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第四話・五話を追加致しました。なんか、だんだん小説みたいになって来ました……。
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第六話を追加致しました。……めちゃくちゃ長くなってますね。果たして、最後までお付き合いくださる勇者のような方は、いらっしゃるのでしょうか……?
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第七話・八話を追加しました。おそらく、次回で最後まで行けるかと思います。
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第九・十・十一話追加しました。
最終決戦は、プレイングやケンジくんの使ってるデッキなど、ツッコミ所が多いかと思います……。
第一話:「突如襲来!開発部X!」
永らく更新がストップしてしまったデッキ開発部。このまま打ち切られてしまうのではないかと言う不安を抱えながら、開発部メンバーたちはそれぞれの生活を送っていた。
そんな中、「開発部X」なる謎の組織がデッキ開発部を襲来。自称未来からやって来た
禁眼の刺客「メーガネーター」、そしてブロッカーとトリガーと
禁断を愛する乙女「プリマ・ドンナ」の二人は、開発部メンバーに挑戦状を叩き付ける。その正体は明らかにトモと八重子だが、本人らが頑なに否定する為、取り敢えずこの挑戦を受けることにしたアンとエーツー。開発部Xが持ちかけた勝負は、
「互いにDM-EX「DMデッキ開発部特別編! ファイナル・ビルダーズパック!」のイチオシカードを使ったデッキでデュエルし、勝った方がデッキレシピを紹介する」と言う、
某公式動画企画の丸パク、もといオマージュだった。果たしてアンとエーツーは見事勝利し、自身のデッキを紹介することができるのか⁉︎
第二話:「恐怖の番人!8ーEV!」
激闘の末、どうにかトモ、もといメーガネーターを返り討ちにしたアン。
「さすがですね、アンちゃんさん。私はひとまず撤退しますが、これで終わりではありません。いずれ必ず雪辱を果たしに参ります。アイル・ビー・バックです」
と言う捨て台詞と共に、メーガネーターは去って行く。呆れていたアンだったが、取り敢えずデッキレシピの紹介に移行することにした。
一方、八重子、もといプリマ・ドンナと対戦していたエーツーは、その破壊神っぷりに苦戦を強いられていた。
どうにか切り札である
《ボルシャック・クロス・ファイア》を引き当てるも、見事にS・トリガーが発動し、後続を断たれてしまう。
さらに返しのターン、プリマ・ドンナは光の禁断カード
《禁断の番人 8ーEV》を召喚。驚くべき早さで封印を解除し、「禁断不屈(キープチープ)」を発動させた。
その能力により《ヘブンズ・ゲート》を2枚も唱え、鉄壁のブロッカー軍団を形成。結局、相手の反撃を一切許さぬまま、勝利を収めた。
第三話:「早くも極限⁉︎光断の破壊神VS青い悪魔!」
エーツーを撃破したことにより、上機嫌な様子のプリマ・ドンナ。意気揚々とデッキレシピを紹介しているところへ、ユウヤがやって来る。すっかり気が大きくなっていたプリマ・ドンナは、
「今の八重子、もといプリマ・ドンナなら、誰が相手だろうと楽勝ですのよ?特に、《ヒラメキ・プログラム》のないユウヤ様なんて、怖くもないですわ!」
と、思いっきりフラグを建設してしまう。
これに対し、ユウヤは、「すいごいねー!八重子お姉さん!」と無邪気に感心。そして、
「あ、そうだ。ちょうど新しいデッキを作って来たところなんだー。試してみてもいい?」
と、自然とデュエルをする流れに。
プリマ・ドンナは圧倒的な引きのよさで、順調にブロッカーを展開。さらに《ヘブンズ・ゲート》から一気に2体の《禁断の番人 8ーEV》を踏み倒す。
一方なかなか動き出せない様子のユウヤ。彼のクリーチャーは
《サイバー・Y・コンボ》のみ。
次のターン、プリマ・ドンナは追い打ちをかけるように、超次元ゾーンから
《時空の破壊神 エイティ》を呼び出す。そしてさらにその次のターン、《時空の破壊神 エイティ》を
《光断の覚醒者 エンド・オブ・ジ・エイティ》へと覚醒。その覚醒条件で、《禁断の番人 8ーEV》の封印を解除し、「禁断不屈(キープチープ)」により《ヘブンズ・ゲート》と
《Dの道場 ストレンジストイズム》を踏み倒す。もう1体の《禁断の番人 8ーEV》の封印を外し、のみならず、《Dの道場 ストレンジストイズム》のDスイッチを使用。呪文以外のカードをロックしてし、そのまま一斉攻撃でダイレクトアタック──かと思われた、その時、
《革命の魔道書 コンボノミコン》の能力で、ダイレクトアタックを阻止したユウヤ。しかし、本当の恐怖はここからだった……。
「《革命の魔道書 コンボノミコン》のマナ武装4発動!山札の1番上が水か闇のコスト6以下のカードだったら、タダで使えるんだよー!1番上はさっき順番を入れ替えた《煉獄と魔弾の印》だから、これを唱えて、墓地から《黒神龍 エンド・オブ・ザ・ワールド》をバトルゾーンに。山札を3枚にして、残りを墓地に置くよー。
もう何もできないんだったら、ターンエンドでボクのターンだね!
