正義の味方

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「遊園地でヤキニクマンに会えるなんて、めっちゃツイてるね、兄ちゃん!」 「まさか亜美たちと同じ日にイベントをしていたとはなあ」 「ヤキニクマンってチョ→人気者なんだよ! 真美、明日ガッコでサイン自慢するんだ!」 「カッコよくて面白いってめちゃイケ最強だよね~。亜美もあんなヒーローになりたいな~」 「おおっ、亜美は正義のヒーローも目指しているのか。アイドルとの兼業は大変そうだな」 「真美もなるよ。そしたら亜美と代わりばんこでヒーローすればいいよね!」 「そしたら兄ちゃんは、超絶ヒーロー☆アイドルのプロデューサーだよ!」 「ま、まあ方向性はどうであれ、カッコよくなって人気が出るのはいいことだ。  あとは元の会場にもどって撤収だけど、浮かれて大事なサインを無くさないようにな」 「ねえ兄ちゃん、なんかあったの? スタッフの人たちがバタバタしてるよ」 「うーん。どうやらさっきのイベントで配った風船を、空に逃がしちゃった子がいたみたいだな」 「それって、亜美たちがサイン書いてあげた風船?」 「たしか予備って無かったよね。真美、あまったら貰おうって思ってたもん」 「ふたりとも、ここで待っててくれないか。俺から一言その子に謝ってくるよ」 「あ。亜美もいっしょに行くよ。兄ちゃん」 「でも亜美。亜美が行ってだいじょーぶ? ヤキニクマンの前で、サイン無くしちゃったって言える?」 「う……それはちょっと気まずいかも……」 「真美のいうとおりだ、亜美。亜美たちはアイドルだけど、正義のヒーローなんだろ?」 「う、うん」 「代わりをカッコよく渡せるなら亜美に任せるけど。手ぶらで謝るカッコわるい役目なら俺が引き受けるよ」 「……うん。ごめんね兄ちゃん」 「兄ちゃん! 兄ちゃん!」 「亜美? ま、真美までついて来ちゃダメじゃないか。どうしたんだ」 「亜美たちは正義のヒーローだもん。やっぱり困ってるひとを放ってはおけないよ!」 「そうだよ兄ちゃん。真美たちはファンのみんなのヒーローでなくちゃ!」 「ふ、ふたりの気持ちはわかった。とにかく小声で頼むよ。あのベンチにいる親子連れがそうなんだ」 「あのね兄ちゃん、亜美たちは困ってる兄ちゃんを助けに来たの」 「え?」 「真美たち、風船の代わり持って来たの。だから兄ちゃん、これを持って今から――」 「はぁ~っ。えらく緊張したぞ、亜美、真美。俺はもうヒーロー代行なんてこりごりだよ」 「兄ちゃん兄ちゃん。『こいつで涙をおふきなさい』ってシブく言えた?」 「『さすらいの亜美仮面からの預かりものだ』ってカッコよく言えた?」 「言った言った。お約束の、『名乗る者じゃございませんよ』も言ってきたぞ」 「やった~! これで兄ちゃんも正義のヒーロー見習いだね!」 「あのハンカチ、真美のサインも書いちゃったから激レアだよ!」 「さすがに親御さんにはバレバレだったけど、泣いてたあの子には効果てきめんだったぞ。  泣かなくなったら、元の持ち主にハンカチを返しにくるとも言ってたな」 「んっふっふ~♪ ねえ亜美。あとは毎週テレビに出られたら、真美たちってもっとヒーローっぽいよね!」 「え~。そ、それはキビしいよ真美~。アイドルと正義の味方の両立って、やっぱ難しいかも……」 「亜美なら両立できるさ。なにしろ世界でいちばん最強の味方がついてるわけだし」 「うん! それに真美と亜美には、トクベツな正義のヒーローだっているんだもんね!」 「え。そうなの真美? 兄ちゃん、なんの話? あっ、待ってよふたりともー! 亜美も知りたいよ―!」 駆けだしたのは真美で、続いたのはPでした。置いてきぼりにされた亜美が、慌ててあとを追いかけます 表舞台に立たない無名のヒーローたちは、遊園地のゲートをくぐったところで満足そうに振りかえりました まだまだ未熟なヒーローが、夕日をバックに駆けてくるのを、とても眩しそうに眺めていました

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