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G線上のアリア/チェンジ・アワー・フェイト ◆MiRaiTlHUI




「クソッ……俺にはどうする事も出来ねえのかよ!?」

 そう言って銀のベルトに拳を叩き付ける翔太郎であったが、そんな事で状況が変わる事がないという事くらいは、翔太郎自身が一番理解している。
 状況は絶望的だ。アームズ・ドーパントとの激戦を制した名護啓介は、最早戦える身体ではない。全身は傷だらけだし、蓄積された疲労の度合いは、まさしく満身創痍と言えるレベルなのだろう。
 そんな名護にこれ以上無理をさせる訳にもいかない。となれば、今総司を救う事が出来るのは自分しか居ないと云うのに、その自分は変身制限によって変身すらままならないという体たらく。今こうしている間にも総司が変身したダークカブトは、ガドルにボロボロに傷め付けられているというのに……。
 もう我慢ならぬと、生身で飛び出して行こうと立ち上がる翔太郎だが、そんな翔太郎の肩を強く掴み引き止めたのは、案の定名護啓介だった。

「落ち着きなさい、翔太郎君」
「止めてくれるな名護さん、俺はこれ以上黙って見てるなんて出来ねえんだよ」
「変身も出来ない今の君では、むざむざ殺されに行くようなものだぞ」
「じゃあ総司の奴を見捨てろっていうのかよ! あんたの弟子なんじゃなかったのか!?」
「俺だって辛い! だが……どうしようもないんだ……!」

 目を硬く閉じて、名護はらしくもなく苦悶に歪んだ声を漏らした。
 名護自身も翔太郎と同じように、助けに行きたくても行けないこの現状に苦しんでいるのだろう。
 それが分かるからこそ、翔太郎はこれ以上名護を責めるような事は言えなかった。

「……せめてこのベルトが使えりゃあ」

 ぽつりとぼやいて、街灯に照らされ鈍く煌めくゼクトバックルを一瞥する。
 自分にも戦う力さえあれば、今すぐにでも総司に加勢したいというのに……それなのに、このベルトに対応するガジェットは一向に姿を現そうとはしてくれない。
 翔太郎は知らぬ事だが、このゼクトバックルに対応するガジェット――即ちホッパーゼクターとは、絶望を糧に動く自律行動ユニットだ。どんな時でも僅かな希望を信じて戦う翔太郎をホッパーゼクターが認めてくれないのは、当然の事だった。

「無い物ねだりをした所で仕方ない……他に方法があれば……」

 そう言った所で、名護がふと、何かに気付いたように自分のデイバッグを漁り始めた。
 中から取り出したのは、翔太郎が良く知る長方形の箱――ガイアメモリだ。赤い色をしたそのメモリには、アルファベットの「S」をイメージさせる形状のケーキが描かれていた。

「スイーツメモリ……!? そんなもんまで支給されてるのかよ……」
「ああ、これは俺の支給品の一つだ。本当はこんな怪しげな物は使いたくなかったが、これしかないのなら……」

 翔太郎は、それを自分に託そうとしているのかと思った。
 だが、名護が翔太郎にメモリを渡してくれる気配は無く――それどころか、名護はメモリを握り締め、ふらつきながらも立ち上がったのだ。

「……名護さんっ!? やめとけ、そんな身体じゃ無理だ!」
「無理でもやるんだ。総司くんを見捨てる事は出来ない」
「やめろって!」

 そう言って掲げたスイーツメモリを、翔太郎は強引に奪いとり、地に叩き付けた。
 そもそもの話、名護は知らないのだろうが、ドライバー無しで使用されたガイアメモリは、使用者(ユーザー)の精神を蝕んでゆく。
 それを誰よりもよく知っている翔太郎だからこそ、風都を守る仮面ライダーである翔太郎だからこそ、同じ仮面ライダーの名護にそんな危険なものを使って欲しくはなかった。
 大体にして、エクストリームどころかファングですらない通常形態の仮面ライダーWに破れ去ったスイーツメモリが、この状況で役に立つとも思えない。

「……いや、待てよ」

 そこで翔太郎は気付いた。
 翔太郎は現在制限によってジョーカーに変身する事は出来ないし、名護はもうイクサには変身出来ない。だが、だからといってスイーツメモリを使われるのも、自分が使うのにも、抵抗がある。
 だけれども、翔太郎が一度たりとも変身した事のないシステムならば……そう、イクサならば、話は違うのではないか。
 そう思い、名護の腰に未だ巻かれたままになっているベルトに視線を向ける。

「……名護さん、あんたのイクサ、俺に貸してくれないか!」
「何……俺のイクサを?」
「ああ、そんな下らないメモリなんかよりも、そっちの方がよっぽど信頼出来るぜ」

 俯いた名護は僅かに逡巡するが、すぐに翔太郎の意図を理解したのだろう。「そうか」と小さく呟くと、すぐに腰に巻かれたベルトを外した。
 ベルトと、それに装着するグリップ――イクサナックルを翔太郎へと差し出した名護は、警告するように言う。

