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闇を齎す王の剣(6) ◆o.ZQsrFREM






 目の前で昏倒した宿敵を前に、クウガはほぼ限界を迎えた身体を何とか起こしていた。

 息をするように扱える、超自然発火の炎――今のダグバならそれで殺し尽くせただろうが、クウガは敢えてその選択肢を選ばなかった。
 一つは憎悪の余りに、その肉体を直接砕きたかったがために。
 そしてもう一つは――クウガを支配する、アマダムの欲求によるものだった。

 ダグバの変身したブレイドとの戦闘で、クウガの全身はズタボロにされ、アマダムにも大きなダメージを受けていた。このままでも自壊するなどということはないが、傷を負い不完全となった自身を回復したいと霊石は考えていた。

 そのために目を着けたのが、そこで眠っているもう一人の究極の闇を齎す者に宿った、同種の霊石だったのだ。
 その力を取り込んでアマダムを修復し、さらにこのクウガの身体も、究極すら超越した存在へと進化させることができる――力を求めた主人に応えて、戦うためだけの生物兵器としての役割を果たし、世界を究極の闇で覆い尽くすための力を得ることができるのだ。

 だからアマダムは、超自然発火の炎でダグバごとその霊石を消し去ってしまわないために――クウガに拳を構えさせていた。
 クウガはその後のことなど気にもせず――否、できず、ただようやく念願叶うことに、喜んで究極の拳を握り込んでいた。

 今のダグバは、ただの無力な人間と同じだ。究極の暴力に抗えるはずがない。ただその頭に拳を下ろすだけで、挽肉へと化してその生命を終えるだろう。
 やっと、終わる。拳を振り上げるだけの筋肉を再生し終えたクウガが、遂にそれを振り降ろすというその時に――その強化された聴覚が、バイクの駆動音を捉えた。
 その瞬間、クウガの身体に激震が走る。

 自我を喰い潰したはずの狂気が、それを産み出した根源――恐怖の感情の突然の復活によって、心の隅へと追いやられて行った。

「――ぁ……あぁ……」

 戦うだけの生物兵器に、恐怖心など存在しない。
 それを増幅させたということは、それを有する本来の人格――小野寺ユウスケの意識が、究極の闇の中から浮上させられたことを意味していた。

 ――その魂を、恐怖に囚われた形で。

「あぁぁぁ……ああああああああああああああああっ!?」

 クウガの脳裏に蘇る――憎悪に全てを忘れていた、己の所業が。

 もうこれ以上、誰かの笑顔を奪わせないために、ユウスケは再びあの黒きクウガに変身した――中途半端な自分には、立派なクウガである五代雄介のようには、皆の笑顔を護るなんてできなかったから。
 自分の命と心と引き換えに、究極の闇になってダグバを討つ――その覚悟で変身した、次の瞬間の行いはいったい何だ?

 まだ息があったはずの京介を巻き込む超自然発火を放ったのは、どういうことだ?

「うぁ……あ、あああああああああああああああああああああああああっ!?」

 一瞬で焼き尽くされた京介と小沢の姿が、ユウスケの脳裏にフラッシュバックする。

 ――アイツがダグバと同じ力を持っている、それはつまりアイツもダグバと同じ事が出来るという事だ。その力が俺達に向けられたらどうする?

 そんな橘朔也の言葉が、不意に思い起こされた。
 あの時と同じ後悔が――恐怖が、ユウスケの中に生じる。

 今度は、危惧などではない。
 事実としてユウスケは、その力に誰かを巻き込んだ。

 ダグバを倒す。それができれば、自分はもう何も望まない――その一心で得た力で結局ユウスケが成したのは、その怨敵一人討つこともできずに、ただ憎悪と憤怒のままに破壊と殺戮を撒き散らしただけ――
 忌むべき未確認生命体と、同じように。

 そしてそれをダグバが、心の底から喜んでいたのを覚えている。クウガはそれを覚えてしまっている。

 夕刻の二人の男の時と同じく――今度もまた、ユウスケのために一条も、小沢も、京介も、キバットも殺されてしまった。
 全部、自分のせいで――

 クウガの脳裏で展開される過去の映像が、形を変えて行く――

 二人の男を焼き殺す四本角の怪人の姿が、黒く染まって行き――
 黄金の大剣が漆黒の長剣へと姿を変え、それを手にした凄まじき戦士が、アクセルを、アビスを、キバを切り裂いていく――

 ――俺が、殺したんだ。

 俺が、皆の笑顔を奪ってしまった!

