「人生馬券(3)」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

人生馬券(3)」(2011/02/25 (金) 17:06:09) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

-[[人生馬券(2)]]の続きです &bold(){547 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY [sage]2011/02/23(水) 19:18:47.51 ID:RgP83sC7O [10/22]} 2010年のオークスまで何かと理由をつけて嫁や親に金をもらい勝負していましたが当然負けていました。 俺の心の中はもう狂っていたのです。負けている事よりも満足のいく金額で勝負出来ない事へのストレスがどんどんたまっていきます。 満足のいく金額とは?もうこの時の俺は3連単全通りBOX買いがしたくてたまらなかったのです。 そしてダービーでそれをすれば必ず大勝利すると信じてやまなかったのです。 しかし金がない。でも俺はこの時金を作る方法が一つだけありました。 でも出来るだけそれはしたくない。出来れば他の方法でと考えていましたがやはりそれを実行する事になったのです。 &bold(){550 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY [sage]2011/02/23(水) 19:29:32.74 ID:RgP83sC7O [11/22]} 実はダービーの翌日から俺は一ヶ月の中国出張が決まっていました。その仮払金50万を預かる事はわかっていたのです。 しかしそれを競馬に使い、もし負ければたちまち取り返しがつかなくなります。 悩みに悩みましたが50万あるので全通り買いは出来ます。しかも必ず当たるのです。 俺は決意しました。これで勝負しよう。必ずプラスになる。間違いない。 地獄への扉が今開きました。 ダービーの全通り馬券を土曜日に買い、当日を迎えました。 &bold(){556 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY [sage]2011/02/23(水) 19:55:00.81 ID:RgP83sC7O [12/22]} ダービー出走はもうすぐです。俺は胸の高鳴りを押さえテレビの前に座りました。 スタート。何でもいい。とにかく人気薄。50万以上。頼む。神様。頼む。 必死に祈りました。エイシンフラッシュが一着でゴール。どうや?配当は?祈るような気持ちで待ちました。 しかし…。皆さんご存知の通りです。15万…。 身体の力が抜け、その場に横たわりました。何も視界に入りません…。 様子を見ていた嫁が不安そうにこちらを見ています。 しばらく何も話せませんでした。嫁が口を開きました。 「また…何かやらかしたんやね?」 何も答えられません。身体は震えています。 「もういい!答えたくないなら答えなくていい!私はもう知らん!」 その勢いで嫁は家を飛び出しました。嫁の実家はすぐ近所です。 追いかける事も出来ずただ茫然としていました。 何時間くらい経ったでしょう。突然明日からの出張をどうにかしなければと焦り出しました。 それに嫁。ちゃんと話さなければ。でも今度こそ離婚だろう…。 様々な焦りと不安が胸の中を支配しています。 「明日、俺はどうなっているんだろう?」 見えない未来が俺に不安となって襲い掛かります。 &bold(){560 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY [sage]2011/02/23(水) 20:10:00.22 ID:RgP83sC7O [13/22]} まず嫁に電話して正直に話しました。 「…もう知らんわ。何もしてあげられない。私は金づる?いい加減にして! 会社にも自分で責任とって!それから今回でもう決めた!離婚するから!」 ついに嫁に言われてしまいました。 次に親に電話して話しました。 「お前はアホか?なんだかんだと親から金を巻き上げて一体いくらお前に出してると思ってる? いい加減にしろ!会社にはちゃんと話してクビになれ!もうお前では家庭も守れん。すぐ離婚しろ!」 どちらも厳しい答えでした。が、当然です。 会社の上司には…電話しませんでした。 いくらか配当があったとはいえ馬券のままです。出張にいく金はありません。 何より離婚が現実となったショックでもうなにもかも投げやりになってしまいました。 どんどん夜はふけ朝が近づいてきます。時計を見ながらどうにもならない現実に押し潰されます。 死のう。 もう生きる気力がありませんでした &bold(){564 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY [sage]2011/02/23(水) 20:21:40.97 ID:RgP83sC7O [14/22]} もうすぐ朝です。何時間かすれば俺が空港の待ち合わせ場所に来ないと騒ぎになるでしょう。 何かの時にと嫁が会社に来社した時に嫁の携帯番号は会社に伝えてます。恐らく嫁にもすぐ連絡がいくでしょう。 もう、すぐに訪れるであろうその現実に耐える事は出来なかったのです。 自分が明らかに悪いのにも関わらず、俺は悲劇のヒロインの如く自分を美化していました。 俺が死ねば皆悲しんで今回の事許してくれるかな?そこまでしなくてもって思ってくれるかな? そんなふざけた事も考えていました。どちらにしても俺の問題はすぐに会社にも知れ渡ります。 俺はビニールの紐を手に取り、自分の首を締め付けました。 &bold(){566 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY [sage]2011/02/23(水) 20:39:37.44 ID:RgP83sC7O [15/22]} 嫁に「さようなら」とだけメールし携帯の電源を切りました。 そしてビニールの紐で自らの首を締めたのです。 く…苦しい。すぐに手を離してしまいます。自分で締めるのは無理と諦めました。 今度は包丁を自分の胸に刺しました。 い…痛い。血も出ないのにそれ以上出来ません。 ドアノブに紐をかけて首を吊ってみます。 く…苦しい。無理。 一体俺は何をしているのでしょう?気がつけば何時間もそんな事をしていました。 時計は空港での待ち合わせ時間をとっくに過ぎていました。 玄関でガチャガチャという音が聞こえます。嫁だ!とっさにキッチンの台の後ろに横たわりました。 結局死ねなかったのです。そしてどうしていいかわからず死んだふりをしてしまっているのです。 キッチンの台はちょうど人一人分隠れるくらいの大きさがあります。でも30秒も探せば恐らくすぐに見つかります。 どうしよう、どうしよう。もう人生最大のパニックです。 嫁と嫁父、嫁母がドタドタと部屋に入ってきました &bold(){574 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY [sage]2011/02/23(水) 20:57:46.75 ID:RgP83sC7O [16/22]} 「どうしよう。私が昨日あんな事言ったからや。あの人どうしようもなくなって死のうとしてるんや。私のせいや。」 嫁の泣いている声が聞こえます。 実は台を挟んですぐ近くでピンピンしてます。どうしよう。俺も悩みました。 恐らく俺の存在はすぐに見つかります。死んだふりったって死んでないからすぐにバレるぞ。どうする?俺。 必死に自問自答します。そして名案が浮かびました。 たまたま運よくビニール紐を手に持っていたのです。それをそーっと首に巻き付けました。 首を締めて自殺を図って気絶した事にしよう。我ながら名案だと思いました。あとは見つかるのを待つだけです。 ただ皆動揺していたのでしょう。全く俺の存在に気付きません。