「いいか、翔太郎君。このイクサは、絶える事無く未来の戦士へと受け継がれ続けてゆく、正義のライダーシステムだ。
 誰にでも装着出来るように設計されたこのイクサなら、確かに君にも使いこなせるだろう。だが……決して命を賭けるような無理だけはしないと約束してくれるか」
「おいおい、何言ってんだ名護さん。そんな事、一番無理して戦ったあんたが言ったって説得力ないぜ」
「それは……」

 何事かを告げようとした名護の口元に、人差し指を立ててそれを制し、

「俺だってあんたと同じ正義の仮面ライダーだ。野暮な事は言いっこなしにしようぜ、名護さん?」

 左手で軽くハットの角度を調節しながら、敢えてキザったらしい台詞を言って見せる翔太郎だった。
 先程のアームズ・ドーパントの戦いで、名護啓介は無茶とも思える戦法で見事勝利をもぎ取ったのだ。無理はしないで、なんて甘い事を言いながら勝てる相手ではないという事くらいは、翔太郎にだってわかる。
 名護はその双眸を厳めしく吊り上げ、翔太郎の眼をじっと見据えるが……やがて折れたように、ふっと笑みを浮かべた。

「……ああ、そうだな、君の言う通りだ。敵(ガドル)は、無理をせずに正義を貫かせてくれるような相手ではなかったな」
「その通りだぜ名護さん。無理せずなんて甘い事は言ってられねえ……けどな、代わりといっちゃあ何だが、一つだけ約束するよ」
「ふむ、何だ。言ってみなさい」

 訝しげに問う名護を後目に、翔太郎はイクサベルトを装着しながら告げた。

「名護さんだって、紅の奴だって、無理を通して道理を蹴飛ばしたんだ。なら俺だってやらなきゃ仮面ライダーの名がすたるってもんだろ?
 俺は勝つぜ、絶対にな。必ず勝つって約束する。だから名護さんは、俺を……いや、俺達仮面ライダーを信じて、ここで待っててくれ」

 翔太郎だけではない。俺達で、だ。
 名護の想いを胸に、総司と二人で、力を合わせて必ず強敵を討つ。それが翔太郎からの約束だった。

「……いいだろう。君も戦士なら……仮面ライダーなら、約束は必ず守りなさい」

 二人の間に、最早それ以上の会話は必要なかった。
 今翔太郎が手にして居るこのバックルは、あの紅音也が使っていたものと同じイクサナックルだ。
 紅とイクサが命を賭けてまで救ってくれたこの命、決して無駄に散らせはしない。遥かな時を越えて、紅から受け継がれたイクサナックルを掌に打ち付け、翔太郎は叫んだ。

 ――レ・デ・ィ――

「変身ッ!!!」

 刹那、ベルトから飛び出した金の十字架は瞬時にイクサのパワードスーツを形成し、翔太郎の身体へと装着されてゆく。
 スーツが翔太郎の身体に馴染み、その姿を蒼穹と太陽の仮面ライダー――イクサへと変化させた所で、マスクを覆っていた金のバイザーが変型し、赤い複眼を露出させた。
 セーブモードから、より出力を高く発揮する為の形態、バーストモードへとシステムが自動で移行したのだ。

 それからの行動は、翔太郎自身も考えて行ったものではなかった。
 今自分が飛び出さなければ、総司はきっと、ガドルのボウガンによって射殺されてしまう。変身したばかりだというのに、いきなり名護との約束を破る訳にもいかぬと、イクサは脇目も振らず一心になってボウガンの射線上へと飛び出した。
 結果として、太陽を描いたイクサの胸部装甲はまるで一点を突き砕かれたように砕け割れ、内部の心臓部を僅かに露出させはしたが、翔太郎自身は命に別状は無さそうだった。
 身体そのものをガイアメモリによって作り変えて「変身」しているダブルやジョーカーと違って、厳密にはイクサは強化装甲服による「武装」だ。砕かれたのが装甲だけだから良かったものの、これがもしもジョーカーの身体だったなら、と考えるとぞっとする。
 こいつの攻撃をこれ以上受け続ける訳には行かないなと判断しながら、翔太郎は自分の身体の下敷きになっていた総司の身体を起こした。

「間一髪だったな、総司」
「なんで、どうして……何しに来たの!?」
「決まってんだろ、お前と一緒に、勝ちに来たのさ」
「もう、やめてくれよ……僕はもう、こんな辛い思いをしてまで、生きていたくなんてないんだよ」

 異形となった総司の声は、震えていた。

「お前……」
「もう分かったよ。どうせ僕は何をやったって駄目なんだ……僕は、世界に拒絶されてるから」
「世界に拒絶って……、おいおい、俺や名護さんがいつお前を拒絶したってんだよ」

