第1話 おかしの国  ~やよいと不思議なシャボン玉~

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 やよいが辺りを見回すと、そこはお菓子… の形をしたオブジェがいっぱいの空間でした。 床の遥か下にも同じような世界が広がっていて、自分のいる所がかなりの高さであることが分かります。 それに… やよいの服もいつものものではなくて、オレンジと白の上着にスカート、そして前にはフリルの 付いた小さなエプロンが。 とても可愛らしいものでした。  しばらくそれに見とれていたやよいですが、ハッと気が付いてウサギに尋ねました。 「…それで、さっき言ってた女王の手下って… どうやって戦うの?」 「その渡したストローでシャボン玉を出して…」 「こう?」  やよいがストローを吹くと、そこから虹色のシャボン玉が。 続けざまにいくつものシャボン玉が飛んで行っては、同じところで弾けて虹を描きます。 「これは悪い者たちが大嫌いなシャボン玉なんです、これを使えばきっと女王にも勝てるはずです。 残念なことに、これを使えるのは純粋な人間の女の子だけなんです…」 そういう理由で、やよいは呼ばれたのか。そう言われると悪い気はしません。 「それじゃぁ、これからよろしくね、…えっと」 「ウサギでいいですよ」 そう言って胸を張ってみせるウサギ。 「じゃぁ女王さんのところまで案内してくださーい」  やよいたちが先に進むと、目の前には足の生えたキノコやら爆弾やらが。 道は狭くなっているので、どいてもらわないと先には進めそうにありません。 「シャボン玉を当てて吹き飛ばすのです」 「こう?」 やよいのシャボン玉が当たると、キノコたちは床の外に飛んでいき、爆弾は破裂してしまいます。 「すごいですー」 「でも気をつけてください、床から落ちるときっと助かりませんから」 やよいが下を見ると、さっき落としたキノコがまだ落ちていくのが分かりました。 「特に転がってくるボールに弾かれるとやっかいです、気を付けて下さい」 「はーい」  途中、転がってくる大きなロールケーキを飛び越えたり、太った兵隊達をやっつけたりしながら、どんどん 歩いていきます。 そうして進んでいくと、やがて行き止まりに来ました。 この遥か向こうにも同じような床が見えますが、ジャンプしても届きそうにはありません。 やよいがどうしようかと思っていると…。 「ちょっと待っててくださいね」 ウサギが床の端に立って、なにやら呪文らしきものを唱えました。 すると、遠くから白と黒のチェック模様をした板らしきものが飛んできて、目の前で止まりました。 「これに乗れば向こうまで行けるはずです」 大きさは二人がちょうど乗っかることができるぐらいでしょうか。 やよいたちがそれに乗ると、板は向こうまでやよいを乗せたまま動いていきます。 そのまま二人が向こうの床まで行くと、 「いち、にの、さーん!」 元気なやよいはウサギを抱えたまま向こうまでジャンプで飛び移りました。  そこは広くなっている床で、見渡す限り何もありませんでした。 「ここに次の世界へ続く鏡があるはずなのですが…」 「それは、これのことかい?」 突然、どこかからか声がしました。見回してみてもやよいたち以外には誰もいないようです…。 「こっちじゃよ、こっち」 声と共に目の前が暗くなったかと思うと、やよいの頭に何かがコツンと当たりました。 「いたっ… 上!?」 頭から床に転がってきたのはキャンディーでした。それと気付くまでに、上から何十個ものキャンディーが ばらばらと降ってくるではありませんか。 「痛いです~」 上を見上げると、そこにはほうきに乗ったおばあさんでしょうか、愉快そうに笑いながら腰に付けた袋から キャンディーを放り投げてきます。片方の手にはきらきら光る鏡が見えます。 「せっかくのプレゼントなのに、もっと喜んでくれてもいいのにのぅ」 「何がプレゼントだミヤーシャ、中身はただの石ころのくせに」 ミヤーシャと呼ばれた、その魔法使いのおばあさんにウサギは首をもたげながら怒鳴りつけます。 しかし言っている間にも上からキャンディーが、このままではたまりません。 「やよい、シャボン玉を」 「わかった!」 やよいはキャンディーを避けながらシャボン玉を吹き付けます、しかし空を飛んでいるミヤーシャには あと少しのところで届きません。 「人間なんぞ連れてきおって、どんなものかと思えば大した事ないのぉ」 得意そうにミヤーシャは高笑いをして見せます。 「もっとシャボン玉を大きくするのです!」 「大きく?」 「そうすればきっと届くはずです」 やよいは大きく息を吸い込んで、大きなシャボン玉を作ろうとします。でも大きくなりすぎて破裂して しまいました。 「ふぇっふぇっふぇ」 「もう一回頑張ります!」 息を吸い込んで、シャボン玉を大きく、そして… 「そこです!」  ウサギの声と共に、大きなシャボン玉が飛んでいき、ミヤーシャの顔面に炸裂しました。 「お、おのれぇぇぇ」 ミヤーシャはキャンディーを地面に投げつけました。するとそれは小さな魔女の姿に変わり、 そしてやよいたちめがけて飛んできます。 「きゃぁっ!」 飛んできた魔女に当たったやよいはそのまま引きずられて、見る見るうちに床の端まで。 このままでは奈落の底にまっ逆さまです! 「ジャンプです!」 とっさにジャンプして床のあるほうへ。ぎりぎりのところで止まることが出来ました。 その間にも小さな魔女たちは次々と飛んできます。でも、まっすぐ飛んでくるだけの魔女たちは、 2,3回見ているうちに簡単に避けられるようになっていきました。 「すー…」 やよいはまたシャボン玉を膨らまし、ミヤーシャの方にどんどん飛ばします。 何回かシャボン玉が当たると、 「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!」 ミヤーシャの体が光に包まれ、次々と泡が弾けるようになりながら落ちてきました。 「お、おのれぇぇぇ!」 一際まばゆい光を放ったかと思うと、ミヤーシャはぶくぶくと泡になって消えてしまいました。 後には乗っていたほうきと、そして鏡が残っていました。  「…」 呆然とその様子を見ているやよい、そして、 「これは… 想像以上の力です…」 驚きの表情を見せているウサギ。 「すご~い…」 ようやく、その言葉だけを口にしたやよいに、 「これが… やよいとシャボン玉の力なんですよ」 ウサギはゆっくりと、やよいの心に染み渡らせるかのように言います。 「…私の… 力?」 「そうです」 まだ何が起こったのか、分かっていない様子のやよい。 顔だけが、興奮と疲れで赤くなっているやよい。 そんな彼女を、ウサギはただじっと見つめていました。 「これで…、女王は倒せたの?」 ようやく落ち着きを取り戻したやよいに、 「いえ、これはあくまで女王の手先… 本物の女王はもっと向こうの世界にいるはずです」 そう言って、ウサギは鏡の中を見つめました。そこにはさっき通ってきたような通路が見えます。 「ウサギさん、行こう!他に助けてくれる人が誰かいるかも知れないし」 やよいは元気付けるかのように、そう言ってウサギの手を取りました。 そういうやよいだって、本当はちょっぴり怖いのです。でも勇気を出せば、きっと…。 ふたりは一緒に鏡の中に飛び込んでいきました。 次はどんな世界が待っているのでしょうか。

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