話し声だけが間近に聞こえます。 嫁母「どこかあの人が行きそうな所ないの?」 嫁「わからん」 嫁父「とにかくすぐに警察に届けないとな」 そんな会話が聞こえます。早く見つけてくれ。そう思っていると誰かがきました。会社の同僚です。 同僚「どうも。とにかく一刻も早く見つけましょう」 嫁「…ヒッ…ヒッ」 同僚「大丈夫。どこかにいるはずやから。奥さんのせいじゃないから」 嫁は泣いているようです。また会社にも事情は話したみたいです。 &bold(){578 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY [sage]2011/02/23(水) 21:16:53.66 ID:RgP83sC7O [17/22]} 大人が狭い部屋に四人、俺も含めて五人もいるのです。見つからないのが不思議なくらいです。 嫁父「彼は最近職場ではどうだったんですか?」 同僚「頑張ってましたよ。会社も助かってました。今日から出張もまかせてたんですが…」 嫁「出張は問題なかったんですか?」 同僚「大丈夫。なんとか北京の人間で対応しますから」 嫁母「やはりクビですか?」 同僚「いえ。それは考えていません。何らかのペナルティーはあるでしょうが」 嫁「ありがとうございます。私…もう…」 同僚「奥さん。会社も彼をサポートします。だから奥さんも彼をサポートしてあげて下さい。離婚なんか考えないで下さいね」 嫁「はい」 何という事でしょう。俺は会社もクビにならず、離婚もないみたいです。 しかしこの奇妙な空間はそのままです。早く見つけてくれ。 嫁父「とにかく探そう。まずは警察に行こう」 全員がドタドタと警察に向かいました。 結局俺は見つからなかったのです。考えてみれば皆冷静さを失っていました。 くつも携帯も家にある。警察もわざわざ出向く必要もなければ全員で行く必要もない。 ただ皆が俺を探すために必死だったのです。しかし俺もどうしていいかわからずただ皆の帰りを待ちました。 &bold(){581 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY [sage]2011/02/23(水) 21:42:20.29 ID:RgP83sC7O [18/22]} いつ帰ってくるかわかりませんが、首にビニール紐を巻き付けたまま横たわり、皆の帰りを待ちました。 その間、何時間くらいだったでしょうか。俺も色んな事を考えました。 皆どんな気持ちで俺を探しているんだろう。俺は何て事をしてしまったんだろう。これからどうすれば… そんな事を考えていると玄関がカチャカチャといっています。帰ってきたようです。 嫁「どうしよう…見つからなかったらどうしよう」 嫁の声が聞こえます。 嫁母「しっかりしなさい!あんたが信じないでどうするの!」 嫁母が励まします。俺はすぐそこにいます。 嫁母「とにかく何かお茶でも飲んで落ち着きなさい」 嫁が冷蔵庫に向かいます。俺は冷蔵庫のすぐ横にいます。 嫁「はっ…」 どうやら気付いたようです。俺は気絶したふりをしています。 嫁「○○!○○!大丈夫?しっかりして!ごめんな!ごめんな! 大丈夫やから!何とでもなるから!しっかりして!お願い!ごめんな」 泣きながら叫んでいます。すぐにでも抱きしめたかった。 でも苦しむふりをして必死に演技しました。心の中で何度も謝りました。 嫁は俺が生きているのを確認するとすぐに救急車を呼びました。 そしてまだ外で俺を探している嫁父と同僚に連絡を取りました。 救急車の音が聞こえるのど同時に皆が帰ってきました。 &bold(){591 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY [sage]2011/02/23(水) 22:57:02.99 ID:RgP83sC7O [19/22]} 皆が足早に俺の顔を覗きこんできます。 同僚「○○。大丈夫か。ごめんな。気付いてやれんで。仕事は何も心配せんでええから。また一緒に頑張ろな」 嫁「皆心配やったんよ。会社の人もたくさん探しにきてくれたよ。社長も心配してるって」 皆が優しく声をかけてくれます。本当はピンピンしてるのですが来るしそうにうなづきました。 救急隊員に運ばれ救急車に乗りました。そして病院に運ばれました。 病院には運ばれましたが実際はどこもなんともありません。首は本当に少し締めたのでちょっと痛いくらいでした。 皆の温かさに触れ、もう何度目かわかりませんが、明日からまた頑張ろうと思いました。 身体はどこも悪くないのですぐに復帰出来ると思っていたし、そうしたかったのです。 しかし俺の思いとは裏腹に、この愚かな行為は俺を苦しめるのでした。 &bold(){596 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY [sage]2011/02/23(水) 23:14:04.33 ID:RgP83sC7O [20/22]} 病院では首の痛みやら、息が苦しくないかやら身体の調子を聞かれました。 最初は苦しそうに演技していましたが最後には大丈夫と答えました。早く帰りたかったのです。 しかし、俺の思い通りにはいきませんでした。 「身体はもう大丈夫なようですね。しかし御主人、あなたは自らご自分の命を絶とうとしたのです 精神的にもかなり疲れていると思われます。通常、そういった方には気持ちが落ち着くまで精神科への入院をお勧めしています」 精神科?確かに疲れ切ってはいたもののそこまでする必要はないと思いました。 が、したことは事実です。嫁の希望もあり、医者にいわれるまま近所の精神科のある病院に入院する事になりました。 &bold(){605 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY [sage]2011/02/23(水) 23:43:27.90 ID:RgP83sC7O [22/22]} 精神科に着いてまず医師との面談がありました。色々と説明がありました。 まず俺は医療保護入院の為、自分の意志では退院出来ない事。嫁の許可が必要 入院は一ヶ月を予定している事。タバコは厳禁。外出も許可が出るまでダメ 一瞬で来た事を後悔しました。しかし仕方ありません。覚悟を決めました。 が、その覚悟は一日で脆くも崩れ落ちました。 俺が入院する病棟。そこに入るには何重もの扉があり全て施錠されています。 病棟の中には隔離ルーム、観察ルーム、開放ルームの3つがあり、俺は隔離ルームに入れられました。 部屋は個室。ですが鍵がかけられテレビも何もありません。あちこちから奇声が聞こえます。 私物も何も持ち込めません。新聞もありません。 3食が時間になれば看護師がもってきて、たまに担当医師が来るくらい。 それ以外は部屋から一歩も出れないし、誰とも話せません。 面会も家族のみ30分だけです。どこも悪くないのに薬だけは大量に飲まされます。 俺はこの隔離ルームで3日過ごしました。 &bold(){609 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY [sage]2011/02/24(木) 00:06:31.07 ID:POK26RmmO [1/8]} たった3日でしたが俺には一ヶ月くらいに感じました。 嫁は毎日見舞いに来てくれます。実家から親も来ました。最初は皆俺を気遣って優しくしてくれます。 観察ルームに移ると部屋の鍵はなくなりました。公衆電話から電話もかけれます。 ただしテレビはありません。新聞も雑誌も持ち込み不可。ただし面会時のみ新聞を読む事は許されました。 ただ毎日が退屈で仕方ありません。そして嫁がだんだんと不機嫌になっていきます。 実はこの入院では家族と医師の面談も毎日行われていたのです。 最初は自殺のショックもあるので優しく接してくださいと言われていたようです。 しかし俺のその行為の原因は競馬です。その事を本人にも自覚させ、反省させ、二度とおこさない為にも徐々に厳しく接してくださいと言われていたようです。 