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交錯 ◆LuuKRM2PEg




 太陽が沈んだ夜空に飛ぶ、数多もの飛行船。それら全てに巨大なスクリーンが取り付けられており、デスゲームの途中経過を告げられる。
 それだけで無く、この世界に存在するパソコンのスクリーンやテレビ画面も、情報を伝える役割を担っていた。それはこの一軒家も例外ではない。
 そこに映し出されたのは、キングと名乗った金髪の少年。彼は、こちらを小馬鹿にしたような態度で、死人を読み上げていた。
 キングの表情からは、人の死に対する罪悪感や悲しみといった感情が一切感じられない。むしろ、楽しんでいるような気配すら感じられる。
 しかし、一条薫の中ではそれに対する憤りよりも、別の感情が強くなっていた。

(この六時間で、既に二十人もの命が奪われているとは……)

 彼は憤りを感じている。自信の無力さと、この戦いによる犠牲者を大勢出してしまった事に。
 その中には先程、未確認生命体第三号の暴虐から自分達を庇った照井竜も含まれている。かつて金の力を手に入れた五代すらも圧倒した三号と戦っては、こうなることは予測出来た。
 極めて当然の結果。しかし一条は、そんな言葉で割り切る事など出来なかった。
 警察という職業に就いている以上、人の死というのは数え切れないほど見ている。どれだけ頑張っても、救えない命や届かない思いもあった。故に、数え切れないほどの無念や罪悪感を抱いている。
 だが、それに溺れる事は決して許されない。ここで足を止めてしまっては、これから救えるかもしれない命が救えなくなる。
 何よりも、それは彼らに対する冒涜となる。

(クウガの世界の殺害数が七人……まさか、未確認がここでも多くの命を奪っているとは)

 キングが告げたもう一つの情報。それはクウガの世界に生きる者達が、既に七人もの参加者を殺害している事だ。
 恐らくクウガの世界とは、自分の生きる世界の事だろう。第四号は未確認達の間ではクウガと呼ばれていたから、その可能性が高い。
 だがそれよりも、この情報が意味するのは奴らの横暴を許している事だ。未確認生命体達はこの世界でも、照井を始めとした多くの命を奪っている。
 それがあまりにも悔しかった。自分がもっと上手くやっていれば、こんな事にはならなかった筈なのに。
 しかし、ここで後悔に沈んで立ち止まる事は許されない。未確認達の凶行を一刻も早く止めてみせる。

「アクセルドライバー……か」

 決意を胸にした一条は、照井の遺品であるアクセルドライバーとアクセルメモリを手に取った。彼の生きる世界では街を守るヒーローであった『仮面ライダー』になるための力。
 アクセルを象徴する深紅の色は、まるで照井の中に宿る熱い炎のようだった。これが今ここにあることは、自分が彼の意志を継いで戦わなければならない事。
 第三号との戦いでは、度重なるダメージによって変身が解除されてしまい、再度変身を行おうとした。だが、何の反応も示さない。
 一度しか使えない道具ではないはずだ。それならば、彼は平和を守る事など出来ない。大ショッカーが、何かしらの細工を仕掛けた可能性がある。
 何にせよ、使うにはタイミングが必要だった。
 思案を巡らせていると、部屋の扉が開く音が聞こえる。振り向くと、支給されていた服を纏っている桐谷京介が立っていた。

「桐谷君か」
「一条さん……大丈夫ですか?」
「ああ、俺なら大丈夫だ」
「そうですか……良かった」

 一条は、何処か浮かない表情をしている京介に、出来る限り強く答える。
 ここまで逃げ出してから、一条は京介に対して全てを伝えた。照井を見捨ててしまった事を、間宮麗奈が異形の怪物であった事を。
 そして、狙ったように訪れた大ショッカーの放送。それらの事実によって、京介は愕然としたような表情を浮かべる。しかし彼は気丈に立ち直った。
 ここには師匠であるヒビキ、同じ鬼であるあきらがいる。だから、挫けるわけにはいかないと告げて。
 しかし一条は、彼一人に無理をさせるつもりは無かった。彼はその若さ故に強がっている可能性もある。強い意志は感じられるが、ここにはあの第三号だっていた。
 だから、自分が頑張らなければならない。ここで倒れてしまっては、照井や五代雄介を侮辱する事になってしまう。彼らは未確認を前にしても、決して挫けたりはしなかった。

「一条さん……ごめんなさい、俺が弱いせいで」
「君が気を病む必要はない。生きていてくれた……それだけで、充分だ」
「でも、俺のせいで照井さんが……!」
「それは、俺にも責任がある」

