おひさま

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席替えで天海の後ろになれたのは結構嬉しかった。 よろしくっ、と俺への挨拶もそこそこにまた他の女子とくっちゃべる。 その横顔を、俺はツッコミが入るまでずっと見ていた。 クラスのどの女子が良いか、という話題でいつも天海の名前が出ることに気づいたのはここ最近のことだった。 誰が言い出したのかは今更もうどうでもいいことだけれど、実はスタイルが良い、さっぱりした性格が、と好き勝手に言い合う。 ただ、そのどうでもいい話に変化が起きたのも天海が原因だった。 アイツ、なんかスカウトされたって聞いたんだけど。 その時はまさか、という気持ちが強くてそんな根も葉もない噂を否定したかったのか、周囲の奴らも冗談だろ、と口を揃える。 それが本当のことで、俺たちはおろか学校中の話題になるにはそう時間もかからなかったけれど、まだデビュー前だしと春香に押しかける奴らの相手に忙しい天海を俺はまたじっと見ていた。 大変だな、と話しかけるとうへへ、なんて能天気に笑う天海が少しだけ羨ましかった。 しばらくすると学校を休む日が多くなった。 テレビや雑誌に出られるようになった訳でもなく、たまに顔を見せると少しずつ可愛くなっていく(ように見える)天海をやっぱり俺はじっと見ていた。 どうせ男とヤリまくってんだろ? アイドルなんだし。 天海の変化を境に俺たちの話題にアイツが上ることも少なくなり、あまつさえそんなことを言い出す奴が出てきた。 仕方ないと思う。芸能界なんて雲の上の話だし、実際になんで天海が、なんてくだらない嫉妬をする奴もいる。 それでも天海は学校に来ると眩しい位の笑顔を向ける。 気づいたらそんなことを言い出した奴と殴り合いの喧嘩になっていて、その時になってやっと俺は天海が好きな事を自覚した。 久しぶり。 もう教室にいるだけで溶けてしまいそうな猛暑日に天海は本当に久しぶりに学校に来た。 どうやら海外ロケに行っていたらしく、あっちはあっちで暑いけどこっちも湿気が高くて辛いね、なんて相変わらずな笑顔で話しかけてくる。 こっちはこっちでろくに天海の顔を見ることも出来ないままぶっきらぼうに返事をする。 気づいたらもう他の女子と話していて勝手に落ち込んで、なんでこうもコイツなんかに振り回されなきゃいけないのか。 授業になっても俺は天海の後頭部だけを追う時間が続いた。 ふと、天海の背中に目が行く。汗でシャツが透けてブラが見える。 水色。 今までそれのどこが楽しいんだと思っていたけれど、天海の写真集はこっそり持っていたけれど、そのブラには目がいった。 多分、ファンなら喉から手が出るほどの光景。 それが少し手を伸ばせば届く距離にある。ブラなんて外した事はないけれど、あともうちょっと俺の頭がおかしかったら手を伸ばしていたと思う。 結局、他の女子から気持ち悪かったと丁寧な感想付きの指摘を貰うまで俺はずっと春香のブラを見ていた。 勇気を出して天海と話しかける機会も増えたけれど、その度にプロデューサーさんとかいう男の名前が出るようになったのも同じ時期だった。 話すたびに、時間が過ぎる度に天海はソイツの話をすることが多くなって、ソイツの話しかしなくなって。 もうその時は俺は天海を見れなかった。 恥かしさもあったけど、すごく輝いてて眩しくて。 まるで太陽みたいな笑顔がますます俺と天海の距離を遠ざけた。もともと近くなんてなかったけど。 プロデューサーさんのこと? うん、好き、かなあ。 何でもないお昼休み。女子達が集まって話している中、そんな天海の声がなぜだか聞こえてその後はよく覚えていない。 その日、家に帰って天海の写真集を引っ張り出す。初めて俺は天海でオナニーをした。

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