観察ルームには二週間程いました。そうとも知らず俺は嫁にやれ野球はどうなった?W杯はどうなった? 揚句の果てには安田記念はどうだった?など呑気に聞くもんで本気で怒ってたのだと思います。 そして6月18日にやっと開放ルームへと移る事が出来ました。 &bold(){615 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY [sage]2011/02/24(木) 00:19:10.37 ID:POK26RmmO [2/8]} 入院して一ヶ月のうち半分が過ぎ、やっと開放ルームへ。 ここでは各自にテレビが一台つき、新聞も雑誌も持ち込み自由。 大量の薬を除けば、まあ何とか我慢出来そうです。 毎日の治療の中で、嫁とある約束をしました。二度とギャンブルをしないと。 グリーンチャンネルもすでに解約したと聞かされました。 さらにもう二度とギャンブルをしないという誓約書も書きました。 俺ももうあんな問題起こしたくないという思いもあり絶対真面目にやると思いました。 色んな患者がいましたが適当に仲良く過ごしあともう少しで退院というある日の事でした &bold(){618 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY [sage]2011/02/24(木) 00:30:18.00 ID:POK26RmmO [3/8]} 病院にずっといると曜日の感覚がありません。何気なしにテレビをつけるとそこに写っていたものは。 競馬中継でした。慌ててチャンネルを変えようとしました。 が、いやまてよ。別に馬券買ってる訳でもないし、誰に見られてる訳でもない。 純粋にスポーツとして見るだけならいいか。何々、ふうんブエナが出てるのか。こりゃブエナで決まりやな。 そんな軽い気持ちで今まさにスタートしようとしている宝塚記念を二度と競馬をしないと誓った病院の病室で観戦しました。 衝撃でした。ブエナが負けた。ナカヤマフェスタに。面白れぇwやっぱ競馬面白れぇ 退院の3日前の事でした。 &bold(){621 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY [sage]2011/02/24(木) 00:46:13.40 ID:POK26RmmO [4/8]} 無事退院し仕事復帰。しかも俺がやらかした事は一部の人間しか知らず、親の看病の為田舎に帰っていた事になっていました。 俺なんかの問題児の為に会社はそこまで気を使ってくれたのです。 実際には知っている人間はたくさんいたかも知れません。出張をドタキャンしたのですから。 でもそんな事どうでもよかったのです。仮払金の50万は新たな借金となりました。 でもそれ以外なにもペナルティーも課されなかったのです。おまけに働いていない6月の給料も丸々貰いました。 俺は会社と嫁の為に一生懸命働こうと決めたのでした。 脳裏にはナカヤマフェスタが勝った宝塚記念が時々浮かびました。競馬がしたい気持ちに何度もなりました。 でもそれに負けたらあかんと思い頑張りました。 実際、退院してからは周りの目も厳しくなりました。 金はきっちり嫁に管理されてます。出張仮払は必要最低限になりました。土日には必ず会社の同僚から電話で居場所チェック。 でもそれは仕方ないと思いとにかく仕事を頑張りました。 このまま必ず嫁を幸せにするぞと誓ったのでした。 そして夏が過ぎ、秋になったある日の事でした。 &bold(){631 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY [sage]2011/02/24(木) 01:45:21.22 ID:POK26RmmO [6/8]} 退院してからは競馬もスロットも一切しませんでした。 毎月のこずかいで何とかやりくりしてました。足りなくなると嫁に言って怒られながらも追加でもらいながら。 ある日、会社で同僚と昼飯を食いに行った時の事です。 同僚が950円の高めの定食を頼みました。美味しそうだったので俺も同じものを頼みました。 すると同僚はこう言ったのです。 「会社に借金してる身分でえらい高いもん食うんやな」 おっしゃる通り。気をつけなければと反省しました。 同僚は続けざまにこう言いました。 「こづかいも十分貰ってるやろ。追加までして貰ってなんで節制しないんや」 言われる通りです。反省しました。 ん?けど何でこづかい追加した事知ってんの?聞くと 「奥さんが心配して何か問題ないかって聞いてきたんや。入院してからずっと連絡とってるで」 嫁と同僚は俺が入院してからずっと連絡をとっていたみたいです。 もちろん俺を心配しての事ですからやましい関係にはなっていないと今でも信じています。 でも…。どうしてもそれが引っ掛かります。俺が問題をおこしたのがそもそもの原因ではありますが。 その日から俺は嫁とも同僚とも何かよそよそしい感じになってしまいました。 毎日が何か張り合いなく何か悶々とする。そんな日が何日か続きました。 ある日、嫁にこう言いました。 「俺も真面目にやる。もう問題もおこさない。だから同僚と陰で連絡とるのはやめてくれ」 嫁は俺にこう答えました。 &bold(){696 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY sage 2011/02/24(木) 18:24:11.06 ID:POK26RmmO [9/10]} 「あんたはどこまで私を苦しめる気?いつ問題おこすかわからんあんたを私は我慢して見とかなあかんの? この不安や恐怖を一人で耐えなあかんの?誰にも何にも相談したらあかんの?私も死にたいくらい苦しいんやで」 返す言葉はありません。つまり不安や恐怖を和らげる為にも同僚に連絡を取って相談したというのです。 もちろんこれからも続けると言われました。あんたがもう大丈夫と判断したらやめると…。 拷問です。確かに俺が問題おこさない為にはいいかもしれません。嫁の不安や恐怖を消す為にも…。 しかし、嫁に隠れて数々の浮気をしてきた俺です。それが嫁の浮気に繋がらないとはどうしても思えません。 しかも不安や恐怖を抱えた嫁には付け入る隙は十分にあると思ってしまいました。 あれだけ俺を助けてくれた嫁や同僚を、もう信じる事が出来なくなってしまったのです。 一体嫁や同僚が何をしたというのでしょう?俺はふつふつと怒りが込み上げてきました。 「あほか!信じられんならさっさと離婚せぇ!そんな陰でこそこそされて何が夫婦じゃ! お前もあいつも信用できんわ!勝手にこそこそしとけ!あほ!かす!」 怒りにまかせて罵倒しました。嫁は泣きながら反論します。 「何でわからんのよ!誰のせいでこんな気持ちになったのよ!自分勝手すぎる! 私だって人間や!相談する相手くらい欲しいわ!あんたは嘘ばっかりやったやないの!」 俺はどうしても納得出来ません。お互いに熱くなり、罵声を浴びせ合いました。そして… バシッ!! 嫁が床に崩れ落ちました。 泣いている嫁の頬をビンタしてしまったのです &bold(){706 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY sage 2011/02/24(木) 18:58:18.90 ID:POK26RmmO [10/10]} あれだけ騒がしく罵倒し合っていたのに今は嫁のすすり泣く声しか聞こえません。 どうしよう?どうしよう?殴った事を後悔している自分がいます。 嫁はそのまま一言も発っさず布団にもぐりこみました。 結局、翌日まで嫁とは会話しませんでした。 殴ってしまった後悔と、これからどうなるんだろうという不安が込み上げてきました。 そんな気持ちで会社に向かいました。 仕事中、嫁から一通のメールが届きました。 &bold(){738 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY sage 2011/02/24(木) 22:04:55.50 ID:POK26RmmO [11/15]} 「昨日はごめんね。同僚の○○さんとはあなたが入院してから色々と気にかけてもらってました。 でも入院中はお母さんも一緒だったし二人であった事はないよ。 私も不安が正直あるし、つい確認してしまいました。ごめんね。 でもこれからもしばらく不安は消えません。だけど○○さんに連絡するのはやめます。 そのかわり、毎日言いたくないことも聞くかもしれないけど許してね。 今日も仕事頑張ってね。」 俺は自分が情けなくてたまりませんでした。全ては俺に責任があります。 俺がまぎらわしい行動をとらなければいいんだ。その日からまた頑張りました。 B部長は相変わらず競馬の結果を俺に報告してきます。頭にはあの宝塚記念がよぎります。 でも、必死に自分の欲望を押さえました。 ある時、同僚と一緒に出張に行きました。仕事が早く終わり、時間があきました。 そこで同僚がまさかの悪魔の囁きを吹き込んできました。 &bold(){744 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY sage 2011/02/24(木) 22:25:39.23 ID:POK26RmmO [12/15]} 「お前俺が奥さんと連絡取ってたからって何心配してんねん。奥さんがもう連絡しませんがお前をよろしく言うてたで でもいくらなんでもお前をそんな裏切り方せぇへんわ。もっと信用してくれや」 言われてみれば同僚は俺じゃないしそんな裏切りする訳ありません。 余計に嫁を殴った自分が愚かに思えました。 「さ、じゃあ息抜きしよか。スロット行こう。金は俺が出す。奥さんには内緒な。勝ったらこずかいにせぇや。一万勝負な」 同僚はそう言って俺に一万円をくれました。正直スロットはずっとしてないのでわかりません。 何よりギャンブルはギャンブルです。一瞬躊躇しました。 まあでも気を使って言ってくれてるし、たまにはいいか。 これが絶対に絶対にダメだったのです。断るべきだったんです。 誘われるがままスロットに行きました。これが更なる地獄の契機となりました。 &bold(){750 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY sage 2011/02/24(木) 22:41:35.47 ID:POK26RmmO [13/15]} 5号機はよくわからないので、同僚の隣へ。機種はジャグラー。 おすわり一発先ペカビッグ。俺は同僚に一万円を返しました。 これがなくなったら辞めよう。そう思いながらビッグを消化しました。 「やったな。こずかい増えたやん」 同僚が笑いながら言います。 「そやな。でもすぐなくなるわ。なくなったらやめるわ」 そう言いがらレバオン。先ペカ。ビッグ。ジャンバリ。10Gガコッ。ビッグ。3Gガコッ。ビッグ。 あれよあれよとコインが増えます。結局ジャンバリ2回を含む4000枚。8万円勝ちました。 同僚は1000円勝ち。4万を同僚に渡し二人仲良く4万勝ち。さあどうする? 俺の頭の中は「競馬が出来るヤッホー」という言葉が天使の輪のようにグルグル回っています。 出張を終えたその週末。またまた仕事と嘘をつき俺は難波WINSにいました。 &bold(){759 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY sage 2011/02/24(木) 22:56:46.26 ID:POK26RmmO [14/15]} ジャパンカップ前日の土曜日。俺は朝から難波WINSで競馬をしてしまいました。 所持金はスロットで勝った4万とこずかいの2万。合計6万。 もう競馬をしないと誓った退院の日から約五ヶ月。俺はWINSに来てしまった罪悪感がありました。 しかしその何倍も競馬が出来る喜びに溢れていました。ワクワクしながら馬券を買いました。 最初は適当に遊んでジャパンカップの前売り買って帰ろう。使っても4万まで。3連単には手を出さない。 そう決めて馬券を買いました。当たったりハズレたりの繰り返しでしたが心から楽しみました。 しかし、メインを前にして残2万。もはやメインを買わずして帰る事など出来ません。 ついには残り1000円と電車賃のみになってしまいました。 家に帰り俺がとった行動とは &bold(){782 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY sage 2011/02/25(金) 00:03:01.50 ID:POK26RmmO [15/15]} 残金1000円で帰宅。来月のこづかいまでまだまるまる一ヶ月あります。 ここで金の無心は出来ません。しかし俺は嫁に明日は仕事と告げました。 実際土日に仕事は多かったのです。退院以降会社もわざと土日に仕事を入れ、俺を競馬から遠ざけていました。 8月などは一日も休みませんでした。なので日曜仕事と言っても嫁は疑いもしなかったのです。 でも金がありません。当然競馬で取り返す事を考えていた俺には軍資金が必要です。 どうやって作ったか。それは会社から貸与されているパソコンを質に入れました。 3万円になりました。これでこづかいを取り返す。2万。2万でいいんや。頼む。今日は勝たせてくれ。 足を震わせ、顔を引き攣らせ、いざ出陣と難波WINSに向かいました。 レースを選び、勝負しましたがジャパンカップを前に残金は半分になっていました。 頭には宝塚記念がよぎります。ブエナもナカヤマも出ます。他にもローズもピサもペルーサもいます。 さあ、どうする?悩みに悩んで俺が決めた買い目は…
-[[人生馬券(2)]]の続きです &bold(){547 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY [sage]2011/02/23(水) 19:18:47.51 ID:RgP83sC7O [10/22]} 2010年のオークスまで何かと理由をつけて嫁や親に金をもらい勝負していましたが当然負けていました。 俺の心の中はもう狂っていたのです。負けている事よりも満足のいく金額で勝負出来ない事へのストレスがどんどんたまっていきます。 満足のいく金額とは?もうこの時の俺は3連単全通りBOX買いがしたくてたまらなかったのです。 そしてダービーでそれをすれば必ず大勝利すると信じてやまなかったのです。 しかし金がない。でも俺はこの時金を作る方法が一つだけありました。 でも出来るだけそれはしたくない。出来れば他の方法でと考えていましたがやはりそれを実行する事になったのです。 &bold(){550 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY [sage]2011/02/23(水) 19:29:32.74 ID:RgP83sC7O [11/22]} 実はダービーの翌日から俺は一ヶ月の中国出張が決まっていました。その仮払金50万を預かる事はわかっていたのです。 しかしそれを競馬に使い、もし負ければたちまち取り返しがつかなくなります。 悩みに悩みましたが50万あるので全通り買いは出来ます。しかも必ず当たるのです。 俺は決意しました。これで勝負しよう。必ずプラスになる。間違いない。 地獄への扉が今開きました。 ダービーの全通り馬券を土曜日に買い、当日を迎えました。 &bold(){556 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY [sage]2011/02/23(水) 19:55:00.81 ID:RgP83sC7O [12/22]} ダービー出走はもうすぐです。俺は胸の高鳴りを押さえテレビの前に座りました。 スタート。何でもいい。とにかく人気薄。50万以上。頼む。神様。頼む。 必死に祈りました。エイシンフラッシュが一着でゴール。どうや?配当は?