 問うが、総司は答えようとはしない。
 ふらふらと、覚束ない足取りでガドルの方向へと前進してゆくだけだった。

「見苦しいな。戦う気すら失ったか」

 もう興味など失った、死ね、とでも言わんばかりに、ガドルが再びボウガンを総司へと向ける。
 だけれども、総司はまるで慌てようともしなかった。ただ死(ガドル)へと歩みを進めるだけだった。

「――んのバカッ!」

 ガドルが再び空気弾を放とうとしたその瞬間、慌ててイクサが飛び出した。
 緑の巨体を引っ掴んで、無理矢理その場へ押し倒すと同時、倒れ伏したイクサの背を空気弾が通過していった。
 激情した総司は、イクサの身体を突き飛ばし、金切声をあげて怒鳴る。

「なんで邪魔するんだよ! 僕なんか見捨てて、お前らはもう逃げればいいだろ!?」
「ふざけんなよお前……ふざけんなよっ!! なんで仮面ライダーが、救える命を見捨てて逃げ出さなきゃならねえんだ!?」
「お前が僕を助けたいって言ってるのは、僕の為なんかじゃない!」
「なっ……!」
「お前が仮面ライダーだから! だからその都合を僕に押し付けて、助けたつもりになりたいだけじゃないか!!」
「……っ!!」

 そう言われた次の瞬間――飛び出したのは、翔太郎の、イクサの拳だった。
 振るわれた拳は異形となった総司の上半身を強かに打ち付け、その身体を数メートル後方へ吹っ飛ばす。
 総司がどさりと音を立ててアスファルトを転がったその時、翔太郎は我に返ったように、はっとして自分の拳を見詰める。
 何故どうして殴ってしまったのか。言葉では無く、暴力を選んでしまった自分自身を一瞬とはいえ悔やんだが、いや、後悔はしていない。

「……殴っちまって悪かった、総司。でもな、それは、俺だけじゃない、守る為に戦った全ての仮面ライダーを侮辱する言葉だ」
「……っ! そんなの……僕が知ったことじゃない……っ」

 一瞬、総司の言葉が詰まった気がしたのは、きっと気のせいではないのだろう。

「なあ総司よ、お前も本当は分かってるんじゃないのか!? 仮面ライダーを……いや、名護さんの事を……
 弟子のお前の為に、あんなになるまで戦った名護さんを侮辱するのが、本当は辛いんじゃないのかよ?」
「……僕は……!」

 その問いに、総司は答える事が出来なかった。
 名護は、事実として、弟子である総司に自分の道を示す為に、例えボロボロにやられたとしても、最後には勝てないと思われていたアームズ・ドーパントを一人で打ち倒した。
 それは力だけで出来る事では無い。強い想いが無ければ……弟子を想う優しく正しい心が無ければ、決して出来ない事ではないのか。そして総司は、本当はそれをもう、分かっているのではないか。だからさっき、あんなに必死になってガドルに挑んでいったのではないのか。
 何の根拠もない推測だが、それでも翔太郎は、総司がそう思ってくれているのだと信じたかった。例え総司の正体が醜い異形だったとしても、心は人間なのだと信じたかったのだ。

「……弱きリントよ。貴様は、そいつが真の仮面ライダーになれるとでも思っているのか」

 ガドルが、手にしたボウガンを構えながら、イクサへと問うた。

「ああ、俺は信じてるぜマッチョメン。こいつは、総司は、正義の仮面ライダーになれる……絶対にだ!」
「愚かな……そんな根拠など何処にもなかろう」

 呆れ果てたように告げられた言葉と同時、ガドルが再び引き金を引いた。
 だけれども、それと同時に鳴り響いたのは、甲高い金属音。放たれた空気弾はイクサの足元のアスファルトを射ぬき、その地点を粉々に砕いて柔らかな地面を露出させたその威力の程に、イクサは息を飲んだ。
 ガドルは何も、意図してこの一撃を外した訳ではない。空間を裂いて現れた赤いガジェットが、発射の瞬間にボウガンに激突し、その方向を僅かにずらしたのだ。

「あれは……さっきの!」

 カブトゼクター。仮面ライダーカブトへと変身する為の、専用ガジェット。
 それが、銀色のベルトを携えて、再び翔太郎達の眼前へと姿を現したのだ。
 カブトゼクターはそのままの勢いで倒れ伏したままの総司の元へと飛翔し、総司の元へもう一度銀色のベルトを落とした。
 総司はまるで脅えたように、カブトゼクターとライダーベルトから逃げる様に、数歩後退りするが――やがて、感極まったように、ライダーベルトを掴み取った。
 変身する気になったのかと、翔太郎自身も、ほんの一瞬だけそう思った。

