※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

闇を背負う男と光の名前を持つ女 ◆LuuKRM2PEg




空には、太陽が昇っていた。
光はとても暖かく、世界を照らしている。
何よりも、眩しかった。
しかし彼は、それを見上げようとはしない。
いや、浴びようとすらしなかった。
道を歩く一人の男は、あえて日陰を進んでいる。

「相棒…………」

蚊の鳴くような低い声で、呟いた。
一歩、また一歩と進むごとに、ブーツの踵に付いた金具が音を鳴らす。
彼の格好は、異質に満ちていた。
上半身に羽織っている黒いロングコートは左袖が無く、腕を晒している。
全身に飾られている金属の装飾品は、身体の動きに合わせてゆっくりと揺れた。
その腰には銀色に輝く金属のベルトが、巻かれている。
唯一、白いTシャツだけが何処にでも見られそうだったが、この中では明らかに浮いていた。
そして、その瞳からは一切の光が感じられない。
先程の出来事を、矢車想は思い返す。
気がついた時には、既に知らない場所に立っていた。
大ショッカーという聞き覚えのない組織。
崩壊する惑星。
自分の世界を救うために、行う殺し合い。
この首に巻かれた首輪。
そして――――

「――――ッ!」

脳裏に浮かんだ光景に、舌打ちをした。
そして、苛立ちを覚えて壁を叩く。
拳に痛みを覚えたが、気にならない。
弟と認めた男、影山瞬の首が吹き飛ばされたのに比べれば。
また、弟を助けることが出来なかった。
これで三度目だ。
最初は、二人目の弟である神代剣。
仮面ライダーサソードとしてワームと戦った彼は、本当はワームだった。
聞いた話によると、ワームを絶滅させるために、己の命を犠牲にしたらしい。
二度目は、忘れもしない港での夜。
影山と共に、白夜の世界を求めて旅に出ようとした。
しかしその矢先に、弟の身体はワームにされた。
あの時の顔を、言葉を忘れることは出来ない。

――俺は、兄貴も知らない暗闇を知ってしまった

知らぬ間に、自分達の憎むワームに変えられてしまった、弟。
光を求めようとしたのに、竹篦返しを受けてしまった。
そして、弟はこの世界に絶望した。

――俺はもう、一生この暗闇から出れないよ

ワームという名の、もう二度と抜け出せない闇。
ワームという名の、もう二度と光を掴めない世界。
ワームという名の、絶望。

――さよならだ、兄貴

弟の願いを受けて、変身する。
そのまま、彼を葬った。
影山の遺体と、ずっと一緒にいるはずだった。
しかしこの三度目は、大ショッカーという訳の分からない奴らによる死。
初めは、何故この手で殺した弟がこの世にいるのか、理解できなかった。
しかしその真相を知ることも出来ずに、あっさりと殺される。
自分は目の前にいながら、何もやれなかった。
大いに呪った。
大ショッカーと、不甲斐ない自分自身を。
何が暗闇だ。
弟の死を防げずに、何が兄だ。
これは罰なのか。
光から目を背いた自分に対する、制裁なのか。
だとすれば、自分を裁け。
何故、弟達を殺す。
自分一人だけ、孤独の暗闇を味わえと言うことなのか。

「ハハッ………ハハハハッ」

乾いた笑みが、口から漏れる。
自身への憤りと、弟を失った悲しみ。
自嘲するような笑みだった。
涙は流れない。
もう、とっくのとうに枯れ果てたからだ。
今の矢車には、殺し合いと言う状況は頭にない。
自分が住む世界がどうなろうと、知ったことではなかった。
大ショッカーは戦いに残れば、どんな望みを叶えると言った。
だが弟を殺した連中の言うことなど、誰が信じるか。
世界が滅ぼうとも、関係ない。
むしろ、自分が滅べば弟達と暗闇で再会できるのではないか。
様々な考えが浮かんでは、一瞬で消えていく。
それ故に、彼は名簿も荷物も全く確かめていなかった。

「あの、大丈夫ですか……?」

そんな中、声が聞こえた。
矢車は笑うのを止めて、そちらに振り向く。
そこでは見知らぬ一人の女が、怪訝な表情でこちらを見つめていた。










気がついた光夏海は、周りを見渡す。
目の前には、病院と思われる大きな白い建物が顕在していた。
証拠に、屋上には赤い十字のマークが描かれた看板がある。
しかしそれを見た瞬間、彼女は微かな恐怖を感じた。
まるであの赤が、鮮血の色に見えてしまったため。