祈るような気持ちで待ちました。 しかし…。皆さんご存知の通りです。15万…。 身体の力が抜け、その場に横たわりました。何も視界に入りません…。 様子を見ていた嫁が不安そうにこちらを見ています。 しばらく何も話せませんでした。嫁が口を開きました。 「また…何かやらかしたんやね?」 何も答えられません。身体は震えています。 「もういい!答えたくないなら答えなくていい!私はもう知らん!」 その勢いで嫁は家を飛び出しました。嫁の実家はすぐ近所です。 追いかける事も出来ずただ茫然としていました。 何時間くらい経ったでしょう。突然明日からの出張をどうにかしなければと焦り出しました。 それに嫁。ちゃんと話さなければ。でも今度こそ離婚だろう…。 様々な焦りと不安が胸の中を支配しています。 「明日、俺はどうなっているんだろう?」 見えない未来が俺に不安となって襲い掛かります。 &bold(){560 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY [sage]2011/02/23(水) 20:10:00.22 ID:RgP83sC7O [13/22]} まず嫁に電話して正直に話しました。 「…もう知らんわ。何もしてあげられない。私は金づる?いい加減にして! 会社にも自分で責任とって!それから今回でもう決めた!離婚するから!」 ついに嫁に言われてしまいました。 次に親に電話して話しました。 「お前はアホか?なんだかんだと親から金を巻き上げて一体いくらお前に出してると思ってる? いい加減にしろ!会社にはちゃんと話してクビになれ!もうお前では家庭も守れん。すぐ離婚しろ!」 どちらも厳しい答えでした。が、当然です。 会社の上司には…電話しませんでした。 いくらか配当があったとはいえ馬券のままです。出張にいく金はありません。 何より離婚が現実となったショックでもうなにもかも投げやりになってしまいました。 どんどん夜はふけ朝が近づいてきます。時計を見ながらどうにもならない現実に押し潰されます。 死のう。 もう生きる気力がありませんでした &bold(){564 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY [sage]2011/02/23(水) 20:21:40.97 ID:RgP83sC7O [14/22]} もうすぐ朝です。何時間かすれば俺が空港の待ち合わせ場所に来ないと騒ぎになるでしょう。 何かの時にと嫁が会社に来社した時に嫁の携帯番号は会社に伝えてます。恐らく嫁にもすぐ連絡がいくでしょう。 もう、すぐに訪れるであろうその現実に耐える事は出来なかったのです。 自分が明らかに悪いのにも関わらず、俺は悲劇のヒロインの如く自分を美化していました。 俺が死ねば皆悲しんで今回の事許してくれるかな?そこまでしなくてもって思ってくれるかな? そんなふざけた事も考えていました。どちらにしても俺の問題はすぐに会社にも知れ渡ります。 俺はビニールの紐を手に取り、自分の首を締め付けました。 &bold(){566 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY [sage]2011/02/23(水) 20:39:37.44 ID:RgP83sC7O [15/22]} 嫁に「さようなら」とだけメールし携帯の電源を切りました。 そしてビニールの紐で自らの首を締めたのです。 く…苦しい。すぐに手を離してしまいます。自分で締めるのは無理と諦めました。 今度は包丁を自分の胸に刺しました。 い…痛い。血も出ないのにそれ以上出来ません。 ドアノブに紐をかけて首を吊ってみます。 く…苦しい。無理。 一体俺は何をしているのでしょう?気がつけば何時間もそんな事をしていました。 時計は空港での待ち合わせ時間をとっくに過ぎていました。 玄関でガチャガチャという音が聞こえます。嫁だ!とっさにキッチンの台の後ろに横たわりました。 結局死ねなかったのです。そしてどうしていいかわからず死んだふりをしてしまっているのです。 キッチンの台はちょうど人一人分隠れるくらいの大きさがあります。でも30秒も探せば恐らくすぐに見つかります。 どうしよう、どうしよう。もう人生最大のパニックです。 嫁と嫁父、嫁母がドタドタと部屋に入ってきました &bold(){574 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY [sage]2011/02/23(水) 20:57:46.75 ID:RgP83sC7O [16/22]} 「どうしよう。私が昨日あんな事言ったからや。あの人どうしようもなくなって死のうとしてるんや。私のせいや。」 嫁の泣いている声が聞こえます。 実は台を挟んですぐ近くでピンピンしてます。どうしよう。俺も悩みました。 恐らく俺の存在はすぐに見つかります。死んだふりったって死んでないからすぐにバレるぞ。どうする?俺。 必死に自問自答します。そして名案が浮かびました。 たまたま運よくビニール紐を手に持っていたのです。それをそーっと首に巻き付けました。 首を締めて自殺を図って気絶した事にしよう。我ながら名案だと思いました。あとは見つかるのを待つだけです。 ただ皆動揺していたのでしょう。全く俺の存在に気付きません。話し声だけが間近に聞こえます。 嫁母「どこかあの人が行きそうな所ないの?」 嫁「わからん」 嫁父「とにかくすぐに警察に届けないとな」 そんな会話が聞こえます。早く見つけてくれ。そう思っていると誰かがきました。会社の同僚です。 同僚「どうも。とにかく一刻も早く見つけましょう」 嫁「…ヒッ…ヒッ」 同僚「大丈夫。どこかにいるはずやから。奥さんのせいじゃないから」 嫁は泣いているようです。また会社にも事情は話したみたいです。 &bold(){578 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY [sage]2011/02/23(水) 21:16:53.66 ID:RgP83sC7O [17/22]} 大人が狭い部屋に四人、俺も含めて五人もいるのです。見つからないのが不思議なくらいです。 嫁父「彼は最近職場ではどうだったんですか?」 同僚「頑張ってましたよ。会社も助かってました。今日から出張もまかせてたんですが…」 嫁「出張は問題なかったんですか?」 同僚「大丈夫。なんとか北京の人間で対応しますから」 嫁母「やはりクビですか?」 同僚「いえ。それは考えていません。何らかのペナルティーはあるでしょうが」 嫁「ありがとうございます。私…もう…」 同僚「奥さん。会社も彼をサポートします。だから奥さんも彼をサポートしてあげて下さい。離婚なんか考えないで下さいね」 嫁「はい」 何という事でしょう。俺は会社もクビにならず、離婚もないみたいです。 しかしこの奇妙な空間はそのままです。早く見つけてくれ。 嫁父「とにかく探そう。まずは警察に行こう」 全員がドタドタと警察に向かいました。 結局俺は見つからなかったのです。考えてみれば皆冷静さを失っていました。 くつも携帯も家にある。警察もわざわざ出向く必要もなければ全員で行く必要もない。 ただ皆が俺を探すために必死だったのです。しかし俺もどうしていいかわからずただ皆の帰りを待ちました。 &bold(){581 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY [sage]2011/02/23(水) 21:42:20.29 ID:RgP83sC7O [18/22]} いつ帰ってくるかわかりませんが、首にビニール紐を巻き付けたまま横たわり、皆の帰りを待ちました。 その間、何時間くらいだったでしょうか。俺も色んな事を考えました。 皆どんな気持ちで俺を探しているんだろう。俺は何て事をしてしまったんだろう。これからどうすれば… そんな事を考えていると玄関がカチャカチャといっています。