無題(没SS)



E-4エリアにある病院。そこに男女4人がいた。
剣崎一真、矢車想、光夏海、そして東條悟。登場にいたっては先に戦いで気絶してしまい剣崎におぶられた状態であった。

「あ!剣崎さん、これ使いましょう!」
と、夏海が何かを見つけたのか指さして先を行く2人の足を止めさせた。
それは病院の一室に置かれていた担架であった。その意味に頷いた剣崎は負ぶっていた東條を担架に寝かせると少しだけ微笑みを取り戻した。

「…何か聞こえる…耳鳴りのような…」
突然、矢車が声を漏らした。それに対して剣崎も夏海も首を傾げて「え?」と聞き返すも本人は難しい顔をしたまま動かないままであった。

その刹那、ひと時の安息は破られた。

CLOUK UP

「「「!!??」」」
矢車にとって聞きなれた電子音。それが聞こえたかと思うと3人の身は一斉に病院内の壁に叩きつけられていた。

「ぐ…ぁ!!」
「うっ…」
あまりの衝撃に剣崎は口を切ったのか僅かに血を吐いて、夏海は痛みに悶絶といったところであった。担架に乗せられた東條は目覚めのまま放置されている。

「お前…っ!」
そうして矢車は襲撃者の正体を睨んで、既に立ち上がっていた。
マスクドライダーシステム。カブト。だが知っているカブトとは配色が異なる、目は黄金に輝き全身を漆黒に包んでいた。

「全部壊れちゃえ」
ダークカブトはそう言いながらにクナイガンを構えて4人へのとどめを刺そうと一歩踏み寄る。
だが、それにそのまま応じる3人ではない。各々に変身ツールを構えて反撃へと乗り出した。

「「「変身!」」」
矢車がホッパーゼクターを、剣崎がブレイバックルを、夏海がキバーラに手をかませて叫ぶ。そうして3人は仮面ライダーへと姿を変え――

「…何故だ」
――ることは無かった。3人が3人、人間の姿のままで呆然としていた。
大ショッカーによる連続戦闘への制限、それを初めて味わったのだ。しかし今はそれを解き明かしている場合ではない。
ここで変身できなければ戦えない、それはすなわち目の前の敵による攻撃を受けて、死ぬ運命を意味する。
当然、焦りが3人を襲うが、対してダークカブトは仮面の下でクスリと笑った気がした。

「終わりだね」
呆気ない。そう思考しながらにダークカブトは、まずは矢車の命から刈り取ろうと腰部の装置へと手を伸ばした。

その時だった。

『GAAAAAAAAAAAAAA!!』
「ッ!?」
病院の大窓より、院内を破壊しながら巨大な黒竜が現れてダークカブトに噛みついたのだった。
『GUOOOOOOOOOO!!』
ダークカブトを咥えこんだまま今度は病院を真上に浮上する黒龍。
1階から最上階へ。それはほんの一瞬、ぶち破っていった天井の穴から日が差し込む。そして呆気にとられたまま剣崎達の視線はその穴より黒龍に向いていた。

「なん…だ…こいつ!」
黒龍の口に咥えられたダークカブトは、強靭な顎の力で龍の牙が装甲砕いていくのが分かった。このままでは自身は噛み砕かれて龍の餌となってしまう。
今しがたまで4人の命を奪える状態にあったのに、一瞬で今度は自分が奪われる立場になってしまった。それもほとんど意味の分からない状態で。

「ぐ…あぁぁぁああ!」
思考中の身に牙が食い込みミシミシと軋む音が鳴る。
クロックアップを使うか…しかし超高速の数秒で牙を引き抜き口を開き脱出が可能か…。だが、そこまで考えたダークカブトに更に牙が食い込んだ。同時にダークカブトは決断を下した。

PUT ON

『…?』
電子音が鳴りダークカブトを分厚い装甲が覆い直した。マスクドフォームと呼ばれるキャストオフ前の状態。ライダーフォームにスピードは劣るも防御力は段違いである。これで龍の噛み砕きを防ぐことにしたのだ。
この行動は正解であった。何故か噛み砕けない異物を感じてか黒龍は口をもどかしく動かすと、ついにはダークカブトはまるでごみのように吐き捨てた。