「こんなものがあるからっ……もう、消えてくれっ!!!」
「……ッ!? おい、やめっ――」

 翔太郎の制止は、既に手遅れだった。
 総司が思い切り投げた銀のベルトは、ガドルへ向かって飛んでゆく。
 となれば、ガドルが降り掛かる火の粉を払わんと行動するのは当然のことだ。
 無言のままにボウガンから放たれた空気弾は、ライダーベルトのバックル部を直撃し――そのまま、銀色のベルトは、ただの無数の機械の破片となって砕け散った。
 カブトゼクターだけが残った所で、仮面ライダーカブトには変身出来ない。ゼクターに対応したベルトは、もうこの世に無いのだから。
 本来のカブトである天道は死んだ。総司へと受け継がれる筈だったベルトは粉々に砕け散った。
 事実として、仮面ライダーカブトは死んだ。これで、完全に、死んでしまったのだ。

「お前……なんて事を……っ!」
「もういいんだよ! ダークカブトゼクターにすら見捨てられた僕が、どうしてカブトになんかならなくちゃいけないんだ……!」
「……ダークカブトゼクターに見捨てられたって……お前、それ本気で言ってんのかよ」
「ああそうだよ! 世界は僕を拒絶する! ダークカブトも、最期には僕を見捨てて、一人で逝った!」
「お前……お前っ! あいつがお前を見捨てて逝ったって、本気でそんな事思ってんのかよ!?」

 イクサの仮面を通してでも分かるくらいに、翔太郎の声には怒気が含まれていた。
 翔太郎はこの眼で確かに見届けた。ダークカブトゼクターが粉々に砕かれて“死ぬ”その瞬間を。
 最後の最後で、総司の身体を突き離して、たった一人で死へと飛び込んで行く勇敢な「相棒」の姿を。
 翔太郎にだって掛け替えのない相棒が居るから分かる。アイツは、総司を見捨てて死んだ訳ではない。そんな訳がない。
 アイツもまた、たった一人の相棒を守る為に必死になって戦って……それで、最期はその命を賭けて総司を守り抜いたのだ。
 そこに人間だバケモノだガジェットだなどと、そんな下らない垣根は存在しない。誰が何と言おうと、アイツは総司の相棒だった。
 それなのに、それなのに総司(コイツ)は――!

「アイツがお前を見捨てただと!? そんなモン、俺は絶対に認めねえ!
 お前、アイツの相棒だったんだろ! お前がアイツの気持ちを分かってやらねえで、一体誰が分かってやるんだ!?」

 翔太郎の言葉に続いて、カブトゼクターも、総司の眼前で慌しくその身体を揺らす。
 こいつもきっと、翔太郎と同じ事が言いたいのだろう。自分のベルトを破壊されても、それでも、それだけは譲れないのだろう。
 カブトゼクターと同じ姿形をした、言わば兄弟とも言えるダークカブトゼクターが、一体どんな想いで、何の為にその命を投げ出したのか。それすら分からない大馬鹿野郎に、カブトゼクターはその身で必死に伝えようとしていた。
 もう一度総司の身体を起こして、ブン殴ってでも目を覚まさせてやろうかとも思ったが、今は戦闘中だ。そんな余裕はない。

「余所見をするのもいい加減にしろ」

 不意にガドルへ視線を向ければ、ガドルは既に煩わしいボウガンを投げ捨て、イクサの懐に飛び込まんと駆け出していた。
 そして、気付く。一直線に走って来るガドルの勢いは――ただイクサを殴る為だけに走っているのではない。
 意図に気付いたイクサはガンモードとなったイクサカリバーから無数の弾丸を放ちガドルへと浴びせるが、そんな事でガドルが止まる訳は無い。
 次の瞬間には、ガドルはその強靭な脚力で地を蹴り、はるか上空へと跳び上がっていた。
 必殺の飛び蹴り。仮面ライダージョーカーで言う所の、ライダーキックだった。

「――まずいっ!」
「死ね――!」

 咄嗟に両腕で作ったガードの上から、ガドルの飛び蹴りが炸裂した。
 瞬間、イクサの腕部装甲全体に尋常ならざる衝撃が走り、その身体を遥か後方へと吹っ飛ばした。
 そのままイクサの身体は後方のビルの壁へと激突。ビルの壁に亀裂さえ生じさせる。
 全身に伝播する衝撃で、最早立ち上がる事すらもままならず、イクサの身体は地へとずり落ちた。


 眼の前で翔太郎が変身したイクサがやられたが、総司の心は動かなかった。
 最も長い付き合いだと思っていた友に裏切られた直後なのだから、付き合いの浅い翔太郎がどうなった所で、総司の心に影響がないのは当然の事だった。
 それ程までにダークカブトゼクターに見放された事は――いや、それ以上に、長い付き合いだったゼクターが破壊された事で、本当の意味で独りぼっちになってしまったという事実が、総司の心をより孤独にさせていた。
 ダークカブトゼクターが取った行動も、どうせどんなに戦っても勝てはしない総司の体たらくに呆れ果て、総司を見捨てて離脱しようとした所でガドルの剣にやられて死んだとか、そんな所だろう。
 結局世界は自分を拒絶する。ずっと一緒に戦っていた仲間だと思っていたゼクターも、自分を拒絶したのだ。その事実だけが頭の中でぐるぐる廻って、総司をより無気力にさせる。

