飛び込んでく嵐の中(4) ◆JOKER/0r3g




 ◆


 時刻を同じくして。
 安全のためE-5エリアからGトレーラーを駆りF-5エリアにまで移動したフィリップは、ただひたすらに時計を睨み付けながら橘の無事を祈っていた。
 橘の作戦が上手くいけば、長く見積もってもあと6分ほどでダグバの変身制限が訪れ、奴は死ぬ。

 確かにそれはダグバという規格外を相手にする上でこれ以上なく堅実な作戦のようにも思えたが、ダグバという存在がどれだけ常識外れの存在かは短い時間とは言え直接戦って存分に思い知った。
 翔太郎や士といった信頼の置ける実力者が何人いても万全の状況は有り得ないという彼の論調に賛同してしまった自分が強く非難できるはずもないが、それでもなお不安を拭い去ることは出来ず。
 そんな不安に駆られながら、次の瞬間、カチリと分針がまた一つ時を刻み、それに伴いまた病院の方向へと視線を戻したフィリップは、見た。

 ――天を貫かんと伸びる巨大な火柱が今までそこに存在していた病院を包み込みいよいよ以てその全てを飲み込んでいく地獄のような光景を。

 「……え?」

 思わず、間抜けな声が漏れた。
 まさかあれがダグバを倒したという証なのか、と呑気に思う一方で、それ以上に最悪の可能性が頭を擡げて彼を支配しようとしていた。
 どうにか否定材料をと視線を凝らして火柱を注視していた彼は、それが徐々に横に広がりつつあるのを見る。
 つまりはその火柱が天に伸びたのはただの爆発の中心点に過ぎず、今からその暴力的な破壊力を病院だけではなく周囲に振りまこうとしているということだ。

 ただの爆風であればともかく、周囲の瓦礫や倒木さえも吹き飛ばし明らかな殺傷能力を含んだそれに対して、フィリップは懐からT2サイクロンメモリを取り出し、起動する。

 ――CYCLONE

 フィリップが真っ直ぐにそれを投げ放てば、今度はその端子を彼の掌に向ける形でその緑のメモリは彼の掌に突き刺さった。
 一瞬のうちにその身を疾風の記憶を含有する異形、サイクロンドーパントへと変貌したフィリップは、そのまま大きく両手を広げ能力を全開にする。
 次の瞬間、発生した風のバリア、それがGトレーラーを包み込んだその瞬間に、暴力的なまでの爆風が、彼らを襲った。

 「ぐっ……!」

 サイクロンが思わず呻く。
 彼が風による防壁を発生させたGトレーラー以外の場所が、熱と風に蹂躙され焼け野原へと変わっていく。
 彼らのすぐ後ろに佇み暴風の影響を存分に受けた高級マンションは、その風の威力故に高層階の窓ガラスの何割かを消失させ先ほどまでの優雅な佇まいを無残なものに変貌させていた。

 そうして周囲がまさしく緑の一つさえ見えない焦土と化して数秒の後、爆発とそれに付随する暴風は終わりを迎えた。
 あまりにも恐ろしいそれを見届けて、フィリップは変身を解き思い切り地面に膝をついた。
 T2故に依存性を始めとする副作用がないことを確認していた為に躊躇なく使用することは出来たが、この一瞬で使用した力があまりにも大きかったためかとてつもない疲労感が彼を襲ったのだ。

 「フィリップさん、何事で――ッ!?」

 そしてそんなフィリップの前に、トレーラーの扉を開けて飛び出してきた村上は、変わり果てた周囲の光景に言葉を失った。
 彼からすれば爆音が聞こえたのにいつまでも車体が一切揺れないような心地だっただろうから、さぞかし不思議だったに違いない。

 「フィリップさん、どういうことです、ご説明を」

 「あぁ、だが――」

 「――村上ィ!」

 村上の焦燥感を含ませた問いに、疲労にうなされつつ何とかフィリップが答えようとしたその瞬間、ふと意識外から飛び込んでくる男の声が一つ。
 聞き覚えのあるそれにフィリップが振り返るより早く、声の主は彼を超えて村上に殴りかかっていた。