 今もこうして、気を失っている無力な青年を、殺そうとしているように――!

「あああああああああああああああああああああああああああああああああっ!?」

 白い光が、その漆黒の姿を照らし出したのと同時に。

 恐怖のあまりに錯乱したクウガは、足元の白い青年を無視して全力で駆け始めていた。

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」

 止まらない叫びを発しながら、クウガは焦土と化したE-2エリアを南下して行く。

 ユウスケの脳裏で展開される惨劇は止まらない。紫の鬼を、ダイヤの仮面ライダーを、イクサの戦士を。

 青い怪盗を――そして一緒に多くの世界を旅して来た、通りすがりの仮面ライダーを。

 一人残さず鏖殺する、漆黒の戦士の操る炎だけが、全てを埋め尽くして行く――

「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」

 ああ、もうダメだ、自分は。
 生きていてはいけない。そこにいるだけで皆を傷つけてしまう。殺めてしまう。

 どんなに笑顔を護りたいと願ったって、この力はそれを奪うばかりで、その全てを取り零して行く――――そもそも究極の闇とは、姐さんを殺した力なのだから。

 一番護りたかった笑顔を壊したのも、この力なのだ。

 そう認識したユウスケは、一人の女刑事に襲い掛かるクウガの姿を思い浮かべてしまう。

 小沢澄子と同じように、八代藍を焼き尽くす漆黒のクウガの――ユウスケ自身の姿が、その惨劇を締め括る。

 ――せめて。

 どんなに自分が中途半端でも、この世界を闇に包む生物兵器だけは、殺さないと――!

 クウガは風より速くE-1エリアを横切り、F-1に到達し――まだ足を止めない。
 目指すはG-1の廃工場――禁止エリア。

 ――うっかり禁止エリアに入っちゃったりしたら、首輪ボン! だから。

 そんな大ショッカー幹部の声を、唯一の縋るべき物として。

 究極の力を持ったクウガであろうと、あの黄金のブレイドであろうと、この首輪の爆弾ならば一撃で仕留められるはずだ。

 事実、この首輪は、凄まじき戦士がブレイドから無理に外そうとしてもビクともせず、さらには究極の炎も、ロイヤルストレートフラッシュの光線も装着者が生きている限りは受け付けず、誘爆も消失もしなかったのだから。あのダグバやブレイドの能力まで制限し、仮面ライダーや各世界の怪人と言った、超常の存在に殺し合いを強いるに足る、底知れぬ力を有している。ならばきっと、今のクウガをも一撃で葬る力を有しているに違いない。

 先程自分が暴力によって命を奪うことを忌避し、トドメを刺さずに置いて来たのがあの宿敵であることをも狂乱したクウガは忘れ果て、この後も続くダグバの凶行を頭に描いてまた恐怖する。自分のせいで皆死んでしまったとは言っても、奴がまた独自に殺戮を繰り返すことは明白だ。奴を倒すためだけに変身したというのに、結局放置したまま果てるというのは、実に自身の中途半端さを表していると言えるだろう。

 それでも――この地にはもう一人、究極の闇に立ち向かえる戦士がいるのだ。
 あの一条薫が認めていた、偉大なクウガ――五代雄介が。

 究極の闇を齎す危険人物は少ない方が良い。そう思って彼には頼らずに自分でダグバを倒そうとしたのが、そもそも間違いだったのだ。

 だって自分では――勝てなかったではないか。
 護りたい笑顔を壊すことはできるのに、あの魔王を倒すことができなかったではないか。
 戦えない人々の代わりに理不尽と戦うと言ったところで、自分にもそんな力はなかったではないか。自身の力にすら負けて、自らが理不尽の一つとなっただけではないか。