手札から
《サイバー・C・ワールド》を召喚!登場時能力で、手札を山札に戻してから、カードを5枚引くよー。この時、ボクの山札は0枚になっちゃうけど、《サイバー・C・ワールド》の効果で、
『山札の最後の1枚を引く時、かわりにゲームに勝利できる』から、ボクの勝ちだねー!わぁい、コンボー!」
「ひいぃぃぃ⁉︎」
と、いつもどおりの展開で、見事ユウヤが勝利したのだった。
第四話:「情熱対決!美学を追い求める男たち!」
メーガネーターとのデュエルに敗北したことにより、落ち込んでいたエーツー。
そんな彼の元に、シュウが現れる。
「それで終わりか!開発部の熱血漢、エーツー!」
「いや、本当にもう終わった後なんだけど……」
エーツーの覇気のないツッコミを受け流しつつ、本題に入るシュウ。開発部Xによる襲撃事件(?)を知った彼は、次なる戦いに備え、特訓が必要だと告げる。
確かにこのままでは悔しいと考えたエーツーは、彼の提案に同意し、急遽特訓を開始することに。
また、二人の他にも、
「シュウさんの気配がしたから」
と言う理由でやって来たハルや、
「ふぃあんせの為に頑張るのじゃ!」
と言うリリィ。そして、
「面白そうだから様子を見に来たっす。まあアンちゃんは勝ったっすけどね」
と言うアンも加わり、久々にデッキ開発部らしい流れとなった。
やがて新たなデッキを完成させたエーツーに対し、シュウは「エーツー殿がどれほどの美学を持っているか試す」と言う名目で、デュエルを申し込む。
エーツーは新切り札
《ボルメテウス・鉄拳・ドラゴン》などのドラゴンで、順調にシュウのシールドを削って行く。しかし、革命0によってダイレクト・アタックを阻止されてしまい、そのままターン・エンドせざるを得なかった。
そして、返しのターン、シュウも切り札である
《漆黒の美学 デスノワール》をバトルゾーンに出す。革命チェンジによって登場したことにより、ファイナル革命が発動した。
その効果は、
「すべてのクリーチャーのパワーを、自分のマナゾーンにある闇のカード1枚につき−1000する」という強力な物。さらに《漆黒の美学 デスノワール》の能力により、クリーチャーが破壊される度に、エーツーは手札を1枚捨てなければならない。
切り札であった《ボルメテウス・鉄拳・ドラゴン》も殴り倒され、手札も0枚に。そのままジリ貧の展開となり、最終的にシュウに軍配が上がった。
結果、
余計にへこむこととなったエーツーを余所に、他の面々はデッキ紹介へと移行するのだった。
第五話:「新たなる刺客!どっちでもいいのか!よくないのか!ハル・マゲドン!」
シュウの使っていたデッキを紹介し終えたところで、突然ハルがこんなことを言い出した。
「そう言えば、今思い出したんですが、僕、開発部Xに入ったんですよー」
なんと、彼こそが開発部Xからの新たな刺客、「ハル・マゲドン」だったのである。
どうして開発部Xに入ったのかと言う問いに、彼は、
「それはほら、人数合わせ的な?まあ、大人の事情という奴ですね」
と、身も蓋もない返事をする。
そんなわけで、今回もまた、デッキレシピを紹介する権利をかけてデュエルをする展開に。新たなゴッド・ノヴァを使用するというハル・マゲドンに対し、
「仕方ないっすね〜。そういうことなら、このアンちゃんが受けて立つっすかね」
と、アンが名乗りを上げる。かくして、「どっちでもいい」少年と「面白ければなんでもいい」少女の、激しく熱かりし(?)デュエマが幕を開けた。
順調にマナを伸ばしたアンは、
《口寄せの化身龍》を召喚。登場能力で一気に手札を補充しつつさらにマナをチャージする。
一方、ハル・マゲドンのクリーチャーは、自身の分身ともいえるゴッド・ノヴァ、
《左右神 ハル・マゲドン》のみだ。
「いろいろツッコミたい所があるっすけど、まあ、いいっす」
呆れた様子のアンであったが、彼女は気にせずクリーチャーを展開して行く。サイキックではない多色クリーチャーがバトルゾーンに出たことにより、超次元ゾーンにある
《時空凰 ソウセイ・レガシー》のマナ武装4が発動。バトルゾーンに呼び出し、進化Vを決めた。
しかし、ハル・マゲドンに焦っている様子はなく、いつもどおり飄々としている。
「僕のターン、ドロドロドローっと。じゃあ、こいつを出して」