「次は貴様の番だ、仮面ライダーモドキ」

 そう言って、ガドルが総司へと歩みを進める。
 逃げる気にもなれない。殺したいなら殺せと、今ではそう思う。

「逃げなさい……総司くん! 今すぐ、そこから逃げなさい!」

 名護さんが、総司に向かってそう叫ぶ。
 ふと見遣れば、名護さんの身体は、傷と痣だらけだった。
 翔太郎は言った。名護さんは、総司の為にあんなにボロボロになるまで戦ったのだと。
 一体何故、どうして。そんな疑問が頭に浮かぶが、いや、今となってはそんな事はどうでもいいかと思えるくらいには、総司の心は追い詰められていた。
 やがて、ガドルが総司の目前で歩みを止め――ワームとしての異形を晒す総司の面に、もう一度具現化させた大剣を突き付けた。

「そうはさせるか!」
「――!?」

 今度こそ、ガドルがその剣で総司の命を奪おうとしたその瞬間、総司のデイバッグから飛び出したのは、一匹の蝙蝠だった。
 機械仕掛けの白い蝙蝠は、ガドルの剣に体当たりを仕掛け、そのまま止まる事無くガドルの周囲を飛びまわる。ガドルは煩わしげに蝙蝠を払いのけようとするが、蝙蝠は恐らく、自分に出せる全力でガドルを翻弄しているのだろう、ガドルの腕は蝙蝠には当たらない。
 それはやや速度が落ちる剛力態であるから、というのも理由の一つとしてはあるのかもしれないが。
 ガドルを翻弄せんと飛び回りながら、白い蝙蝠――レイキバットは言った。

「アイツも意地を見せたんだ。この俺がこれ以上黙って見ている訳にも行かんだろう!」
「アイツ……?」

 レイキバットの言うアイツ、というのが一体誰の事なのか、総司には分からなかった。
 ややあって、レイキバットに続いて、カブトゼクターまでもがガドルに体当たりを仕掛けて行った。一撃一撃の威力が小さいのだろう、その程度でガドルに決定打は与えられないが、それでもガドルにとってはこの上なく煩わしげであった。
 全く以て不可解な連中だ。レイキバットにはそこまでする理由などないだろうし、カブトゼクターに至っては、ライダーベルトを破壊した自分の事を怨んで居たって何らおかしくはないのに。
 それなのに、

「どうしてお前らは、そうまでして――」
「――お前が、俺達の仲間だからだよ!!」
「っ!?」

 総司の問いに答えたのは――ガドルの遥か後方で、カリバーを杖代わりに立ち上がった、仮面ライダーイクサだった。
 最初の一撃で既に胸部装甲は砕かれ、二度目の飛び蹴りで腕の装甲も半分以上は形を成さなくなっているが、それでもイクサは立ち上がった。
 総司の脳裏を過るのは、自分がこの手で命を奪った剣崎一真と、自分を救う為にその命を燃やし尽くした海堂直也であった。
 奴らは一体どうしてこうまでして戦うのだろう。もう戦えないと根を上げたっておかしくない筈なのに――仮面ライダーは、何度でも立ち上がる。
 筆舌に尽くし難い異様な不快感が総司の心を覆って、異形となった総司の表情を、より醜く歪ませる。

「いい加減にしてよ……何なんだよ、仲間って……!」
「お前はまだ知らねえんだな。いいぜ、なら俺が教えてやる。仲間ってのはな――!」

 イクサは杖代わりのカリバーを振り抜き構え直せば、ガドルに向かって一直線に駆け出した。
 イクサの急迫に伴って、ガドルを取り巻き飛び回っていたレイキバットとカブトゼクターもまた、戦線から離脱する。
 相対するガドルは、手にした大剣で、真っ向から迎え討たんとイクサを待ち受ける。

「――困ってる時は助け合う! 仲間がピンチの時は、例え身体一つになってでも助けに行く! そういうモンなんだよ!」

 そう叫んだ次の瞬間、イクサがガドルの間合いに飛び込んだ。
 ガキィン! と金属音を響かせて、イクサの剣とガドルの大剣が衝突し――イクサのレッドメタリックの刀身が、見事にへし折られた。
 だけれども、それでもイクサは止まらない。まるで最初から見越していたかのようにイクサカリバーを放り投げたイクサは、ガドルの懐へと滑り込んだ。
 しかし、例え懐へ潜り込めたところで、イクサの打撃力ではガドルにダメージなど与えられよう筈もない。また無駄な事を……と思った、その刹那。総司の予想に反して、イクサはガドルの肩を右手で掴むと、そのまま右腕を軸にガドルの頭上へと身体を浮かした。
 ガドルとイクサの視線が至近距離で交差するのも一瞬、まるで側転でもするかのようにガドルを追い越したイクサは、そのままガドルの背を取り、ガドルの行く手を阻んだ。
 イクサは、総司に背を向けながら続ける。

「そしてそれが……その心そのものが、仮面ライダーなんだよ」

 先程の一撃で既に戦闘不能と思われるダメージを受けていた筈の翔太郎の声は、それなのに何処か気持ち良さそうだった。
 もう既に立てないくらいに傷ついている筈なのに、何かが翔太郎を突き動かしているのだ。あの時剣崎を、海堂を突き動かした何かが、今こうして翔太郎を――!