 京介の言葉を一条は強く遮る。
 されど、その声には何処か優しさが込められていた。まるで五代雄介が、未確認によって笑顔を奪われた者を諭す為に告げる言葉のように。

「俺には力が足りなかった……だから、あの人を死なせてしまう事になってしまった。だが、ここで止まっている場合ではない」
「そうですけど……」
「俺達がやるべき事は、これ以上犠牲を出さない事……そして、あの人の仲間に死を伝える事だ」

 照井と同じ世界から連れてこられた人々。
 私立探偵であり、仮面ライダーとなって多くの人々を守るために戦っている左翔太郎。
 多くの知識を持つ彼の相棒、フィリップ。
 二人が勤める事務所の所長、鳴海亜樹子。
 残されてしまったこの三人に、照井の事を伝えなければならない。彼の残した思いを、彼が抱いていた信念を。

「その為にも、俺達は生きなければならない……だからこそ、この命は残っているんだ」
「……そうですよね、一条さんの言うとおりです」
「ならば、その為にも行動をしなければならない。こうしている間にも、犠牲者は増えていくかもしれないからだ」
「はい!」

 それぞれ互いに、力強い言葉を交わし合う。
 それぞれの荷物を纏め、一条が先導する形で家を出た。ドアを開けた先では、辺りの暗闇が一層増している。
 規則的に並ぶ電灯は光を放つが、夜の中では圧倒的に足りない。B-2号の襲撃を再び受ける可能性は充分にある。
 しかも今はたった二人なので、一切の警戒を緩める事は許されなかった。

(照井警視長……私は、貴方が残してくれたこの命を絶対に無駄にはしません。桐谷君も、この命に代えても守ってみせます)

 夜空を見上げながら、一条は今は亡き照井竜にそう告げる。
 殉職の制度により、彼は『警視』から『警視長』に二階級特進する事になった。だからこそ、より一層の敬意を払わなければならない。
 彼の勇気ある行動で、自分達はこうして生きていられるのだから。

(貴方がやり残した事は……私が責任を持ってやり遂げてみせます。貴方が示してくれた『仮面ライダー』の道を歩いて)

 大ショッカーが世界崩壊の原因だと告げた存在である仮面ライダー。
 しかし照井と京介は、危険を顧みずにそれが人々を守る戦士であると教えてくれた。仮面ライダーとは、五代雄介のように心が清く強い戦士。
 そんな思いが芽生え始めた一条の懐では、アクセルドライバーとアクセルメモリが赤い輝きを放っている。




 小沢澄子の身体を乗っ取ったスパイダーアンデッドは、体を動かしていた。
 先程この女を支配して、同行者である男達を殺そうとする。しかし小沢はまだ意志が残っていたのか、スキッドスモッグのカードを読み込ませた後に戦場から去った。
 だが、抵抗もそれまで。既に小沢の四肢は自分の思うがままで、身体の疲れも癒えている。別に構いはしないが、宿主の肉体に不調があれば戦いで予想外の事態が起こりかねない。
 そして、辺りは夜の暗闇で覆われていた。参加者を襲うには格好の条件が揃っている。
 スパイダーアンデッドは闇の中を進む最中、二つの足音を捉えた。それを聞いて、反射的にレンゲルバックルを構えながら隠れる。
 物陰から見ると、先程戦場から逃げ出した二人組の男が歩いていた。赤い仮面ライダーに変身した男と、銀色の仮面ライダーに変身した小僧。
 まさか、こんなにも早く再び遭遇出来るとは。しかも一度戦った相手だから、戦闘スタイルの予測も容易。恐らく戦いの疲れも癒えているかもしれないが、闇討ちを仕掛ければ何の問題もない。
 スパイダーアンデッドは小沢の腰にレンゲルバックルを添えて、その中に自身が封印されているカードを挿入。待機音が響く中、レバーを引いた。