 「村上、お前が、お前があきらを!」

 「葦原涼!?」

 それは、先の病院での戦いからその行方が知れていなかった葦原涼その人。
 だが、あまりに突然に飛び込んできた偶然の再会に喜ぶより早く、フィリップは彼が一体何を言っているのか、一瞬疑問に思って、しかしすぐにその疑問は氷解する。
 彼はまだ、知らないのだ、野上良太郎と村上峡児が天美あきらと園咲冴子を殺した犯人だという情報が、志村のついた嘘だということを。

 そしてそれにフィリップが思い至った瞬間には、既に葦原は再度大きく拳を振り上げていて。

 「待ってくれ葦原涼、それは誤解だ!」

 このままではまずい、とフィリップが咄嗟に静止を呼びかけたのを受けて、葦原の振り上げた拳が止まる。
 そのままギョロリと視線だけをフィリップの元にくれる彼の顔は、彼がただ不器用なだけで紛れもなく正義を信じる仮面ライダーの一人であることを知らなければ誤解さえ生みそうなほどに人相が悪いものだった。
 そして、その片腕を未だ振り上げたまま、もう片方の腕で村上のスーツの襟を握りしめたままで、葦原はぶっきらぼうに問うた。

 「誤解だと?どういうことだ、まさか、志村が言っていたのは……」

 「そのまさかさ。天美あきらと冴子姉さんの殺人に村上峡児は関与していない。
 僕たちは彼の嘘にまんまと乗せられてしまったんだよ」

 「なんだと……」

 また騙されていたという不甲斐なさに思わずその腕を垂らした葦原の腕に伴うように、村上の身体は力なく座り込んだ。
 何よりも早く葦原が義憤のままに振るった拳は、村上の顔の中心を打ち据え彼から意識を奪っていたのである。
 平素の村上であれば躱せただろう一撃にその意識さえ飛ばしてしまうほどに彼が満身創痍だったのだと葦原が理解する頃には、彼の村上への敵意はすっかり消え失せてしまっていた。

 「だが、どういうことだ。志村は、未来で橘の部下だったんじゃないのか?まさかそれも嘘だったのか?」

 「いや、それは嘘じゃないようだ、最初に僕がバットショットに保存していた画像は見せただろう?
 あの白と赤の怪人、もう一人のジョーカーアンデッドこそが彼の真の姿だったということさ。つまり――」

 「――もう一人のジョーカー、だと?」

 志村純一と橘朔也の関係についての自分の推論を述べようとしたフィリップの耳に、葦原のものとは違う、男の低い声が響く。
 碌な気配さえ感じさせずに現れたそれに振り返ったフィリップは反射的に構えを取るが、しかしそれは必要ないとばかりに葦原が彼を制していた。

 「すまないフィリップ、紹介が遅れたな。こいつは相川始だ」

 「相川始……?待ってくれ葦原涼、彼はさっきの病院での戦いでダイヤスートのカテゴリーキングと一緒に五代雄介を操り僕たちを襲った奴だぞ、分かってるのか!?」

 「あぁ、分かっている。だがこいつも今は大ショッカーを倒そうとしている。俺はそれを信じたいんだ」

 フィリップの当然とでも言うべき怒りに、葦原はしかし真摯に返す。
 まるで心の底から彼を信用しているとでも言いたげなその言葉に、フィリップはやりきれない思いを抱えつつも取りあえずは葦原を信じてみることにした。
 そして同時、始の言葉が真であるか偽であるかについてのこれ以上の立ち話は水平線上を辿るだけかと思考を切り替えた。

 「……お互いに積もる話はありそうだが、今はそれより、橘朔也の安全を確認したい。
 彼は今病院で一人ダグバと戦っているんだ。さっきの爆発も、それに関係したものとみてまず間違いない」

 「やはりダグバが病院に……ということはやはりさっきの相川の衝動はブレイドのキングフォームとやらにあいつが変身したからのものか」

 「……どうやら本当に色々話すことがありそうだね。だが取りあえずこのトレーラーに乗ってくれ、話はそこで――」

 「――いや、どうやらその必要はないらしい」

 様々な情報の交換は移動中にすればいいだろうと結論づけてGトレーラーに乗り込もうとしたフィリップを止めたのは、始の静かな制止の言葉だった。
 どういうことだと怒りさえ滲ませながら彼の見ている先、空へと視線を追随させたフィリップは見た。
 橘が片身離さず持ち歩いていたはずのギャレンバックルを抱え飛行する、ザビーゼクターの姿を。

