プロローグ


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「先生こんにちはー、今日も本を借りに来ましたー!」
「お、今日も元気ですね、でもここは図書館ですから、もう少し抑え目にしてくれたほうがいいですよ」
「…えへへー」

 書架の先生と向かい合った女の子、高槻やよいはそう言って、ちょっと恥ずかしそうに俯きました。
いつも元気なのは良いのですが、図書館で大きな声を出してはいけません。
ツインテールの髪の毛がぴょこっと揺れて、やよいと一緒にお辞儀をしました。

「そうだ高槻さん、今日はこんな本があるんですよ」
そう、言いながら先生は後ろの本棚から一冊の本を取り出します。
やよいの目の前に、大きな本が置かれました。
「『不思議の国のアリス』…ですか?」
「とあるお金持ちの人が寄贈してくれたんです。妹さんに読んであげるにはちょうど良いでしょう」
表紙にはちょうどやよいと同じような髪型に、エプロンドレスを着た女の子、そしてタキシードのウサギ。
手に取るとずっしりと重たくて、そして紙の匂いがふわりと漂います。
「あ、ありがとうございます」
早速やよいは貸し出しの手続きを。そして元気そうに帰っていきました。
「あ、高槻さん、廊下は走らないようにお願いしますよ」
先生の言葉はちゃんと聞こえていたでしょうか…。


「ただいまー」
「あ、お姉ちゃんお帰りー」
やよいが帰ってくると、早速妹のカスミがお出迎えです。大きな家ではないので玄関を開けるとすぐに
分かるみたい、でもそんな我が家が、そして家族のみんながやよいは大好きでした。

そして今日もお布団でやよいはカスミに本を読んであげます、そのまま同じ布団で一緒に眠るのが、
ここ最近のやよいの日課になっていたのでした…。


 『不思議の国のアリス』

 タキシードを着たウサギについて行った女の子、アリスが、不思議な世界を冒険するお話。
行き着く先々で、アリスは様々な体験をして、そして帰ってきます。


 ちょっと難しいお話、でも綺麗な絵に引き込まれて、カスミとやよいはすっかり絵本の世界に。
そして、そのまま同じお布団で二人はぐっすりとお休みです。
二人の間で本が閉じられ、そして…


 キラキラと光を放ちながら、次々とページがめくれて行きます。
そして、最後のページから飛び出して来たもの、それは…




「やよい」
「…」
「やよい」
どこからともなく声がします。
今までに聞いたことがあるような、無いような。誰が呼んでいるのかと思って、やよいは外に出てみます。
でも誰もいないみたい… そう思ってやよいが部屋に戻ろうとすると、

「やよい」

…私は寝ぼけているのかなと思って、やよいは目をこすってみました。目の前に、まさに今日借りてきた
本で見たようなタキシードを着たウサギの人形が立っていたのですから。
「…カスミのおもちゃ…?」
そう言いながらやよいがその人形を持ち上げると、
「助けてくださいー」
その人形は、何やらじたばたしながらやよいに助けを求めて来るではありませんか。
「…どうかしたの?」
とりあえず返事をします。
「私の国が悪い女王に侵略されてしまったのです」
…そうだ、これはきっと夢なんだ。それだったら納得もいきます。夜に読んでいた本の夢を私は見てる…
と言う事は、この後…
「お願いです、私達の国を救ってください」

 …え?
『不思議の国のアリス』って、そんなお話しだったっけ…
やよいは少々疑問に思いました。でも、目の前のウサギの顔は真剣でした。
その勢いに負けたのか、やよいが素直について行くと、そこは居間の鏡の前。
ウサギはその前に立つと、いきなりやよいの手を取り…
「行きますよ!」
そのまま鏡の中に飛び込んでいきます、当然、手を取られたやよいも一緒に鏡の中へ…
「きゃぁぁぁぁぁぁ…!」

 …ここはどこでしょう?
やよいの目の前は部屋の中ではなく、とても広々とした場所。しかしタイルを張ったような床はそれほど
広くは無く、そこから足を踏み外すとまっさかさまに落ちてしまいそうなところでした。
そして、その床は遥か遠くまで細長く伸びているようでした。
「気をつけてください、落とされると大変ですから」
さっきのウサギが目の前にいました。そしてやよいにストローを差し出します。
「これは?」
「このストローでシャボン玉を出して、女王の手先をやっつけるのです」

 ???
「うっうー、よく分かりませんー」
やよいはそう言って頭を抱えてしまいました。読んでいた本の中にも、そんなお話は無いのですから…。
それに女王の手先ってなんでしょう…。
混乱しているやよいがふと前を見ると、そこにはおいしそうなケーキがたくさん。ショートケーキに
チーズケーキ、やよいが見たこともないようなお菓子もたくさんあります。
ちょうどおなかが減ってたやよいは、早速その中の一つを取って食べてみることにしました。

「いただきまーす!」
が。

 ガキィィィィン…

「ううー、食べられません~」
ケーキは石のように固くなっていて、やよいの歯がビリビリと痛くなってしまいました。
「女王の力によって、私達の世界はこのようなことになってしまったのです…」
ウサギはそう言いながら、悲しそうに前のほうを見ました。
「分かりました、女王さんをやっつけに行きましょう!」
「あ、ありがとうございます!」
嬉しそうな顔のウサギは、そう言って飛び跳ねています。
「それに、食べ物を粗末にする人は許せません!」
「そ、そうですね…」
やよいとウサギは固く握手を。

 こうして、やよいの冒険は始まったのです。