『OPEN UP』

 目前に現れた青いオリハルコンゲートを潜り抜ける。すると、仮面ライダーレンゲルへの変身が一瞬で完了した。
 そしてレンゲルは、脇腹から五枚のラウズカードを取り出す。ハートとスペードのキングとクイーンをそれぞれ二枚ずつ取り出し、宙に放り投げた。
 最後の一枚であるテイビアリモートをレンゲルラウザーに読み込ませると、杖から四つの光が飛び出す。それはアンデッドが描かれた絵柄と接触すると、カードの封印が解かれた。
 一瞬で、四枚のラウズカードに封印されていたカテゴリーキングとカテゴリークイーンがこの世界に姿を現す。
 パラドキサカマキリの始祖たるカテゴリーキング、パラドキサアンデッド。
 コーカサスオオカブトの始祖たるカテゴリーキング、コーカサスビートルアンデッド。
 蘭の始祖たるカテゴリークイーン、オーキッドアンデッド。
 ヤギの祖たるカテゴリークイーン、カプリコーンアンデッド。
 この内三体には一度あの二人を襲わせて、圧倒的戦力差を思い知らせた。戦闘スタイルは読み取られているかもしれないが、それはお互い様。
 何より奴らも、ダメージがある程度残っているはずだ。それに加えて数と戦闘力における有利。一分経過すれば自動的に消滅するようだが、これで勝てない道理など無い。
 ふと、視線を感じる。どうやら、奴らはこちらに気付いたようだ。電子音声が原因かもしれないが、関係ない。
 一瞬で片を付ければ良いだけの話。そう思いながら、レンゲルはアンデッド達を率いて物陰から飛び出した。




 自分達を守るために、照井竜が死んだ。間宮麗奈が、未確認生命体や魔化魍のような化け物だった。
 その事実が、桐谷京介の心を責めている。自分の力が足りなかったせいで照井を始めとした、大勢の人が死んだ。自分が守ろうとした女性は怪物だった。
 それらの何もかもが、嘘だと思いたかった。しかし全ては夢ではなく、現実と受け止めなければならない。
 もしも師匠であるヒビキやザンキ、同じ鬼であるあきらだったらこんな事にならなかったはず。自分は無力だ。
 後悔してはならない事は分かっているが、それでも気持ちは沈んでしまう。でも、いつかは乗り越えなければならない。
 あの第三号って奴がまた現れた時、こんな気持ちのままでは一条さんの足を引っ張ってしまう。それはもっと嫌だった。

『OPEN UP』

 そう自分に言い聞かせて気持ちを奮い立たせようとした瞬間、京介の耳に電子音が響く。
 反射的に彼は、俯いていた顔を上げた。すると、その先には緑と金の装甲を輝かせている『仮面ライダー』が見える。
 それは記憶に新しい、照井を殺した相手。未確認生命体が変身したあいつだ。
 そう思った瞬間、奴の背後から四つのシルエットが飛び出してくる。それらの姿は一瞬で明らかになった。
 奇妙なカードから現れた、魔化魍のように醜悪な怪物。しかも今度は、植物の蘭を思わせるような装飾が全身に付いた怪物まで増えている。
 相手は同時に飛びかかってきた。それを見て、京介は反射的に変身音叉を懐から取り出す。
 その先端で壁を叩いて、清らかな音を鳴らした。そして、額に翳して全身を青い炎で包ませる。彼はそれを右腕で力強く払った。
 払われた火炎から現れた京介は、桐谷京介であり桐谷京介ではないもう一つの姿。仮面ライダー強鬼とも呼ばれる銀色の音撃戦士、京介変身体。
 不意に、彼は隣に視線を向けた。そこに立つ一条薫も既に、仮面ライダーアクセルに姿を変えている。
 それを確認した彼は、目の前より襲いかかる照井竜の仇を仮面の下で睨み付けた。




 機密組織ZECTで使われる装甲車に乗る小野寺ユウスケは、ハンドルを動かしていた。
 現在地点、D-2エリア。ン・ダグバ・ゼバとの戦いで目覚めた、究極の力による厄災から橘朔也や日高仁志を巻き込まない為に単独行動を選んだ。
 そこからダグバを倒すために、行くアテもなく彷徨う。もうこれ以上、犠牲者を出さないと決意して。
 そんな彼に突き付けられたのは、大ショッカーによる第一回放送。

「夏海ちゃん……海堂……ッ!」

 彼の声は震えていた。この六時間もの間で、既に二十人もの犠牲者が出ているという事実に対して。
 その中には、旅の仲間である光夏海や橘の後輩である剣崎一真、ヒビキの先輩である財津原蔵王丸も含まれている。
 そしてもう一人、ユウスケに強い衝撃を与える名前があった。この世界で初めて出会った、もう一つの『555の世界』に生きるオルフェノクである海堂直也。
 奴は言動に一貫性が無く、どうにも胡散臭い雰囲気を感じさせる。しかし自分の事を助けに戻ったので、少なくとも悪い奴ではないはずだった。
 そんなあいつがもういない。海堂だけでなく、同じ世界に生きる木場勇治や園田真理も殺されている。
 信じたくない。嘘だと言って欲しい。無理だと分かっていても、そんな思いがユウスケの中で広がっていく。