 何故、ザビーゼクターだけが主の最も大切なものを抱えて自分たちの前に姿を現したのか、その答えは実に容易に予想出来るもので、同時に絶対に認めたくないものだった。

 「まさか……橘朔也……そんな……」

 思わず膝から崩れ落ちたフィリップの元に、ザビーゼクターは抱えていたギャレンバックルを投げ渡すように投下する。
 あまりに機械的なその動作は、否応なしに彼に現実を突き付けるもの。
 つまりは橘朔也が、ダグバの首輪を爆発させるという一世一代の大博打を挑み、その結果として命を落としたという、非情な現実だった。

 (橘……)

 ギャレンバックルを抱え一人打ちひしがれるフィリップの後方で、始もまた橘の死という現実に思いがけずショックを受けている自分を自覚していた。
 剣崎の仲間であり、別段倒しても心痛まないとさえ思っていた彼が死んだというだけの事実が、しかし妙に心苦しい。
 友などと言えるほど親密な関係ではなかったし、世界の存亡を賭けた戦いにも大ショッカーの打倒にも強い存在感を放っていたわけではないというのに、彼がもういないと思うと、どこか寂しいような、心に穴が空いたような心地がして居心地が悪かった。

 だがそれが、人の情。
 決して好きなわけでも嫌いなわけでもない空気のような存在であっても、日常を構成するそれが突然なくなってしまったら誰だって悲しい。
 そんな、当たり前の、しかし人間誰しもに備わった弱い感情が自然に沸き起こるほどには彼は人間に近づいていて、しかしそれを自分の感情として言語化することは出来ないほどには、彼は未だ人外であった。

 そして、残されたあと一人、葦原涼もまた、仲間の死にその拳を握りしめていた。
 最悪の敵であるダグバを倒したと言えど、その道連れに仲間が死んだと言われれば、喜びよりも悲しみや怒り、やるせなさが勝る。
 それが葦原涼という人間だった。

 行き場を失った怒りをGトレーラーのトレーラー部分に八つ当たり気味にぶつけながら悔しさに歯を食いしばった葦原の元に、ザビーゼクターが飛来する。
 ホッパーゼクターに続き自分を資格者に認めたのかと一瞬困惑するも、しかし彼は数度デイパックの周囲を飛び回った挙げ句天へと昇っていった。
 その一連の動作そのものが自分の持っているパーフェクトゼクターにザビーゼクターが引き寄せられた結果なのだと彼が気付くことはなかったが、ともかく。

 様々な情報が入り乱れ、それぞれの状況について話し合わなくてはいけない状況を深く理解しながらも、ただ今はそれぞれに抱いた仲間の死に対する複雑な感情に向き合おうと。
 そうする内、無言で焦土に立つ彼らを、太陽が照らした。
 それはまるで、未だ進む道に迷える彼らの行く末を示すようでもあり、また同時に、究極の闇とさえ呼ばれた男の死を、彼らに明示するかのようでもあった。


【二日目 早朝】
【F-5 焦土】

【フィリップ@仮面ライダーW】
【時間軸】原作第44話及び劇場版(A to Z)以降
【状態】ダメージ(大)、疲労(大)、仮面ライダーグレイブに10分変身不能、仮面ライダーエターナルに1時間40分変身不能、サイクロンドーパントに1時間55分変身不能、照井、亜樹子、病院組の仲間達の死による悲しみ
【装備】ガイアドライバー@仮面ライダーW、ファングメモリ@仮面ライダーW、T2サイクロンメモリ@仮面ライダーW、ギャレンバックル+ラウズアブゾーバー+ラウズカード(ダイヤA~6、9、J、K クラブJ~K)@仮面ライダー剣
【道具】支給品一式×2、ダブルドライバー+ガイアメモリ(サイクロン+ヒート+ルナ)@仮面ライダーW、メモリガジェットセット(バットショット+バットメモリ、スパイダーショック+スパイダーメモリ@仮面ライダーW)、ツッコミ用のスリッパ@仮面ライダーW、エクストリームメモリ@仮面ライダーW、首輪の考案について纏めたファイル、工具箱@現実 、首輪解析機@オリジナル 、霧彦のスカーフ@仮面ライダーW、イービルテイル@仮面ライダーW、エンジンブレード+エンジンメモリ@仮面ライダーW、栗原家族の写真@仮面ライダー剣
【思考・状況】
0:西へ向かい、仲間達と合流する。
1:大ショッカーは信用しない。
2:巧に託された夢を果たす。
3:友好的な人物と出会い、情報を集めたい。
4:首輪の解除には成功できた、けど……。
【備考】
※バットショットにアルビノジョーカーの鮮明な画像を保存しています。
※鳴海亜樹子と惹かれ合っているタブーメモリに変身を拒否されました。
※T2サイクロンと惹かれあっています。ドーパントに変身しても毒素の影響はありません。
※病院にあった首輪解析機をGトレーラーのトレーラー部分に載せています。
※T2エターナルメモリのマキシマムドライブの影響により、第一世代のメモリが使用不可能になり、ファングメモリとエクストリームメモリが一時的に自立移動できなくなりました。制限によりT2エターナルマキシマムの使用からあと1時間45分経過すれば再度使用可能になります。