 だがきっと……自分よりもずっと強くて立派な、五代雄介になら。
 怒りと憎しみに負けずに究極の力を制御し、あの悪魔を打倒することができるはずだ。

 それなら――ダグバを倒す力たり得ない自分は、これ以上誰かを傷つける前に消えた方が良い。究極の闇を齎す危険人物は、少ない方が良いのだから。

 あのロイヤルストレートフラッシュによって受けたダメージすらもほぼ回復しながら、その身を滅ぼす力を求めたクウガは遂に廃工場を瞳の中に捉える。
 視界に収めた、その瞬間――

「あっ……」

 禁止エリアまで後数秒と言ったところで、その全身から力が消えた。

 ユウスケの考え通り、最強フォームの力すら縛る首輪の制限――それによる変身時間の限界が、訪れた結果だった。
 仮面ライダークウガアルティメットフォームから、小野寺ユウスケへと戻ったその肉体を襲ったのは、想像を絶する激痛と疲労だった。

「――っ!?」

 アルティメットフォームの生命力と回復力は、クウガの他の形態と比べても群を抜いている。事実、戦力差の問題を差し置いても、他の形態ではあのキングフォームとの戦いで三度は確実に死んでいた。その死すら覆すほどの超回復力と痛覚への耐性を有しているのがアルティメットフォームだが、それがあるのはあくまで変身している状態での話だ。

 アマダムによって強化されているとは言っても、ユウスケへと戻った際に引き継がれたその傷は、変身中なら些細な物であっても――今の彼にとっては、致命に近いほどの重傷であり、またその限界を迎えた心を苛むのに十分過ぎる物だった。
 その激痛に耐え切れず、恐怖と狂気によって振り回されていた小野寺ユウスケの精神は、意識の手綱を闇の中へと手放した。

 そうして、意識を失った小野寺ユウスケの体内に隠れた傷ついたアマダムは、その暴走を首輪によって戒められながらも、究極へと至ったその力を発揮する。常人なら既に生命を停止しているだろう主人の身体を人間の姿でも生かし続け、再生させて行く。時が経てば、いつかはその全身に刻まれた深過ぎる傷も消え去るのだろう。

 だがアマダムが治癒するのは、あくまで肉体に刻まれた損傷だけ。

 彼の精神に刻まれた傷が果たして何によって癒されるのか、それとも――もはや永劫、その機会も得られないのか。
 深い闇の中に堕ちた小野寺ユウスケの、そんな先のことは――今はまだ、誰にも見通すことはできなかった。



 ――ところで、クウガは何故G-1エリアを目指したのか。

 もちろん、首輪の力を使って自殺を図ったからだが――ならそもそも、その首輪を強引に外そうとすれば事足りることだ。無論、ブレイドキングフォームとの戦いで、実際に敵の首輪を本気で外そうとして失敗したことがあったため選ばなかっただけとも言えるが、あれだけ錯乱した状態では、外せない首輪を外そうとするのと禁止エリアを目指すのと、どちらを選択しても不自然なことではないだろう。

 彼が禁止エリアを目指したのは、彼がその場にそれ以上留まりたくないと考えたからだ。

 その理由は、その場に留まることで罪悪感に苛まれ続けるのを避けたかったため――ではなく。

 その場に新たに現れた男を、恐怖したからに他ならない。



「……祭りは、終わってやがったか」

 そのサイドカーの大部分を円形の切り口を残し消失させたサイドバッシャーから降りた蛇革のジャケットを着た男――浅倉威は、そう呟いて顔を歪めた。

「イライラするぜ……」

 D-2エリアに野晒しにされた真紅のバイクを発見し、その持ち主を探して散策していた浅倉だったが、結局収穫を得られなかった頃の話だ。

 E-2エリアで、大気を揺るがし大地を震撼させ、夜を染め上げるような凄まじき闘争が繰り広げられていることに気付いたのは。

 浅倉は即座にサイドバッシャーで隣のエリアへと移動を始めた。途中、街の半分近くを消し飛ばした爆発によってクラッシュ仕掛け、サイドバッシャーのサイドカー部分に直撃し、背後の街並みも触れた端から消し去って行った光などの派手な花火を見た。あと少しで自分も消滅していたという事実に一切怯むことなく、浅倉はその殺し合いの――いや、祭りの激しさに、そこへ飛び込む期待に胸を躍らせた。