「畜生……ッ!」

 みんなを守るために仮面ライダークウガとなったのに、誰も守る事が出来ない。むしろ、犠牲者を増やしている。
 その事実が、ユウスケの中に宿る憎悪を強くさせていた。殺し合いを仕組んだ大ショッカーやダグバを始めとした殺戮者達。そして、無力な自分自身に対して。
 不意にユウスケは、夜空を見上げる。そこに広がる闇が、まるで自分自身を象徴しているかのように見えた。
 憎しみに身を任せたまま暴力を振るう、忌むべき未確認生命体と全く変わらない自分。こんな身体となっては、誰かを守る事なんて出来るわけがない。

「俺は……何も出来ないのかよ」

 みんな頑張っているはずなのに、自分だけこんなザマだ。士も、海東さんも、ヒビキも、橘さんも、名護さんも、みんなの為に戦っているのに。
 世界に生きるみんなの笑顔を守ると、姐さんに誓ったのに。でも、大ショッカーの仕掛けた戦いの犠牲者が出てしまっている。
 それどころか、今でさえダグバの凶行を許しているのかもしれない。それがたまらなく嫌だった。

「……ん?」

 運転する彼の目に、ある光景が見える。その先では、三人の仮面ライダーと『剣の世界』の怪人であるアンデッドが、戦いを繰り広げているのが見えた。
 それを目にして、ユウスケはブレーキを踏んで車を止める。
『剣の世界』に存在する仮面ライダーレンゲルがアンデッドを率いて、他の二人を襲っているように見えた。相手は『響鬼の世界』で戦っているライダーを彷彿とさせる銀色の鬼と、見知らぬ赤いライダー。
 戦闘が起こっているのを見たユウスケは、腰にアークルを出現させながら運転席から飛び出し、すぐさま駆けつけようとした。

――なんだ、まだ怖くなってないの? クウガ

 しかし、彼の動きは止まってしまう。あの凄惨な戦いの中で告げられた、ダグバの言葉を思い出してしまって。

――アイツがダグバと同じ力を持っている、それはつまりアイツもダグバと同じ事が出来るという事だ。その力が俺達に向けられたらどうする?
――きっと、ダグバはこれからも小野寺を追いつめる為に他の参加者を殺し続けるだろう……今よりも憎しみと怒りに支配された小野寺と戦う為に……だが、その果ては……
――破滅しかない――ということか

 そして究極の力を恐れていた、橘とヒビキ。そうだ、この力を使ってしまえば罪のない者も巻き込んでしまう。
 だからここでクウガになっても、獣のように暴れ回るだけ。今の自分は未確認となんら変わらない存在だからだ。
 横槍を入れた所で、あそこにいるみんなを殺す事になってしまうだけ。

(でも、ここで俺が行かなかったら……ッ!)

 赤と銀のライダー達は、次第に追い込まれていくのが見えた。
 このままではまた犠牲者が増えてしまう。今、自分の力が必要とされている。ここで行かなければ、彼らが殺されてしまう。
 しかし自分が行った所で何になるのか。確かにアンデッド達は倒せるかもしれないが、仮面ライダー達を巻き込むかもしれない。
 それで犠牲者が増えてしまっては、本末転倒だ。

(でも……でもっ!)

 本当の気持ちと自分に宿る脅威という現実が、心中で激突する。
 この力で、みんなを守りたい。この力で、みんなを犠牲にしたくない。そのどちらもが、ユウスケの中で強くなっていく揺るぎない思い。
 人々の事を思うからこそ生まれてくる二つの感情。それらがせめぎ合う中、レンゲルとアンデット達の攻撃が激しさを増す。
 自分は一体何をやっているのか。もしもここにいるのが仲間達なら、迷わず戦っているはずなのに。
 また、ダグバの時みたいに人々を死なせてしまうのか? 海堂だってあのカブト虫の怪人を相手に一歩も引かずに、戦った。
 なのに自分は、こうして言い訳して人々を死なせてしまうのか? そんなのは、絶対に嫌だ。

「……あああああああああああああああ!」

 やがてユウスケは、叫びながら走り出す。罪のない人々の笑顔を守るために。
 ここで立ち止まっても、あそこで戦っているみんなが傷つくだけ。あのクウガの力は、何としてでも押さえながら戦わなければならない。
 難しいかもしれないが、やってみるしかなかった。