「そうだ、俺はそれを求めていた……!」

 振り向きざまに剣を振り下ろすガドルもまた、何処か嬉しそうだった。
 二人が何に満足しているのかがまるで分からない総司にとって、目の前の光景は不可解かつ不愉快でしかない。
 武器を失ったイクサに、ガドルの大剣を止める術はないが、かといってイクサが回避すれば、ガドルの剣はそのまま総司の身へと突き立てられるだろう。
 こんな状況下でも、仲間がどうだと言っていられるのだろうか。さっきのダークカブトゼクターと同じ様に、直前になって逃げ出すのではないのか。そんな疑心が頭に浮かぶが、しかし起こった結果は、総司が想定したどれでもなかった。
 剣がイクサを装甲を裂くよりも先に、カブトゼクターが、レイキバットが、そして今度は、タツロットまでもが、ガドルの一撃を阻止しようとその身に取り付き、体当たりを仕掛けては離れを繰り返す。

「ビュンビューン! これが仲間というものですよ、総司さん!」
「俺がお前の力になってやると言っただろう、忘れたのか総司ぃっ!」

 タツロットの軽快な声に、レイキバットの低くドスの効いた声が続く。
 そんな二機に続くように、言葉を発する事の出来ぬカブトゼクターもまた、キュインキュインと機械音を掻き立てた。

「ほら見ろ総司……お前には、こんなに沢山の仲間が居てくれてるじゃねえか! お前のピンチに必ず助けに来てくれるこいつらが仲間でなくて、一体何だって言うんだ!」
「でも……僕は、だって……一人ぼっち、だから……」
「お前は一人じゃねえ! 俺達がいつもそばにいるだろ!」
「……っ!!」

 ――大丈夫、僕がそばにいる――

 瞬間、総司の脳裏を過ったのは、忘れかけていた優しい記憶。
 この世界に生きる、唯一の理由として縋っていた存在。天道総司に擬態した自分にとっての、唯一の拠り所。
 彼女にそう言って貰えた時、総司は心の底から安心した。例えどんなに世界が非情でも、自分は独りぼっちではないのだと錯覚出来た。
 あの頃は、ひよりが居てくれた頃はまだ、幸せだったのだ。何も全てを滅ぼしたいだなんて思っていなかったし、その優しさに触れる事が出来るのなら、自分はそれだけで満足だった。
 総司が求めていたのは、優しさなのだ。自分が求める世界からの許容なのだ。そして少なくとも、翔太郎が、名護さんが、自分を許容してくれているという事は、総司にも分かる。
 でも――

「でも……でもっ! どんなに優しい言葉を並べたって、ひよりもダークカブトゼクターも、最後には僕を見捨てたじゃないか」

 そうやって許容してくれたと思い込んでいた世界は、いつだって最後には総司を見捨てて来た。
 その事実は変わらないし、一度根付いた警戒心は、どんなに他人に優しい言葉を掛けられた所で、そう簡単に解けはしない。
 だから受け入れる事が出来ないのだと叫ぶ総司を、ガドルに組み付きながら一瞥するイクサ。

「なあ総司、そのひよりって人の事は知らねえけどよ……少なくともダークカブトゼクターはお前を見捨てた訳じゃないって、お前自身、本当はもう分かってんじゃねえのか?」
「――えっ?」

 一瞬、何を言われたのか理解出来なかった。
 レイキバットが、ガドルの身体に激突しながら、僅かに怒気を含めた声で言った。

「まだ分からねえのか総司! アイツはな、お前を守る為に自分を犠牲にしたんだよ!」
「そ、そんな……筈……」
「その蝙蝠の言う通りだ! アイツは最期の瞬間まで、お前という掛け替えのない相棒の為に戦ってたんだよ!」

 レイキバットに続く翔太郎の言葉に、もう動く事のないと思っていた総司の心が、僅かに揺れた。
 否、翔太郎の言う通り、本当は最初から気付いてたのかも知れない。ずっと一緒に戦い続けて来たダークカブトゼクターが、総司を見放す訳がないという事くらいは。
 だけれども、そうやって信じる事は、また裏切られる事に繋がるからと、無意識のうちに悲観的になって、過ぎて気付かないフリをしていただけなのかも知れない。

