無題7-123


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事務所に戻ると、プロデューサーがソファで居眠りをしていた。
デビューしたての頃と違って、今はひっきりなしに仕事が入ってくる。
そういった活動が出来るのはプロデューサーを始めとした表には出ないスタッフの助力があるからで、
当然その人達も自分と同じくらい、もしかしたらそれ以上に疲れは溜まっているのかもしれない。
そんな訳だから起こしてしまうのが気の毒に思えたからであって、
滅多に隙を見せる事の無いプロデューサーの寝顔をこの機会に観察してみようなんて思った訳では決してない。

少しずつ近くに寄ってみる。物語で言われてるみたいに寝顔だけはあどけないなんて事はなくて、
やっぱりいつも通り気難しい顔つきのままだったのがなんだか可笑しかった。

そういえば、初めて会った時はあまりにも怖くて穴を掘るより先に気絶してしまった事とか、
暫くは面と向かって話す事も出来なくて、同じ場所に居るのに携帯やメールで会話していた事を思い出すと
こんなに近くに居られる事がとても不思議な事に思えてしまう。


なんとなく、指を伸ばす。
頬に触れる。
まだ目を覚まさない。
顔を近づける。
自分が何をしようとしているのか解らない。
自分の意思が解らないまま体だけが動いて、
頬に軽く触れるだけのキスをした。


たっぷり10秒は硬直してから、自分がしでかしたコトの重大さに気づいて辺りを見回す。
大丈夫。誰も見ていない。
少しだけ安心して、これは自分だけの秘密にしておこうと固く固く決意したが、
やっぱりマトモにプロデューサーの顔を見られそうになかったのでそのまま外に出かけた。

数日後。

サインペンを持った双海姉妹が雪歩の元へ駆けてくる。

「ねーねー雪ぴょんからも言ってやってよー」
「え? どうしたの?」
「雪ぴょんの兄(C)だけ寝顔に落書きさせてくれないんだよー」
「他のPはみんな寝てる時でも、一人だけ近づいただけで目を覚ましちゃうんだもん」
「既に体に染み付いた習性だからな。自分ではどうする事もできん」
「それは凄い……けど、ちょっとだけ不便そうですね」
「気にする程の事でもない。もう慣れている」

そう会話を続けてはたと気づく。

ちょっと待って
今 なんて言った?
人が 近づくと 目を覚ます?
じゃあ
あの時は
もしかしなくても

ギ、ギ、ギと油の切れた機械のように首を回す。

どうしよう
目が
逢って
しまった