「変身ッ!」

 アークルに埋め込まれた霊石が、眩い輝きを放つ。すると、ユウスケの身体が一瞬で変化していった。
 古代より蘇った、グロンギと戦い続けた赤い装甲を纏うリントの勇者。仮面ライダークウガ マイティフォームへと。
 鎧と同じ色の瞳を輝かせながら、クウガは疾走した。




 力も数も、圧倒的に不利。それは前の戦いで明らかになっていたし、今だって変わらない。
 加えて今は、未確認のような怪物が一体だけ増えている。だがそれでも、ここで逃げる事は出来ないし逃げる事は許されなかった。
 何より照井警視長を殺した目の前の『仮面ライダー』から逃げるという事は、彼の侮辱に他ならない。
 だからアクセルの鎧を身に纏って戦うしかなかった。
 レンゲルの握るレンゲルラウザー、コーカサスビートルアンデッドが振るうオールオーバー、オーキッドアンデットが放つ蔦。アクセルはそれら全てを回避しながら、反撃の機会を窺っていた。
 まともに正面からぶつかっても、勝てる見込みは零。唯一の可能性は、あの司令塔と思われる『仮面ライダー』を叩けば怪物達にも何らかの影響が及ぶかもしれない。
 そう思ったアクセルは、勢いよく走り出した。途中、コーカサスビートルアンデッドとオーキッドアンデットの攻撃が迫るも、膝を低くして回避する。
 直後、彼の頭上でアンデッド同士の武器が激突する甲高い音が響いた。チャンスが芽生えたと確信したアクセルは、握り拳をそれぞれの鳩尾に叩き込む。
 10トンもの威力で、アンデッド達の身体は地面を転がる。そんな仲間達の事など見向きもせず、レンゲルは杖を構えながら走っていた。
 その手に一枚のカードを収めて。

『STAB』

 ラウズカードがレンゲルラウザーに読み込まれ、蜂の紋章が浮かぶ上がる。輝きを放つそれは一瞬で、杖の先端に吸い込まれた。
 レンゲルはそれを掲げて、上から叩き付けてくる。アクセルは横に飛んでそれを回避するも、敵の攻撃は止まらない。
 がら空きになったアクセルの脇腹に、二合目が叩き付けられる。鈍い轟音と共に鎧に傷が刻まれ、身体が吹き飛ばされた。
 道上を数回転がった後、何とか立ち上がろうとする。しかし、痛みがそれを阻害した。
 この一撃の威力は、先程までとは比べ物にならない。恐らくあのカードには、戦闘に役立つ効果があるのだろう。
 しかしそれが分かったところでどうにもならない。元々、優劣はあちらに傾いているのだ。その上でまだ装備を出されては、勝利への道が見えてこない。

「一条さん!」

 どうしたものかと考えていたアクセルの耳に、声が響く。振り向くと、京介変身体が自分の隣にいた。
 銀色の仮面で顔が見えないが、声からして狼狽している事が感じられる。

「大丈夫ですか!?」
「ああ、俺なら大丈夫だ!」

 そんな彼を不安にさせないようにアクセルは力強く答えて、敵に振り向いた。
 敵は五体。しかもその誰もが、二対一で戦っても絶対に勝てる相手ではない。
 このままでは、絶対に殺されてしまう。かといって、打破出来る状況がまるで浮かばない。
 ここで京介変身体を逃がそうとしても、彼の性格からして絶対に受け入れないだろう。何より自分一人など、奴らは簡単に突破出来るはずだ。
 しかも、レンゲルは怪物を更に召喚する可能性だって高い。それで強制的に数で押し切られたら終わりだ。
 一体どうすればいいのか。アクセルの中でそんな思いが強くなる中、敵は一歩ずつ迫り来る。
 その時だった。

「おおおおおりゃあああああぁぁぁぁぁぁ!」

 突如として、戦場に響き渡る絶叫。それを耳にして、アクセルは反射的にそちらへ振り向く。
 すると、仮面の下で一条の目が見開いた。そこに現れたのは、自分と京介変身体を飛び越えて、炎を纏った跳び蹴りをレンゲルに放つ赤い戦士。
 昆虫のクワガタを模したような二本角、火炎のように赤く染まった瞳と全身、腰に輝くベルト。何から何まで、自分のよく知る存在だった。
 2000の技を持つ男、五代雄介が未確認生命体と戦うために得た姿、クウガ。警察から『未確認生命体第4号』のコードネームが与えられた勇士、仮面ライダークウガ。
 彼の蹴りは、相手を砕かんと一直線に進む。しかし、すんでの所でオーキッドアンデットが動き、レンゲルの盾になるように立つ。
 結果、マイティキックはオーキッドアンデットを吹き飛ばすだけに終わってしまった。
 蹴りの反動でクウガは僅かに宙を舞って、地面に着地する。そのまま、こちらに振り向いてきた。

