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進化 ◆nXoFS1WMr6



「おい、起きろよ、俺と戦おうぜぇ」

どこからか自分を呼ぶ声がしてン・ダグバ・ゼバは意識を取り戻した。
その声はとても狂気に満ちていて、それでいて絶対に抗えないと感じさせる何かがあった。
なぜかダグバにはその声の主との遭遇をうれしいと感じられた。
それが何故か判らぬままゆっくりと目を開けたダグバは、瞬時に全てを理解する。
なぜなら今自分の目の前にいる男が放つプレッシャーこそが自分がこの場においてのゲゲルへの認識を改めさせた力そのものであったため。
しかし、この力――テラードーパントの力――はこの男ではなくグラサンの男が持っていたメモリの力ではなかったのか?そんな疑問が浮かんだもののすぐに否定する。
この男がグラサンの男を叩き潰し、メモリを奪った、ただそれだけのことだろう。
しかしそれでも目の前の男の放つプレッシャーはあの男が怪人体に変身した時とほぼ同等のレベルだった。
それを考えるだけでダグバの体は小刻みに震えていた。

「起きたのか?お前、最初に戦った時にすぐ逃げたガキだろ?あの時は楽しめなかったが今は違うよなぁ?」

言われて初めてダグバは最初の戦いのときの蛇の鎧のリントだと気付いたがそれに構う暇もなく男は未だ倒れ伏しているダグバの腹に強烈なキックを放った。
その一撃で最早それまでの時点で息が乱れていたダグバの肺から空気が逃げていく。
数メートル吹っ飛び、何とか呼吸を整えようと必死なダグバが状況を確認しようと男のほうを向いた時、男はすでに行動に出ていた。
自前のバイクのバックミラーに紫のカードデッキと自身を反射させて――。

「変身」

――呟きと同時にいつの間にか巻かれていたⅤバックルに紫のデッキを入れ込む。
それと同時に男の周りにいくつもの虚像がオーバーラップし、それが男に収束していく。
それが完全に収まる頃には、男――浅倉威――は仮面ライダー王蛇へと変身していた。
その光景を目の当たりにし、今にも襲いかかってきそうな男に向けてダグバは真の力を解放した。
無論、浅倉の体から放出されるテラーの力はダグバにも通用する、この場において初めての彼の戦いを見ればそれは痛いほどわかるだろう。
では何故、ダグバは恐怖からまた逃げ出そうといないのか、答えは簡単だ。
――恐怖をたくさん味わいたいという、狂った欲望のため。
それを考えれば、ダグバが今この状況でまた恐怖故に逃げ出すということは考えられないだろう。
恐怖を味わい尽し、身も心もピクリとも動かないレベルまで恐怖してもまだ足りないというほどの強欲な王が今、欲望のままに走り出した。
そして一気に間合いを詰め、お互いの体にそれぞれ強烈な右ストレートを放つ。
ダグバにはあまりダメージがいっていないのに対し、王蛇の体からはあり得ない量の火花が飛び散る。
それはまるで王蛇のダメージをそのまま表したかのように。
数歩下がった王蛇は素手で戦うのは分が悪いと判断し、デッキより一枚のカードを抜き取った。
それをそのまま右手に持つ牙召杖ベノバイザーに読み込ませると、それまで静けさが支配していた空間に一つの電子音声が鳴り響く。

――STRIKEVENT――

その音声に呼応するかのごとく、空中から契約モンスターであるメタルゲラスの頭部を模した武器、メタルホーンが王蛇の右腕に装着される。
メタルホーンの最大の特徴はそのまま、そのリーチの長さ、及び貫通能力である。
詰まる所、現在素手であるダグバに、反撃の手はない。
これならば勝てると信じて先ほどよりもリーチが格段に伸びた王蛇は再び突進する。
渾身のひと突きは回避されたが、それでは怯まず今度は薙ぎ払うようにしてメタルホーンを振り回す。
ダグバはそれも難なく回避するが、流石に恐怖を楽しんでいるとはいえダグバはテラーの力を受けているが故に王蛇の攻撃に対するリアクションがどうしても遅れる。
そのためダグバは王蛇の終わりの見えない連続攻撃をかわしきる自信が無かったが故、作戦を変えた。
ただでさえもう一人のクウガとの戦いで傷ついた体なのだ、いつまでもよけ続けてもいずれは体力切れで追い込まれるだろう。
故に一度王蛇と距離をとり、ガードの体制を整える。
どうせかわしきることができないのなら、今すぐに攻撃を喰らってカウンターを打ち込んだほうが効果的だと考えたのだ。
それを知ってか知らずか王蛇は一気に間合いを詰め、メタルホーンをダグバの身に突き刺さんばかりの勢いで必殺の突きを繰り出した。
ダグバの身にメタルホーンが突き出され、その身から火花が散る。
王蛇は思わず勝利を確信するが、それは甘かったのだと、自覚する。

