第4話 こおりの国  ~雪歩の大事なお友達~

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「段々寒くなってきたね…」 やよいがそうウサギに言いました。 「ええ、今度は氷の国なんです。やよいは大丈夫ですか?」 「うん、でも待ってる人はきっと寒くて大変だから、早く助けてあげないと」 やよいはやっぱり優しいですね。  出てきたのは一面氷の床で出来た島のようなところ。そして、その周りにはとても冷たそうな水が流れています。 さすがに寒くてたまりません。こういうときは運動をして体を温めることにします。 やよいが走ろうとして構えを取ると…  べしょ。 そのままやよいは見事に転んでしまいました。 「うう~」 うつぶせに倒れたやよいはなんとか起き上がろうと頑張って、何回かの後にようやく立ち上がれました。 でもこれでは到底先に進むことは出来ません…。 それを繰り返すうちにやよいは床の端っこまで。滑って落ちてしまいそうになって、やよいはとっさに 床の端を掴みました。すると… その端っこだけは床が少し盛り上がっていて、やよいはそこにぶつかって止まることが出来ました。 盛り上がりを掴んで立ち上がると、なんと滑らずに立つことが。 「そうか、それなら端っこを歩けば!」 「普通に歩けますー!」 ちょっと危ないですけど、滑らずに歩けることを考えれば安いものです。気をつけて歩いていきましょう。  走ってくるピンクや水色のペンギンを横目に、ゆっくりとやよいたちは進んでいます。 普通にしていればそんなに危なくは無さそうですが、ここにも女王の手先はいるはずです。 何とかしないと… そう思っていると、氷の床に穴が開いているところを見つけました。 遠目に見て人が2、3人ぐらいは入れる大きさでしょうか、誰かが穴を開けたのに違いありません。 「こ、これは…」 ウサギが驚いています。とにかく行ってみましょう。  穴の側に行くと、そこだけは下の土が見えていて、結構深い穴が掘られていることが見て取れます。 やよいがその側まで行って、 「誰かいますかー?」 と、呼んでみました。すると下のほうで何かが動いて、そして見慣れた人影が姿を現しました。 「雪歩」 「雪歩さん」 二人が同時にそう言います。 「や… やよいちゃん?」 そこにはノースリーブの白い花柄の服、そして何故かスコップを背負った女の子が座っていました。 この子が氷を掘って、そしてこんなに大きな穴を開けたのでしょうか? 「あ… ここだけ大きなひびが入っていたの… ここにいると寒くてたまらないから、こうやって穴を 掘って誰か来るのを待ってたの…」 そういうことでしたか。やよいとウサギもちょっと納得です。 「でも雪歩、ここだけ大きなひびが入っていたということですか?」 ウサギが訊くと、 「うん、まるで何かが落ちてきたかのような感じで…」 そう雪歩さんは言いました…。 何が落ちてきたというのでしょう? 「とりあえず一緒に帰りましょう、ここだとおなかも空きますし!」 「そ、そうだね… やよいちゃんは元気でうらやましいな…」 なんだか落ち込んだ様子の雪歩さんを連れて、やよいたちは出口を探しに行くことにしました。  しばらくすると少しは氷の上を歩くのにも慣れてきました。 雪歩さんが時折バランスを崩したりしてちょっと驚いたり、やよいがジャンプした拍子に転んだり。 そんなことを繰り返しているうちに… 「やよいちゃん! あそこに誰か倒れてる!」 雪歩さんの声に、やよいたちもその方向を向きます。すると… そこにライトグリーンの服を着た… 女の子でしょうか? 青い髪飾りを付けたその姿を良く見ると…  「真美ちゃん!」 やよいたちの大事なお友達の姿でした。雪歩さんが走って行って、隙間を飛び越え、あっという間に 真美ちゃんのところにたどり着きました。勢いが付いたまま滑っていきますが、それは背負っていた スコップで上手く勢いを緩めて、落ちる手前のところで止まることが出来ました。 「しっかりして!」 服を着ているとはいえ、真美ちゃんの体は冷たく、顔はすっかり青ざめてしまっています。 このままでは大変なことに…。 「氷の上に倒れていたのでは体も冷え切っているでしょう… 何とかしないと」 でも雪歩さんに出来るのは、ひたすら呼びかけて、そして体を暖めてあげるだけ。 