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Tを継いで♭再戦(後篇) ◆/kFsAq0Yi2







 ダグバと別れた後、彼がその力を揮った戦いの跡地へと、ガドルは向かっていた。
 理由は、あれだけの惨禍を見せつけられれば、強者との戦いを望む参加者が集まって来るだろうと考えられたため。
 そして何より、リントを護る仮面ライダーが、あの災厄を放置しておくとは考え難かったからだ。
 その読みは正しく、聞き覚えのある大声のした方へ向ったガドルは、三人の参加者を見つけた。
 彼らは全員、一度ガドルが出会ったことがあり――その内の二人は、弱いが、仮面ライダーだとガドルが認めた男達だった。

「――こんなところで会うとはな」

 黒いタートルネックの男――確か、あの蛇の男、ガドルに勝利した仮面ライダーこと海堂直也が、名護と呼んでいたリント――が、そう仮面ライダーに変身するための道具を片手に一歩、前へ出る。
 後ろに居るのは、生身のまま拳を構えた帽子の男。日中に出会った、技は未熟で力もまるで弱い――だがその気骨だけは認めざるを得ない、仮面ライダーの一人。
 それと一時行動を共にしたタツロットや、仮面ライダーの力を装着者に与える顔だけの白い蝙蝠――そして仮面ライダーの力を持ちながら、その名に相応しくない精神をした、怯えた表情の癖毛のリントが一匹ずつ、さらにその背後に並ぶ。

「直也くんの仇、討たせて貰うぞ……その命、神に返しなさい」

 そう有無を言わせぬ気迫を持って、名護が籠手のような変身アイテムを構える。
 この三人の中でも、あの海堂直也と語り合ったことからも特に仮面ライダーとして正義の誇りを持った戦士であることは明白。前の戦いでは不発させたが、さらに力を隠し持っていると思われる、仮面ライダーに変身する男。この三人の中では、名護が最大の獲物だろうとガドルは結論付ける。

「――待て」

 名護が宣戦布告し、そのまま変身しようとしたところで――ガドルは制止を口にした。

「――待て、だと? 殺し合いに乗った悪が、どの口でそんなことを!」
「――無論、貴様らと戦い、殺すことが俺の本望だ」

 そう殺気を解放するだけで、後ろの帽子の男の身が強張り、仮面ライダーモドキが恐怖のままに一歩下がる。名護さえも、わずかにその表情を厳しい物にする。

「だが、ここでそこの二人を巻き込む恐れを抱きながら、戦うことは貴様らも本意ではあるまい。場所を変えろ――断ってくれても、俺は別に構わんがな」

 そうガドルが示すのは、二つの死体。
 一人は全身に創傷を刻み、苦悶や後悔に塗れながらも、どこか満足した顔で事切れた男。その命が尽きる寸前に何かを成し遂げたような――恐らくは完全に脅威を駆逐するには至らなかったが、無力なリントを護り抜くことに成功した仮面ライダーの顔だと、ガドルは結論付けた。
 もう一人は、全身が完全に炭化した真っ黒な焼死体。ダグバの持つ、超自然発火の力によって命を奪われたことは明白だが――彼が抵抗もせずただ狩られるのを待つだけの存在だったわけではなく、最期の瞬間までダグバに挑んでいた勇敢な戦士であるということは、その周辺に散らばった機械の残骸で判断できた。

 そうして散った戦士達に敬意を払い、ガドルはできれば、彼らの眠りを妨げたくはなかった。
 それは仮面ライダー達も同じであり、彼らは殺戮を好むグロンギであるガドル以上にそのことを気にして、下手をすれば全力を出せない可能性があった――それはガドルの望むところではない。

 それ故のガドルの提案だったが、果たして仮面ライダー達はそれを受け入れるかは、また別問題だ。拒まれれば、絶息した戦士達には無礼を働くことになろうと、この場で戦い三人を殺すのみ。
 そう考えるガドルに対し、険しい視線は緩めぬまま、名護はゆっくりと構えを解いた。