帰ってきたようです。 嫁「どうしよう…見つからなかったらどうしよう」 嫁の声が聞こえます。 嫁母「しっかりしなさい!あんたが信じないでどうするの!」 嫁母が励まします。俺はすぐそこにいます。 嫁母「とにかく何かお茶でも飲んで落ち着きなさい」 嫁が冷蔵庫に向かいます。俺は冷蔵庫のすぐ横にいます。 嫁「はっ…」 どうやら気付いたようです。俺は気絶したふりをしています。 嫁「○○!○○!大丈夫?しっかりして!ごめんな!ごめんな! 大丈夫やから!何とでもなるから!しっかりして!お願い!ごめんな」 泣きながら叫んでいます。すぐにでも抱きしめたかった。 でも苦しむふりをして必死に演技しました。心の中で何度も謝りました。 嫁は俺が生きているのを確認するとすぐに救急車を呼びました。 そしてまだ外で俺を探している嫁父と同僚に連絡を取りました。 救急車の音が聞こえるのど同時に皆が帰ってきました。 &bold(){591 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY [sage]2011/02/23(水) 22:57:02.99 ID:RgP83sC7O [19/22]} 皆が足早に俺の顔を覗きこんできます。 同僚「○○。大丈夫か。ごめんな。気付いてやれんで。仕事は何も心配せんでええから。また一緒に頑張ろな」 嫁「皆心配やったんよ。会社の人もたくさん探しにきてくれたよ。社長も心配してるって」 皆が優しく声をかけてくれます。本当はピンピンしてるのですが来るしそうにうなづきました。 救急隊員に運ばれ救急車に乗りました。そして病院に運ばれました。 病院には運ばれましたが実際はどこもなんともありません。首は本当に少し締めたのでちょっと痛いくらいでした。 皆の温かさに触れ、もう何度目かわかりませんが、明日からまた頑張ろうと思いました。 身体はどこも悪くないのですぐに復帰出来ると思っていたし、そうしたかったのです。 しかし俺の思いとは裏腹に、この愚かな行為は俺を苦しめるのでした。 &bold(){596 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY [sage]2011/02/23(水) 23:14:04.33 ID:RgP83sC7O [20/22]} 病院では首の痛みやら、息が苦しくないかやら身体の調子を聞かれました。 最初は苦しそうに演技していましたが最後には大丈夫と答えました。早く帰りたかったのです。 しかし、俺の思い通りにはいきませんでした。 「身体はもう大丈夫なようですね。しかし御主人、あなたは自らご自分の命を絶とうとしたのです 精神的にもかなり疲れていると思われます。通常、そういった方には気持ちが落ち着くまで精神科への入院をお勧めしています」 精神科?確かに疲れ切ってはいたもののそこまでする必要はないと思いました。 が、したことは事実です。嫁の希望もあり、医者にいわれるまま近所の精神科のある病院に入院する事になりました。 &bold(){605 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY [sage]2011/02/23(水) 23:43:27.90 ID:RgP83sC7O [22/22]} 精神科に着いてまず医師との面談がありました。色々と説明がありました。 まず俺は医療保護入院の為、自分の意志では退院出来ない事。嫁の許可が必要 入院は一ヶ月を予定している事。タバコは厳禁。外出も許可が出るまでダメ 一瞬で来た事を後悔しました。しかし仕方ありません。覚悟を決めました。 が、その覚悟は一日で脆くも崩れ落ちました。 俺が入院する病棟。そこに入るには何重もの扉があり全て施錠されています。 病棟の中には隔離ルーム、観察ルーム、開放ルームの3つがあり、俺は隔離ルームに入れられました。 部屋は個室。ですが鍵がかけられテレビも何もありません。あちこちから奇声が聞こえます。 私物も何も持ち込めません。新聞もありません。 3食が時間になれば看護師がもってきて、たまに担当医師が来るくらい。 それ以外は部屋から一歩も出れないし、誰とも話せません。 面会も家族のみ30分だけです。どこも悪くないのに薬だけは大量に飲まされます。 俺はこの隔離ルームで3日過ごしました。 &bold(){609 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY [sage]2011/02/24(木) 00:06:31.07 ID:POK26RmmO [1/8]} たった3日でしたが俺には一ヶ月くらいに感じました。 嫁は毎日見舞いに来てくれます。実家から親も来ました。最初は皆俺を気遣って優しくしてくれます。 観察ルームに移ると部屋の鍵はなくなりました。公衆電話から電話もかけれます。 ただしテレビはありません。新聞も雑誌も持ち込み不可。ただし面会時のみ新聞を読む事は許されました。 ただ毎日が退屈で仕方ありません。そして嫁がだんだんと不機嫌になっていきます。 実はこの入院では家族と医師の面談も毎日行われていたのです。 最初は自殺のショックもあるので優しく接してくださいと言われていたようです。 しかし俺のその行為の原因は競馬です。その事を本人にも自覚させ、反省させ、二度とおこさない為にも徐々に厳しく接してくださいと言われていたようです。 観察ルームには二週間程いました。そうとも知らず俺は嫁にやれ野球はどうなった?W杯はどうなった? 揚句の果てには安田記念はどうだった?など呑気に聞くもんで本気で怒ってたのだと思います。 そして6月18日にやっと開放ルームへと移る事が出来ました。 &bold(){615 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY [sage]2011/02/24(木) 00:19:10.37 ID:POK26RmmO [2/8]} 入院して一ヶ月のうち半分が過ぎ、やっと開放ルームへ。 ここでは各自にテレビが一台つき、新聞も雑誌も持ち込み自由。 大量の薬を除けば、まあ何とか我慢出来そうです。 毎日の治療の中で、嫁とある約束をしました。二度とギャンブルをしないと。 グリーンチャンネルもすでに解約したと聞かされました。 さらにもう二度とギャンブルをしないという誓約書も書きました。 俺ももうあんな問題起こしたくないという思いもあり絶対真面目にやると思いました。 色んな患者がいましたが適当に仲良く過ごしあともう少しで退院というある日の事でした &bold(){618 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY [sage]2011/02/24(木) 00:30:18.00 ID:POK26RmmO [3/8]} 病院にずっといると曜日の感覚がありません。何気なしにテレビをつけるとそこに写っていたものは。 競馬中継でした。慌ててチャンネルを変えようとしました。 が、いやまてよ。別に馬券買ってる訳でもないし、誰に見られてる訳でもない。 純粋にスポーツとして見るだけならいいか。何々、ふうんブエナが出てるのか。こりゃブエナで決まりやな。 そんな軽い気持ちで今まさにスタートしようとしている宝塚記念を二度と競馬をしないと誓った病院の病室で観戦しました。 衝撃でした。ブエナが負けた。ナカヤマフェスタに。面白れぇwやっぱ競馬面白れぇ 退院の3日前の事でした。 &bold(){621 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY [sage]2011/02/24(木) 00:46:13.40 ID:POK26RmmO [4/8]} 無事退院し仕事復帰。しかも俺がやらかした事は一部の人間しか知らず、親の看病の為田舎に帰っていた事になっていました。 俺なんかの問題児の為に会社はそこまで気を使ってくれたのです。 実際には知っている人間はたくさんいたかも知れません。