雪歩さんがきゅっと真美ちゃんの体を抱きしめてあげました。こうすれば少しは… 「真美ちゃん、真美ちゃん…!」 返事はありません。 それでも何回も雪歩さんは呼びかけ、体をさすり、抱きしめ… いつのまにかぽろぽろと涙が流れて、真美ちゃんの顔にぽたり、ぽたり、と。でもそれを止めることもせず、 ずっとそのまま雪歩さんはそうして真美ちゃんを抱きしめていました…。 「…」 「…」 みんなが疲れて眠ってしまいそうになった、その時。 「ん…」 「…え?」 雪歩さんが驚いて声をあげます。ずっと動かなかった真美ちゃんがかすかに動いたような気がしたのです。 「真美!」 「しっかり!」 やよいたちも一緒に呼びかけます。すると真美ちゃんの冷たかった手が少し動いて、まぶたが開いて、 「…ここ、どこ…」 声を出してくれました! みんな思わず声を出して喜びます。雪歩さんはまた涙を流しながら、 「真美ちゃん… よかった… よかった…」 と、真美ちゃんの手を取りながら…。 「…ゆ、ゆきぴょん!?」 ようやく我に帰った真美ちゃんも、自分がどうしているのかをようやく理解すると、 「わ、うわぁぁぁぁぁぁ!?」 顔を真っ赤にしながら立ち上がります。元気になったみたいで良かったですね。 「…それで、真美ちゃんはあそこに落ちてきて」 「うん、とりあえず歩いたんだけどさ、すっごく頭が痛くて」 「それで行き倒れになったというわけですか…」 「行き倒れなんてひどいよー」 みんなは集まって、お互いの情報を交換しました。 でも、氷に穴を開けるほどの勢いで落ちてきて無事だったなんて凄いですね…。それはさておき。 「そういえばやよいっち、亜美はいなかった?」 「ううん、ここまでにはいなかったよ」 「そっか… 途中までは一緒に落ちてきたのは覚えてるんだけど」 やよいたちはもう大分歩きました。それでも見つからないのなら、また別の世界にいるということで 間違いないでしょう。 「とりあえずこの先に出口があるはずから、そこに行けば何か分かるかも」 「うん! それじゃぁ…」  そうして更にしばらく進むと、やがて大きな氷の島が見えてきました。 そこには何やら大きな柱が立っています。それ以外には何も無くて、背の高いその柱はとても良く目立って見えました。 よく見ると、それは横に縞模様が入っていて、そして一番上には顔が描かれています。 「これが… ここのボスでしょうか?」 ウサギはそう言って、遠巻きに眺めています。 「とりあえず真美ちゃんはそこで待ってて、まだ体も万全じゃないはずだし」 真美ちゃんにそう言って、雪歩さんがその柱のほうへと少しずつ近付いていきました。 柱の周りには氷の削れたような跡が。それのおかげで、この床の上では滑らずに歩けそうです。 「これだるま落としだよ、やよいちゃん」 「だるま落とし… ですか?」 「うん、こうやって下の土台を叩くと…」 雪歩さんは背負っていたスコップを両手に持って、一番下の赤い部分を叩いてみました。すると…。 その赤い部分が少し動いたような気がしました。そして、その上にある青や黄色の部分も…。 見ているうちに、柱はばらばらになってやよいと雪歩さんの方にぐるぐると廻りながら向かってきました! 「きゃぁぁぁぁぁ…」 「はわわぁぁぁ…!」 なんとか二人は走り回ってそれをかわします。雪歩さんはスコップを引きずったままで。 走ったところにスコップで線が描かれていきます。 ひとしきり回ると、それらの部品は一つのところに集まってきて、また元の柱に戻りました。 「おではタンブラーだど、だど、だど…」 「いたいじゃないかー、かー、かー…」 柱の上の方から声がします。どうやら一番上のだるまみたいなものがしゃべっているようです。 そうしている間にもまた柱がばらばらになって部品がぐるぐると。 「やよい、なんとかシャボン玉を」 「でもどうやって?」 「柱の形に戻ったところを狙うのです!」 やよいは大きくあちこちに逃げ回りながらチャンスを待ちます。回転が遅くなってきたところでシャボン玉を 大きくして、そして部品が集まってきたところにぶつけます。 シャボン玉が当たった部品は吹き飛んでいき、水の中に落ちてしまいます。 