「まさか、貴様に死者を悼む気持ちがあったとはな……」
「――貴様らの言う感情と同じかなどわからんが、俺は相手に応じた振る舞いをするだけだ」
「……良いだろう。場所を、変えよう」

 名護はそう頷き、ガドルは付いて来いと、さらに西側、まだ無事な市街地の方を三人に示す。

「――なぁ、マッチョメンよ」

 カブトエクステンダーを走り出させようとしたガドルに、帽子の男がそう声を掛けて来る。

「あんたも、こいつらに気を遣ってくれたってんなら……そんな悪い奴じゃないはずだ。どうしてこんな、殺し合いなんかに乗っちまったんだよ。そんな方法で、本当に世界を護れるなんて思っているのか?」
「――世界など、俺には興味はない」

 何を勘違いしているのか、そう訴えかけて来た翔太郎の声を一蹴して、ガドルは彼の方へと視線を動かす。

「俺の目的は、この地に集められた全ての強者と戦い、殺すことだ。――ただ強き者には、相応の振舞いをする、それだけだと言ったはずだ」
「何言ってんだよ、あんた……」
「やめなさい、翔太郎くん。その男は人間ではなく、未確認生命体――無辜の人々を傷つけ、その笑顔と命を奪う悪魔だ。外見に騙されるな」

 名護の言葉は正しい。ガドルはグロンギであり、リントなどはただのゲゲルの標的に過ぎない。リントを殺すことを文化として、そして本能として掲げるグロンギにとって、他者の命などゲゲルのスコア以上の価値など持ち得ることはない。リントを狩り、ゲゲルを達成すること以外、ガドルには何の関心もない。負ければ世界が滅びると言われても、何も感じなかった。
 それでもグロンギ最強の戦士として、ガドルの欲にあったのは強き戦士との闘争だった。そして、ガドルにとって敬意を持つべきは同胞ですらなく、殺す価値があると感じられる強き戦士だった。

 故に、戦士達の亡骸は安置したに過ぎず。ガドルはカブトエクステンダーのアクセルを回す。

「――15分待つ。それまでに来なければ逃げたとみなし、他のリントともども殺す」
「リント……って、あの白い野郎が言っていた……」
「待っているぞ、仮面ライダー達よ」

 それだけを言い残し、ガドルはカブトエクステンダーで移動を再開した。
 目指すはE-1エリア市街地。それだけ距離を取れば、仮面ライダーも本気を出せるだろう。

 必ず追って来るという確信が、ガドルにはあった。またリントを今襲っているわけでもない以上、背後から仕掛けるような輩でもない――もしその程度の相手なら、死角からの奇襲だろうと十分に対応して見せるとガドルは自負していた。

 故に悠々と敵に背を向け、ガドルはその場から目的地へと移動を始めた。瓦礫が散逸した路上ではバイクの操縦は困難なものだが、既に二時間駆り続けた鉄馬はガドルの一部に等しかった。

(――見極めさせて貰うぞ、仮面ライダー)

 あの時、まったくガドルの敵にはなり得なかった、二人の仮面ライダー。
 だが、最初に戦った時は、あの海堂直也もガドルの敵足り得なかった。そんな彼を変えたのは、正義に殉じるという彼の覚悟とその信念。
 それを胸にすれば、どの仮面ライダーもガドルを脅かすほどの強者足り得るのか。それをガドルは確かめたかった。

(貴様らの掲げる、正義とやらの力を)