【村上峡児@仮面ライダー555】
【時間軸】不明 少なくとも死亡前
【状態】ダメージ(大)、疲労(大)、仮面ライダーオーガに10分変身不能、仮面ライダーカイザに15分変身不能、仮面ライダーファイズに1時間40分分変身不能、ローズオルフェノクに1時間45分変身不能
【装備】オーガギア@劇場版 仮面ライダー555 パラダイス・ロスト、ファイズギア(ドライバー+ポインター+ショット+エッジ+アクセル)@仮面ライダー555、カイザギア(ドライバー+ブレイガン+ショット+ポインター)@仮面ライダー555
【道具】支給品一式
【思考・状況】
基本行動方針:殺し合いには乗らないが、不要なものは殺す。
0:(気絶中)
1:ダグバ、次に会えば必ず……。
2:乾さん、あなたの思いは無駄にはしませんよ……。
3:首輪の解除に関してフィリップたちが明らかな遅延行為を見せた場合は容赦しない。
4:デルタギアを手に入れ王を守る三本のベルトを揃えてみるのも悪くない。
5:次にキング@仮面ライダー剣と出会った時は倒す。
【備考】
※変身制限について把握しました。
※冴子から、ガイアメモリと『Wの世界』の人物に関する情報を得ました。
※ただし、ガイアメモリの毒性に関しては伏せられており、ミュージアムは『人類の繁栄のために動く組織』と嘘を流されていましたが、フィリップからの情報で誤解に気付きました。
※オーガギアは、村上にとっても満足の行く性能でした。
※今後この場で使えない、と判断した人材であっても殺害をするかどうかは不明です。



【相川始@仮面ライダー剣】
【時間軸】本編後半あたり(第38話以降第41話までの間からの参戦)
【状態】ダメージ(大)、疲労(大)、罪悪感、若干の迷いと悲しみ、橘への複雑な感情
【装備】ラウズカード(ハートのA~6)@仮面ライダー剣、ラルクバックル@劇場版仮面ライダー剣 MISSING ACE
【道具】支給品一式、不明支給品×1、
【思考・状況】
基本行動方針:栗原親子のいる世界を破壊させないため行動する。必要であれば他者を殺すのに戸惑いはない。
0:大ショッカーを打倒する。が必要なら殺し合いに再度乗るのは躊躇しない。
1:取りあえずはこの面子と行動を共にしてみる。
2:再度のジョーカー化を抑える為他のラウズカードを集める。
3:ディケイドを破壊し、大ショッカーを倒せば世界は救われる……?
4:キング@仮面ライダー剣は次会えば必ず封印する。
5:ディケイドもまた正義の仮面ライダーの一人だというのか……?
6:乃木は警戒するべき。
7:剣崎を殺した男(天道総司に擬態したワーム)は倒す。
8:ジョーカーの男(左翔太郎)とも、戦わねばならない……か。
9:橘……。
【備考】
※ラウズカードで変身する場合は、全てのラウズカードに制限がかかります。ただし、戦闘時間中に他のラウズカードで変身することは可能です。
※時間内にヒューマンアンデッドに戻らなければならないため、変身制限を知っています。時間を過ぎても変身したままの場合、どうなるかは後の書き手さんにお任せします。
※ヒューマンアンデッドのカードを失った状態で変身時間が過ぎた場合、始ではなくジョーカーに戻る可能性を考えています。
※左翔太郎を『ジョーカーの男』として認識しています。また、翔太郎の雄叫びで木場の名前を知りました。
※ディケイドを世界の破壊者、滅びの原因として認識しました。しかし同時に、剣崎の死の瞬間に居合わせたという話を聞いて、破壊の対象以上の興味を抱いています。
※キバの世界の参加者について詳細な情報を得ました。
※ジョーカーの男、左翔太郎が自分の正体、そして自分が木場勇治を殺したことを知った、という情報を得ました。それについての動揺はさほどありません。
※取りあえずは仮面ライダーが大ショッカーを打倒できる可能性に賭けてみるつもりです。が自分の世界の保守が最優先事項なのは変わりません。
※乃木が自分を迷いなくジョーカーであると見抜いたことに対し疑問を持っています。