「フフッ」

ダグバは王蛇の渾身の一撃を喰らったのにも関わらず、笑ったのだ。
恐怖が、そしてこのダメージがなんとも愛おしくて、笑わずにはいられなかった。
その状況に王蛇は柄にもなく戦慄するが、すぐに我を取り戻す。
ダグバの左フックが自身の身に迫っていたため。
それはほとんど零距離で放たれた一撃だったのにも関わらず王蛇は反射的に右手のメタルホーンを構えることができた。
それが何故なのか王蛇にも正確なことは分からない、だがしかし、王蛇は信じていた。
――この盾ならば、ただの一撃のパンチ如き、防ぎきれると――。
――しかし結果は無残なものだった、メタルホーンはダグバの攻撃に耐えうることなく粉々に砕け散ったのだ。
そしてメタルホーンを砕いた程度でダグバの力が収まるわけもなく、そのまま王蛇の体に拳がクリーンヒットする。
再び爆発するように火花が王蛇の体から飛び散り、そのまま王蛇は地面を何度も転がる。
甘かったのだと、改めて自覚させられた。
この敵は恐らく、今まで戦ってきた奴の中でも最上級の実力を持っている。
自分の世界での13人目の仮面ライダーであるあの黒い龍騎や妙な技を使う金の仮面ライダー、オーディンと比べても色あせないような力。
恐らくは城戸や秋山といった他のライダー連中と力を合わせても勝てるかどうか怪しいほどに。
しかし、王蛇は全くと言っていいほどこの状況を恐怖してはいなかった。
この敵は多分どんなに戦っても飽きはしない、こいつなら自分をずっと満足させてくれる。
だからこそ彼はふらふらと起き上がって自身の必殺の手札を一枚、バイザーに読み込ませた。

――FINALVENT――

その声に応えて、サイドバッシャーのバックミラーより現れ出でたのは一匹の大蛇。
仮面ライダー王蛇の契約モンスター、ベノスネーカーである。
王蛇はこの最上級の敵に対して、あの黒い龍騎よりも期待を寄せている。
だから彼は自分の持てる切り札で以って敵に全力で勝負を挑むのだ。
背後から迫りくる大蛇に合わせて王蛇は走りだし、そのまま空高く跳躍する。
そしてそのまま空中で宙返りすると、ベノスネーカーは目前に現れた主に向かって強酸を射出して――。
――それを受けた王蛇は、ダグバに向かって足を連続で上下し、交差させる。
それこそが仮面ライダー王蛇が最も信頼を寄せる必殺の一撃――ベノクラッシュだった。
この一撃を、自分の切り札を喰らって、ダグバはどの程度のダメージを負うのか。
もしかしたら無傷かもしれない、もしかしたら死ぬかもしれない。
こいつは自分の全力を受けて、どんなリアクションをしてくれるのだろう。
そんな思いと共に王蛇の蹴りがダグバの体に届いた。
一撃目はダグバの腕に防がれるが、しかしそれで王蛇の怒涛の攻撃が収まるわけもない。
二撃目がダグバのガードを揺るがし、三撃目でダグバの両手が高く蹴りあげられた。
そして四撃目でついにダグバのボディに蹴りが届いた。
最初は肩に、次に頭に、そして最後にダグバの鳩尾に鋭い蹴りが突き刺さって――。
そこから少しダグバは宙に浮かぶが、すぐにそれは終わりを告げる。
瞬間的にダグバが宙で小爆発を発生させたため。
最早何も壊れるものが残っていない焦土でダグバは遥か遠くへと、吹き飛んで行ったのだった。
終わりか、呆気ない気もするが、思えば奴は手負いだった。
今まで何人もの仮面ライダーを葬ってきたあの技は間違いなくあの魔王にも通じたのだ。
しかしそれでも王蛇はまだ油断しきっていなかった。
ここで油断し、この場を立ち去ろうとした瞬間に背中から攻撃を喰らった、では遅いということを最早王蛇は理解している。
あの時の黒い龍騎の時のようにならないように、彼は何もない焼野原を一人周りを警戒しながら歩いていく。
そして数メートル歩いたところで、見つけた。
血だまりの中でうつ伏せに横たわる白の悪魔を。
そしてその血だまりが常人においての致死量を有に超えているということを王蛇は理解した。
あそこまでのパワーを誇っていたから自身の必殺技でもと内心期待していたことに気づくが、しかしどうでもいい。
内心つまらないと思いながら、先ほどのあの黒い仮面ライダーならば自分を楽しませてくれるんじゃないかと奴を追おうと、王蛇がその場を立ち去ろうとしたその瞬間だった。