何回かそれを繰り返して、ついにだるまの部分だけになりました… しかし。 今度はそのだるま… タンブラーが氷の上を自在に滑って、やよいたちを突き落とそうとしてくるでは ありませんか。 必死に走り回りますが、タンブラーも大したもの。ますますスピードを上げて二人を追いかけます。 「ちょこまかと足の速いやつめー、めー」 「足の無いあなたに言われたくありませんー!」 そうしているうちに、とうとう疲れてやよいと雪歩さんはその場にへたり込んでしまいました。 「はぁっ、はぁっ…」 寒いところなのでいい運動にはなるかもしれませんが、このままでは…!  と、その時。 「ううっ… 私何の役にも立ってない…」 雪歩さんでした。 俯いているので表情は分かりませんが、何だかとても悲しそうです。背中までふるふると… 「…こ、こんなダメな私は… 穴掘って埋まってますー!」 「穴!?」 その場の全員が唖然として見ているうちに、雪歩さんはスコップを振り上げ、そして氷の上に思いっきり 突き立てました。 氷に金属が当たる、カキィィィン、という音が空しく響きます…。  その音と入れ替わりに、今度は低い音が響いてきます。まるで地響きのような…。 やよいがふと雪歩さんのほうを見ると、ちょうどそこにはさっき雪歩さんがスコップを引きずった跡が。 そこからかすかに聞こえた音、それは 「氷にひびが入った音…!?」 言っている間に、それはどんどん広がっていき、やよいやタンブラーの重みのせいであっという間に足場の そこらじゅうを覆うほどに。 「ど、どういうこと!?」 「雪歩さんのパワーってすごいんですね!」 「そんなわけないよー!」 でもどうしましょう、このままではみんな海に沈んでしまいます。 「さっきゆきぴょんがスコップを引きずったせいだよー」 真美ちゃんでした。言いながら、大きなアクションで手招きを。 みんなが走って真美ちゃんのいるほうに何とか飛び移り、そして… 「ぬぉぉぉぉ、落ちるーーー!」 正に手も足も出ないタンブラーは、みんなの見ている前で氷と一緒に沈んでいってしまいました…。 「氷に傷を付けると、それに沿って割れやすくなるんだよ」 真美ちゃんがそう言って氷の割れる様を眺めています。 「そうなんだー、真美ちゃんは物知りだね」 「ふふーん、これは漫画に載ってたんだよ、真美は物知りだね~」 ちょっと得意そうな真美ちゃんを横目に、 「でも… 鏡をどうやって探しましょうか」 ウサギがそう言ってると、割れた氷の間にキラリと光るものが…。 それはそのままやよいたちのほうに流れてきて、そして氷に混じって浮かんだままになっています。 「なんとかこれで次の世界に行けそうですね」 みんなほっと一息です。 「やだ!」 「真美ちゃんは疲れてるんだし、一緒に帰ろう?」 「亜美は真美が助けるの!!」 まだ、鏡は水の上に浮かんだままになっていました。 さっきから、雪歩さんと真美ちゃんがこうして言い争いをしていた為でした。  喧嘩? そうではありません。 雪歩さんは疲れ切った真美ちゃんをこれ以上ここにいさせたくないから。 真美ちゃんは双子の妹の亜美ちゃんを助けに行きたいから。 二人とも一歩も譲りませんでした。 「困りましたね…」 「ねぇ真美、亜美は私達で助けるから」 「真美が助けなくちゃいけないの!」 雪歩さんが真美ちゃんの手を取って引っ張ろうとしますが、真美ちゃんも足を踏ん張ってその場に残ろうと します。これではキリがありません。 いつしか、その真美ちゃんの目から涙がこぼれて氷の上に…。 「…分かったよ… やよいちゃん、お願いできるかな…?」 ついに雪歩さんも真美ちゃんの熱意に負けて、その握っていた手を離してくれました。 「ゆきぴょん… ありがとう…」 真美ちゃんはそのまま雪歩さんに抱き付いて泣き出してしまいます。頭をそっと雪歩さんがなでてあげます。 「真美ちゃん…」 「さ、そろそろ行かないと」 ウサギの声に促されて、みんなは鏡のほうに向かいました。 「みんな頑張ってね…。私は手伝ってあげられないけど、応援はしてるから」 雪歩さんがそう言いながら鏡の中へ。そして、やよいたちも… 「亜美… 待ってて、きっと真美が助けてあげるからね」

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