【葦原涼@仮面ライダーアギト】
【時間軸】本編36話終了後
【状態】ダメージ(大)、疲労(大)、亜樹子の死への悲しみ、仲間を得た喜び、響鬼の世界への罪悪感
【装備】ゼクトバックル+ホッパーゼクター@仮面ライダーカブト、パーフェクトゼクター@仮面ライダーカブト
【道具】支給品一式
【思考・状況】
基本行動方針:殺し合いに乗ってる奴らはブッ潰す!
0:剣崎の意志を継いでみんなの為に戦う。
1:今はこの面子と行動を共にする。
2:人を護る。
3:門矢、相川を信じる。
4:第零号から絶対にブレイバックルを取り返す。
5:良太郎達と再会したら、本当に殺し合いに乗っているのか問う。
6:大ショッカーはやはり信用できない。だが首領は神で、アンノウンとも繋がっている……?
7:乃木……。
【備考】
※変身制限について、大まかに知りました。
※聞き逃していた放送の内容について知りました。
※自分がザンキの死を招いたことに気づきました。
※ダグバの戦力について、ヒビキが体験した限りのことを知りました。
※支給品のラジカセ@現実とジミー中田のCD@仮面ライダーWはタブーの攻撃の余波で破壊されました。
※ホッパーゼクター(キックホッパー)に認められました。
※奪われたブレイバックルがダグバの手にあったこと、そのせいで何人もの参加者が傷つき、殺められたことを知りました。
※木野薫の遺体からアギトの力を受け継ぎ、エクシードギルスに覚醒しました。
※始がヒビキを殺したのでは、と疑ってもいますが、ジョーカーアンデッドによる殺害だと信じています。
※ザビーゼクターは、パーフェクトゼクターの所有者に関係なく力を貸すつもりのようです。


 ◆


 ――読者諸君は、不思議に思わなかっただろうか。
 なぜ大道克己その人に兄弟とさえ称されたフィリップはエターナルの力を出し切れなかったというのに、ダグバはその力を存分に振るえたのだろう、と。
 勿論ただの紛れ、克己の意見など関係なくエターナルにより適合したのがダグバであった、という見方も出来なくはない。

 だが、こうは考えられないだろうか?
 大道克己との間に『科学によって生まれた怪物』という共通点を持つフィリップよりも、ダグバと克己との間の方がより深い共通点が存在していた、と。
 それがなんなのか、という結論の前に、一つヒントを提示しておこう。

 それは、ダグバが何故あれほどまでにギャレンのキングフォームに固執したのかという問いだ。
 勿論、その答えは既に明示されている。
 ダグバが以前仮面ライダーブレイドキングフォームに変身した際、凄まじき戦士にまで至ったクウガを前に一歩も退かず、どころか変身制限さえなければ或いは勝利も有り得たかもしれないというその実力に大いに満足したからである。

 そしてここで重要なのは、何故ダグバが変身したブレイドがクウガアルティメットフォームを前に互角に戦えたのか、という点である。
 無論、その理由も既に明確にされている。ブレイドキングフォームが持つアンデッドの能力をノーラウズで使用出来るという反則染みた能力が両者の間に存在する格差を無に帰したのだ。
 そして、続く二度目のブレイドキングフォームへの変身でもダグバは幾度となくノーラウズの力を使用、その能力でガドルを打ち破ったというカブトハイパーフォームを難なく下し、その力を最上級に楽しめるものとして理解していった。

 これが、ブレイドとギャレンのキングフォームの差異を理解することなく彼がギャレンのキングフォームに多大な期待を寄せていた理由である。
 ……何?話が見えない?では話の核心に迫る問いを投げることにしよう。

 ――13体のアンデッドと融合を果たしたキングフォームに何度も変身を果たした剣崎一真は、最終的にどうなった?