 宿敵への期待を胸に、破壊のカリスマは生温い夜風を切って走って行った。






「――急ごうか。あの方向、恐らくE-1エリアの市街地の方を目指している。15分ではギリギリと言ったところだ」

 そう名護が去って行くバイクを見据えて言うと、総司という男が彼を掴んだ。

「何言ってるの!? ついさっき、三人掛かりでもまったく歯が立たなかったじゃないか! 今度こそ殺されちゃうよ!」

 そう、必死に名護を呼び止めようとする総司を見て、翔太郎はようやく彼に共感できるところを見つけられた。

「……それでもだ。奴を放置していては、他の者達が危険だ。俺は仮面ライダーとして、奴を倒す義務がある」
「――俺も行かせて貰うぜ」

 そこで翔太郎は名乗りを上げた。

「――俺は半人前かもしれねえが、何もせずに見ているだけなんてできねえ。半人前でも、たった一人よりは一人半の方がまだマシなはずだ」
「そうか……翔太郎くん、その心構えさえできれば、君はもう立派に一人前だ。胸を張りなさい」

 そう名護は言ってくれるが、翔太郎は首を振るしかできない。

「ありがとな、名護さん。……だけどそう言って貰ったところで、俺はまだ口先だけだ。まだ何も成し遂げちゃいねえ以上、半人前でしかねえよ」

 確かに翔太郎は、風都を護り続けて来た。
 だがそれは翔太郎個人の力ではなく――鳴海亜希子や照井竜、刃野刑事達警察やウォッチャマン達情報屋、何より相棒のフィリップといった風都の皆と力を合わせて来たことが大きい。

 故におやっさんこと鳴海壮吉とは違い、翔太郎は一人ではまだ何もできないひよっこだ。名護がその心意気を認めてくれたところで、事実この殺し合いで犠牲者ばかり出している以上、翔太郎は自分の不甲斐なさを許すことはできない。

「……それでもあのマッチョメンは、木場さんやあんた達の仲間だった海堂の仇なんだろ。俺の前で堂々と殺人予告までして行きやがったんだ、何もせず見ているだけなんて俺にはできねえ」
「ああ。心強いよ、翔太郎くん。……総司くん!」

 翔太郎に頷いた名護はさらにそこで、ずっと情緒不安定気味な総司の方を振り返る。

「……事実として、奴は強敵だ。俺が出会って来た全ての悪の中でも、おそらくは最も手強い敵の一人だろう。必ず勝てるという確証はない……だから君は、無理に付いて来なくても良い」
「え……?」
「おい、名護さん。まさかあんた、死ぬ気じゃないんだろうな?」

 黙って見ていられず、翔太郎はそう口を挟んだが、それは要らぬ心配だったようで。

「馬鹿なことを言うのはやめなさい、翔太郎くん……俺は世界の希望。輝く太陽のように、決して消えることはない!」

 いちいち大仰な人だなと、翔太郎は少し呆れたりもしたが。

「勝てる保証がなくとも、世界のために、必ず悪に勝つ! ――それが俺達、仮面ライダーだろう?」

 続いた言葉には、翔太郎も力強く、心から頷いた。

「……太陽は。天道は、消えちゃったじゃないか……っ!」

 そんな二人に届いたのは、総司の悲痛な声。彼は必死の形相で、名護に詰め寄っていた。

「あいつはバケモノなんだ、僕達じゃ……海堂みたいに殺されちゃう! どうして逃げられるのに、どうして自分から戦いに行くなんて言うのっ!?」
「おい――総司だったか、おまえ。ずっと名護さんは、おまえに言ってるじゃねえか」

 名護が死地に飛び込むのが耐えられない様子の青年に、翔太郎は帽子を深く被り直しながら言う。

「俺達は、仮面ライダーだ……ってな」
「――だから!? どうして君達仮面ライダーは――!」
「――それは俺達が風都を……いや、人間を、愛しているからだ」

 普段なら、ハードボイルドを心掛ける翔太郎が決して口にしないような、愛と言う単語――
 それでも目の前のこの青年には、敢えてこの、自身の根源たる想いを言い聞かせる必要があると、翔太郎は思っていた。

「人間を、愛……!?」

 意味がわからないという様子で、総司は首を振る。

「言っておくが、人間じゃなくても――木場さんや、海堂みたいな。人間らしい心を持った者を、俺は愛している。だからその大切な人や街を泣かすような奴らを、俺は絶対に許せねえ。
 きっと名護さんも、紅も、照井も、木場さんも、海堂も――さっき言ってた天道も、皆同じだ」