 そしていざ到着すれば、見るだけで肌を刺すような強烈な威圧感を放つ黒のライダーが一人、そこに佇んでいることに気付いた。

 その後ろ姿から感じ取れる力は、紛れもなく最上級の大物――それこそあの、『十三人目の仮面ライダー』と同じぐらいの、だ。

 こいつと戦えば楽しそうだ、そう思って突撃しようとした瞬間、奴は絶叫を迸らせて、サイドバッシャー以上の速度で浅倉の目の前から逃走していた。
 それが無意識に自身の垂れ流す恐怖の記憶の影響だということには当然思い至らず、蛇は呑み込む前に消えた獲物に苛立ちを顕にしていた。

 地図によるとここは本来市街地だったようだが、もはや瓦礫一つ残さず破壊され、巨大なクレーターを抱いた焦土と化しており、形ある物はもはや残っていない。
 浅倉の眼前で眠る、たった一つの例外を除いて――

「何だ? このガキは……」

 先程の光によって大地に刻まれたのだろう巨大な溝。その底で幸せそうな表情で眠る、額を血で染めた青年を見つけたために、浅倉は逃げ出した黒い仮面ライダーを追い駆けることなく――その場に留まっていた。
 その青年の身を包む白い服を眺めていて浅倉は、一度彼を目にしていたことを思い出す。

「ああ、おまえ……あの白い奴か」

 この地に来て最初の戦いの場から、真っ先に逃げ出した――
 先程の仮面ライダーとよく似た、強大な力を感じさせた姿へと変貌した、あの青年だ。

「さて……どうする?」

 目の前で眠る暴虐の魔王を、いつでも呑み込める体勢に入ったままで。
 その命を握ったことに微かな愉悦を覚えながら、蛇は自らの苛立ちを晴らすべく、次の選択肢を逡巡していた。


【1日目 真夜中】
【E-2 焦土】

【浅倉威@仮面ライダー龍騎】
【時間軸】劇場版 死亡後
【状態】疲労(小)、ダメージ(小)、祭りに参加できなかったことに少しイライラ
【装備】カードデッキ(王蛇)@仮面ライダー龍騎、ライダーブレス(ヘラクス)@劇場版仮面ライダーカブト GOD SPEED LOVE、カードデッキ(ファム)@仮面ライダー龍騎、鉄パイプ@現実、ランスバックル@劇場版仮面ライダー剣 MISSING ACE、サイドバッシャー@仮面ライダー555
【道具】支給品一式×3、サバイブ「烈火」@仮面ライダー龍騎、大ショッカー製の拡声器@現実
【思考・状況】
0:このガキ(ダグバ)をどうするか?
1:イライラを晴らすべく仮面ライダーと戦う。
2:特に黒い龍騎(リュウガ)は自分で倒す。
3:殴るか殴られるかしてないと落ち着かない、故に誰でも良いから戦いたい。
【備考】
※テラーメモリを美味しく食べた事により、テラー・ドーパントに変身出来るようになりました。またそれによる疲労はありません。
※ヘラクスゼクターに認められました。
※エビルダイバー、メタルゲラスが王蛇と契約しました。これによりユナイトベントが使用可能になりました。
※変身制限、及びモンスター召喚制限についてほぼ詳細に気づきました。
※ドーパント化した直後に睡眠したことによってさらにテラーの力を定着させ、強化しました(強化されたのはドーパント状態の能力ではなく、非ドーパント状態で働く周囲へのテラーの影響具合です)。今後も強化が続くかどうか、また首輪による制限の具合は後続の書き手さんにお任せします。
※サイドバッシャーのサイドカー部分が消滅しました。また、これによってバトルモードへの変形機能を失いました。