「まさか……君は……!」
「逃げてください! あいつは俺がやります!」

 こちらの言葉に応えることなくクウガは前を向いて、勢いよく突進する。そんな彼に目がけて、アンデッド達は殺到。
 しかしクウガは、反撃に出た。コーカサスビートルアンデッドが振るうオールオーバーを避けて、頭部に握り拳を叩き付ける。
 パラドキサアンデッドの体当たりを回避し、がら空きになった脇腹にハイキックを繰り出す。
 オーキッドアンデットマイティキックを繰り出した場所を狙うように、ストレートを放つ。
 カプリコーンアンデッドの手刀を左手で受け止め、もう片方の手でアッパーを放って吹き飛ばす。
 全てが神速の勢いで行われていた。歴戦の戦士としての圧倒的な力、それでいて誰かを守ろうとする優しさ。それら二つを感じさせる戦闘スタイルは、まさに彼のものだった。

「一条さん、あの人は一体……?」
「五代だ」
「えっ?」
「俺と同じ世界に生きる奴だ……未確認生命体と今まで戦い続けてきた、五代雄介だ」

 クウガの勇姿を前に、アクセルは呟く。
 古代より蘇った、五代がクウガと呼ぶ戦士。自分が生きる世界における、唯一無二の存在。
 彼はレンゲルが振るう得物を、両手で押さえた。気がつくと、レンゲルが呼び出したアンデッド達は既に一人残らず消滅している。
 だが、それに構う事はせずに彼らは睨み合い、そこから背後に飛んで距離を取った。クウガは腰を低くし、レンゲルは二枚のカードを取り出す。

「はあああぁぁぁぁぁぁぁ……!」
『BITE』
『BLIZZARD』
『BLIZZARD CRUSH』

 クウガの気合いを込める声と、レンゲルラウザーから発せられる電子音声が発せられる。そこから互いに勢いよく疾走し、同時に跳躍した。
 クウガの足に帯びた灼熱と、レンゲルの両足から放たれる吹雪が互いに激突しながら、両者の距離が縮んでいく。
 刹那、封印エネルギーとアンデッドの生み出すエネルギーが空中で衝突。そこから両者は拮抗し、轟音と共に大量のエネルギーが周囲に拡散する。
 しかしそれはほんの一瞬で、次の瞬間には凄まじい大爆発を起こした。圧倒的な爆風によって大気は揺らぎ、その衝撃がアクセルと京介変身体に襲いかかる。
 それでも彼らは吹き飛ばされないように、足元を踏ん張った。耳を劈くような轟音はすぐに止んで、辺りに静寂が戻る。
 周囲に大量の粉塵が舞い上がる中、アクセルは前に踏み出した。戦いは終わったのかもしれない。だが、五代と第三号は一体どうなったのか。
 五代が奴を倒したのかもしれないが、まだ生きている可能性もある。何よりも、ようやく合流出来た五代と話をしなければならない。
 そう思いながら進む彼の周りに漂う埃は、風によって流された。それを浴びるアクセルの装甲が分解され、一条は元の姿に戻る。
 数歩進んだ後、彼の足は止まってしまった。

「何……?」

 そこに倒れていたのは、一人の男。しかし自分がよく知る男ではない。自分や五代よりも、若々しい雰囲気を放つ青年だった。
 一条はその周りを見るが、五代の姿はない。だとすると、今の第四号はこの青年が変身していた?
 一瞬だけその可能性を思いつく。だが、戦士クウガがもう一人いたなどという話など、今まで聞いた事がない。

「一条さん! ちょっと見てください!」

 京介の声が聞こえてきて、アクセルは振り向く。そこに立つ彼は既に変身を解除しており、元の姿に戻っている。
 その背には、見知らぬ一人の女性が背負われていた。しかも、婦警の制服を身に纏っており、自分や照井の同僚である事を証明している。