 どこか引っ掛かりを覚えた翔太郎の言葉に、それでも名護が力強く頷いてくれたのがわかった。

「だって、そんな……ここに連れて来られた人達なんて、ほとんど住む世界も違う、見ず知らずの他人じゃないか! そんなのを、愛してるから戦うだなんて!」
「なあ、総司……さっき名護さんは、自分のことを太陽のように、って言ったよな」

 それと同じだと、翔太郎は彼に伝える。伝えなければならない。

「温かい太陽も、心地良い風も――邪魔する奴がいなけりゃ、誰にだって平等に降り注いで、どこにだって分け隔てなく吹くもんだ。俺達の――仮面ライダーの、誰かを想う気持ちだって同じだ。どこの誰だって、俺はその命を愛しいと思う」
「そうだ――顔も知らぬ人の奏でる音楽も、俺は尊いと思う。自分の命を懸けてでも、護る意義があるものだと、俺はそう信じる」

 名護が翔太郎の言葉を継ぎ、そうして総司に告げる。

「だから、総司くん……ここにいる沢山の人の、そして直也くんが、その命で君に遺した物を……その命の奏でる音楽を、どうか俺に護らせてくれ」

 わからないよと、総司は俯き、首を振る。
 だがその否定は、仮面ライダーの理念を否定するものではなく。そのために、仮面ライダーの命が喪われることを認めたくないためのものだと、翔太郎は感じていた。
 壮吉を亡くした、自分達のように……

(――名護さんにとっては、紅の奴がおやっさんだったんだな)

 つい先程、紅音也の遺体へ向けた名護の宣誓を、翔太郎は思い出す。
 見たところ、自分と壮吉の関係に比べれば――本来異なる時間に生きる者同士が、偶然邂逅しただけだったために、非常に短く、そしてまた対等に近い関係だったようだが。
 それでも名護啓介は、確かに紅音也の魂を受け継いだ。

(そして名護さんは、今――こいつのおやっさんになろうとしてるんだ)

 自分で自分の感情の整理もできていないような、一人の青年。だがその心は未だに幼く、理解の及ばぬあらゆる事象に混乱しているようであった。
 そんな彼の、道標になるために。
 名護啓介は、仮面ライダーとして戦っている。翔太郎には、彼らの関係はそう見受けられていた。

(だったら――総司には、俺と同じ想いは絶対にさせねえ……!)

 自分のせいで壮吉を死なせてしまったということを、翔太郎は決して忘れることはできない。
 今また、もし総司を残して名護が死んでしまうようなことになるなど――翔太郎は絶対に認めるわけにはいかない。
 必ず二人を護る。そして自分自身も、もちろん風都やこの会場にいるフィリップや亜樹子を護るために――絶対に生き残る。
 そう、全員揃って生き残ってみせると、翔太郎は強い決意を固めていた。

(そのために、照井、紅、木場さん……それから海堂に天道、そして霧彦……俺に力を貸してくれ)

 散って行った仲間達に、そう祈りを捧げる翔太郎の方を、名護が振り返った。

「――行こうか、翔太郎くん」

 その呼び掛けに、翔太郎は力強く頷く。

「あぁ。行こうぜ、名護さん。仮面ライダーとして!」
「――待って!」

 タツロット達に総司を任せ、ガドルとかいうマッチョメンのところに向かおうとしていた二人を呼び止めたのは、総司だった。

「置いて、行かないで……」
「総司くん……しかし、危険なんだ。戦う意志のない君を、連れてはいけない」
「だったら……だったら、僕も戦うから……!」

 縋るように、総司は名護に駆け寄って来る。

「お願いだから、名護さんまで……僕を置いて、遠くに行かないで……!」
「――良いぜ。付いて来いよ、総司」
「――翔太郎くん!」

 咎めるような名護の声に、翔太郎は首を振る。

「名護さん、こいつはきっと……あんたに死んで欲しくないんだ。あんたを護りたいんだよ。
 誰かを護るために戦う……それならこいつも、立派な仮面ライダーなんじゃねえのか?」
「しかし……」
「心配なのはわかるけどよ。それはあんただけじゃなくて、こいつも同じ気持ちなんだ。違うか?」