【ン・ダグバ・ゼバ@仮面ライダークウガ】
【時間軸】第46話終了後以降
【状態】疲労(極大)、ダメージ(中)、恐怖(大)、もう一人のクウガとの戦いに満足、ガドルを殺した強者への期待、額に出血を伴う怪我(治癒中)、仮面ライダーブレイドに二時間変身不可、仮面ライダーリュウガ及び怪人態に五分間変身不可、キングフォームの反動で気絶中
【装備】ブレイバックル@仮面ライダー剣+ラウズカード(スペードA~13)+ラウズアブゾーバー@仮面ライダー剣
【道具】ダグバのベルトの欠片@仮面ライダークウガ
【思考・状況】
0:ゲゲル(殺し合い)を続ける。
1:恐怖をもっと味わいたい。楽しみたい。
2:もう1人のクウガとの戦いを、また楽しみたい。
3:ガドルを倒したリントの戦士達が恐怖を齎してくれる事を期待。
4:新たなる力が楽しめるようになるまで待つ。
5:またロイヤルストレートフラッシュの輝きが見たい。
【備考】
※制限によって、超自然発火能力の範囲が狭くなっています。
※変身時間の制限をある程度把握しました。
※超自然発火を受けた時に身に着けていたデイパックを焼かれたので、モモタロスォード@仮面ライダー電王を紛失しました。超自然発火で破壊されたか、E-2エリアのどこかに落ちているのかは後続の書き手さんにお任せします。基本支給品一式は失われました。
※キングフォームの力に大いに満足しました。
※仮面ライダーブレイドキングフォームに変身したことで、十三体のアンデッドとの融合が始まっています。完全なジョーカー化はしていませんが、融合はかなり進んでいます。今後どうなるのか具体的には後続の書き手さんにお任せします。
※一条とキバットのことは死んだと思っています。



「ユウスケ……っ!」

 あの恐るべき、圧倒的なまでの殲滅の光――ロイヤルストレートフラッシュの、前回のそれさえ大きく上回る輝きを見せつけられた後で、キバットが焦燥と不安、そして悔恨を含んだ声色でその名を呟くのを、一条もただ聞き届けるしかできなかった。
 それから数秒、ブレイドの大技を最後にもう何の音も振動も伝わって来ないという事実に、いよいよ二人の間に漂う夜気が一層冷たく重たい物へと変質して行く。

「やられ……ちまったのか……?」

 呆然自失と言った様子で、キバットがそう呟いた。宙に浮かぶ力をなくしてゆっくりと地面に落ちるその小さな身体を、一条は何とか伸ばした手で受け止めた。
 だがその事実に気付いた様子はなく、俯いたキバットが口を動かす。

「俺は……また間違えちまったのか? あんなところに飛び込んだって、足手纏いなだけだって……そう言い訳して、今度はユウスケまで見殺しにしちまったのか……?」

 自らを責める言の葉を紡ぐキバットを止めようとして、しかし一条は何も言えなかった。
 同じ後悔を背負う者として、彼の胸中を想いやれば――何も言えるはずがなかった。
 キバットの力が失せたことでデイパックがまたも地に落ちて、内容物をいくつか零したかもしれなかったが……一条もキバットも、もはやそれを気にする余裕などなかった。

「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」

 彼らの上に重く横たわった沈黙を裂いたのは――そんな彼らの心をさらに苦しめるほどの、悲哀と絶望と恐怖に塗れた絶叫だった。

「――ユウスケっ!?」

 風を起こしながら、一瞬で一条の横を走り去って行った黒い影の正体を目敏く見極めたキバットの叫びに、一条ははっとする。
 生きて、いた――?

 生きていて、くれた?