彼は手札から、《精霊聖邪 ライジング・サン》を召喚。場に出ていた《左右神 ハル・マゲドン》の左側にリンクさせる。あらたなゴッド・リンクである「左右(どっちでもいいですけどね)G・リンク」は、ゴッド・ノヴァの好きな側にリンクできるのであった。
まさに変幻自在、「どっちでもいい」の極地とも言える能力だが、アンも黙ってはいない。
「……ハルくん、出しちゃったっすね。多色クリーチャー」
不敵な笑みを浮かべるアン。それもそのはずであり、
「多色クリーチャーがバトルゾーンに出たことにより、《時空凰 ソウセイ・レガシー》の覚醒条件成立っす!覚醒、それはつまり裏返るってことっす!ひっくり返したれやぁぁぁってことっす!」
言いながら、彼女は《時空凰 ソウセイ・レガシー》を裏返す。
「これぞまさに、アンちゃん26の秘密の一つ!『裏返しの覚醒(アン・チャンス)』!」
「なるほど〜、多色クリーチャーであれば、敵でも味方でもどっちでもいいわけですねー。ちょっと気に入りました。
うーん、ここは取り敢えず相手プレイヤーにアタックしときますか」
「甘いっすね、ハルくん!多色クリーチャーの攻撃時、《輝きの覚星者 キリンジ・スペクトル》のメテオバーン発動っす!
進化元を1体墓地に置き、そのクリーチャーと同じ文明を持つコスト7以下のサイキック・クリーチャーを場に出すか、もしくは場にある同じ文明のサイキック・クリーチャーを1体裏返せるっす!」
アンは上の能力を選択し、超次元ゾーンから《勝利のガイアール・カイザー》を呼び出す。
また、自分のサイキック・クリーチャーがバトルゾーンに出たことにより、《輝きの覚星者 キリンジ・スペクトル》は再び《時空凰 ソウセイ・レガシー》へと裏返ってしまった。
「サイキックが出て来ると裏返っちゃうんすけど、自分のターンのターンのはじめにまた覚醒できるんであんまり気にならないっすね。何気に覚醒前はブロックされないっすし」
こちらの覚醒も解除されたのか、黄金のオーラを引っ込めつつ解説するアン。
ひとまずシールドチェックへと移行する。
「おっ、来たっす!シールド・トリガー、《僕らの友情パワー!》!超次元から呼び出すのは、《勝利のプリンプリン》っす」
「あ、これ、アレですね……」
ターンが代わり、アンのターン。先ほど説明していたとおり、再び「裏返しの覚醒」が発動する。そして、《勝利のガイアール・カイザー》の攻撃時、《輝きの覚星者 キリンジ・スペクトル》のメテオバーンを使用。超次元ゾーンから、《勝利のリュウセイ・カイザー》を呼び出した。
「ふはははは、この三体が揃ったということは、わかってるっすね!そう、V覚醒リンクっす!てなわけで──最強のサイキック・スーパー・クリーチャー、《唯我独尊 ガイアール・オレドラゴン》の完成っす!」
《唯我独尊 ガイアール・オレドラゴン》のワールド・ブレイカーにより、ハル・マゲドンのシールドはすべて吹き飛ばされてしまう。
「アンちゃんには、まだ攻撃できるクリーチャーが二体もいるっす。これでトリガーを引かなければ、アンちゃんの勝ちはほぼ確定っすね」
「……さすがはイケメンの幼馴染がいるアンちゃんさん。ヒリ付かせてくれますね」
不利な状況にも関わらず、よくわからない設定を押し付けながらアニメの真似をする余裕はあるらしい。果たして、彼は見事シールド・トリガーを引き当てるのだった。
「シールド・トリガー、
《ゴッド・ハンド》。《口寄せの化身龍》を相手の山札の一番上へ。さらに、リンクしている自分のゴッドがあるので、アンちゃんさんには山札をシャッフルしてもらいます」
また、トリガーした呪文はそれだけではなく、
「そして今度は、《DNA・スパーク》を使います。相手クリーチャーをすべてタップして、シールドが2つ以下なので、1枚山札から追加。さらにもう1枚の《DNA・スパーク》を唱え、シールドをまた追加します」
「ぐぬぬっ、八重子ちゃんバリの引きのよさっすね。まさかハルくんまで贔屓されていたとは」
結局攻め切ることができず、ターン・エンドとなる。
そして、返しのハル・マゲドンのターン、彼も新たな切り札を召喚する。
「僕のターン、手札から
《真神類 イブヤ》を召喚します。召喚してバトルゾーンに出したことにより、能力発動!