「士くん…………ユウスケ……………大樹さん……………」

この地にいると思われる、親しい人達の名前を呼んだ。
だが、帰ってくるのは沈黙のみ。
恐怖を感じた彼女は、息が荒くなった。
しかしそれでも、何とか平静を保とうとする。

「一体、どういうことですか…………?」

いつものように、世界を巡る旅を士達と一緒にしているはずだった。
しかし次の世界に行く際に、目の前で見知らぬ男の死を見せつけられてしまう。
そして、写真館の扉を開けた途端、大ショッカーに殺し合いを強制された。
あの組織は士達が必死に戦って、壊滅させたはず。
それなのに何故、こうして残っているのか。

「おじいちゃん…………!」

そしてあそこにいた死神博士。
目覚めたときには、ほんの少ししか姿が見えなかった。
しかし、あの老人は間違いなく死神博士のはず。
かつて祖父の光栄次郎は、ガイアメモリの力によって、無理矢理あの姿にされた。
まさか、また大ショッカーに捕らわれて、協力させられているのか。
その可能性に至った途端、夏海の中で不安が生じる。
たった一人のおじいちゃんが、こんな事に協力させられている。
たった一人のおじいちゃんが、危険な目にあっている。

「……いや、こんな所で挫けてる場合じゃありません!」

自分に言い聞かせるように口を開きながら、夏海は首を横に振った。
そうだ、悩んだって何も始まらない。
士達ならこんな時、迷わず行動するはず。
強制された戦いを壊し、みんなを助けるために。
自分のやるべき事は、そのサポートをすることだ。
いつもはただ、士の帰りを待つことしか出来ない自分。
しかし、今度はそれだけでは駄目だ。
かつて仮面ライダーの壊滅を目指したディケイドを、止めようと決意したときのように。
自分も戦うときだ。

「…………ん?」

決意を固めた夏海の耳に、音が入る。
風の流れや、植物が揺れた事ではない。
足音と、笑い声だった。
彼女は思わず、そちらに向かって歩く。
無論、警戒は忘れなかった。
いきなり出会った相手が凶悪な人物だったら、どうなるか分からない。
夏海は物陰に隠れながら、ゆっくりと覗く。
そこにはホームレスのような格好をした、見知らぬ男がいた。
笑っているが、瞳からは光が感じられない。
まるで闇のように、空虚に見えた。
この状況に恐怖を感じているのか?
何がなんだか分からないまま戦いを強制され、錯乱状態になっているのか?
どうすればいいか分からないが、とりあえず落ち着かせた方が良いかもしれない。

「あの、大丈夫ですか……?」

夏海はゆっくりと動きながら、男の前に現れた。








病院の影となる場所で、矢車と夏海は顔を合わせる。
そんな中で、夏海は対話を試みた。
しかし何を言っても、ろくな答えが返ってこない。
出会ってからそろそろ十分が経過するが、分かったことは矢車想という名前だけだった。
相手はこちらに襲いかからないので、少なくとも殺し合いには乗ってないと思われる。
だが、だからといって信頼が出来なかった。

(うう、なんですかこの重い雰囲気…………)

夏海は矢車から放たれる暗いオーラを感じて、息苦しさを覚える。
この男は自分のことを見つめるが、何を考えているか理解できない。
共に旅をしている士からも、時々変な言動を見られた。
しかし、その中には誰かを助けようとする意志が、少なからず感じられた。
だが目の前の彼からは、何かを読み取ることが出来ない。
何を話せばいいのか、何を聞けばいいのか。
夏海にはそれが分からない。
そんな中、矢車は突然背を向けた。
別れの言葉すらも全く言わず。

「あ、ちょっと矢車さん!」

夏海は引き留めようとするが、矢車は足を止めない。
それに焦った彼女は、前に出た。

「こんな所を一人で動くなんて、危ないですよ!」
「知らないな」
「なっ…………!」

矢車はさも興味なさそうな態度で、鼻を鳴らす。
その態度に夏海は苛立ちを覚えるが、堪えた。
このまま放っておいたら、彼は何処かに行ってしまう。
それに危惧した彼女は、何とか言葉を続けた。

「…………私、貴方についていきます」
「はぁ?」
「だって、貴方が心配ですから。このまま放っておく事が出来ないんです!」

夏海は真っ直ぐな瞳を向けながら、思いを口にする。
矢車に構う理由は、それだった。
彼の姿に、見覚えがあった。
かつて全てのライダーから敵と見なされて、絶望に沈んだ士。
あの時の彼と、矢車があまりにも重なって見えたのだ。
自分には、矢車に何があったのかは知らない。
けれど、放ってはおけなかった。

