Kamen Rider: Battride War(10)   ◆.ji0E9MT9g





どさり、と全身から力が抜けていくのと同時、自分の心を占めていた深い闇がくっきりと晴れていくのが、五代雄介にははっきりと理解できた。
しかしそれに対し、もう深く喜びを感じることも出来ない。
なぜなら、その腹には大きな穴が開いていたのだから。

ふと横を見やれば、仰向けに横たわる乾巧の姿が見て取れる。
死んでしまったかと絶望しかけるが、弱々しいながらも呼吸の音を聞いて、どうやら命に別状はないようだと、今度こそ本当に胸をなで下ろした。
そうして空を見上げるうち、その視界の隅には先ほど自分を撃ったディケイドが足を引きずりながらも自分に近づいてくるのが見えた。

「あ……ぃ……が……ぉ……ぅ」
「――それ以上言うな、もう何も考えなくていいんだ」

ありがとうございました、と礼を述べたかったのだが、どうやら口中に血が絡んでそれどころではないらしい。
精一杯の思いは伝わったようで、ディケイドの表情はわからないが、嗚咽を我慢しているらしいことだけは、何とか理解できた。
あぁ、本当に彼には申し訳のないことをしてしまった、海東さんの命を奪ったも同然の自分を、ここまで思ってくれるのだから、きっといい人に違いなかった。

――と、ふと彼の頬を冷たい夜風が撫でた。
それにつられて視線を空に移すと、自分が暴れたために周囲の木々が崩壊し、一面の星空をそこに映し出していた。
雲一つない、その空に、五代は微笑みを浮かべる。
こんな凄惨な状況でも、太陽は必ず昇るのだ、今は雨や曇りでも、世界のどこかに太陽は昇っている。

だから、心配することなど、何一つも存在しなかった。

(あぁ、きっと明日は青空の下で、皆笑顔になれる日が来る……。大ショッカーも未確認も4号もない、平和な世界で――)

そうして、満足げに彼は瞳を閉じて。
きっと、空を彩る眩しい青の一部となったのであった。

【五代雄介 脱落】
【ライダー大戦 残り人数 6人】

もう二度とライダーを破壊しない、そう誓ったはずなのに、自分は結局五代を殺すことでしかこの悲劇を終わらせられなかった。
これでは結局、金居や渡たちの言う破壊者から、何も変わっていない。
遂にその瞬間、ディケイドは膝を折って。

「--うあぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

絶叫と共に、その拳を振り下ろすことしか出来なかった。
失意に沈むディケイドの元に、五代の足下に置かれたライドブッカーより、カードが飛び出してくる。
仮面ライダークウガの力を取り戻したことを意味するそれを、ディケイドは流石にいつもの調子で掴むことは出来ず。

そのまま力なく落下したカードを一瞥することもなく、ディケイドは五代の先に転がる巧を見る。
――息はある。
なれば自分がここでするべきは、戦場であるこの場で生身の仲間を差し置いて悲しみに暮れ絶望することではないはずだ。

まだ自分を仮面ライダーと信じてくれる仲間のためにも、ここで立ち止まることは最も許されないことであった。

「そうだよな、――雄介」

笑顔のまま逝った彼にもう一度視線を送り、彼は再度歩み出した。
巧を抱きかかえ、ディエンドライバーをデイパックに仕舞い、クウガのカードをしっかりと納めて。
全ての罪が許されなくとも、自分には立ち止まっている暇などないと。

仮面ライダーディケイドは、未だその旅を続けるのだった。

【門矢士 離脱】
【乾巧 離脱】

【ライダー大戦 残り人数4人】




ディケイドが取り戻したクウガの力。
それが死の間際五代雄介に仮面ライダーとして信頼を受けたから取り戻すことが出来たのか、それとも破壊者として仮面ライダークウガを破壊したために得られたものなのか。
もはやそれは士にも、恐らくは誰にもわからないことだった。




「どれだけ念じても来ないと思えば、やはりこういうことだったのですね……」

ディケイドたちが去ってから数分の後。
キング、紅渡はそこに横たわるライジングアルティメットの死体を見て、そう呟いた。
ディケイドたちとの戦いの最中、彼らの背中の先に横たわるギラファアンデッドを見た渡は、そのまま戦いから離脱し、ライジングアルティメットを操る術を見極めようとその姿を影から見ていた。

その結果、緑の戦士二人が次いで破壊しようとし、また金居が発した「地の石さえおいていけば危害は加えない」という言葉から、その石がライジングアルティメットを操るのに必要なものであり、そしてその石を奪えば彼の支配権を得られることを理解したのだった。
そして、緑の戦士と金居の決着を見届けた後、地の石を奪い、そこに現れた黒い仮面ライダーと戦闘に突入。
適当なところで離脱するべきかと判断したところで、豹変した相川始の乱入を許したということである。

「始さん……いいえ、相川始。貴方もまた僕と利用し合うだけの関係、でしたね」

そう呟く声には怒りも込められていたが、しかし一方で寂しげな表情を浮かべていたことに、彼は気づいたのだろうか。
ともかく、と彼は先ほどの戦利品であるひび割れた地の石を握りしめる。
クウガは死に、この石の意味は最早なくなったも同然、この戦いでスコアもあげられず、得られたものは実質ないように彼には感じられた。

「とはいえ、確実に参加者は減りました。これで、僕の世界の平和も――」

そこまで口にして、名護たちと出会った時、この惨状を引き起こしたのが自分だと知ったら彼らは悲しむだろうなとふと胸をよぎった。
しかし、と彼は大きく頭を横に振って。

「いえ、僕は新しいファンガイアの王。こんなところで立ち止まっているわけにはいきません」

――結局のところ、結論を先延ばしにすることで、その思考を終わらせる。
そのまま、ここにいる意味もないと相川始が乗ってきたハードボイルダーに跨がって。
未だ迷う若き王は、戦場を後にした。

【紅渡 離脱】
【ライダー大戦 残り人数3人】




「ハァァァァァァ!!!!」
「ウオォアァァァ!!!!」

病院に残った参加者のうち、未だに戦い続ける男が二人。
一人はその思考を破壊に染め上げられた死神、ジョーカー。
そしてもう一人はその狂気をその一身に受け止めようとする仮面ライダー、響鬼。

しかしその戦況は、先ほどまでと変わらず少しばかり響鬼の不利のようであった。
理由は単純。
純粋に、仮面ライダー響鬼の最強形体であるアームド響鬼を以てしてもジョーカーの全力には僅かに及ばないのだ。
むろん元より彼らの間にはダメージの差が存在したが、それを差し引いても戦況は響鬼のジリ貧のように思えた。

しかし、響鬼の目的はジョーカーの封印ではない。
彼の狂気を止め、その身を相川始に返してやること。
故に、彼は自身最強の一撃を出し渋っているのであった。

「グアァ、グアァァァァァ!!!!」
「――相川、苦しいのか?」

しかし、そんな中、ジョーカーが突然頭を抱え暴れ出す。
それがまるで響鬼には、早く止めてくれとそう懇願するように見えて。
このまま彼を暴れさせ続けるよりも、全力の一撃で強制的にその活動を制止させた方がいいのではという考えが、響鬼に浮かんでいた。

「わかったよ、それなら--鬼神覚声!」
「グアァァァァァ!!!!」

響鬼がアームドセイバーに向け気合いを高めるのと同時に、ジョーカーもまたその腕の鎌にこれまでで最高のエネルギーを高めていく。
どちらにせよ、これで終わらせる。
その思いと共にアームドセイバーを構えると、その短剣の先から、響鬼の何倍もあろうかという炎の剣が象られた。
さしものジョーカーも緊張を高める中、両者は一斉にそのエネルギーを相手に向けて――。

「タァーーー!!!!」
「ウオォアァァァ!!!!」

瞬間、あたりは爆発に包まれた。




「ってて……」

インパクトの数秒後、あたりを包んだ煙が晴れた中で、響鬼――否既に日高仁志の姿を晒している――は一人呟いた。
余りの衝撃であったが、ジョーカー、相川始は死んではいまい。
さて一体どこへ、と全裸のまま歩き出そうとした、その瞬間だった。

「――ご無事でしたか。ヒビキさん」

後ろから、妙にヒヤッとする声をかけられ、ヒビキは思わずといった様子で振り返る。

「……って何だ志村か。驚かすなよ」
「申し訳ございません、そんなつもりはなかったんですが」

そこに立っていたのは仲間である志村純一、故に警戒は必要ないとヒビキはそのまま前を向く。
と、流石に一人ならともかく人前で全裸のままでいるのは小っ恥ずかしいと、ヒビキはデイパックから着替えを取り出し、それに着替えていく。
その間会話がないのも何なので、ヒビキはいつもの調子で後方の志村に語りかける。

「今のところ、他に誰と会った?」
「いえ、自分も先ほどから気を失ってしまっていて、ヒビキさんが見つけた一人目です」
「そうなのか……、実は俺も五代とか金居から離れたところで戦ってたからさ、皆がどうなってるのか心配なんだ。
あ、でも鳴海と矢車、それから葦原と乃木は逃げたのをちゃんと確認したぞ」

それを聞いて、そうですか、と短く済ませる志村。
それに何か違和感を覚えつつも、ヒビキは会話を続ける。

「そう言えばさ、相川ってお前の世界の住人なんだよな?確か、橘のいた時代より三年?だか未来から来たらしいけど、あいつはどうなったんだ?」
「……聞くまでもないでしょう。アンデッドは一旦全てを封印されました。ジョーカーも例外なく。それが解放されたから俺たち所謂新世代ライダーが生まれたんです」
「へぇ……」

……やはりだ。
先ほどから何か、志村から異様な雰囲気を感じる。
まさか、とは思いつつも、ヒビキはその四肢に布を纏い、一つ息をつき、先ほど彼が現れ、その顔を見てからの最大の疑問を投げかけた。

「ところでさ」
「……はい」
「――何でお前の血緑色なの?」

――それは、彼の鼻や頭から流れ出る血の色が、人間のそれと明らかに違うこと。
それに対し、志村はいつもの笑顔を絶やさぬままゆっくりとヒビキの元へ歩んでくる。

「あぁ、それなら気にする必要はありません」
「そうなのか?でも――」
「――すぐにあなたの血で、赤く塗り直しますから」

その言葉と同時、一瞬で膨れあがった殺意を感じ取ったヒビキは、そのまま大きく後ろに飛び退こうとして――。

――OPEN UP

一瞬で間合いを詰められた。
そのまま自分の身体をグレイブラウザーが貫いていくのを感じて、流石のヒビキもすぐに立っていられなり、力なくグレイブによりかかってしまう。

「最後に一つだけ教えておいてやるよ。天美あきらを殺したのは、俺だよ、ヒビキ。
あいつもお前も最後の最後まで人の悪意を疑うことすらしないなんて、全く最高の世界だな、お前らの世界ってのは」

そこまで言って、一気にグレイブは剣をヒビキの身体から引き抜いた。
そのまま徐々に遠ざかっていく足音を耳にしながら、ヒビキはその震える手で以て最後のメッセージを遺す。
それが出来るのはグレイブの油断ではなく、ヒビキの鍛え抜かれた身体と精神力のためであったが、修行を途中で諦めたあきらのみしかしらないグレイブには、それに気づくことなど出来るはずもなかった。

(皆、後のことは・・・・・・、頼んだぜ)

『頑張れ、仮面ライダー。 ヒビキ』

地面に刻むその言葉は、志村へのダイイングメッセージ・・・・・・などではなく、仲間たちへの鼓舞。
なぜなら、どんな巨悪であろうと仲間たちは必ずそれを打ち倒してくれると、そう信じているから。
自分が最後に残す言葉は、本当に自分が言いたいことであるべきだと、彼はそう思ったのである。

ありきたりでも、きっと自分の思いは十二分に彼らに伝わるはずだ、とそう信じて。
と、瞬間胸中に去来するは数少ない未練。

(少年、最後まで成長、見届けてやれなくてごめんな……。京介、こんな師匠で本当ごめん、何とか、生き延びてくれ)

元の世界で帰りを待っているであろう弟子と、この場でまだ戦っているはずの弟子を思いながら、目をつむることだ。
――その弟子である京介が、自分より遙か未来、鬼となった時代より来ていて、そして数分前にその命を落としたことなど、もちろん知るよしもないまま。
歴戦の音撃戦士は、他人を疑う、ということと無縁であったために、その命を悪に刈り取られたのだった。

【日高仁志 脱落】
【ライダー大戦 残り人数……1人】




かくして、病院を舞台とした大激戦の結果は、凄惨たる状況と主たる目的であった五代雄介の死、というある種最悪の形で、その幕を下ろした。
しかし、彼らに悲しんでいる時間はない。
限られた時間は動き続けるのだ、そう、今も――。




「ハァッ、ハァッ……、俺は、また……、ジョーカーに――!」

彼、相川始は、F-4エリアにある川のほとりで、先ほどまでのジョーカーの姿を変身制限によるもので強制的に相川始のものに戻しながら、大きく息をした。
あの時、響鬼と自身の攻撃のぶつかり合いによる爆発による衝撃が収まる前に、ジョーカーはなおもその本能のまま破壊を続けんと進軍を再開しようとした。
しかしそれは、すぐに止まる。

自身の元に近づく、もう一人のジョーカーの存在を、感覚で把握したため。
そのイレギュラーへ本能的に危機感を覚えたジョーカーは、そのまま戦場から駆けだし、そのまま変身制限いっぱいまで、こうして逃げてきたようである。
そんな最中にも、頭の中に、どうしようもない疑問は沸き上がり続ける。

何故、キングフォームに唯一なれるはずの剣崎が死んだのに、自分の中のジョーカーが刺激されたのか。
何故、ジョーカーがもう一人いるのか。
何故、何故、何故――。

「剣崎、俺は――!」

今はもう亡き友に、思わず縋ろうとして。
次の瞬間には、彼の意識は闇に消えていた。
疲労と、何よりジョーカー化の反動によって。

彼が再び目を覚ましたとき、その頭には、一体何があるのか。
それはまだ、誰にもわからないことだった。


【一日目 真夜中】
【F-4 川のほとり】


【相川始@仮面ライダー剣】
【時間軸】本編後半あたり(第38話以降第41話までの間からの参戦) 
【状態】ダメージ(中)←回復中、罪悪感、若干の迷いと悲しみ、仮面ライダーカリスに1時間55分変身不可、ジョーカーアンデッドに1時間50分変身不可
【装備】ラウズカード(ハートのA~6)@仮面ライダー剣、ラルクバックル@劇場版仮面ライダー剣 MISSING ACE
【道具】支給品一式、不明支給品×1、 
【思考・状況】 
(気絶中)
基本行動方針:栗原親子のいる世界を破壊させないため、殺し合いに乗る。 
0:俺は、また暴走してしまった……。
1:この殺し合いに乗るかどうかの見極めは……。 
2:再度のジョーカー化を抑える為他のラウズカードを集める。  
3:ディケイドを破壊し、大ショッカーを倒せば世界は救われる……? 
【備考】 
※ラウズカードで変身する場合は、全てのラウズカードに制限がかかります。ただし、戦闘時間中に他のラウズカードで変身することは可能です。
※時間内にヒューマンアンデッドに戻らなければならないため、変身制限を知っています。時間を過ぎても変身したままの場合、どうなるかは後の書き手さんにお任せします。
※ヒューマンアンデッドのカードを失った状態で変身時間が過ぎた場合、始ではなくジョーカーに戻る可能性を考えています。
※左翔太郎を『ジョーカーの男』として認識しています。また、翔太郎の雄叫びで木場の名前を知りました。
※ディケイドを世界の破壊者、滅びの原因として認識しました。
※キバの世界の参加者について詳細な情報を得ました。




「どうやら、戦いは収まったようですね?野上君」
「そうみたいだね、村上さん。とはいえ、あんな大きい病院を壊せちゃうなんてここには本当に予想のつかないことがいっぱいだよ」

眼鏡を持ち上げながらそう返すのは、野上と呼ばれた青年、より細かく言えばそれに憑依しているウラタロスであった。
30分ほど前に病院が崩壊したのを見て、そちらに向け走っている最中、良太郎に身体を任せていては何度躓けば済むかわからないという意見でウラタロスが主導権を握ったのだ。

(それにしても、本当、信じられないね。東京タワーが倒壊したかと思えば、今度は病院だ)
(けど、ウラタロス、東京タワーの時と違って、爆弾じゃないみたいだったよ)

脳裏で良太郎が不安そうな声を上げるのを聞きながら、ウラタロスは思う。
あの倒壊が、東京タワーのものと同じく爆弾によるものならばまだ良い、だが個別の参加者によるものだったとしたら――。

「もしそんな奴と出会ってたなら、流石の先輩でも厳しいか」
「……何か言いましたか?」
「いえ、何も――って、言ったそばから」

チラとウラタロスと村上が視線を前に送れば、そこにいたのは男を背負った見知らぬ男。
あちらもこちらに気付いたようであるが、手負いの参加者を背負っているために、無防備にこちらに歩み寄ることが出来ないようであった。
であれば、と村上を右手で制して、ウラタロスは一歩前に出た。

「こんばんは、あなたは病院の方向からやってきたように見えますが、もしかしてあなたは先ほど何故病院が倒壊したか知っているんじゃないですか?」
「……」

返答はない。
らしくなく焦りすぎたか、とウラタロスは自省し、ふっと一つ息をつき、努めて冷静であろうと気持ちを切り替える。

「すみません、自己紹介もまだなのに。……僕の名前は野上良太郎、彼は村上峡児さん。よければあなたたちの名前も――」
「良太郎か、それで合点がいった。お前、ウラタロスだろ?」

――ぴしゃりと、この場では未だ誰にも言っていなかった名前を言い当てられて、さしものウラタロスもその口を止めてしまった。
しかし、一体何故?モモタロスやリュウタロスと交流していればその名を知れる可能性はあるが、それでも表に出ている人格を初対面で当てられるはずもあるまい。
後方で村上が「ウラタロス……?」と怪訝な声を上げ、自身の背中に刺さるプレッシャーが膨れあがるのを感じると同時、すっとぼけても無駄かとウラタロスは思考を入れ替える。

「――確かに、僕はウラタロスだよ。でもそれを知ってるってことはせんぱ……、モモタロスやリュウタロスと会ったってことで良いのかな?」
「いや、あいつらにはここでは会ってない。それより、お前がいるってことはキンタロスも一緒にいるんだろ?もしかしてあの白鳥野郎も一緒か?」

(どういうことや亀の字!あいつ俺らのことどころかジークのことまで完全にしっとるのにモモの字やリュウタには会ってないって言うてるで!)
(――キンちゃん、ごめん、少し静かにしててくれる?僕にもよくわからないんだ、もしかしたら良太郎の言うとおり侑斗が来てるのかもしれないけど――)

驚きの名前を連呼し、しかも自分の仲間たちに――この場では――会っていないと宣う目の前の輩への疑問と注目が否応なしに高まる良太郎の脳内を尻目に、思考停止したように見える良太郎に呆れたのか、村上が前に歩み出る。

「お話の途中で失礼します、彼とお知り合いのようですがお名前は――」
「いや、俺は良太郎とは初対面だ。――いや、このウラタロスたちとも初対面なのか?」
「――お名前は?」

意味のわからない言葉を自分のペースで喋り続ける男に声が思わず怒りの色を帯びるのを隠しもせず、村上は問う。
それに対し、相手はようやく、ああ、と小さく呟いて。

「俺の名前は門矢士、そして背負ってるこいつは乾巧だ。知ってるだろ?村上」

その名を聞いて、村上もまた、その表情を確かに強ばらせた。

――一方で、会話を意図的に混乱させている士の胸中も、決して穏やかなものではなかった。
野上良太郎に村上峡児。
志村によって殺し合いに乗っていると告げられた二人の男と、傷だらけの身体で巧を庇い戦わなければいけないかもしれないのだ。
余裕など、持っていられるはずもない。

(とはいえ、ウラタロスたちがそうおめおめと殺し合いに乗るとも思えない。もしかすると、俺の考えた通り志村の方が・・・・・・)

と、先ほどの死体の中で志村だけがいなかったことと併せて考えながら、士は今、今一度ディエンドライバーの所在を悟られぬように確かめた。

110:Kamen Rider:Battride War(9) 投下順 110:Kamen Rider:Battride War(11)
時系列順
五代雄介
葦原涼
秋山蓮
乾巧
村上峡児
橘朔也
相川始
金居
志村純一
日高仁志
矢車想
乃木怜治
野上良太郎
紅渡
門矢士
海東大樹
フィリップ
鳴海亜樹子




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最終更新:2018年04月04日 23:52