ゴッド・ノヴァを1体、手札かマナゾーンからタダで出せるんです!
というわけで、僕が呼び出すのは──《「黒幕」》です!」
ハル・マゲドンは《真神類 イブヤ》の能力で呼び出した《「黒幕」》を、《精霊聖邪 ライジング・サン》と《左右神 ハル・マゲドン》の間にリンク。即座に三体リンクを完成させ、《「黒幕」》で互いのシールドをすべてブレイクする。
「《精霊聖邪 ライジング・サン》があるので、僕の手札に加えるゴッド・ノヴァ OMGはすべてシールド・トリガーになります。というわけで、さっそくシールド・チェックを──おっ、これはラッキーですね」
彼はブレイクされたシールドから、二体のゴッド・ノヴァ OMGを召喚する。
「《無法神類 G・イズモ》と、《神の子 イズモ》を召喚します」
「なんと⁉︎」
「ここで《真神類 イブヤ》のもう一つの能力が発動します。バトルゾーンに自分の《イズモ》か《ヨミ》があれば、このクリーチャーは『左右G・リンク』を得る……。
というわけで、今場に出した二体の《イズモ》と《真神類 イブヤ》をリンクさせますね!」
これにより、《無法神類 G・イズモ》と《神の子 イズモ》の三体でリンクしている時の能力が発動。バトルゾーンにあるリンクしているゴッドは、バトルゾーンを離れず、さらに相手に選ばれなくなってしまった。
「くっ、離れない上に選べないクリーチャーが二体じゃ、さすがのアンちゃんもどうしょうもないっすね」
「何もできないなら、そのままダイレクト・アタックです」
「……負けたっす」
「やったー!勝ちましたよ、シュウさん!見てましたか!」
激戦の末、ハル・マゲドンが勝利を収めた。その間、端から見守っていた他の面々は、終始あっけに取られていたと言う。
第六話:「再び襲来!開発部X!」
「トモちゃんチェックです!」
突然聞こえて来たその声に、驚くアンとエーツー。
しかし、シュウとハル、そしてリリィは何故かノリノリで、
「その声は!」
「開発部Xのボスにして、禁眼の使い手!」
「メーガネーター!なのじゃ!」
仕込んでいたのではないかと思えるような連携を見せる。
そう、いつの間にかそこには、開発部Xのボスであるメーガネーターと、どことなくNo. 2的ポジションの、プリマ・ドンナが立っているではないか。
悪役然とした登場をし、眼鏡から強烈な光を放つメーガネーター。エーツーは呆れた様子で、彼女に尋ねる。
「……えっと、何してんのトモちゃん」
「トモちゃんではありません。私は禁眼からの刺客、メーガネーター。このデッキ開発部を『ゼロへと戻す』存在です」
「いや、さっき自分で『トモちゃんチェックです!』って言ってたよね⁉︎」
「なんのことでしょう……。
それより、我々開発部Xは、再びみなさんに挑戦する為にやって来ました。前回の雪辱、果たさせてもらいます!」
どうやらリベンジに燃えている様子のメーガネーター。さらに彼女は、こんな物まで用意していた。
「それと、今回はこれを使います。この、真のデュエリストたちの間に古来より伝わる禁断のアイテム──わさび入りシュークリームを!」
「結局動画のパクりじゃないっすか⁉︎」
「違います。たまたまあっちが先にやっていだけで、このロシアンシュークリーム自体は昔からある伝統的な物です。
というわけで、さっそく私たちと真のデュエルをしましょう!そして、今度こそ開発部を『ゼロへと戻す』のです!」
そう言って、彼女は再び眼鏡を輝かせる。
アンは彼女のセリフが気になったのか、こっそりプリマ・ドンナに声をかけた。
「さっきから気になってっすけど、その『ゼロへと戻す』ってなんなんすか?ただのアニメのパクリっすか?」