出張をドタキャンしたのですから。 でもそんな事どうでもよかったのです。仮払金の50万は新たな借金となりました。 でもそれ以外なにもペナルティーも課されなかったのです。おまけに働いていない6月の給料も丸々貰いました。 俺は会社と嫁の為に一生懸命働こうと決めたのでした。 脳裏にはナカヤマフェスタが勝った宝塚記念が時々浮かびました。競馬がしたい気持ちに何度もなりました。 でもそれに負けたらあかんと思い頑張りました。 実際、退院してからは周りの目も厳しくなりました。 金はきっちり嫁に管理されてます。出張仮払は必要最低限になりました。土日には必ず会社の同僚から電話で居場所チェック。 でもそれは仕方ないと思いとにかく仕事を頑張りました。 このまま必ず嫁を幸せにするぞと誓ったのでした。 そして夏が過ぎ、秋になったある日の事でした。 &bold(){631 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY [sage]2011/02/24(木) 01:45:21.22 ID:POK26RmmO [6/8]} 退院してからは競馬もスロットも一切しませんでした。 毎月のこずかいで何とかやりくりしてました。足りなくなると嫁に言って怒られながらも追加でもらいながら。 ある日、会社で同僚と昼飯を食いに行った時の事です。 同僚が950円の高めの定食を頼みました。美味しそうだったので俺も同じものを頼みました。 すると同僚はこう言ったのです。 「会社に借金してる身分でえらい高いもん食うんやな」 おっしゃる通り。気をつけなければと反省しました。 同僚は続けざまにこう言いました。 「こづかいも十分貰ってるやろ。追加までして貰ってなんで節制しないんや」 言われる通りです。反省しました。 ん?けど何でこづかい追加した事知ってんの?聞くと 「奥さんが心配して何か問題ないかって聞いてきたんや。入院してからずっと連絡とってるで」 嫁と同僚は俺が入院してからずっと連絡をとっていたみたいです。 もちろん俺を心配しての事ですからやましい関係にはなっていないと今でも信じています。 でも…。どうしてもそれが引っ掛かります。俺が問題をおこしたのがそもそもの原因ではありますが。 その日から俺は嫁とも同僚とも何かよそよそしい感じになってしまいました。 毎日が何か張り合いなく何か悶々とする。そんな日が何日か続きました。 ある日、嫁にこう言いました。 「俺も真面目にやる。もう問題もおこさない。だから同僚と陰で連絡とるのはやめてくれ」 嫁は俺にこう答えました。 &bold(){696 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY sage 2011/02/24(木) 18:24:11.06 ID:POK26RmmO [9/10]} 「あんたはどこまで私を苦しめる気?いつ問題おこすかわからんあんたを私は我慢して見とかなあかんの? この不安や恐怖を一人で耐えなあかんの?誰にも何にも相談したらあかんの?私も死にたいくらい苦しいんやで」 返す言葉はありません。つまり不安や恐怖を和らげる為にも同僚に連絡を取って相談したというのです。 もちろんこれからも続けると言われました。あんたがもう大丈夫と判断したらやめると…。 拷問です。確かに俺が問題おこさない為にはいいかもしれません。嫁の不安や恐怖を消す為にも…。 しかし、嫁に隠れて数々の浮気をしてきた俺です。それが嫁の浮気に繋がらないとはどうしても思えません。 しかも不安や恐怖を抱えた嫁には付け入る隙は十分にあると思ってしまいました。 あれだけ俺を助けてくれた嫁や同僚を、もう信じる事が出来なくなってしまったのです。 一体嫁や同僚が何をしたというのでしょう?俺はふつふつと怒りが込み上げてきました。 「あほか!信じられんならさっさと離婚せぇ!そんな陰でこそこそされて何が夫婦じゃ! お前もあいつも信用できんわ!勝手にこそこそしとけ!あほ!かす!」 怒りにまかせて罵倒しました。嫁は泣きながら反論します。 「何でわからんのよ!誰のせいでこんな気持ちになったのよ!自分勝手すぎる! 私だって人間や!相談する相手くらい欲しいわ!あんたは嘘ばっかりやったやないの!」 俺はどうしても納得出来ません。お互いに熱くなり、罵声を浴びせ合いました。そして… バシッ!! 嫁が床に崩れ落ちました。 泣いている嫁の頬をビンタしてしまったのです &bold(){706 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY sage 2011/02/24(木) 18:58:18.90 ID:POK26RmmO [10/10]} あれだけ騒がしく罵倒し合っていたのに今は嫁のすすり泣く声しか聞こえません。 どうしよう?どうしよう?殴った事を後悔している自分がいます。 嫁はそのまま一言も発っさず布団にもぐりこみました。 結局、翌日まで嫁とは会話しませんでした。 殴ってしまった後悔と、これからどうなるんだろうという不安が込み上げてきました。 そんな気持ちで会社に向かいました。 仕事中、嫁から一通のメールが届きました。 &bold(){738 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY sage 2011/02/24(木) 22:04:55.50 ID:POK26RmmO [11/15]} 「昨日はごめんね。同僚の○○さんとはあなたが入院してから色々と気にかけてもらってました。 でも入院中はお母さんも一緒だったし二人であった事はないよ。 私も不安が正直あるし、つい確認してしまいました。ごめんね。 でもこれからもしばらく不安は消えません。だけど○○さんに連絡するのはやめます。 そのかわり、毎日言いたくないことも聞くかもしれないけど許してね。 今日も仕事頑張ってね。」 俺は自分が情けなくてたまりませんでした。全ては俺に責任があります。 俺がまぎらわしい行動をとらなければいいんだ。その日からまた頑張りました。 B部長は相変わらず競馬の結果を俺に報告してきます。頭にはあの宝塚記念がよぎります。 でも、必死に自分の欲望を押さえました。 ある時、同僚と一緒に出張に行きました。仕事が早く終わり、時間があきました。 そこで同僚がまさかの悪魔の囁きを吹き込んできました。 &bold(){744 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY sage 2011/02/24(木) 22:25:39.23 ID:POK26RmmO [12/15]} 「お前俺が奥さんと連絡取ってたからって何心配してんねん。奥さんがもう連絡しませんがお前をよろしく言うてたで でもいくらなんでもお前をそんな裏切り方せぇへんわ。もっと信用してくれや」 言われてみれば同僚は俺じゃないしそんな裏切りする訳ありません。 余計に嫁を殴った自分が愚かに思えました。 「さ、じゃあ息抜きしよか。スロット行こう。金は俺が出す。奥さんには内緒な。勝ったらこずかいにせぇや。一万勝負な」 同僚はそう言って俺に一万円をくれました。正直スロットはずっとしてないのでわかりません。 何よりギャンブルはギャンブルです。一瞬躊躇しました。 まあでも気を使って言ってくれてるし、たまにはいいか。 これが絶対に絶対にダメだったのです。断るべきだったんです。 誘われるがままスロットに行きました。これが更なる地獄の契機となりました。 &bold(){750 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY sage 2011/02/24(木) 22:41:35.47 ID:POK26RmmO [13/15]} 5号機はよくわからないので、同僚の隣へ。機種はジャグラー。 おすわり一発先ペカビッグ。俺は同僚に一万円を返しました。 これがなくなったら辞めよう。