 ここまで言えば、諸君には何がダグバの身に起こったのか、もう分かるだろう。
 つまり、『ダグバもまた、グロンギの身でありながら永遠を生きる不死者、アンデッドへとその身を変貌させていた』のだ。
 そう、大道克己とン・ダグバ・ゼバとは、どちらも永遠にその生を終わらせることのない“生ける死者”同士であったのである。
 最も、ダグバのそれはエターナルをその身に纏ったときには決定的ではなかったのだが。

 どういうことだ、と疑問に思う者もいるだろう。
 先に述べた二度のキングフォームへの変身によるアンデッドとの融合は確かに急速なものではあったが、その時はまだ彼はアンデッドではなかったではないか、と。
 確かに、その指摘は正しい。
 ン・ダグバ・ゼバが幾ら剣崎一真のそれを大きく上回るスピードでジョーカーへの変貌を受け入れていたとは言え、先の戦いの最中、どころか病院での一戦が終わるその瞬間まで、彼の身体はただのグロンギに過ぎなかった。

 もしもその身体が真にアンデッドに変貌した理由をより述べるとするなら、ギャレンがカテゴリークイーンの代替として用いたアルビノジョーカーのカードによる影響が一つ、そして生まれながらのジョーカーである相川始の接近が一つ。
 しかしそれらも、ダグバの身を変貌させるだけの王手にはなり得なかった。
 そう、彼がジョーカーへと変貌した理由、その最後の一手とは、ザビーゼクターがフィリップの元へ運んだラウズカードの中で唯一、この場を離れなかったまさにその一枚。
 志村純一の封印されたジョーカーによる働きかけによるものだった。

 元々、上条睦月がスパイダーアンデッドに魅入られたときのように、アンデッドの中には封印されてもなお強い意志を持ちカードの外に影響を及ぼすタイプのものが存在する。
 特に上級アンデッドである嶋登や城光などはカードに封印されてもなお睦月に声を届かせることが可能だったのだから、それ以上に強力なアンデッドであるジョーカーが封印されてもなお強い悪意を持ち続けたならば、それが及ぼす影響は計り知れないとしても、何の疑問もないだろう。
 橘に一旦は力を貸したジョーカーは、しかしダグバの首輪が爆発するその直前彼の元へと飛来しその身に燻るアンデッド化に王手をかけたのである。

 無論首輪の爆発はフィリップや橘が予想したとおりセッティングアルティメットといえどダグバを確実に葬るほどの威力を誇るものだった。
 だがしかし、思い出してほしい。彼の首輪はあくまでグロンギ用のもの。アンデッドを強制的に封印する機能は含まれていなかった。
 であれば、不死者となったダグバが未だその身を消滅させていなかったとして、何の問題もない、ということになるわけだ。

 さて、こうしてアルビノジョーカーのカードがダグバのアンデッド化を後押ししたのだという結論のみを語られても、こう疑問に思うのではないだろうか。
 『志村純一が殺し合いに乗っていたとのはあくまで世界保持の為であり敵対者であり自身の世界を破壊しかねないダグバに力を貸す道理はないではないか』と。
 確かにその疑問は最もである。事実この殺し合いの中において志村純一は『剣の世界』の存続を目標に他世界の参加者を間引いていた。
 変身能力を失った橘朔也を前にしてなおその命を奪わなかったことからを踏まえても(無論、その気になればいつでも容易く殺せるという確信もあったが)、彼がただ殺戮の快楽に溺れたわけではないことは明白であり、傍から見ればそんな志村が他世界に生きるダグバに力を貸すのは理解できないことである。

 だが、ここで改めて考えてほしい。
 志村純一という男は、自分が封印された後も自分の世界のために戦おうと考えるような殊勝な性格だろうか?
 否、断じて答えは否である。