 翔太郎の言葉に、名護は暫し逡巡するように険しい表情で瞼を閉じたが、やがてそれが開かれる。

「――わかった。だが危なくなったら、直ぐに逃げなさい。それが条件だ」

 そうして総司の同行が許可され、三人並んで、ガドルの待つ場所へと向かう。

(――そういえば、さっき来たあのカブトムシ型のガジェット……)

 総司が追い返した赤いカブトムシメカを、翔太郎は不意に思い出す。
 カブトになれってことか、などと錯乱した総司が叫んでいたことも。

(――あれはつまり、ファングと同じで自律行動できる変身ツールってことか)

 そのカブトゼクターが抱えていたベルトと良く似たベルトを、翔太郎は持っている。

(あのベルトにも……対応した仮面ライダーになれるガジェットがいるかもしれないってことか)

 もしそうなら、叶うことなら力を貸して欲しい。

 この地では、同じ変身は10分程度しか続かないと言うことは知っている。それなら、変身手段は多いに越したことはない。

(聞こえてるわけねえが、いるなら頼む……仮面ライダーとして戦うための力を、俺にくれ……!)

 そう願いながら、翔太郎は夜の中を歩いた。



 彼は知らない。彼がようやくその存在に気付いた、彼を密かにずっと観察していたゼクターが、彼が河で流されてしまった際に、一度彼のことを見失っていることを。
 そしてそのホッパーゼクターが、ようやく翔太郎を見つけ、遥か後方から付いて来ているということを……

 そしてもう一つ、彼の切り札であるジョーカーのメモリ……それが彼にまた力を与えられるようになるまで、一時間以上の待機時間が必要なことを――左翔太郎はまだ、知らなかった。



 ……約束の時間は過ぎてしまったが、10数分歩いた彼らは、E-1エリアへと届いていた。
 あのマッチョメンが、恐ろしいほどの強敵だと言うことは理解している。日中の勝利がフロッグだということぐらい、翔太郎にもわかっている。だが、名護や総司と力を合わせて、三人で戦えばきっと勝てるはずだ。翔太郎は、目前に迫る戦いに向けてそう自分を鼓舞する。

(……待てよ)

 つい先程まで、デイパックに入ったベルトとまだ見ぬそれに対応したゼクターに思考を巡らせていた翔太郎は、そのきっかけとなったカブトゼクターとの一件の際に聞いた、そして総司を諭す際に呼んだ名前に覚えた違和感に気づいた。

(天道……確か紅の奴が口にしていた……いやそこじゃねえ。総司の奴が口にした、そして名簿にあった、天道のフルネーム……)

 探偵である以上、翔太郎の人物名を覚える能力は当然ながら常人よりも鍛えられている。
 たった一度流し読みした程度の名前でも、意識して聞いたわけでもない名前でも、彼の記憶の中には確かに刻まれていた。

(――天道、総司!?)

 いったい、どういうことなのだろうか。
 天道以外、名簿に総司という名前を持つ者などいなかったはずだ。
 それなら今、名護のすぐ横を不安げな表情で歩く、この癖毛の青年はいったい何者なのか……