 そして、気付く。
 自分だって、本当はそう信じたかった。信じたかった、筈なのに。
 唯一残った信頼出来る友が、自分なんかの為に、二度と帰らぬ存在になってしまったという事実を認めるのが、怖かった。
 自分が殺したようなものではないか。それを認めるくらいなら、裏切られたのだと思い込んで、とっとと諦めてしまった方が、ずっと楽だった。

 自分の本当の気持ちに気付いた瞬間、ワームの姿へと変じた筈の総司の身体は、自ずと天道総司に擬態した、人間としての姿に戻っていた。
 目頭が熱くなる。視界に映るイクサが、みんなの姿が、ぐにゃりと歪む。頬を伝う温かい涙の感覚に、自分は今、泣いているのだろ気付く。

「僕は……僕は、一人じゃ、なかったの……? 僕なんかの為に、アイツは……アイツは……!」

 寂しい時も悲しい時も、いつだって一緒に居てくれた相棒――ダークカブトゼクター。
 アイツは、こんなどうしようもない馬鹿な相棒の為に、その身体を擲ったのだ。下らない死に方だ、犬死も同然だ、そうは思うが、アイツの行動を笑う気にはなれない。
 一体どれだけの勇気があれば、そんな事が出来るのか。一体どれだけ他者を大切に思えば、自分の身を犠牲にする事など出来るのか。もう失ったとばかり思っていた暖かい感情は、こんなにもすぐそばに溢れていたと云うのに――それに気付くのが失ってからでは、遅すぎるではないか。
 だが、死んでしまったダークカブトゼクターの為に、自分に何が出来るのか。何をすればアイツが喜んでくれるのかなど、今の総司には、いくら考えたところで分かりはしない。
 どうしていいのかも分からず、地面に蹲って涙を滂沱と流し続ける総司の背後から、名護啓介が歩み寄って来たのに気付いたのは、彼に肩を掴まれてからだった。

「総司くん」
「名護、さん……?」
「いいか、総司くん。君は世界に拒絶されている訳じゃない。ただ、気付いていないだけなんだ」
「気付いて……いない……?」
「世界が君の敵なんじゃない。本当の敵は、君を惑わす君自身の心の中に居るんだ。自分だけには、決して負けるな!」
「……っ!!」

 世界は僕の敵じゃない……?
 随分と簡単に口にされた一言のように思うが、しかしその言葉は、今の総司にとって決して無意味な言葉ではなかった。
 ずっと敵だと思っていたものは、本当は敵では無くて。本当は世界に拒絶されていたのではなくて、自分の心が、自分自身を拒絶していたから。

「じゃあ……僕は……この世界で、生きていていいの……?」
「誰が駄目だと言った。誰が君を拒絶すると言った。君は生きていていいんだ、君は此処に居ていいんだ!」

 そう言われた、その瞬間だった。
 総司の耳朶を叩いたのは、一際大きな呻き声と、何かが割れる破壊音。
 慌ててガドルとイクサとの戦闘へと視線を戻した総司は、イクサとガドルの拳がクロスカウンターの形でお互いの頬を叩くその瞬間を目の当たりにした。
 イクサの仮面が、ガドルに殴られた箇所からひび割れを起こし、数瞬ののち、その仮面もぱらぱらと砕け散った。
 頬を血で赤く染めた翔太郎の顔が半分露出し、それを見守る総司と名護の間に、緊張が走る。

「翔太郎!」
「翔太郎くん!」

 名を呼ぶが、翔太郎はちらりと二人を一瞥し、僅かに微笑むだけだった。
 とんだ痩せ我慢だ。痛くない筈がないのに、笑って居られる筈がないのに。
 間髪入れずに、ガドルをイクサから引き離そうと、カブトゼクターを筆頭とする三匹の小型生物がガドルに突撃を開始した。
 ガドルが数歩後退して、イクサから距離を取った所で、イクサもまた限界を迎えたかのように、どさりと崩れ落ちた。
 総司のフラッシュバックするのは、ダークカブトゼクターの散り様。自分の為に戦い散ったアイツと同じように、翔太郎もまた、総司を守る為に飛び出して行って、ガドルにやられたのだ。
 もうこれ以上、自分の為に何かを喪うのは嫌だと、ダークカブトゼクターの時の哀しみをもう一度経験するのは嫌だと、総司は無意識のうちに倒れたイクサの元へ駆け寄っていた。

「翔太郎っ、翔太郎っ!」

 涙でしとどに濡れた表情も気にせずに、総司はイクサを抱き起こし、半分砕けた仮面の中の翔太郎の顔を覗き込んだ。
 総司の涙が翔太郎の頬へと数滴零れ落ちて、その頬を伝ってゆく。目を開けた翔太郎はやはり、無理矢理笑顔を作ってみせた。