上空より、龍の口から放られたダークカブトは近くの平地に強く叩きつけられて更には何度も転がりやっとのことで動きを止めるのだった。
マスクドフォームは言え相当のダメージだったのか、そのまま変身は解けてしまい、擬態天道の姿を現してしまう。

「…ベルト…が…」
蓄積したダメージが目をかすませる。そんな中で擬態天道が見たのは己の腰に巻かれたライダーベルトが火花を散らしている光景。
故障した…それだけを確認して擬態天道は意識を遠のかせるのだった。

傷つき倒れ気を失った主を見て、ダークカブトゼクターは彼の周りを飛び回り続けていた。

  • E-5道路
【擬態天道総司(ダークカブト)@仮面ライダーカブト】
【時間軸】第47話 カブトとの戦闘前(三島に自分の真実を聞いてはいません)
【状態】気絶中。ダークカブトに二時間変身不能
【装備】ライダーベルト(ダークカブト)故障中@仮面ライダーカブト
【道具】支給品一式、不明支給品(1~3)、デンオウベルト+ライダーパス@仮面ライダー電王
【思考・状況】
0:病院にいる参加者達を、全員殺す。
1:天道総司を殺し、『天道総司』に成り代わる。
2:全ての世界を破壊するため、手当たり次第全員殺す。
3:特に優先的に『カブトの世界』の五人を殺害する(最終的には自分も死ぬ予定)。
4:僕はワームだった……。
5:あの龍はいったい?
【備考】
※ 名簿には本名が載っていますが、彼自身は天道総司を名乗るつもりです。
※ 参戦時期ではまだ自分がワームだと認識していませんが、名簿の名前を見て『自分がワームにされた人間』だったことを思い出しました。詳しい過去は覚えていません。
※ ネガタロスの支給品を全て奪いました。


「今のはいったい…」
剣崎は突然起こった出来事に呟いていた。
突如現れた龍は黒いライダーを咥えて飛翔していった。黒いライダーはどうなったのか、あの龍はいったいなんなのか。
「今の、たしか夢で見たことある気が…」
横では夏海が何かを思い出しながらに呟き。矢車は黙って天井の穴を睨んでいた。
だが次の瞬間、矢車は「来るぞ」とかったるしくも言って2人へ伝えた。

「GYAAAAAAAAA!!」
病院を破壊しながらに黒龍ドラグブラッガーは3人の目の前に舞い戻り矢車めがけて咆哮した。既に病院は半壊状態であり、3人と1人のいる場所ぐらいがまともな場所と言えていた。

戦慄を覚える剣崎、夏海、そして余裕なのかどうなのか動じない矢車。
そこへドラグブラッカーの咆哮は続く。

結論から言ってドラグブラッカーの狙いは始めから矢車であった。
現時点で契約者のデッキを持っているのは彼であり、彼とはパートナー関係にある。しかし、それは餌を与えられて初めて成立する関係。
いつから空腹なのかはわからないが与えらぬならば自ら喰らうまで、それが当たり前である。

そしてダークカブトは矢車を狙った進行上にいただけに過ぎない。
運が悪かった。言ってしまえばそれまでだが、それ以上のことは無い。

「俺を食う気か?地獄味だろうな」
「なに言ってるんですか!急いで逃げましょう!」
吠えるドラグブラッカーに問う矢車と、それに叫んで東條の乗った担架の取っ手を持つ夏海。剣崎は矢車の行動に何か作戦があるのかと考えるが、同時に東條の顔を見てハッと何かに気が付いた。

「夏海ちゃん!さっき東條から拾った、カードが入ったケースを!」
「え?あ、あぁ確かバッグの中に…」
剣崎の言葉に急いでデイバックを漁る夏海は、虎のマークの描かれたデッキを見つけると急ぎ剣崎へと渡した。

「一か八か…――変身!!」
先ほどの戦いで彼が見せた変身方法をまね、カードデッキを割れたガラスに映して一声。その身に白虎の鎧を身にまとった。

『GAAAAAAAAA!!』
ドラグブラッカーの口に火炎が集まっていた。目標を焼き焦がしそのあとで食すつもりである。そうして今まさに炎が吐かれようとしたその瞬間、