「――なぁ、一つ良い……」
「――待っていたぞ」

 疑惑を晴らそうと、一際開けた道路に出た際に放った翔太郎の言葉を阻んだのは、進行方向から投げられた声。

 それは鍛えられた筋肉で軍服の布地を押し返す、屈強な大男――腰の後ろで両手を組んで現れたガドルが発したものだった。

「――あぁ、待たせてしまったようだな。その命を、神の下に返す時を」

 すっと表情を厳しくし、名護がガドルを睨み返す。

「貴様らには、まだ名乗っていなかったな――」

 そうガドルが取り出した物に覚えがあった翔太郎は、思わずそれに意識を奪われてしまう。

「あのメモリは――っ!」

 ――ARMS!――

 かつて自身を――否、ダブルを追い詰めたガイアメモリを前にした翔太郎の叫びを無視し、ガドルはそのスイッチを押す。

「俺は破壊のカリスマ、ゴ・ガドル・バ――」

 名乗りの途中で、ガドルはガイアメモリを首輪へと挿し込んだ。
 メモリは首輪へと取り込まれ、メキメキと音を立てて、ガドルの身体が変化して行く。

「――リントの守護者、仮面ライダーよ。貴様らの敵だ」

 そうして顕現したのは、赤黒い肌を銀の装甲で覆った怪人――アームズ・ドーパント。
 かつて翔太郎が戦った、ツインローズの片割れ・倉田剣児が狂気と共に変貌したものとは違う――左半身に醜い傷を晒しながらも、メモリに呑まれることなく兵器の記憶を己が力の一部として取り込んだ、一切の隙のない完璧な兵(つわもの)がそこにいた。

 過去にブレイクしたテラーメモリすら、この殺し合いのために支給されていたのだ。今更量産されているだろう一般メモリのドーパントを見た程度なら、翔太郎の驚きも大したものではない。むしろ風都の仮面ライダーとして、ドーパント事件解決に臨む意欲が湧くというものだ。
 だが目の前に現れたこのドーパントから感じる圧力は、自身の記憶にある物とはまるで違う――放射されている純粋な闘気に、一瞬だけ翔太郎は呑まれてしまっていた。

「――変身」

 ――HEN-SHIN――

 ガドルの変身したアームズ・ドーパントの気迫にリアクションの遅れた翔太郎の横で、飛来したダークカブトゼクターをベルトに合体させた総司の身体がずんぐりとした銀の装甲で覆われて行く。一瞬の内に、痩身の青年は金の単眼を持つ重厚感溢れる戦士へとその姿を変えた。

「――魑魅魍魎跋扈するこの地獄変……名護啓介がここにいる!」

 そしてアームズ・ドーパントの気迫にも揺るがない――正義の魂を燃やす男が一歩、前へ出る。

 背中からシールドソードを抜き放ったアームズ・ドーパントに対峙する名護がイクサナックルを左手と打ち合わせ、右手を地に平行に鋭く伸ばす。

 ――READY――

「――イクサ、爆現!」

 ――FIST ON――

 顔の前で一度腕を曲げ、そうして腰に落としたイクサナックルをベルトに装着させ、名護の身体が――彼の師、紅音也が変身していた物と同じ、純白の仮面ライダーイクサへと変わる。

 その十字架のような黄金の仮面が割れ、紅い瞳が顕となると――その口から、携帯電話型ツールが吐き出される。手に取ったイクサが1,9,3のボタンを押し込むと、また電子音が流れる。

 ――ラ・イ・ジ・ン・グ――

 アームズ・ドーパントが左腕を変化させた機銃を向けようとするのを、イクサと総司の変身した仮面ライダーのそれぞれが手にした銃で射撃し、妨害することに成功する。

 その隙に、けたたましい警報音を鳴らす、青と白の携帯電話――その最後のボタンを、イクサが押し込んだ。

 途端、イクサの装甲の一部が吹き飛んで、その下の青い内部構造が剥き出しになる。
 仮面もその形状を変え、まるで鎧武者の兜のような姿へと変化した。

 それはかつて紅音也が変身していた物とは違う、未来でこそ到達し得た、IXAの究極形――

「キャストオフ」

 ――CAST OFF――

 青き戦士の雄姿が顕現すると同時、総司の変身した仮面ライダーも、その鈍重そうな装甲を排除する。

 ――CHANGE BEETLE――

 現れたのは、黒く煌めく装甲に赤い紋様を刻んだ、カブトムシを思わせる仮面のスマートな戦士。角によって双眼となった金の視線で赤い怪人を睨む彼に習い、悪を前に恐縮したことを恥じながら――何も知らずに翔太郎は、自身の切り札であるガイアメモリのスイッチを押した。