 そう一縷の希望を見出した一条だったが――本当に手放しで喜んで良いのかと、直ぐには動けなかった。
 照井と小沢から命懸けで託された京介を、むざむざ殺されてしまったからだけではなく――ユウスケの物だというその声が、あまりにも悲しそうだったから。

 そして、もう一つ――

「あっちは……禁止エリアじゃなかったか、キバット?」
「んな……んだとっ!?」

 参加者ではないキバットは、そうである一条ほど地図をきちんと把握していなかったのだろう。上擦った声で、クウガの去った方を見る。

「まさか……早まんじゃねえぞ、ユウスケっ!」

 言い残して飛び上がったキバットの背を、一条はほとんど足を引き摺る形で追い駆ける。
 彼らの背後には、穴の開いたデイパックをなおも必死に引っ張るガタックゼクターの姿があったが、それが顧みられるのは十分以上後のことだった。それほど彼らは夢中だったのだ。

 満足に歩けもしない一条だったが、片目を潰されたキバットもまた、その飛行は危なげな様子で、ほとんどスピードも出せていない。故に一条はその背中を追うようにして、夜の闇の中で脚を運んでいた。
 そもそも、あの速度で走って行ったクウガに今更追い付くなど、一条にもキバットにも無理な話だった。
 唯一可能性があるとすれば、体力を消耗し切った二人の代わりにデイパックを引き摺るガタックゼクターぐらいか。だが、仮に追い付けたところで、あのブレイドと戦いなおも五体満足であるクウガを相手に、口も利けないゼクターに何ができるというのだろうか。

 最悪の予感が、一条の背中を焦がして行く。

 血と共に流れ失せて行く体力を必死に振り絞る一条も、口数の多いはずのキバットも、終ぞ一言も発することはなく数十分の時が流れた。

「――ユウスケ……!」

 件の禁止エリアまで後少しか、というところで一条よりも夜目が効くキバットが、そう声を発した。
 滑空して降りて行く金の影を追えば、そこに倒れた見覚えのある格好をした青年を発見することができた。

「小野寺くん……っ!」

 身に纏った服には激しい戦いを伺わせる傷一つもなかったが、それも内側から溢れる血に滲んでいた。だが、幸い既に血は止まっているようであり――

「良かった……生きてた……!」

 そう彼の呼気を聞き取ったキバットが歓喜の涙を流すが、次の瞬間その表情を曇らせる。その理由は一条にもすぐにわかった。

 気を失っている青年の顔が、あまりにも苦しそうに歪んでいたから。
 止まらない涙の痕が、その頬を今も濡らしていたから。

 あんな力を人間が個人の身に宿して、それに振り回されるということがどう言ったものなのか――一条は、それをずっと傍で見て来た。

 だから、彼を見捨てておけなかった。

 五代にしてやれなかった分も、せめてこの殺し合いを打倒するまでの間だけでも、彼を支えようと――

 それなのに結局、一条はユウスケに何もしてやれなかった。
 何の力にもなれず、彼に全て押し付けて、みすみす凄まじき戦士にさせてしまった。

 何の役にも立たなかったこの不甲斐ない自分の代わりに、単身第零号との戦いに挑み、傷つき倒れたこのもう一人のクウガに――自分はいったい、何をしてやれるのだろうか?

 駆け寄ったところで、いったい何を?