 そんな『仮面ライダー』染みた殊勝な考えなど、彼が持ち合わせているはずがあるまい。
 金居やスパイダーアンデッドのような自身の種の繁栄を望むアンデッドであれば露知らず、彼はその性質からバトルファイトの勝者にさえ成りえない完全なイレギュラーだ。
 もとより破壊神フォーティーンの復活とそれによる世界の支配を目論んでいた彼が、その果てに何を望んでいたのかはその実明らかではない。

 だが、こうは考えられないだろうか。
 『創造主さえ超える最強の力を得た実感と共に世界を支配したい』と。
 もしもそれが彼の最終的な目的であったなら、彼が封印される前に世界の保持を望んだのも理解できる。

 そして同時に、自分が封印された後に最早自分が支配することの叶わない世界の滅亡を彼が望んだとして、一体何が不思議だろうか。
 ダグバという規格外の化け物を前に、破壊神フォーティーンにさえ匹敵しうる才覚を見出し、彼をその代替として利用することで全ての世界を滅ぼそうとしたとして、何もおかしくないではないか。

 結局はそう、志村純一という死神が封印されてなお齎した最悪の結果こそが、このダグバのアンデッド化という悪夢のような事象なのである。

 長々と話してきたが、言いたいことはつまり二つ。
 エターナルメモリとダグバが惹かれ合ったのは死者になりつつある彼に永遠を感じたこと、そして……未だ、ン・ダグバ・ゼバが翳す究極の闇は終わったわけではないと言うことだ。

 とはいえ、流石の不死者と言えど、アンデッドもまた無敵ではない。
 ダグバの治癒能力を以てして、その身体が封印可能状態を脱し自律的に行動を始められるようになるまで、多大な時間がかかることだろう。
 故に今は、享受しよう。この凄惨極まりない地獄に降り注いだ、闇を照らす太陽の光を。

【二日目 早朝】
【E-4 焦土】

【ン・ダグバ・ゼバ@仮面ライダークウガ】
【時間軸】第46話終了後以降
【状態】ダメージ(極大)、疲労(極大)ジョーカーアンデッド化、封印可能状態、首輪解除、昏睡中
【装備】なし
【道具】なし
【思考・状況】
0:(昏睡中)
【備考】
※アンデッド(ジョーカー)化しました。
※また、首輪の爆発により通常のダグバであれば死亡しているほどのダメージを負っていますがアンデッド化によって死を免れている状況です。なお現在は封印可能なようですが長時間放置すれば回復します。
※首輪は爆発しましたが彼本人のゲブロンは爆発していないので、未だにグロンギ態には変身可能です。また、アンデッド化による見た目の変化などがあるかは不明です。


 ダグバが生きている。
 そう書けば、或いは諸君は此度の戦いを無意味なものと捕らえてしまうかもしれない。
 だが、この激闘の果てのこの結末を、敢えて、敢えてここにこう記そう。
 最も明白な判断基準である首輪の消失によるダグバという最強の生命体、その生存確認の終了の意と、”グロンギの王”であった彼に対する、『仮面ライダー』の一旦の勝利を称える意を表明する為に。

【ン・ダグバ・ゼバ@仮面ライダークウガ 死亡】
【橘朔也@仮面ライダー剣 死亡】
【残り人数 16人】



【全体備考】
ザビーブレス@仮面ライダーカブト、支給品一式×4、ディスクアニマル(アカネタカ)@仮面ライダー響鬼、変身音叉・音角@仮面ライダー響鬼は破壊されました。
ライダーブレス(コーカサス)+コーカサスゼクター@仮面ライダーカブトとロストドライバー+T2エターナルメモリ@仮面ライダーWがどうなったかは後続の書き手さんにお任せします。
ダグバの首輪が爆発した影響により、E-4エリアを中心に焦土が広がりました。具体的にはE-4,E-5エリアの全体、F-4,F-5エリアおおよそ北方面半分が焦土になりました。

131:飛び込んでく嵐の中(3) 時系列順 132:Diabolus
投下順
ン・ダグバ・ゼバ 141:愚直(前編)
村上峡児
橘朔也 GAME OVER
フィリップ 141:愚直(前編)
葦原涼
相川始



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最終更新:2019年07月14日 16:23