 ――JOKER!――

「――変身!!」

 ガイアウィスパーに重ねたその叫びが、開戦の合図となった。



【1日目 夜中】
【E-1 市街地】


【左翔太郎@仮面ライダーW】
【時間軸】本編終了後
【状態】ダメージ(大)、疲労(大)、とても強い決意、強い悲しみと罪悪感、仮面ライダージョーカーに1時間15分変身不可
【装備】ロストドライバー&ジョーカーメモリ@仮面ライダーW
【道具】支給品一式×2(翔太郎、木場)、トライアルメモリ@仮面ライダーW、木場の不明支給品(0~2) 、ゼクトバックル(パンチホッパー)@仮面ライダーカブト、首輪(木場)
【思考・状況】
1:名護や総司(擬態天道)と協力して、ガドルを倒す。今度こそ二人を絶対護る。
2:仮面ライダーとして、世界の破壊を止める。
3:出来れば相川始と協力したい。
4:カリス(名前を知らない)、浅倉(名前を知らない)、ダグバ(名前を知らない)を絶対に倒す。
5:フィリップ達と合流し、木場のような仲間を集める。
6:『ファイズの世界』の住民に、木場の死を伝える。(ただし、村上は警戒)
7:ミュージアムの幹部達を警戒。
8:もしも始が殺し合いに乗っているのなら、全力で止める。
9:もし、照井からアクセルを受け継いだ者がいるなら、特訓してトライアルのマキシマムを使えるようにさせる。
10:総司(擬態天道)と天道の関係が少しだけ気がかり。
【備考】
※木場のいた世界の仮面ライダー(ファイズ)は悪だと認識しています。
※555の世界について、木場の主観による詳細を知りました。
※オルフェノクはドーパントに近いものだと思っています(人類が直接変貌したものだと思っていない)。
※ミュージアムの幹部達は、ネクロオーバーとなって蘇ったと推測しています。
※また、大ショッカーと財団Xに何らかの繋がりがあると考えています。
※ホッパーゼクターにはまだ認められていません(なおホッパーゼクターは、おそらくダグバ戦を見てはいません)。
※東京タワーから発せられた、亜樹子の放送を聞きました。
※自身の変身が制限されていることをまだ知りません。


【名護啓介@仮面ライダーキバ】
【時間軸】本編終了後
【状態】疲労(小)、ザンバットソードによる精神支配(小)、仮面ライダーライジングイクサに変身中
【装備】イクサナックル(ver.XI)@仮面ライダーキバ、ガイアメモリ(スイーツ)@仮面ライダーW、 ザンバットソード(ザンバットバット付属)@仮面ライダーキバ、魔皇龍タツロット@仮面ライダーキバ
【道具】支給品一式
【思考・状況】
基本行動方針:悪魔の集団 大ショッカー……その命、神に返しなさい!
0:総司君(擬態天道)を導く。
1:総司君や翔太郎君と共にガドルを絶対に倒す。海堂の仇を討つ。
2:直也君の正義は絶対に忘れてはならない。
3:総司君と共に、津上翔一、城戸真司、小沢澄子を見つけ出し、伝言を伝える。
4:総司君のコーチになる。
5:首輪を解除するため、『ガイアメモリのある世界』の人間と接触する。
6:後で総司君を天道君に謝らせる。
【備考】
※時間軸的にもライジングイクサに変身できますが、変身中は消費時間が倍になります。
※『Wの世界』の人間が首輪の解除方法を知っているかもしれないと勘違いしています。
※海堂直也の犠牲に、深い罪悪感を覚えると同時に、海堂の強い正義感に複雑な感情を抱いています。
※タツロットはザンバットソードを収納しています。
※剣崎一真を殺したのは擬態天道だと知りました。
※天道総司の死に気づきました。
※左翔太郎の制限に気づいていません。
※天道総司から制限について詳細を聞いているかは後続の書き手さんにお任せします。