 そんな想いが、倒れ伏せた小野寺ユウスケを見下ろす一条薫に何をさせるでもなく――ただその場に、無言で立ち尽くさせていた。


【一日目 真夜中】
【F-1エリア 草原】

【小野寺ユウスケ@仮面ライダーディケイド】
【時間軸】第30話 ライダー大戦の世界
【状態】疲労(極大)、ダメージ(極大)、左脇及びに上半身中央、左肩から脇腹、左腕と下腹部に裂傷(ほぼ塞がってはいる)、アマダムに亀裂、ダグバへの極めて強い怒りと憎しみ、仲間の死への深い悲しみ、究極の闇と化した自分自身への極めて強い絶望と恐怖(テラーの影響あり)、仮面ライダークウガに1時間33分変身不可、気絶中
【装備】アマダム@仮面ライダーディケイド 、キバットバットⅢ世@仮面ライダーキバ、ガタックゼクター@仮面ライダーカブト
【道具】無し
【思考・状況】
1:これ以上暴走して誰かを傷つける前に、命を断ちたい。
【備考】
※自分の不明支給品は確認しました。
※『Wの世界万能説』をまだ信じているかどうかは後続の書き手さんにお任せします。
※アルティメットフォームに変身出来るようになりました。
※クウガ、アギト、龍騎、響鬼、Wの世界について大まかに把握しました。
※変身に制限が掛けられていることを知りました。
※アマダムが損傷しました。自壊するほどではありませんが、普段より脆くなっています。
※ガタックゼクターがまだユウスケを自身の有資格者と見なしているかどうかは、後続の書き手さんにお任せします。
※キバットバットⅢ世の右目が失われました。またキバット自身ダメージを受けています。キバへの変身は問題なくできるようですが、詳細は後続の書き手さんにお任せします。
※一条とキバットのことを死んだものと思っています。

【一条薫@仮面ライダークウガ】
【時間軸】第46話 未確認生命体第46号(ゴ・ガドル・バ)撃破後
【状態】疲労(極大)、ダメージ(極大)、額に怪我、腹部表面に裂傷、その他全身打撲など怪我多数、出血によってやや貧血気味、犠牲者やユウスケへの罪悪感、強い無力感、仮面ライダーアクセルに1時間30分変身不可
【装備】アクセルドライバー+アクセルメモリ@仮面ライダーW
【道具】食糧以外の基本支給品×1、名護のボタンコレクション@仮面ライダーキバ、車の鍵@???、おやっさんの4号スクラップ@仮面ライダークウガ
【思考・状況】
1:自分はいったい、彼(ユウスケ)に何をしてやれる……?
2:鍵に合う車を探す。
3:照井の出来なかった事をやり遂げるため『仮面ライダー』として戦う。
4:一般人は他世界の人間であっても危害は加えない。
5:五代や、小沢と桐谷、照井やユウスケの知り合いと合流したい。
6:未確認への対抗が世界を破壊に導いてしまった……?
7:照井、小沢、京介と同じ世界に生きる者に、彼らの死を伝える。
8:もしも鳴海亜樹子が殺し合いに乗っていれば、照井の代わりに自分が止める。
【備考】
※『仮面ライダー』の定義が世界ごとによって異なると推測しています。
※麗奈の事を未確認、あるいは異世界の怪人だと推測しています。
※アギト、龍騎、響鬼、Wの世界及びディケイド一行について大まかに把握しました。
※変身に制限が掛かっていることを知りました。
※おやっさんの4号スクラップは、未確認生命体第41号を倒したときの記事が入っていますが、他にも何かあるかもしれません(具体的には、後続の書き手さんにお任せします)。
※腹部裂傷は現在深刻ではありませんが過度な運動をすると命に関わる可能性があります。
※ユウスケが去った時点でのダグバの生死を把握していません。