「よお、総司……お前、ちょっと目を離したうちに、良い顔出来るようになったじゃねえか。
 ……ははっ、そっちの方が、さっきまでよりずっと良いぜ。お前、変われたんだな」
「僕は、僕はまだ、何をすればいいのかも分からないし……何も、変わってないよ」
「いいや、変わったさ。さっきまでのお前は、そんな顔しなかったもんな」

 嬉しそうに笑った翔太郎は、よっ、と言いながら、自分の身体を起こした。
 二人の会話を眺めていた名護が、厳めしい表情で翔太郎を呼び止める。

「……翔太郎くん」
「おっと名護さん、さっきも言った筈だぜ。野暮な事は言いっこなしだってな」

 そう言って、イクサはバックルに装着されたイクサナックルを取り外した。
 右の拳にナックルを握り締めて、自分にはまだ武器があるとでも言わんばかりに、それを構えて立ち上がる。
 名護はそれ以上、何も言おうとはしない。翔太郎を止めようともしなかった。二人の間の沈黙を不可解に思いながらも、総司が尋ねる。

「止めないの、名護さん?」
「止めても無駄だろう……彼もまた、仮面ライダーだからな」

 名護の言葉に、翔太郎がふっと微笑んで、頷いた。
 もう何度も見て来た光景だ。これが剣崎一真や、海堂直也達と同じ、仮面ライダーなのだろう。
 いざ駆け出さんと構えるイクサに気付いたのか、ガドルも嬉々として前進を始めた。当然ゼクター達はガドルの行く手を阻もうと攻撃を仕掛けるが、最早ガドルは脚を止めるつもりはなく、まるで羽虫でも払うかのように彼らを殴り飛ばす。
 カブトゼクターとタツロットは素早い身のこなしでガドルの拳の直撃だけは避ける事に成功したものの、運悪くレイキバットだけが回避に失敗した。
 総司の為に飛び出して、少しの間ではあるがこうして時間を稼いでくれた“仲間”が、総司の足元へと吹っ飛ばされ、アスファルトに激突して数回バウンドした。

「レイキバット……」
「チッ……俺とした事が、ヘマしちまったぜ」

 倒れ伏したレイキバットを拾い上げれば、レイキバットはいつも通り強がってそう言った。
 命に別状は無さそうではあったが、それでもレイキバットが苦痛に表情を歪めているのは、総司にも理解出来る。
 思えば、みんなそうだ。海堂も、名護さんも、翔太郎も、レイキバットも、ダークカブトゼクターも、みんなみんな、総司の為に傷ついて行く。
 こんな自分の事など放っておけばいいものを……いや、翔太郎の言葉を借りるなら、それが仲間という物なのだろう。止めても聞かぬ、仲間の意地なのだろう。
 今の自分が何をやるべきなのかはまだハッキリとは分からないが、それでも、何となく分かった気がする。否、本当は最初から……名護や海堂に救われたあの時から、総司は気付いていたのかも知れない。
 少なくとも総司は、翔太郎にも、名護にも、レイキバットにももう、犠牲になって欲しくは無い。仲間だと言うのはまだ何処か気恥ずかしいけれど、それでも、自分の為に喪って、それで後悔するのは、もう嫌だった。

「翔太郎」
「あ? どうした、総司」
「僕も、戦うよ……もう一度」

 その言葉を受けたレイキバットが、何処か嬉しそうにふん、と笑い、総司の周囲を旋回し始めた。
 冷たい風が周囲の大気を包んで、雪の結晶を舞い振らせる。それと同時、ベルトを装着した総司が、イクサに並び立ち、今度は力強く宣言した。

「もう一度……今度は僕達の力で!」
「ああ……ああ、そうだな! 良く言った総司、見せてやろうぜ、俺達仮面ライダーの力を!」
「うん……今の僕に、何が出来るのかは、まだ分からないけど」

 果たして、自分に仮面ライダーを名乗る資格があるのかどうかも、総司にはまだ分からない。
 だけれども、今総司は、失わない為に、守る為に戦おうと、始めて思う事が出来た。その判断自体が総司にとっては大きな進歩であるなどと、本人だって気付きはしまい。今はただ、目の前の敵と戦うだけ。考えるのは全部、後にしよう。

「フン! 行こうか、華麗に、激しくっ!」

 そう叫んだレイキバットが、総司に装着されたベルトのバックルへと収まった。
 まるで周囲の冷気全てを凝縮して固めた氷の如き鎧が総司の身を覆い、一瞬ののちには、仮面ライダーレイへの変身が完了していた。
 仮面ライダーイクサと仮面ライダーレイ。異なるキバの世界に存在する二人の仮面ライダーが、全ての世界の仮面ライダーに共通する「正義」を胸に、ここに並び立った。



102:G線上のアリア/ファイト・フォー・ジャスティス 投下順 G線上のアリア/インヘリテッド・ハイパーシステム
時系列順
ゴ・ガドル・バ
擬態天道
名護啓介
左翔太郎
ン・ダグバ・ゼバ