「その方は一体……?」
「分かりません。この人、向こうに倒れてたんです。ちょうど、あの『仮面ライダー』が吹っ飛んだ辺りに」
「何……!?」

 一条の中で、更なる謎が芽生えた。
 五代と思われていたクウガに変身していた男が、五代ではない見知らぬ青年だった事に。第三号と思われていたレンゲルに変身していたのが、見知らぬ婦人警察官だった事に。
 この二人が一体何者なのか。クウガに変身していた青年はともかく、レンゲルに変身した彼女の素性はまるで分からない。一体何故、自分達を襲ったのか。
 出来るならば、危険人物でない事を信じたい。どうやら、二人には話を聞く必要があるようだ。

「とにかく、この二人から事情を聞かなければならない。桐谷君、いいかな?」
「はい、俺は大丈夫です!」
「すまないな……なら、これからD-1エリアの病院に向かおう。君はその女性を頼む、私はこの青年を背負おう」
「分かりました!」

 行動方針を決めた彼らは、現れた二人の荷物を纏める。一条はクウガに変身していた男の支給品を、京介はレンゲルに変身していた女性の支給品を、それぞれデイバッグに収めた。
 荷物が増えるが、鍛え上げた彼らにとっては大した事はない。しかしその最中、一条は疑念を抱く。
 それは、レンゲルに変身するための道具と思われるあのバックルが、無かった事だ。そして、あのカードも一枚たりとも見つからない。
 周りを見渡すが、全く見あたらなかった。

「あの、どうかしたのですか?」
「いや……あれが見あたらないんだ、あの『仮面ライダー』に変身するために使ったと思われる道具が」
「えっ……? あっ、本当だ」

 京介も辺りを探すが、見つからない。もしも破壊されているのならばいいが、あれが誰かの手に渡ったりなどしたら危険だ。
 だが、ここであまり探してばかりもいられない。この二人がもしも自分達に協力してくれるのであれば、このままにしてはいけなかった。
 何よりも、京介の疲れも癒す必要がある。

「……いや、今はこの二人を優先しよう。何とかして、事情を聞かなければならないからな」
「そうですね……」

 そして一条は、名前も知らぬ青年を背負って歩き出した。彼の後ろを付いていくように、京介も歩く。
 彼はまだ知らなかった。ここで見つけた二人が、ある意味では自分と深い関わりを持つ事を。
 一人は小沢澄子。未確認生命体が撲滅されてから、未来の世界より連れて来られた警察官の一人。
 もう一人は小野寺ユウスケ。一条がもっとも信頼を寄せる男と、同じ名前を持つ男。
 そんな彼らが一条の存在を気付いたら、どうなるのか。まだ誰にも分からなかった。

【1日目 夜中】
【D-2 市街地】

【共通事項】
※D-1エリアの病院に向かい、小沢とユウスケから話を聞こうとしています。
※D-2エリア 市街地にZECTの装甲車@仮面ライダーカブトが放置されています。


【一条薫@仮面ライダークウガ】
【時間軸】第46話 未確認生命体第46号(ゴ・ガドル・バ)撃破後
【状態】疲労(中)、ダメージ(中)、罪悪感、仮面ライダーアクセルに2時間変身不可
【装備】AK-47 カラシニコフ(対オルフェノク用スパイラル弾入り、残り15発)@仮面ライダー555、 アクセルドライバー&アクセルメモリ@仮面ライダーW
【道具】支給品一式×3、名護のボタンコレクション@仮面ライダーキバ、車の鍵@???、照井の不明支給品、アタックライドカードセット@仮面ライダーディケイド、ガイアメモリ(スカル)@仮面ライダーW、
 おやっさんの4号スクラップ@仮面ライダークウガ 、ユウスケの不明支給品×2(確認済み)
【思考・状況】
1:桐谷と共に、D-1エリアの病院に向かう。
2:鍵に合う車を探す。
3:照井の出来なかった事をやり遂げるため『仮面ライダー』として戦う。
4:一般人は他世界の人間であっても危害は加えない。
5:五代、桐谷や照井の知り合いと合流したい。
6:未確認への対抗が世界を破壊に導いてしまった……?
7:照井と同じ世界に生きる者に、照井の死を伝える。
8:この二人(小沢、ユウスケ)は一体……?
【備考】
※ 『仮面ライダー』はグロンギのような存在のことだと誤認しています。
※ 『オルフェノク』は『ある世界の仮面ライダー≒グロンギのような存在』だと思っています。
※ 対オルフェノク用のスパイラル弾はオルフェノクにほぼ効きませんが、有効なものであると勘違いしいています。
※ 『仮面ライダー』の定義が世界ごとによって異なると、推測しています。
※ 麗奈の事を未確認、あるいは異世界の怪人だと推測しています。