 ――こうして各々の世界で最強を誇る、仮面ライダー同士の激突は終わり。


 人を護ることを願って生み出された最強の剣が、他者を傷つけることを愉悦とする魔王の手に堕ち、

 暴君を討たんと、勇者はその心を犠牲に力を望んだが――全てを犠牲にしてなお、それには能わず、

 ただ他者を否定する悪意によって揮われた力はどちらも、その力へと捧げられた本来の願いに逆らって、悲劇を生み出した。

 ――そうして、魔王が手にした剣が、幾人もの心に齎した闇と同じように。

 その力によって一度は払われた夜の影は、やがては何事もなかったかの如く再び世界を覆い尽くし、時が刻まれると共により一層、その色を濃くして行くのだろう。

 それを誰が望んだからでもなく、ただそういうものとして。

 ――――――夜明けは未だ、遠い。



【小沢澄子@仮面ライダーアギト 死亡確認】
【桐谷京介@仮面ライダー響鬼 死亡確認】
【牙王@仮面ライダー電王 死亡確認】

 残り30人



【全体備考】

※E-1エリアにガイアドライバー@仮面ライダーWが放置されています。
※E-2エリア廃墟が焦土になりました。また、同エリア中央に巨大なクレーターが生じています(規模は後続の書き手さんにお任せします)。またD-2エリアやD-1エリアの一部にも施設の窓ガラスが割れるなどの形で戦いの影響が及んでいる可能性があります。
※E-2エリア内にあったズ・ゴオマ・グ、紅音也、照井竜の遺体及びに彼らの首輪がどうなったかは後続の書き手さんにお任せします。

※小沢澄子、桐谷京介、牙王の遺体及びガオウベルト&マスターパス、アビスのデッキと契約モンスター、基本支給品×7、彼らのデイパックは消滅しました。彼ら及びにキング(@仮面ライダーキバ)の首輪については後続の書き手さんにお任せします。また、E-2エリアのどこかにライダーブレス(コーカサス)@仮面ライダーカブト劇場版GOD SPEED LOVEが放置されています。

※E-1エリアに基本支給品一式+音也の不明支給品×2と、基本支給品一式+東條の不明支給品(東條から見て武器ではない)の入った二つのデイパック、及びにバギブソン@仮面ライダークウガが放置されています。

※以下の支給品は、ガタックゼクターが運んだデイパックの中に入っているはずの物ですが、デイパックが破損しているためいくつかはE-2エリア、E-1エリア、F-1エリア内に落ちているかもしれません。または、やはりいくつかは攻撃に巻き込まれて消滅した可能性もありますが、詳しくは後続の書き手さんにお任せします。

@ガタックゼクターが運んだデイパック内にあるはずの支給品:照井の不明支給品、アタックライドカードセット@仮面ライダーディケイド、ガイアメモリ(スカル)@仮面ライダーW、変身音叉@仮面ライダー響鬼、トリガーメモリ@仮面ライダーW、ガルルセイバー(胸像モード)@仮面ライダーキバ 、ユウスケの不明支給品(確認済み)×2、京介の不明支給品×0~1、ゴオマの不明支給品0~1、三原の不明支給品×0~1
【備考】
※カードセットの中身はカメンライド ライオトルーパー、アタックライド インビジブル、イリュージョン、ギガントです
※ライオトルーパーとイリュージョンはディエンド用です。
※インビジブルとギガントはディケイド用のカードですが激情態にならなければ使用できません。
※ただし、上記の支給品の内ライダーベルト(ガタック)@仮面ライダーカブトは確実にガタックゼクターに確保されています。

※レンゲルバックル+ラウズカード(クラブA~10、ハート7~K)@仮面ライダー剣が移動を開始しました。『剣の世界』保全のために動き始めるつもりですが、具体的な行先やそこでの行動については後続の書き手さんにお任せますが、少なくともE-2から見てD-2方向ではありません。

※22時10~15分の間に、アンデッド十三体と同時融合した仮面ライダーブレイドキングフォームが現れました。これによってジョーカーアンデッドである相川始、及びアルビノジョーカーである志村純一が影響を受けると思われますが、それがどのように現れるのかは後続の書き手さんにお任せします。
※またその約三分後にロイヤルストレートフラッシュの余波が流れ弾として、E-2エリアから北方向に向かっていくつかの方向に放たれました。サイドバッシャーのサイドカーとD-2市街地の一部以外にも何かを破壊しているかもしれませんが、具体的には後続の書き手さんにお任せします。


103:闇を齎す王の剣(5) 投下順 104:それぞれの道行(1)
時系列順 104:それぞれの道行(1)
一条薫 107:慚愧
ン・ダグバ・ゼバ 108:進化
小沢澄子 GAME OVER
浅倉威 108:進化
桐矢京介 GAME OVER
牙王 GAME OVER
小野寺ユウスケ 107:慚愧