「………………」

夏海の視線を浴びる矢車は、黙ったまま。
彼女が現れてから、色々なことを問いただされた。
しかも聞いてもいないのに、自分のことをペラペラと話す。
世界を渡る技術を持つ、大ショッカーという組織について。
アポロガイストという危険人物。
そして門矢士、小野寺ユウスケ、海東大樹という、三人の男。
正直な話、鬱陶しさを感じた。
だが、情報を聞き逃す気にはなれず、最後まで聞いた。
かつて、ZECTきっての精鋭部隊シャドウのリーダーを勤めていた時の、悲しい性か。
自嘲を覚えながらも、矢車は考える。
恐らくこの女は、自分が黙っていても勝手についてくるはずだ。
そしてどれだけ断っても、止めようとする。
人の上に立っていたからか、それを読み取れた。
そうなると、これ以上反抗したところで、面倒なだけ。

「勝手にしろ」

気怠そうに、矢車は答える。
すると、夏海は途端に顔を明るくした。
それに抵抗を感じるが、気にしないことにする。
実は言うと、この場で殺すことが出来た。
だが、そんな気にはなれなかった。
元々殺し合いも、世界を守ることも、大ショッカーの褒美とやらも、どれも興味がない。
そして、この夏海という女も生きようが死のうがどうでもいい。
向こうが危機に陥ろうとも、助ける気はない。
勝手についていこうとするなら、勝手に死なせるつもりだ。

「ありがとうございます!」

そんな彼の考えも知らずに、夏海は感謝を告げる。
矢車はそれを聞いても、何も感じない。
充足感も何も、覚えなかった。
ふと、彼は思い出す。
夏海と出会った際に、名簿をようやく見た。
その中には、あの天道総司と加賀美新の名前があった。
もしかしたら、奴らの甘さが伝染したかもしれない。
夏海の笑顔を見る矢車は、そんな事を考える。







二人は互いに名乗ったが、まだ知らないことがあった。
それは、自分に支給されたアイテムについて。
夏海のデイバッグの中には、一匹の白い蝙蝠が眠っている。
彼女もよく知る、キバの世界で出会った仲間。
キバーラが、未だに眠っていた。
彼女はまだこの現状に気づいていない。
そして矢車のデイバッグの中には、龍騎の世界に存在するカードデッキが眠っていた。
その世界を代表する、仮面ライダー龍騎に変身する青年、城戸真司の写し身とも呼べる男が使っていた物。
漆黒の龍を操る戦士への変身を、可能とさせる。
仮面ライダーリュウガに変身する為のカードデッキは、未だに眠っていた。
この二つが、矢車想と光夏海にどのような運命を導くのか。
それは誰にも分からない。



【1日目 日中】
【E-5 病院前】


【矢車想@仮面ライダーカブト】
【時間軸】48話終了後
【状態】健康、弟たちを失った事による自己嫌悪、あらゆる物に関心がない
【装備】ゼクトバックル(キックホッパー)@仮面ライダーカブト、カードデッキ(リュウガ)@仮面ライダー龍騎
【道具】支給品一式、不明支給品(1~2)
1:光夏海と行動するが、守る気はない。
2:殺し合いも、戦いの褒美もどうでもいい。
3:天道や加賀美と出会ったら……?
【備考】
※支給品は未だに確認していません。
※ディケイド世界の参加者と大ショッカーについて、大まかに把握しました。


【光夏海@仮面ライダーディケイド】
【時間軸】MOVIE大戦終了後
【状態】健康
【装備】キバーラ@仮面ライダーディケイド
【道具】支給品一式、不明支給品(0~2)
【思考・状況】
1:矢車と行動する。放っておけない。
2:士、ユウスケ、大樹との合流。
3:おじいちゃんが心配。
【備考】
※支給品は未だに確認していません。
※矢車にかつての士の姿を重ねています。
※矢車の名前しか知らないので、カブト世界の情報を知りません。
※大ショッカーに死神博士がいたことから、栄次郎が囚われの身になっていると考えています。

【全体事項】
※この二人がこれからどうするかは、後続の書き手さんにお任せします。


004:Wアクション/二人の不幸重なるとき 投下順 006:共同戦線
004:Wアクション/二人の不幸重なるとき 時系列順 006:共同戦線
GAME START 矢車想 019:near miss
GAME START 光夏海 019:near miss