ぺたぺた


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それでね、四条さんってね。
クーラーの効いた部屋で雪歩はさも楽しそうに抹茶アイス片手におしゃべりを続けている。
ボクも食べ終わったアイスの棒を口にくわえたまま、相槌を打ちつつ雪歩の話に耳を傾けていた。
雪歩の口から四条貴音の話が出てくるようになったのは、ボクの記憶が正しければ三ヶ月ほど前からだ。
もともと控えめな性格の割りにこういうおしゃべりは大好きな雪歩は、大抵はボクの方が聞き役に回る。
話題はそれこそ何でも良くて、ボクもボクで読んで面白かった少女漫画のこととかで時間を潰していた。他愛ないけど楽しい時間。そう思っていた。
「それで貴音さんったら私が」
いつの間にか名前で呼び合うようになったんだね。
思わず口にしそうになるのをグッと我慢する。
まるでこれじゃあボクが嫉妬してるみたいで。イライラしてみたいで。そこまで考えて、やっぱりイライラしてるんじゃんか、と思い直す。
どうやら顔に出てしまっていたようで雪歩は不安そうに、こちらをうかがうようにソワソワと俯き加減にボクを見ていた。
どうやら多少は自覚はあるみたいで、「ごめんね私ばかり」と、それはそれでちょっと引っかかる言い方にやっぱりどこかイライラ。あー、自分がイヤな人間に思える。
「なんでもないから大丈夫だよ。雪歩」
結局、笑って誤魔化したもののおしゃべりは全然楽しくならなかった。当たり前だけど。

後日、春香にそのことをそれとなく言ったらすんごい顔をされた。SSで良かった。
「なにそれ。雪歩って真の彼女なの?」
いやいやいや。思わずツッコむものの春香は至極マジメといった風で、どうやらドン引きに近いくらいに思われてるくらいは分かった。
「いやだって」と、口を尖らせると春香は呆れ気味に続ける。
「真ってあれだよね。モテる分、取られる側に回ると途端にイヤっていう」
「そんなの、誰だってそうだろ」
「へー、自覚あるんだー」
カッと頭に血が駆け巡る。
けど、言い返すにはあまりにもボク自身がワガママなように思えてしまい、つい振り上げてしまった腕を引っ込めると春香はやっぱりため息をついた。
「正直に言えば?」
俯くボクに、少し困ってるとばかりに眉を下げる春香は、その時はそれなりに年上に見えた。

あまり四条貴音とは仲良くしないで欲しい。
次の日、事務所で小鳥さんとお茶を飲んでいた雪歩を捕まえ、もうとりあえず言ってしまえと正直なところを口にした。
やっぱりというか雪歩は目をまん丸にして驚いていたし、どこから見てたのか、頭を抱える春香になぜか興奮している小鳥さん。
言ってしまえば熱が抜けるように冷静になる頭がジワジワと、自分の言った言葉のアレさ加減に気づき始めた。
これじゃボク、明らかに四条貴音に嫉妬して、いや、確かにそうなんだけど。
「あ、そのね。別にそういうわけじゃなくてその、そういうわけっていうのはつまりその」
もう何がなんだか分からなくなる。言い訳をしようにも具体的にどう言うべきか、なんて考えられない。
そんな風にテンパっているとやっと雪歩も戻ってきたのか、なぜかニマニマと今まで見たことのないような顔をしていた。
「うん。そうする。ごめんね、真ちゃん」
なんか語尾に音符までついてしまいそうな調子で雪歩はそう言うと、お茶のおかわりと流し場まで行ってしまう。その足取りもどこか軽くて。
ポン、と肩に春香の手が乗っかる。
「真って、なんだかんだで女難の相があるわよね」
うっさいよ。