Brand New Fairy

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「社長、お呼びでしょうか?」 「おお、待っていたぞ。実は、新たに君にプロデュースを始めてもらおうと思ってだね。」 「は、はい。」 珍しいこともあるものだ。 たいがいはプロデューサーの方から社長に対して申し入れをすることで、新しいプロデュースがスタートするの が恒例の765プロで、逆に社長側からのプロデュース依頼だなんて。 「君にプロデュースして欲しいのは、他でもない、彼女なんだが。」 「・・・はじめまして。」 俺はその時、部屋の片隅にいた女性に初めて気付いた。そして驚愕した。 一目で知れる長身、スタイルの良さはもちろん、何よりも彼女を特徴づける、美しく輝く銀色の髪。 流れる様な優雅で華麗な立ち居振る舞い。風格までをも備えた表情に、意志の強さに光る瞳。 誰が名付けたか、しかし誰もが納得する、人呼んで『銀髪の王女』・・・ 「し、四条・・・貴音・・・!」 「うむ。君も知っていたとは思うが、彼女には今後、この765プロでアイドル活動をしてもらうことになった。 君には、貴音君のプロデューサーになってもらおうと思う。」 俺は一瞬逡巡した。 果たして、俺に務まるのか。 いや、そんなことを考える時ではない。彼女の様な珠玉の素材、プロデューサーとして今後二度と出会えるか どうか。あえて言うなら、一生一度のチャンス逃さないわ。絶対手抜きしないで以下略 「わかりました。四条貴音のプロデュース、引き受けます。いえ、是非やらせて下さい。」 後悔するよりはマシ、アタックしよう。 「そうか!ぜひ貴音君をよろしく頼むよ!」 「では、よろしくお願いいたします。」 相変わらず優雅で礼儀正しい態度の貴音の、その目元が、わずかばかり緩んだ気がした。 この四条貴音ですら、さすがに再デビューやそのためのプロデューサーが決まるまでは不安があったのだろうか。 そう思うと、俺も多少ながら安堵した。大丈夫、やって行ける。 「よし、そうと決まれば、今日これからは止まってられない明日に猛ダッシュだぞ!」 「了解しました。その意気、しかと受け止めさせていただきます。」 おお、さすがは王女だ。気難しいどころか、度量が大きい。 さて、まず最初の活動はミーティングだ。 「ミーティング、ですか・・・果たして、何を話したらいいのやら・・・」 「まあ、そう構えないで気楽にしてくれ。貴音の以前の活動なら、俺もよく知ってる。」 と言うよりも、この業界で俺の様な仕事をしていて、知らないなどと言う方がどうかしている。 「その上で、一つ質問があるんだ。貴音は、人前で歌うことは嫌いだったりはしないか?」 「どうでしょう・・・私にとっては、使命でもありますので、好きとか嫌いという感じ方は、考えたことも ありませんが。」 使命、という言葉が微妙に引っかかるが、今は触れるべきじゃないと判断しておく。 「そうか。じゃあ質問を変えよう。テレビのカメラや少数の人の前で歌うのと、大勢の聴衆の前で歌うこと、 どちらかが得意でどちらかが苦手、という意識はあるか?」 「いえ、特にそういった意識はございません。」 「わかった。ありがとう。いや、変な質問だと思ったらすまない。実は、貴音の、というか961プロのアイドル の活動を見ていて、以前からちょっと気になっていたことがあったんだ。」 「それは?何か、問題でも見つけられたのでしょうか?」 「いやいや、そういうわけじゃない。ただ、うちの事務所のアイドルと比べて、あまりにコンサートなどの ライブ活動が少ない、と感じてたんだ。だから、もしや嫌いとか苦手があるのかな、と思ったわけだ。」 「特にそう言ったことはありませんが、仕事の方は全て黒井殿が調整しておりましたので。」 なるほど。確かにライブ活動は、マスメディアの出演と比べて宣伝の意味では費用と時間の効果は落ちるだろう から、トップに立つ事を至上命題とするあの社長なら、考えてやっていた可能性が高い。 「よし、じゃあ俺たちはその逆を行こう。」 「逆、とおっしゃいますと、ライブを中心に活動する、ということでしょうか。」 「そうだ。これまで貴音のファンだったという人も、ライブはろくにみたことがないはずだし、間違いなく 需要はあるはずだ。これまでの活動との差別化も明確になるし、それに、貴音の歌をじっくり聞かせる事で、 新たなファンの獲得も当然期待できる。」 「プロデューサー殿。」 「え?ど、どうした?あらたまって。」 「貴方様をみくびっておりました。そこまで深い思慮の元に、私のアイドル活動を考えて頂けるものとは、 つゆとも知らずに・・・」 「いや、こうして戦略から考えて、アイドルと一緒に活動をしていくのが、プロデューサーの役目、だからね。 もちろん、こういう大きな話から、日々のこまごまとしたことまで、アイドルを助けて一緒にやっていくんだ。 実は、この戦略にしても、961プロと同じ事をしようとしても、資金力的に無理っていうのもあるけど。」 「まあ、プロデューサー殿は、実に正直なお方ですね。」 そういうと、貴音は笑顔を見せた。 「俺に限らず、うちの事務所そのものが、何事においても包み隠さずに腹を割って話し合って、理解と納得を 得た上で進めて行こう、という気風だからさ。アイドルとプロデューサーの関係に限らず、ね。」 「それはそうかもしれませんが、しかし、プロデューサー殿の人格としては、また別の話です。誠に正直で、 信頼に足るお方であると理解いたしました。」 「そ、それは・・・ちょっと大げさな言い方かも。」 「プロデューサー殿になら、安心してこの私のプロデュースをお任せ出来ます。」 「ああ、そう言ってもらえると、こちらも嬉しいよ。あらためて、よろしくな。」 どうやら、初回のミーティングとしては、ほぼ満点の出来だ。 「おや・・・?何やら、隣の部屋から、面妖な雰囲気が・・・?」 「め、めんような、って・・・?」 『あああー!お前、今、胸に触ったな?!セクハラだー!やっぱり765プロは変態事務所だー!!』 『ご、誤解だ!俺はただ、胸を指差そうとしただけで・・・』 『なんで、この距離で指指すのに、そんな腕を目一杯に伸ばす必要があるんだよ!!だいたい、自分の魅力は どこだと思うか、って聞いただけなのに、いきなり胸って言うのも、おかしいだろ?!』 なにやら、隣が騒がしくなった。 今の会話で、大体の事情は筒抜けだが。 コンコン・・・ 「はい。」 「プロデューサーさん、社長がお呼びです。貴音ちゃんと二人で、来ていただけませんか?」 「ということで、君には、予定を変更して貴音君と響君のデュオをプロデュースしてもらおうと思う。」 「わかりました。」 呼ばれた時点で予想はできていた。 それに、この二人のデュオは、誰がどこからどう見ても魅力的だ。それをプロデュースできるなんて、むしろ この上なく有り難い話でもある。 「うむ。彼女達をよろしく頼むよ。」 「ところで、社長。先ほどの彼は、どうなって・・・」 「変態セクハラPの汚名だけが残る。大抵の場合は、そのまま引退ということになるがね。」 なんですか?その、毎日がプロデューサーアルティメット予選会状態は? 「弁護をするつもりはありませんが、彼も、どちらかと言うと、詐称疑惑に心を奪われたのだと思います。」 「しかし、それではプロデューサーはつとまらんよ。」 実は、社長が知らないだけで、つとまっている人間もいるんですよ・・・。 さて、あらためてミーティング。 「自分、我那覇響。もちろん、知ってるとは思うけどな。」 「ああ、よく知ってる。名前も、年齢も、出身が沖縄だってことも、ダンスが得意だってことも、身長も体重も、そして何より、バストの公称値が疑惑の86cmだと言うこともだ!」 「ぎ、疑惑?自分はウソなんてついてないぞ!あ、さてはお前も変態だな?!そんなこと言って、触って確かめ ようだなんてセクハラなこと考えてるんだろ!そうは行かないぞ!」 「ふふっ」 「うわ、珍しいな?貴音が笑うなんて。何がおかしいんだ?」 「響殿、あなたは、プロデューサー殿にからかわれているのですよ。」 「え?そうだったのか?やい、お前、初対面でいきなりからかうなんて、ひどいじゃないか!」 「ぷっ・・・くくく・・・あはははは」 俺はこらえきれずに笑い声を立てた。 ヤバい。こいつ、面白過ぎる。 「な、なんで笑うんだよー!」 「ああ、すまんすまん。響が、もちろん知ってるだろう、なんて言うから、ついからかってみたくなったんだ。 ・・・なあ、響は確かに有名だし、実力もある。そして俺は当然、そのことを知ってる。」 「うんうん。」 「だが、これから改めてアイドル活動を再開するにあたって、そのことは忘れて欲しい。新たな気持ちで、 あらためて人に名前を知ってもらって、歌を聴いて、ステージを見てもらう、という意識でいて欲しいんだ。」 「あ、そ、そうか。そうだよな・・・うん。これから再デビューするわけだし。初心に戻れってことだな。」 「そういうことだ。わかってくれたか?」 「わかった。なかなかいいこと言うな、お前。さっきは偉そうなこと言って悪かった。ごめん。謝る。」 おっと。自信家で我が強いかも、と思ってたが、なかなかどうして素直ないい子じゃないか。 「ああ、わかってくれたならいい。あと、俺の事は今後、お前じゃなくてプロデューサーと呼んでくれ。」 「わかったぞ、プロデューサー。」 「よし、これからはそれで頼む。じゃあ、今後の活動についてだ。貴音にはさっき話したんだけど、ライブを 中心にやって行きたいと思っている。」 「貴音と二人で、か?」 「そうだ。これからは二人でのユニット活動という形になるわけだし。もちろん、コンサートにもなれば、ソロ で歌う曲も用意するつもりだけどな。」 「そっか。貴音とは、一緒に歌った事ないけど、面白そうだな!」 「私も、響殿と共に歌うとなれば、とても楽しみです。」 「俺も楽しみだ。貴音と響の二人で歌うライブなんて、本気でわくわくする。さあ、明日から早速、コンサート を前提に曲数を揃えてレッスンに入るぞ!」 「ん?・・・何やら、再び隣の部屋から面妖な雰囲気が・・・」 「こ、今度はなんだ?」 『社長のバカバカバカーっ!!ミキのプロデューサーは、もう決まってるの!他の人じゃダメなの!』 『み、美希君・・・。うーむ、困ったもんだ・・・。』 こ、これは厳しいな・・・。 俺なら、どう説得するだろう・・・? コンコン 「はい。」 「プロデューサーさん、また社長がお呼びですよ。」 来たか。 「じゃあ、貴音、響、ちょっと一緒に来て手伝ってくれ。三人がかりで美希を説得するぞ。」 口説き落としてやる。格好悪くても、プランBでもCでもなんでも構わない。 「え?ど、どういうことだ?」 「プロデューサー殿は、私と響殿と美希殿を、一緒のステージで歌わせたい、ということです。」 「そういうことだ!こうなったら、絶対に三人のユニットを実現させてやる!」 何より、俺自身が見てみたい。 「なんでそうなるのかよくわからないけど、面白そうだな!」 わっかんーないーかーなー 「よし、ジェントルよりワイルドに、とにかく美希をねじ伏せてでもメンバーに加えるぞ!」 ユニット名は・・・『ナムコフェアリー』で決定だ!

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