【桐矢京介@仮面ライダー響鬼】
【時間軸】最終回後
【状態】疲労(中)、ダメージ(中)、京介変身体に2時間変身不可、罪悪感
【装備】変身音叉@仮面ライダー響鬼、コルト・パイソン+神経断裂弾(弾数0)@仮面ライダークウガ、アビスのデッキ@仮面ライダーディケイド、トリガーメモリ@仮面ライダーW、ガルルセイバー(胸像モード)@仮面ライダーキバ
【道具】支給品一式×5、不明支給品×0~1、着替えの服(3着分)@現実
    ゴオマの不明支給品0~1、三原の不明支給品(0~1)
【思考・状況】
1:人を守る。
2:化け物(イマジン)が気になる。
3:一条と共にD-1エリアの病院に向かう。
4:響鬼達との合流を目指す。
5:照井を見捨ててしまった事に罪悪感。
6:麗奈が化け物だった事に愕然。
【備考】
※名簿に書かれた『財津原蔵王丸』の事を、同名の他人だと思っています。
※ 『仮面ライダー』の定義が世界ごとによって異なると、推測しています。


【小野寺ユウスケ@仮面ライダーディケイド】
【時間軸】第30話 ライダー大戦の世界
【状態】疲労(大)、ダメージ(大)、気絶中、ダグバへの激しい怒りと憎しみ、仮面ライダークウガに2時間変身不可
【装備】アマダム@仮面ライダーディケイド
【道具】無し
【思考・状況】
0:…………(気絶中)
1:ダグバを倒す。誰も巻き込まない様にする為1人で行動する。
2:もしもの時は士に自分を殺して貰う。
3:海堂直也は、現状では信じている。
4:殺し合いには絶対に乗らない
5:もう1人のクウガか…………
【備考】
※デイバッグの中身は確認しました。
※『Wの世界』の人間が首輪の解除方法を知っているかもしれないと勘違いしています。
※ガイアメモリが全員に支給されていると勘違いしています。
※おやっさんの4号スクラップは、未確認生命体第41号を倒したときの記事が入っていますが、他にも何かあるかもしれません(具体的には、後続の書き手さんにお任せします)
※カードセットの中身はカメンライド ライオトルーパー、アタックライド インビジブル、イリュージョン、ギガントです
※ライオトルーパーとイリュージョンはディエンド用です。
※インビジブルとギガントはディケイド用のカードですが激情態にならなければ使用できません。
※アルティメットフォームに変身出来るようになりました


【小沢澄子@仮面ライダーアギト】
【時間軸】本編終盤(第46話終了後以降)
【状態】健康、疲労(中)、不快感、気絶中、仮面ライダーレンゲルに2時間変身不可
【装備】無し
【道具】無し
【思考・状況】
1:…………(気絶中)
【備考】
※真司の支給品のトランプを使うライダーが居る事に気付きました。
※龍騎の世界について大まかに把握しました。
※スパイダーアンデッドの精神支配から開放されました。





 レンゲルバックルは、宙を飛んでいる。先程戦った仮面ライダー達から逃れるように。
 かつて上城睦月がスパイダーアンデッドの脅威から逃れようと、レンゲルバックルを捨てた事が何度もあった。
 しかしその度に、レンゲルバックルは彼の手元に戻っている。しかし今回はこれまでとは違い、人間達から逃げるために飛んだ。
 理由は、あの女を操って先程襲った二人を仕留めようとした瞬間、妙な赤いライダーが現れた故。しかもその戦闘力は高く、上級アンデッド達をいとも簡単に蹴散らした。
 これでは、あそこに留まっていても破壊されてしまう可能性があり、小沢の身体を捨てて逃亡を選ぶ。別に替え玉などいくらでもいるからだ。
 そう思いながら、スパイダーアンデッドはレンゲルバックルを動かして逃亡を続ける。
 その行く先は、闇で覆われていた。


【全体事項】
※レンゲルバックルは移動を開始しました(何処に向かうのかは、後続の書き手さんにお任せします)


074:第一回放送 投下順 076:橋上の戦い
098:新たなる思い 時系列順 083:会食参加希望者達(前編)
053:強魔(後編) 一条薫 093:君はあの人に似ている (前篇)
053:強魔(後編) 桐矢京介 093:君はあの人に似ている (前篇)
064:いつも心に太陽を(後編) 小沢澄子 093:君はあの人に似ている (前篇)
064:いつも心に太陽を(後編) 小野寺ユウスケ 093:君はあの人に似ている (前篇)