「ウゥ、ウオォォォォォォォ!!」

まるで獣のような、狂った雄たけびを聞いたのは。


気がつけば自分は、ドロッとした生温かい液体の上でうつ伏せになって倒れ伏していた。
何があったのか、強い衝撃を喰らってあまりよく働かない頭を使って考える。
そうだ、自分はあの恐怖の力を持つ男と戦っていたんだった、それであの仮面ライダーの放った必殺技を受けて今ここに倒れているのだ。
現状を理解したダグバはまた恐怖を味わいたい気持ちに押されてすぐさま立ち上がろうとするが、体が動かない。
そこで気づく、先ほどのクウガとの戦いで受けたダメージが大きすぎたのだと。
あのとき受けたダメージは現在も治癒され続けているが、それでもあの激闘の後にすぐ浅倉威、つまり仮面ライダー王蛇という凶悪な参加者との戦いをするというのは自殺行為に近かったのだ。

(あぁ、僕、ここで死んじゃうのかな……、死んだらあのクウガやガドルを倒したリントとももう戦えないし、もう怖くなることもできないんだよね)

そう考えて思わず暴虐の魔王は身震いする。
自分がここでこのまま倒れていたら、間違いなくあの仮面ライダーは自分のことを殺しに来る。
例え殺しに来なかったとしても、この出血量だ。
動けない現状を考えるなら、このままここに倒れ伏していたら自分は次の放送の死亡者に名を連ねることとなる。
そうなれば全て終わりだ、もう誰とも闘うことなんてできないし、誰も怖がらせることもできないし誰にも怖がらせてもらうこともできない。
だがそれを考えた瞬間にダグバの中にたった一つの大きな感情が広がっていく。

(怖い!死んだら全部終わるなんていやだ!僕はもっともっと楽しみたいのに――!?)

そこで気付く。
これが、これこそが最大級の恐怖なのだと。
それはつまり死への恐怖、ダグバがリントを殺す際に何度もその口から聞いた言葉と、先ほどの思考はよく似ていた。
そうか、これが本当の恐怖、迫りくる死、という不可避の現実にダグバは今、心の底から恐怖した。
しかしだからこそ、ここで終わりたくはない。
こんな極上の恐怖、一度きりで終わらせたくはない、ならばどうするか?手段ならある、ゴオマから取り返したアレを使うのだ。

(ありがとう、蛇の仮面ライダーのリント、君は僕をたくさん怖がらせてくれたから……、ほんのお返しだよ?)

そんなことを考えると先ほどまで動かなかった足が動いた。
ふらふらしながら立ち上がったダグバは、そのベルトにかつて自身の真の力を取り戻す際に使った破片を押し込む。
瞬間、湧き上がる力と共に恐怖がダグバの中を駆け巡る。
この力は本当に自分の物なのかと、そう思ってしまうほどの計り知れないパワーが自身から溢れ出る。
それを感じると同時に恐怖の魔王は大きく雄たけびを上げた。