そう思いながらビッグを消化しました。 「やったな。こずかい増えたやん」 同僚が笑いながら言います。 「そやな。でもすぐなくなるわ。なくなったらやめるわ」 そう言いがらレバオン。先ペカ。ビッグ。ジャンバリ。10Gガコッ。ビッグ。3Gガコッ。ビッグ。 あれよあれよとコインが増えます。結局ジャンバリ2回を含む4000枚。8万円勝ちました。 同僚は1000円勝ち。4万を同僚に渡し二人仲良く4万勝ち。さあどうする? 俺の頭の中は「競馬が出来るヤッホー」という言葉が天使の輪のようにグルグル回っています。 出張を終えたその週末。またまた仕事と嘘をつき俺は難波WINSにいました。 &bold(){759 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY sage 2011/02/24(木) 22:56:46.26 ID:POK26RmmO [14/15]} ジャパンカップ前日の土曜日。俺は朝から難波WINSで競馬をしてしまいました。 所持金はスロットで勝った4万とこずかいの2万。合計6万。 もう競馬をしないと誓った退院の日から約五ヶ月。俺はWINSに来てしまった罪悪感がありました。 しかしその何倍も競馬が出来る喜びに溢れていました。ワクワクしながら馬券を買いました。 最初は適当に遊んでジャパンカップの前売り買って帰ろう。使っても4万まで。3連単には手を出さない。 そう決めて馬券を買いました。当たったりハズレたりの繰り返しでしたが心から楽しみました。 しかし、メインを前にして残2万。もはやメインを買わずして帰る事など出来ません。 ついには残り1000円と電車賃のみになってしまいました。 家に帰り俺がとった行動とは &bold(){782 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY sage 2011/02/25(金) 00:03:01.50 ID:POK26RmmO [15/15]} 残金1000円で帰宅。来月のこづかいまでまだまるまる一ヶ月あります。 ここで金の無心は出来ません。しかし俺は嫁に明日は仕事と告げました。 実際土日に仕事は多かったのです。退院以降会社もわざと土日に仕事を入れ、俺を競馬から遠ざけていました。 8月などは一日も休みませんでした。なので日曜仕事と言っても嫁は疑いもしなかったのです。 でも金がありません。当然競馬で取り返す事を考えていた俺には軍資金が必要です。 どうやって作ったか。それは会社から貸与されているパソコンを質に入れました。 3万円になりました。これでこづかいを取り返す。2万。2万でいいんや。頼む。今日は勝たせてくれ。 足を震わせ、顔を引き攣らせ、いざ出陣と難波WINSに向かいました。 レースを選び、勝負しましたがジャパンカップを前に残金は半分になっていました。 頭には宝塚記念がよぎります。ブエナもナカヤマも出ます。他にもローズもピサもペルーサもいます。 さあ、どうする?悩みに悩んで俺が決めた買い目は… &bold(){786 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY sage 2011/02/25(金) 00:24:55.51 ID:4GrOdx+2O [1/6]} 競馬はしてなかったとはいえ、主要レースの結果は知っていましたし、パソコンでレース動画も見ていました。 ナカヤマは凱旋門がピークだろ。ここはこない。でも宝塚で…。いやこない。絶対こない。 ローズは武か。怖いな。やっぱ3歳は怖いな。ピサもペルーサも怖いな。 ブエナ。ここはブエナやろ。天皇賞も強かった。スミヨンだし。よし!1着や!固定や! 結局ナカヤマも加えブエナ1着固定からローズ、ピサ、ペルーサ、ナカヤマに流す3連単各1000円。12000円。 今までなら恐らくBOX買いだったでしょう。しかしこの時は絶対ブエナが勝つと思ったのです。 5000円以上の配当で十分です。最悪3000円。頼む。 レーススタート。ブエナばかり見てます。頼む頼む頼む。最後の直線になりました。 「ブエナ!ブエナ!いけ~!させ~!すぅみぃよぉぉぉん!させぇぇぇ!!」 もう絶叫です。ブエナが1着で入線です。2着はローズとピサで争ってます。どっちでも当たりです。 「よっっっしゃゃあああ!」 飛び上がって喜びました。 「審議」少し不安でしたがまあ大丈夫だろう。 画面ではスミヨンが派手にガッツポーズをしています。 俺はそれを見て確信しました。降着はないだろうと。 &bold(){793 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY sage 2011/02/25(金) 00:43:35.18 ID:4GrOdx+2O [2/6]} 当たり馬券(地獄行き切符)を握りしめ、配当はいくらか?ドキドキしながら待っていました。 しかし確定画面が出る前に無情のアナウンスが流れました。ブエナ降着と。 その瞬間に身体がガタガタと震えだしました。もうダメだ。もう無理だ。 まだ3000円あります。まだレースはあります。でももう取り返せないと悟りました。 初めてWINSで涙を流しました。俺の人生は終わった。そう思いました。 家までどうやって帰ったか覚えてません。ただ自宅の玄関の前で1時間くらい立ち尽くしていたのを覚えています。 静かに玄関のドアを開けました。俺の大好きなカレーの匂いがしました。 &bold(){814 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY sage 2011/02/25(金) 01:49:06.09 ID:4GrOdx+2O [3/6]} 「今日はカレーだよ~」 嫁が明るくいいます。俺も明るく振る舞います。 しかしパソコンを取り戻す為、3万を作らなくてはいけません。 質屋は朝8時から開いてます。明日朝一に行けば間に合います。 何か、理由、何かないか。もっともらしい理由は。 嫁の世間話を上の空で聞きながら考えていました。 「人の話聞いてる?」 嫁が言いました。その時のわずかにひきつった俺の表情を嫁は見逃しませんでした。 「あんたまた…」 俺は無言です。何も浮かびませんでした。ただうつむいていました。 「会社の…パソコン…質に入れた。…競馬…した」 絞り出すように話しました。そして少しづつ嫁の顔を見ました。 「○○さん(同僚)に電話しなさい。今の話全部話しなさい。」 落ち着いて、淡々と俺に告げたのでした。 &bold(){820 / 人生馬券 ◆KqMifUHKmY sage 2011/02/25(金) 02:08:21.25 ID:4GrOdx+2O [4/6]} 同僚に電話し全部話しました。同僚は静かに言いました。 「クビや。もうフォローしきれん。明日パソコン持って会社に来い。それで終わりや」 当然の結果です。そして嫁は…。 「パソコン代は出したる。ちゃんと会社に返してき。そのかわり私は今から実家に帰ります」 パソコン代だけ机に置き、足早に家を出て行きました。 翌日会社では淡々とあっさりと事は進みました。 2010年11月29日、俺は仕事を失いました。 家に帰ると机には離婚届けがありました。俺はサインと印を押しました。 ついにこの日が来てしまったのです。力無くその場に座り込みました。 そして泣きました。そのまま眠りにつきました。 翌日、嫁が言いました。 「私は明日から実家で生活します。離婚届けは私のタイミングで提出します。 あんたも無職やしここの家賃払えないやろ?早く引っ越しして生活スタートしなさいよ」 嫁との生活も終わりになりました。 幸い安い部屋もすぐに見つかり、家具も処分し、必要最低限のものだけ持って引っ越しました。 2010年12月20日、クリスマスを前にして俺はついに一人になりました。 -[[人生馬券(4)]]に続きます

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: