エンジェルヘアーとコンソメのスープスパ、エビのフリット添え


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<エビのフリット>
1.ボウルに卵白(1個)塩(1つまみ)を泡立て器で角が立つくらいまで泡立て、小麦粉片栗粉(各大さじ1.5)
サラダ油(小さじ2)をさっくりあわせ、衣を作る。
2.酒+生姜汁(ひとたらし)にエビ(殻を剥き背ワタを取っておく)を漬けておき、揚げる段になったら
キッチンペーパーで水気をとり、片栗粉をまぶして衣をたっぷりつけて揚げる。160℃くらいの低温で
4~5分、明るい色で出来上がるように気をつける。
<コンソメスープ>
3.鍋にオリーブオイルを引き、ズッキーニ(1/4本)ナス(半分)たまねぎ(1/4個)ベーコン(1枚)を賽の目
に刻み、炒める。火が通ったら塩コショウで味を調え、鍋肌から醤油(大さじ2)を回しかける。さらに
水(800cc)を足し固形コンソメ(2個)を入れて、濃い目の野菜コンソメスープを作る。
<盛り付け>
4.伸びやすい細身のパスタを使う時はスープマグなど小ぶりな器にスープを注ぎ、一口分ずつ茹でた
パスタを投入。5分以上茹でるパスタなら一人前で盛る。
5.トッピングは上記のエビも含め自由に。青物が乗ると綺麗。チャーシューはどうかわかんないけど
ナルトはアリです。



