表するよ。

 19時から【G-1】エリアと、【A-4】エリア。
 21時から【D-5】エリアと、【E-7】エリア。
 23時から【E-4】エリアと、【H-3】エリア。

 これ聞き逃して、うっかり禁止エリアに入っちゃったりしたら、首輪ボン! だから。マジで気を付けてね。
 まあ、流石にそんな馬鹿みたいな死に方する奴は居ないと思うけど、これ結構洒落になんないからさ」

 言いたい事を一通り言い終えたキングは、最後にカメラを不敵に見据えた。

「それじゃ、最後になるけど、もう一つだけお前らにアドバイスしてやるよ。
 僕の知り合いに、戦えない全ての人々を守る、とか何とか言ってた御人好しな仮面ライダーが居るんだ。
 けど、そいつもこの六時間で呆気なく死んじゃった。多分、他にも似た様な事言ってる奴は居たんだろうけど。
 コレ、どういう事か分かる? ……簡単な話さ。所詮、口だけの正義の味方なんて何の役にも立ちはしないって事。
 結局最後まで生き残ってゲームクリア出来るのは、逸早くゲームの性質を理解し、その攻略法を見付けた奴だけなんだよ。
 ほら、ゲームのルールをイマイチ理解してない馬鹿なプレイヤーって、大体いつも最初に潰されちゃうだろ?
 つまり、そういう事さ。本気で自分の世界を救いたいなら、そろそろゲームの性質を見極めた方がいいよ。
 ま、生き残ってゲームクリアしたかったら、精々頑張って他の参加者を蹴落とす事だね。
 ……それじゃ、六時間後にまたね、みんな」




 大ショッカーの巨大なエンブレムが掲げられた広間に、一つの玉座があった。
 だけれども、その玉座に座るべき者――即ち大ショッカー大首領の姿は、ここにはない。
 広間に居るのは、玉座を守る数人の大幹部と、無数に居並ぶ各世界の雑兵怪人だけだった。
 やがて、放送を終えて戻って来たキングが、雑兵怪人の群れを掻き分けて、広間の中央へと歩み出る。
 大幹部の一人たる老紳士――死神博士は、そんなキングを労うべく、マントを翻してキングに歩み寄った。

「先の放送、御苦労であったぞ、コーカサスビートルアンデッド……否、キングよ」
「そりゃどうも……ま、これくらいで良ければ、いくらでもやってやるよ」

 心底面白そうにキングは笑っていた。
 死神博士は満足げに、しかし怪訝そうな表情で問う。

「貴様も変わり者よのう。自分の世界が滅びるやも知れぬというのに……惜しくはないのか?」
「ああ、もういいってそういうの、ウザいからさぁ。むしろ滅びてくれた方が清々するよ」
「敢えて世界の破滅を願うか……ふむ。それでこそ、我が大ショッカーの同士たり得る」

 死神博士は同士と言うが、元来キングは、大ショッカーの怪人ではない。
 剣の世界に生きる、カテゴリーキングと呼ばれる最上級のアンデッドの一人だ。
 アンデッドとはそもそも、基本的には自分の種族の繁栄を賭けて戦う不死の生物である。
 だけれども、キングは他のアンデッド達とは違い、自分の種族の繁栄には蚊程の興味も持ってはいない。
 ただ、何もかもが気に入らなくて、世界そのものが破滅してしまえばいい。そんな風に思っているだけだった。
 仮面ライダーとの戦いだって遊び感覚だったし、奴らに精一杯の嫌がらせをしてやれればそれで良かった。
 それさえ果たせば、後は再び封印されて、またカードの中で、悠久の時を生き続けなければならない。
 何よりも、面白い事、楽しい事だけを好むキングにとって、それは永遠に続く苦痛でしか無いのだった。
 だけれども、大ショッカーの誘いに乗れば、その永遠を終わらせる事だって出来るかもしれない。
 もしも世界が消滅すれば、本来消滅する事のない自分も、一緒になった消滅する事が出来るのだから。
 仮に剣の世界が生き残ったとしても、その時は大ショッカーに味方して、世界の全てを滅茶苦茶にしてやればいい。
 だからキングは、再び自分を封印から解き放ってくれた大ショッカーに味方すると決めたのだった。

「けど、一つだけ気に入らない事があるんだよね」
「ほう……何だ、言ってみるが良い」
「参加者に支給されてるスペードのキングさ、アレ何?」

 さも不服そうに、苛立たしげに、キングは問う。
 スペードのキングのカードとは即ち、コーカサスビートルアンデッドことキングを指す。
 だけれども、キングは今こうしてここに居るのだ。なれば、あのカードは一体何なのか。
 実質、自分がもう一人いる事になるのだから、それが気にならない筈がない。

「あれはもう一つの『剣の世界』に存在するスペードのキングだ」
「へえ……なら、あのスペードのキングを解放したら、一体どんな奴が出てくるんだろうね」
「それは誰にも分からぬ。貴様の様な人格やも知れぬし、全くの別人格やも知れぬ……気になるか?」
「べっつに……僕は一人で十分だし。ってか、どうせ剣の世界が消えたら僕もそいつも消えるんだろ?」
「そういう事になるが……いや、貴様にとってはそれが最も望むべき結末であったか」

 一拍の間をおいて、キングは「まあね」と答えると、満足げに笑った。
 聞きたい事も聞き終えたキングは、蠢く雑兵怪人達を掻き分けて、広間を後にした。
 果たして、本当に剣の世界が消滅すれば、キングもまた世界と共に消滅するのだろうか。
 大ショッカーの言う世界の選別、世界同士の殺し合いとは、本当に意味を成すのだろうか。
 もしかしたら、怪人同士で徒党を組んでも倒せないライダーを効率よく排除する為の狂言かも知れない。
 本当の所は誰にも分からないが、それでもキングにとってこのゲームは、十分過ぎる程に有意義だった。
 カードの中で過ごす、死んだも同然の無間地獄よりは、ずっと、生きている事を実感出来るから。
 尤も、当のキングにとっては「生きる」事すらもただの遊びでしかないのだが。



【全体備考】
※主催側には、【キング@仮面ライダー剣】が居ます。
※参加者に支給されたラウズカード(スペードのK)はリ・イマジネーションの剣の世界出展です。


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000:オープニング 死神博士 ---
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