「ヴェェエイ!」
『GYAAAO!』
タイガの持つ武器、斧型のバイザーが投げつけれてドラグブラッカーの右目を斬りつけた。刹那にあがる龍の咆哮は火炎を別方向に飛ばして矢車への攻撃を失わさせた。

「俺が食い止めます!早く逃げてください!」
吠えるドラグブラッカーの背中に飛び乗って、タイガは2人に告げる。
暴れまわる黒龍は首元にしがみつくタイガを振り下ろそうと体は上下左右へと動かして、更に病院を破壊していく。それに合わせて瓦礫は落ちて粉塵は舞う。

「早く!!」
その言葉を最後にタイガは上空に消え去ってしまった。
ドラグブラッカーが苛立ちを最高にして一気に飛翔したからである。

「う…!わぁあぁぁああああ!!」
仮面ライダーの状態であっても感じる、超常なるスピード。黒龍の背にしがみ付いたままのタイガは振り落とされまいと必死にしがみつくが、龍を治めるどころかなんとか踏ん張るだけが精一杯であった。
『GAAAAAAAAAAAAAAAAA!』
咆哮を上げてドラグブラッカーは飛翔を続ける。
既に病院は小さくなって、昼過ぎの世界を黒い旋風となって飛び回る。
右目を瞑り、痛みに怒りを覚えて首元にしがみ付く戦士をなんとか振り落とそうと暴れまわる。
そうして、一つの建築物に迫った。

「――まずい!!」
タイガが気が付いた時には、もうそれは目と鼻の先にあった。
333メートルを誇る電波塔。赤と白で彩られたシンボル、東京タワー。
特別展望台と呼ばれる個所は250メートルの位置にあった。
『GYAAAAA!!』
そこへ黒龍は背中から勢いよく突っ込んだ。

「ぐっ!…あぁあッ!!」
轟音なる衝撃音と破壊音が響き渡って、タイガは龍の背中より放られて特別展望台の中を凄まじいスピードで転がって更には向こう側の窓まで突き破った。

「こ…の!」
思考が追い付かない。落下寸前、咄嗟に斧を特別展望台であった場所の際に突き刺して、なんとか制止することに成功する。
しかし、斧にぶら下がって宙ぶらりんの状態は決して良いとは言えない。地上300メートルは無いにしろ、このまま落下すればいくら仮面ライダーといえど無事では済まない。

斧を握る手に一層力を込めて、上を見上げた。
特別展望台は、もはや8割は破壊されていた。そして同時に、そこより上の部分の鉄塔があちらへと倒れていた。
当然と言えば当然。間抜きでもされたが如く展望台であった位置を根に先端部が90度近く傾き、333メートルを誇った姿はもう無くなっていた。

今にも崩れそうなタワー上層。そして。

『GAAAAAAAAAAAAAAAA!!』
「どうする…!」
宙ぶらりんの状態のタイガへと、狙いを定めるドラグブラッカーが吠えた。

  • E-5 東京タワー特別展望台(地上250M)
【剣崎一真@仮面ライダー剣】
【時間軸】第40話終了後
【状態】疲労(小)、ダメージ(小)、仮面ライダーブレイドに二時間変身不可 、仮面ライダータイガに変身中。
【装備】ブレイバックル@仮面ライダー剣、ラウズカード(スペードA~6.9)@仮面ライダー剣 、カードデッキ(タイガ)
【道具】支給品一式、ガイアメモリ(ヒート)@仮面ライダーW、ケータッチ@仮面ライダーディケイド
【思考・状況】
基本行動方針:人々を守り、大ショッカーを倒す。
1:この龍をなんとしなければ
2:今は夏海、矢車と共に行動する。二人から話を聞きたい。
3:橘朔也、相川始と合流したい。
4:何故、桐生さんが?……
5:Wとディケイドが殺し合いに否定的ならアイテムを渡したい。
6:龍騎の世界で行われているライダーバトルを止めたい。
【備考】
※龍騎の世界について大まかな情報を得ました。


「……」
剣崎と黒龍が去ったあとの病院で矢車は、少しだけ思考すると瓦礫の上を歩きだした。その足取りは剣崎の消えた方角とは別方向。
「ちょっと矢車さん!剣崎さんを追いかけないんですか!?」
それに夏海は、担架に乗せた東條を瓦礫で足元が悪い中、一生懸命に運んでは言った。

「あいつが俺の求める光ならば失わることはないはずだ…それより…」
「は、はぁ…」
病院の外の道路にまで出て、矢車はあちこちとあたりを見渡した。
倒壊した病院、そしてその北西に広がる森と市街。

(あのライダー、どうして俺は狙った?)
そう矢車は心でつぶやいた。「あいつ」とは同じ世界出身のはずのダークカブトである。まだ変身者がそうと決まったわけではないが、ライダーシステムはザビーやキックホッパーと同じ、自分の世界のもののはずである。
そしてゼクターの資格者であるならば他世界の人間というのも考えにくい。
しかしそこで疑問が生まれる。同世界出身なら何故自分を狙う必要があるのか?

ルール上そんなことをしても何の意味がない。むしろ『カブトの世界』の敗退確立をあげるだけだ。

(…それが目的か?)
一度険しい顔を見せて矢車は息を吐いた。
ダークカブトの目的が自らの世界の破壊…言わば心中であるとすれば。
「地獄に落ちたいといったところか」
ぼそりと呟いて矢車はダークカブトが落ちたであろう個所へと歩き出した。

「また地獄とか言ってます…」
「顔はいいんだけど、性格が問題よね~」
それを見てため息を漏らす夏海とキバーラであった。

  • E-4 病院外
【矢車想@仮面ライダーカブト】
【時間軸】48話終了後
【状態】疲労(小)、弟たちを失った事による自己嫌悪、キックホッパーに二時間変身不可
【装備】ゼクトバックル+ホッパーゼクター@仮面ライダーカブト、カードデッキ(リュウガ)@仮面ライダー龍騎
【道具】支給品一式、不明支給品(0~1)
基本行動方針:弟を殺した大ショッカーを潰す。
1:剣崎一真、光夏海と行動するが、守る気はない。
2:あのライダー(ダークカブト)はなぜ自分を狙った?
3:殺し合いも戦いの褒美もどうでもいいが、大ショッカーは許さない。
4:天道や加賀美と出会ったら……?
【備考】
※支給品は未だに確認していません。
※ディケイド世界の参加者と大ショッカーについて、大まかに把握しました。

【光夏海@仮面ライダーディケイド】
【時間軸】MOVIE大戦終了後
【状態】疲労(中)、ダメージ(中)、仮面ライダーキバーラに二時間変身不可
【装備】キバーラ@仮面ライダーディケイド
【道具】支給品一式×2、不明支給品(0~4)、カードデッキ(タイガ)@仮面ライダー龍騎
【思考・状況】
基本行動方針:大ショッカーを倒し、皆と共に帰還する。
1:剣崎が心配、でも矢車ももっと心配。
2:剣崎からブレイドについての情報を聞きたい。
3:士、ユウスケ、大樹との合流。
4:おじいちゃんが心配。
5:キバーラに事情を説明する。
【備考】
※支給品は未だに確認していません。
※矢車にかつての士の姿を重ねています。
※矢車の名前しか知らないので、カブト世界の情報を知りません。
※大ショッカーに死神博士がいたことから、栄次郎が囚われの身になっていると考えています。
※キバーラは現状を把握していません。
※東條のデイバッグを預かりました。

【東條悟@仮面ライダー龍騎】
【時間軸】インペラー戦後(インペラーは自分が倒したと思ってます)
【状態】担架上で気絶中、疲労(大)、ダメージ(大)、仮面ライダータイガに二時間変身不可
【装備】なし
【道具】なし
【思考・状況】
基本行動方針:全ての参加者を犠牲にして、ただ一人生還。英雄になる。
1:……………………(気絶中)。
2:自分の世界の相手も犠牲にする。
3:ネガタロスの悪の組織を利用し、英雄になるのもいいかも。
4:基本的には病院で参加者を待ち伏せてから殺す(二階の廊下が気に入ってます)。
【備考】
※剣の世界について大まかな情報を得ました。


※ドラグブラッカーの狙いはあくまで矢車です。現状としては空腹であり、目の前のタイガ(剣崎)を狙っています。
※東京タワーは特別展望台(250M)が破壊され、先端部が90度折れ曲がっています。

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最終更新:2018年06月14日 01:06