「くすんくすん。ずるるる」
「……泣くか食べるかどっちかにしてくれない?」
「かようなメニューをらぁめんだなどと早合点した自分が口惜しいのです」
「なら食べなきゃいいでしょ、一口サイズとは言え早々にお代わりしといてっ」
「せっかくプロデューサー殿が手ずからお与えくださったものを無駄にもできますまい。それに、
パスタとしては美味でありますし」
「お褒めにあずかりどーも。伊織もお代わり、いるか?」
「いただくわよ」
「あの、わたくしも」
 給茶室で仲良くラーメン……もとい、スープパスタをすすっているのは伊織と貴音。ちょうど一緒の
レッスンだったので、軽食を出してみたところである。
何も言わずに麺を盛ったカップを差し出したところ、ラーメン大好き貴音さんは一も二もなく飛び
ついた。一口啜って微妙な顔をしたので説明したらこの有様だ。ちなみに伊織は用心深く観察し、
箸でつまむ頃にはタネが知れていた。
「エンジェルヘアーは伸びやすいから小分けにして正解だな。すでにわんこパスタの様相だが」
「パスタって言い張るなら割り箸じゃなくフォークをよこしなさいよっ!」
「だってこの方が食いやすいだろ?」
「スープをすすり込むことで麺ともよく絡みますわ、この姿の食事であるならこれが正解と思い
ますよ、水瀬伊織」
「えーそーでしょーねハイハイ」
「それにしてもプロデューサー殿、なぜこのようなものを」
 どうやら立ち直った貴音が聞く。もっともな話ではある。趣味の世界は説明が難しい。
「簡単に言えばパスタの特売があったからだがね。貴音もラーメンばっかりじゃ飽きるだろう?」
「飽きませんが」
「そりゃすいませんね」
「あんたの出し方が悪いのよ、プロデューサー」
 一口分をそそと啜って伊織が言う。
「パスタだって説明もなしに食べさせて」
「わたくし完全にらぁめんだと信じてしまいました」
「テーブルにコレが出たときに具が妙だって思ったわ。ラーメン屋だったら三日で潰れるわよ」
「ここは芸能プロダクションだし、俺もあいにくと素人なもんでね。だがどうだ?そのラーメン屋の
すべてのメニューがパスタだったら客も怒るだろうが、ひとつふたつこういうのが混じる分には
楽しみが増えるんじゃないか?」
「らぁめんを期待して入店する顧客層を相手に、その考え方はいささか我が強いのでは」
 貴音はラーメン屋の客に味方する意見だが、作り手にも楽しみは必要だと思う。プロデューサー
稼業というものも、『自分ならこのアイドルをこういう調理方法で魅力を引き出す』と考えながら
企画を練るのだ。驚きのないステージワークばかりではいずれ人気も減衰する。
「職人ってのは自己中心的なもんなのさ。自分で満足いく出来なら品書きに並ぶ」
「食べて損した、謝れって言われるかもしれないわ」
「代金を取ってたら客を満足させるのは交換条件だ、仕方ないだろうな。しかし、例えば俺のこれを
食べて、金も払わずに文句言われても嬉しくはないぞ」
「割に合わないって言うんならお金払って罵倒してあげてもよくてよ?おほほ」
「そんなご褒美までいただけるなんて」
「えっ?」
「いや、なんでもない。純粋に対等の立場だと思えば、美味いと思うものを出すのは店主の責任
だし、それを食べるかどうかは客の責任だって話さ。ぶっちゃけ、ハズレのもん食わされたっつって
ああだこうだ言うのもアトラクションだくらいに構えておけば気が楽だって思うよ。本当に嫌なら
口に出すのも嫌だろう?」
「たしかに、見たくもないものを延々と論ずる気にはなりませんわね」
「それに、嫌いなものをぜんぶ捨てれば美味しいものだけが食べられる、って考え方はどうも
納得しがたいもんでね。2:6:2の法則って聞いたことはないか?」
「パパがこの間言ってたわ。職員の2割は怠け者だけど、その2割の首を切っても残りの2割が
怠けはじめるって言うヤツでしょ」
「その表現は切な過ぎるが。どんな場にだって順位をつけようと思えば一等賞もいるしブービー
メーカーも出る。これはプロアマ問わずの真理だし、人によっても順位の付け方が違う。それを
盲目的に尊敬したりけなしたりっていうのではなく、等しく楽しめばいい。騙し討ちをせず正直に、
これはラーメンですこっちはパスタですと言い、食べる方も気をつける。そうすればみんな幸せ
めでたしめでたし、と」
「楽観的な人ねえ」
「こと食い物に関してはそうあるように努めてるんだよ。貴音のさっきの質問だが、『ラーメンみたいな
パスタがあったら面白いんじゃないか』と考えていたらパスタが安売りしていて、たまたま近所で
美味そうなエビも手に入った、っていうわけ。正直、貴音がびっくりするだろうとは内心期待して
いた。これは申し訳なかったな」
「エビ天は普通ラーメンに入らないわよね」
「パスタのトッピングとしては美味そうだったし、ミスリードの一環てことで」
「初めに伺っていれば落胆もありませんでしたのに」
「次からは気をつけるさ」
「ちょっと待ってよ、次もあるわけ?」
「このラインナップではあと『白身魚とエビの渦巻きムース』と『薄切り豚肉のソテー』、それから
『豚挽き肉の三日月ラビオリ』を試したいところだ」
「なるほど、ナルトとチャーシューね。最後のはワンタン?」
「いいや、ギョウザ」
「あんたなんかラーメン屋になればいいのよっ!」
「あの」
「なんだい貴音」
「プロデューサー殿のお心構え、よく理解できました」
「こりゃどうも。がっかりさせて悪かったね」
「いえ、これもあなた様のお考えの一つと心得ました。確かに勇気を持った一歩がなくては、人は
進化できないものです」
「ずいぶん大きく出たわね」
「ひとつ進んでは切磋し、またひとつ進んで琢磨するその意思がやがては大きな実を結ぶ、これは
わたくしどもアイドルの生き方とも共通するものと思います」
「……まあ、言ってることはわからなくはないけど」
「プロデューサー殿、わたくし感銘を受けました。これからもあなた様のお考えに沿いとうございます」
「なっ!?」
「そ、それは、どうも」
「つきましては」
 そうして貴音、ついと目を伏せ両手を差し出した。手の上には……空の器。
「その……お代わりをもう一杯」
 お腹すいてたんですね貴音様。





おわり

いや、他意はない。