「ウゥ、ウオォォォォォォォ!!」

その声は、まるで世界すべてを闇で覆い尽くすような、なんとも形容しがたい声だった。
強いて言うならばダグバの異名でもある、究極の闇、といったところだろうか。

「ハァ、ハァ、ハハハハハハハァッ!!」

そして悪魔は、笑い声を上げる。
彼の中に流れているエネルギーは最早先ほどの比ではない。
それを全身で感じながら確信する。
もう一人のクウガも、自身が先ほど変じたブレイドという仮面ライダーの最終形態、キングフォームを以ってしても、今の自分の前では赤子に等しいということを。
そして、ダグバは理解する。
つまるところ、今の自分に勝てる者はいないのだと、自分こそが究極の闇をも超えた存在、沈みゆく究極(セッティングアルティメット)になったのだと。
不気味な笑みを浮かべたダグバは、ゆっくりと、自身が向かうべき敵へと、再度向かう。
死の恐怖を教えてくれた、あの蛇の仮面ライダーへと、ゆっくりと歩んでいった。
それを見た浅倉も、瞬時に理解した。
この悪魔の発する覇気や迫力が、最早先ほどとはまるで違うことに。
故に狂喜する、自分の新たな好敵手となりえる存在に出会えたことに。
だが、この敵を倒すにはもうあまり時間が無いことを、王蛇は理解していた。
この悪魔を倒すには、自身の究極の必殺技を叩き込まなければ勝機はない。
しかしそれに必要となるピースの一つが、自身の横で消滅しかかっているのを見てしまったのだから。
胸中、とても名残惜しく思いつつも彼は一枚のカードを、バイザーへと差し込んだ。

――UNITVENT――

「悪いな、本当はもっとお前と遊ぶのも悪くないんだが……、消えろ、そろそろ」

その言葉に反応するが如く、鏡より現れた嬰と犀のモンスターが、ベノスネーカーの元へと集っていく。
一瞬、強力な光が辺りを覆ったかと思えば、瞬間そこに存在していたのはその三体のうちどれでもなく、それぞれのパーツを組み合わせたようなモンスターだった。
その名を、獣帝ジェノサイダー。
仮面ライダー王蛇が持つ三体の契約モンスターを融合させたキメラモンスターである。
そしてジェノサイダーはダグバに向かって強力な酸を放つ。
ダグバは瞬時にそれを回避するも、しかし酸が着弾した地点から爆発が巻き起こり、結果ダグバは体勢を崩す。
そして、その隙を王蛇が逃がすわけもない。
一枚のカードをデッキから引くと同時、王蛇としての一撃必殺の切り札をバイザーへと読み込ませた。

――FINALVENT――

それこそが、仮面ライダー王蛇の真の切り札。
その電子音声に合わせて、ジェノサイダーの腹部に小さなブラックホールが出現する。
ダグバはいきなり背後に現れたそれに吸い込まれないように足に力を込める。
幸いそこまで風力は強くないし、自分の力をもってすればあのブラックホールの射程距離内から離れることも可能だろう。
しかしそこまで考えて、気付く。
目の前にいたはずの王蛇が、自身の視界から消え去っていることに。
どこにいるのかと辺りを見回せば、王蛇は自分よりも上空できりもみ回転をして、足をこちらに向けていた。
そう、これこそが王蛇の必殺技、ドゥームズデイである。
ジェノサイダーが発生させたブラックホールに敵が気を引きつけられている間に王蛇が蹴り込む。
たったそれだけの簡単な必殺技であるこれはしかし、ブラックホールの中に入ってしまったら最早戻ってこられないという最凶の必殺技なのだ。
そして、遂に王蛇のキックがダグバのボディにヒットする。
ガリガリとダグバの身を削るような音がした瞬間にダグバの体は衝撃に耐えられずジェノサイダーのブラックホールに吸い込まれていく。
妨害者さえいなければ、この技を抜ける手段はない。
そして、周りの開けた焦土には人の気配も感じられないため前回のように不意打ちを食らう可能性はない。
更に鏡すらないため、ミラーモンスターを警戒する必要もない。
今度こそ、自分の勝利だ。そうやって思いかけるが、しかし王蛇は油断できなかった。
ここまでの揺るぎない勝利の条件がそろっていても尚、この敵には王蛇を絶対に油断させない力があった。
――そして、その思いは的中する。
王蛇が見守る中、いきなり自身の契約モンスターであるジェノサイダーが炎上したのだ。
瞬間的に起こった事実に王蛇は驚くが、しかし炎で身を焼かれた程度では頑丈なボディを持つジェノサイダーは死なない。
故にこのままドゥームズデイを続けていれば王蛇の勝利はまだありえただろう。
だがしかし、彼に予想外の不幸が降りかかった。
ジェノサイダーが体内まで燃やされるのを警戒し、本能的に腹部のブラックホールを王蛇の指示を待たずして閉じてしまったのだ。
――しかしそれこそが一番の間違い。
ドゥームズデイによって引き寄せられたダグバの勢いは止まらず、ジェノサイダーに向かって猛スピードで突っ込んでいき、そしてその右拳を勢いよく伸ばした。
元々足が遅く、更に今炎上して視界も遮られているジェノサイダーにこの攻撃をかわす術はなく――。
――そのまま胸に拳を受けてジェノサイダーは大爆発を起こし、その場で消滅した。


「ふふふ、アハハハハハハハ!!」

粉塵が収まり、辺りが再び静けさを取り戻したころ、ン・ダグバ・ゼバは狂喜の笑い声を上げた。
それは、自身の強化された力に向けての物。
読者諸君の中には何故ダグバが勢いをつけただけのパンチでジェノサイダーを粉砕することができたのか、疑問に思う者もいるだろう。
更に本来のジェノサイダーは龍騎の世界でも実力は上位に連ねられるライダー、仮面ライダーリュウガのファイナルベント並みの威力を使わなければ、倒すことなどあり得ない。
例え制限がかかっていたとしてもダグバは特別の力など何一つ使わないパンチで簡単にこれを倒した。これは何故なのか。
答えは簡単だ、リュウガのファイナルベントとジェノサイダーに引き寄せられたダグバの渾身の右ストレートの威力が同等であるということ――。
そのただ一つの事実がダグバを満たしていた。キングフォームの力を手に入れた時点でこれ以上はないとばかり思っていたが、まさに上には上がいた。
今の自分に勝てるものは何もいないと、嬉しさが込み上げてくるがそれと同時に彼の中には虚しさが広がっていく。
少し前までの自分でさえ、究極の力を解放したクウガがやっと追いつけるレベルの実力をもっていたのだ。
だからこそ今先ほどまでを大きく上回るパワーアップをしてしまった自分を楽しませてくれるリントはまだいるのかと、ダグバは思考する。
もしかしたら、いないのではないか。そんな思考がダグバを占めてしまって。
そういう意味で言えば本当にガドルは羨ましかったのだなと溜息をついた時だった。

「ああああああぁぁぁぁぁぁ!!」

赤い剣を持った野獣が自らに向かって突進してきているのを見たのは――。


――時は少し溯り――。


ダグバが笑い声を上げている時、仮面ライダー王蛇はピクリと痛む体を動かした。
ジェノサイダーが爆発した時、その近くにいた王蛇は暴風で体を吹き飛ばされていたのだ。
全身がきしむ感覚と、耐えがたい痛み、臓器が痛んだのか体の内部が熱くなり吐血したのだという実感。
それらを全身に受けながら、しかしそれでも王蛇はふらりと立ち上がる。

(はは、最高だ……、これだから戦いは止められねぇ)

彼は遠くで笑う怪人を見つめながら考える。
こいつはこの場に来てからの最高の獲物だと。
この怪人なら自身の必殺技も何かしらの手段で覆すのではないかとは思っていたが、まさかただのパンチで自身の最強の僕を倒してしまうとは。
――面白すぎる。あの黒い龍騎なんて霞んでしまうほどの実力と、迫力を兼ね備えるこの怪人との戦いを王蛇はまだ終わらせたくはなかった。
目の前の敵との戦いをもっと楽しみたい。この終わらない興奮を、もっと楽しみたい。
そんな不気味な欲望を抱きながら王蛇は近くに落ちていた赤い大剣を拾い上げ、思い切り地を蹴った。

「ああああああぁぁぁぁぁぁ!!」

目前に迫る白い悪魔を前に、気付けば王蛇のイライラはすっかり消えていた。
故に今彼の体を支配するのは終わらぬ興奮と戦いへの強い願望のみ。

――もっと、もっと欲しい。戦いが、終わらない戦いを、体が求めている。

こいつとならば、それは実現するかもしれない。
戦いなれた王蛇の力が及ばないのだ、最早客観的に見れば勝ち目はないのかもしれないが――。
――浅倉に、そんなことは関係ない。
戦いを求め続ける乾いた野獣が今、絶叫と共に剣を振り下ろす。
渾身の力を込めたそれは、しかしいとも簡単にダグバの手に収められていた。

「なっ!?」
「まだ戦えるんだ、嬉しいよ、君と戦ってるととっても怖いし、楽しいし。でもさ、どうせなら〝あのメモリ″の力を使ってほしいな」

ダグバの言葉を理解するより先に、王蛇の中で何故自分の力がここまで落ちてしまったのかという疑問が渦巻く。
どういうことだと視点を落とし、気付いた。自身の体に纏っている鎧の色がどこか色あせていることに。
そこで彼は思い出した。この会場に連れてこられる前の自身がなぜ実力では格下のファムに敗北したのか。
それは黒い龍騎に自身の契約モンスターであるジェノサイダーを破壊されてしまったため。
『龍騎の世界』の仮面ライダーにとって、契約モンスターとは言わば、なくてはならない存在なのである。
契約モンスターが主に自身の力を与え、そしてそれを操る主が契約モンスターに餌を与える。
どちらにとってもお互いが必要な存在なわけだ。つまり仮面ライダーが戦いの途中で契約モンスターを失うこと、それはつまり――。
――仮面ライダーとしての大幅な戦闘力の低下、ひいては敗北を意味するのである。
元々契約モンスターが三体いる状態でも戦闘能力に劣るダグバとの戦いなのだ。この戦闘で契約モンスターを失うことは、死を意味する。
それを理解し、王蛇が身を引こうとした時には既に遅く、ダグバの強烈なパンチが腹めがけて放たれていた。
剣をつかまれ、身動きのできなかった王蛇に攻撃をかわす手段はなく、そのまま王蛇の体が勢い余って宙に浮いた。
体中が熱くなって、血を仮面の中で吐きながら王蛇は見てしまった。

自身に向かってその手を翳す白い悪魔を。

「ぐうううぅぅぅぅ!!」

その身に炎を宿した王蛇は火を消そうと必死で地面を転がる。
敵に無様な姿を晒す王蛇を更に嘲笑うかのように、火は逆に勢いを増していく。
ただでさえブランク体となり装甲が薄くなった王蛇は身を襲うどうしようもない熱さを感じながら、急に体に風を感じた。
幸運なことに先ほどのダグバの腹をめがけたパンチは、きれいにカードデッキを叩き割っていたのだ。
それがわざとかどうかは別にして、デッキ以外の部位を攻撃されていたら、間違いなく今頃浅倉は王蛇の鎧の中で息絶えていただろう。
改めて地面に倒れ伏した王蛇――いや最早浅倉威としての姿をさらしている――はいつも身に纏っていた蛇革のジャケットが酷い匂いを出して焦げていた。
自身の体にも火傷を負っていたが、幸いにもまだ動けるようだ。ありがたい。
体の傷を確認した浅倉はふらりと立ち上がってまだダグバに向かう。本来普通の人間ならば、ここで立つことなど考えられない。
では浅倉は何故立つことができたのか、それはまたあとで話すことにしよう。
そう、いま大事なのは、浅倉はまだ戦えるという事実のみ。
だからこそダグバは歓喜する。彼の力を一つ潰した上にあそこまでの実力差も見せつけたのだ。
最早浅倉には、〝あのメモリ″の力を使うしか生き残る手段はない。
その一つの可能性しか考えなかったからこそ、ダグバは浅倉の行動を良く見ていなかったのだろう。
デイパックのメモリを取り出すと思われたその右手は天高く掲げられていた。
そしてその右手についているものを見た時、ダグバは予想外の行動に驚愕したのだ。
無論、何をするのかはわからないが嫌な予感が頭をよぎり、何かしらの行動に出る前に終わらせようとダグバがその手を翳そうとした時。
天から舞い降りた一匹のカブトムシを模したような機械がダグバに体当たりを仕掛けた。
流石に傷付いた体でこれを無視することはできず、ダグバは手を翳すのをやめ、数歩後ろに下がる。
それを見届けたカブトムシ型の機械は未だ天高く掲げられている浅倉の右手のブレスにきれいに収まる。
浅倉はそれを少しふらふらしながら左手で回すと、その体に電子音声と共に新たな鎧が装着された。

――HENSHIN――
――CHANGE BEETLE――

ヘラクレスオオカブトを模したような銀の鎧をまとう戦士の名は、仮面ライダーヘラクス。
もしかしたらこの姿でまた戦うのか、もしかしたら〝あのメモリ″は変身制限にかかっているのかもしれない。
ならばこれでも構わない。思う存分恐怖を味わうだけだとダグバが再度身構えた時、見てしまった。ヘラクスの手が、その腰に向かっているのを。

――CLOCK UP――

その場に電子音声が鳴り響くと同時に、ヘラクスの姿がそこから掻き消える。
逃げたのだと、瞬時に理解するが、ダグバの中には悔しさと共に満足感も溢れていた。

「アハハ、ハハハハハハ!!」

自分は、あの恐怖から今度は逃げなかったのだと。
結局戦いに決着こそ付かなかったが、今はこれでも満足だ。
自分は新しい力を手に入れて、あの恐怖を乗り切った。
その満足感がダグバを占める中、急速にダグバは睡魔に襲われた。
クウガとの戦いの疲労も抜けない状態で浅倉との常に恐怖を味わい続ける戦いはさすがに辛かったのだろう。
それから解放された安心感からか、ダグバは再び深い眠りの中へと落ちていった。

一見するとただの疲労回復のようにも見えるダグバの眠り。
だが、それはもしかしたら数時間前に浅倉がしたのと同じように、新たに手に入れた力を体に馴染ませるための物かもしれない。

――恐怖の権化は、もう一度自身を眠りから覚ます存在が現れるのを待つかのように、焦土の中心でもう一度眠りについた。
――その眠りが覚めるのは、彼自身の体が十分に休まった時なのか、もしくは今回のように他者に妨げられる形でなのか。
――まだそれは誰にも分らなかった。

【1日目 真夜中】
【E-2 焦土】

【ン・ダグバ・ゼバ@仮面ライダークウガ】
【時間軸】第46話終了後以降
【状態】疲労(極大)、ダメージ(極大)、恐怖(極大)、もう一人のクウガ、浅倉との戦いに満足、ガドルを殺した強者への期待、額に出血を伴う怪我(治癒中)、気絶中、仮面ライダーブレイドに1時間50分変身不可、怪人体に二時間変身不可
【装備】ブレイバックル@仮面ライダー剣+ラウズカード(スペードA~13)+ラウズアブゾーバー@仮面ライダー剣
【道具】なし
【思考・状況】
0:ゲゲル(殺し合い)を続ける。
1:恐怖をもっと味わいたい。楽しみたい。
2:もう1人のクウガとの戦いを、また楽しみたい。
3:ガドルを倒したリントの戦士達が恐怖を齎してくれる事を期待。
4:またロイヤルストレートフラッシュの輝きが見たい。
【備考】
※浅倉はテラーを取り込んだのではなく、テラーメモリを持っているのだと思っています。
※ダグバのベルトの破片を取り込んだことで強化しました。外見の変化はあるかやどの程度の強化なのか、また更に進化する可能性はあるのかどうかは後続の書き手さんにお任せします。
※怪人体は強化されましたが、それが生身に影響するのか、また変身時間はどうなっているのかということなども後続の書き手さんに任せます。
※制限によって、超自然発火能力の範囲が狭くなっています。
※変身時間の制限をある程度把握しました。
※超自然発火を受けた時に身に着けていたデイパックを焼かれたので、基本支給品一式は失われました。
※キングフォーム、及び強化された自身の力に大いに満足しました。
※仮面ライダーブレイドキングフォームに変身したことで、十三体のアンデッドとの融合が始まっています。完全なジョーカー化はしていませんが、融合はかなり進んでいます。今後どうなるのか具体的には後続の書き手さんにお任せします。
※一条とキバットのことは死んだと思っています。


E-3エリアに存在する川の中で、浅倉威は水を浴びていた。
先ほど受けた火傷のダメージを癒すのは、やはり水が一番効果的だと判断したため。
ある程度痛みが引いてきたのを感じながらあのとき、何故自分があの行動に出たのかを考える。
無論今でもあの状況であの力を使っても勝ち目が無いから逃げたという考えはできる。
しかし、どうにも腑に落ちないのだ。自分自身、らしくないとも思ってしまう。
そう、あれはそこまで考えられていたものではなく、浅倉らしい野生の勘とでも言うのだろうか、ならばあのときあいつから感じたものは……。

(馬鹿馬鹿しい、過ぎたことをどうこう言ってても仕方ねえしな、また会ったら殺す。それだけだ)

自身にとって最も使いやすかった王蛇のデッキを破壊されたのは痛いが、それでもまだ戦えない訳じゃない。
あの時とは違い、王蛇以外の力があってよかったと心から思う。
そうだ、生きていさえすれば、またいくらでも戦える。前回とは違い、今回はもっとずっと長く戦いを楽しまなければ。
バイクという移動手段が無くなったのは痛いが、まぁなんとかなる。
そんなことを思いつつ、浅倉は体中の痛みが和らいでいるのに気付く。
川に体を付けているからだからなのだろうか、しかしそれでもいつもより早い気がする。
そんな考えを持ちながら、ふと自分の手に目をやった時だった。
先ほどの戦いで負った傷がみるみる内に回復しているではないか。
これはどういうことなのか、ある程度察しが付く者も多いだろうが、これは浅倉が取り込んだテラーの力に準拠する。
何もメモリを取り込んで得られるのは、その恐怖の能力だけではない。
先ほどの戦いで普通は対応できない距離の攻撃に対応できたのも、強化された超自然発火能力を受けても立ち上がることができたのはこのためである。
更には人間を超えたその回復力、及び身体能力も浅倉の体にしみ込んでいるのだ。
しかもドーパントの王の異名を持つテラーを取り込んだのだ、もしかしたら究極の闇と呼ばれるものたちに並ぶほどの能力を浅倉は手に入れたのかもしれない。
最早浅倉は本当の意味で人ではない。
だがそれを悔やみもせず、むしろ戦いが長く続くという事実だけで浅倉の顔には笑みが浮かんでいた。
放送まであと少し。
さらなる力を手に入れ進化した蛇と王の運命は、今はまだ神のみが知っていた。


【1日目 真夜中】
【E-3 川付近】


【浅倉威@仮面ライダー龍騎】
【時間軸】劇場版 死亡後
【状態】疲労(極大)、ダメージ(極大)、満足感、体の各所に火傷(治癒中)、仮面ライダー王蛇に1時間50分変身不可、仮面ライダーヘラクスに2時間変身不可
【装備】ライダーブレス(ヘラクス)@劇場版仮面ライダーカブト GOD SPEED LOVE、カードデッキ(ファム)@仮面ライダー龍騎、鉄パイプ@現実、ランスバックル@劇場版仮面ライダー剣 MISSING ACE、
【道具】支給品一式×3、サバイブ「烈火」@仮面ライダー龍騎、大ショッカー製の拡声器@現実
【思考・状況】
0:これからどうする?
1:あのガキ(ダグバ)は次会ったら殺す。
2:イライラを晴らすべく仮面ライダーと戦う。
3:特に黒い龍騎(リュウガ)は自分で倒す。
4:殴るか殴られるかしてないと落ち着かない、故に誰でも良いから戦いたい。
【備考】
※超自然発火能力を受けたことにより、デイパックが焼けた可能性があり、そのまま走ったので何かおとした可能性があります。 また、おとした場合には何をどこに落したのかは後続の書き手さんにお任せします。
※カードデッキ(王蛇)@仮面ライダー龍騎が破壊されました。また契約モンスターの3体も破壊されました。
※テラーメモリを美味しく食べた事により、テラー・ドーパントに変身出来るようになりました。またそれによる疲労はありません。
※ヘラクスゼクターに認められました。
※変身制限、及びモンスター召喚制限についてほぼ詳細に気づきました。
※ドーパント化した直後に睡眠したことによってさらにテラーの力を定着させ、強化しました(強化されたのはドーパント状態の能力ではなく、非ドーパント状態で働く周囲へのテラーの影響具合、治癒能力、身体能力です)。今後も強化が続くかどうか、また首輪による制限の具合は後続の書き手さんにお任せします。

【全体備考】

※E-1エリアにガイアドライバー@仮面ライダーWが放置されています。
※E-2エリア廃墟が焦土になりました。また、同エリア中央に巨大なクレーターが生じています(規模は後続の書き手さんにお任せします)。またD-2エリアやD-1エリアの一部にも施設の窓ガラスが割れるなどの形で戦いの影響が及んでいる可能性があります。
※E-2エリア内にあったズ・ゴオマ・グ、紅音也、照井竜の遺体及びに彼らの首輪がどうなったかは後続の書き手さんにお任せします。
※E-2エリアのどこかにライダーブレス(コーカサス)@仮面ライダーカブト劇場版GOD SPEED LOVE、サイドバッシャー(サイドカー無し)@仮面ライダー555、モモタロスォード@仮面ライダー電王が放置されています。
※E-1エリアに基本支給品一式+音也の不明支給品×2と、基本支給品一式+東條の不明支給品(東條から見て武器ではない)の入った二つのデイパック、及びにバギブソン@仮面ライダークウガが放置されています。



107:慚愧 投下順 109:ライダー大戦 Round Zero~WARBREAK'S BELL(前編)
時系列順
103:闇を齎す王の剣(6) 浅倉威
ン・ダグバ・ゼバ