【擬態天道総司(ダークカブト)@仮面ライダーカブト】
【時間軸】第47話 カブトとの戦闘前(三島に自分の真実を聞いてはいません)
【状態】疲労(小)、ダメージ(小)、全身打撲(ある程度回復)、極度の情緒不安定気味 、仮面ライダーダークカブトに変身中
【装備】ライダーベルト(ダークカブト)+ダークカブトゼクター@仮面ライダーカブト、レイキバット@劇場版 仮面ライダーキバ 魔界城の王
【道具】支給品一式×2、ネガタロスの不明支給品×1(変身道具ではない)、デンオウベルト+ライダーパス@仮面ライダー電王、753Tシャツセット@仮面ライダーキバ
【思考・状況】
基本行動方針:今は名護達に付いて行く。
0:ガドルを何とかする。名護達に置いて行かれたくない。
1:「仮面ライダー」という存在に対して極度の混乱。
2:ガドルへの恐怖。
3:名護に対する自身の執着への疑問。
4:海堂の死への戸惑い。
5:天道の死に対する複雑な感情。
【備考】
※名簿には本名が載っていますが、彼自身は天道総司を名乗るつもりです。
※参戦時期ではまだ自分がワームだと認識していませんが、名簿の名前を見て『自分がワームにされた人間』だったことを思い出しました。詳しい過去は覚えていません。
※海堂直也の犠牲と、自分を救った名護の不可解な行動に対して複雑な感情を抱いています。
※仮面ライダーという存在に対して、複雑な感情を抱いています。
※天道総司の死に気づきました。またそのことに複雑な感情を抱いています。
※左翔太郎の態度から、彼が制限のことを知っていると勘違いしています。


【ゴ・ガドル・バ@仮面ライダークウガ】
【時間軸】第45話 クウガに勝利後
【状態】疲労(中)、ダメージ(大)、左腕及び左上半身に酷い裂傷(ドーパント及びに怪人態でも現れます)、アームズ・ドーパントに変身中
【装備】ガイアメモリ(アームズ)@仮面ライダーW 、カブトエクステンダー@仮面ライダーカブト
【道具】支給品一式、ガイアメモリ(メタル)@仮面ライダーW
【思考・状況】
基本行動方針:ゲゲルを続行し、最終的にはダグバを倒す。
0:イクサ、ダークカブト、翔太郎を殺す。
1:強い「仮面ライダー」及びリントに興味。
2:タツロットの言っていた紅渡、紅音也、名護啓介に興味。
3:蛇の男は、真の仮面ライダー。彼のような男に勝たねばならない。
4:仮面ライダーの「正義」という戦士の心に敬意を払う。
5:ゲゲルが完了したらキング(@仮面ライダー剣)を制裁する。
【備考】
※変身制限がだいたい10分であると気付きました。
※『キバの世界』の情報を、大まかに把握しました。
※ガドルとタツロットは互いに情報交換しました。
※海堂直也のような男を真の仮面ライダーなのだと認識しました。
※参加者が別の時間軸から連れて来られている可能性に気づきました。
※擬態天道(ダークカブト)を仮面ライダーだとは認めていません。




096:Tを継いで♭再戦(前篇) 投下順 097:眠りが覚めて
096:Tを継いで♭再戦(前篇) 時系列順 097:眠りが覚めて
096:Tを継いで♭再戦(前篇)] ゴ・ガドル・バ 102:G線上のアリア/ファイト・フォー・ジャスティス
096:Tを継いで♭再戦(前篇) 擬態天道
096:Tを継いで♭再戦(前篇) 名護啓介
096:Tを継いで♭再戦(前篇) 左翔太郎