「八重子に聞かれても困るんですの!八重子はただ、トモ様がどうしてもと言うから、No. 2的なキャラをやっているだけですのよ?」
「八重子ちゃんも知らないんすね。……ていうか、もう偽名使ってもないっすし」
「八重子は八重子ですの!」
もうすでにグダグダになってしまっているが、とにかくデュエルするしかないらしい、と腹をくくる面々。
すると彼らの元へ、
「わぁい!コンボー!」
「あれ?みなさんお揃いで、どうされたんですか?」
ユウヤとケンジがやって来る。
取り敢えず二人に状況を説明したアンは、メーガネーターに何やら提案しようとした。
が、彼女が口を開きかけた時、
「待ってくれ。デュエルに移る前に、トモちゃ、もといメーガネーターに提案がある」
と、突然シュウの肩に乗っていた猿──もとい主任Kが話し出したのである。
「……主任、いたんですね」
「ああ、話はすべて聞かせてもらったよ。君たち開発部Xの挑戦、受けて立とう。
しかし、その前に各々新しいデッキを組む時間をもらえないかい?
それから、メーガネーター、君の相手はこの僕が務めさせてもらう」
なんと、主任K自らメーガネーターの相手を引き受けると言う。
「……いいでしょう。では、三十分だけ待ちます。その間にそれぞれデッキを開発しておいてくださいね。
プリマ・ドンナさんとハル・マゲドンさんは、私と一緒にこっちで待機です。みなさんがデッキを作っている間に、シュークリームにわさびを詰めておきましょう」
「よくわからない展開ですが、わかりました〜」
「ですわ!」
そんなわけで、開発部Xの三人は一旦引き上げて行くのだった。
取り残されたデッキ開発部の面々は超展開に呆れながらも、とにかく二手に分かれてデッキを組むことに。
相談の結果、
「アンちゃんとシュウくん、それからケンちゃんチームと」
「俺とユウヤくん、&リリィちゃんで分かれようか。バランス的にもちょうどよさそうたし」
彼らはさっそく、それぞれ新デッキの開発に取りかかった。
──三十分後。
予告していた通り、開発部Xの三人がやって来る。もちろん、人数分のシュークリームを持って。
「みなさん、デッキは完成しましたね?それでは、さっそく始めましょうか」
「ああ、受けて立つよ」
シュウの肩から降りた主任Kは、どこからともなく自分のデッキを取り出す。
「八重子の相手はどなたですの?もっとも、誰が相手だろうとやるからには負けませんわ!」
「あ、じゃあ俺が戦うよ」
「エーツー様とですの⁉︎八重子、感激ですわ!」
「ちなみに、ボクもデッキを組むのを手伝ったんだよー」
「わらわもなのじゃ!」
「げっ」
絶句するプリマ・ドンナだったが、すでに遅かった。
「では、僕は誰と戦えばいいですか?やっぱりイケメンの幼馴染がいるアンちゃんさんですか?」
「だからなんでそんな設定押し付けてくるんすか。
ハルくんの相手は」
「わたくしが担当させてもらいますぞ」
「本当ですか⁉︎いいんですかシュウさん!きゃっきゃしても!」
「もちろんですとも。アン殿や我が弟ケンジと共に開発したこのデッキ、試させてもらいますぞ!」
かくして、メーガネーターVS主任K、プリマ・ドンナVSエーツー、ハル・マゲドンVSシュウ──それぞれの激しく熱かりしデュエマが、幕を開けるのだった。
①プリマ・ドンナVSエーツー
プリマ・ドンナのシールドは5枚。バトルゾーンには、封印を解除した《禁断の番人 8ーEV》1体と、封印されたままの《禁断の番人 8ーEV》1体、それから《時空の破壊神 エイティ》が並んでいる。《時空の破壊神 エイティ》の覚醒条件により、次のターンのはじめにはもう1体の《禁断の番人 8ーEV》の封印を解くことが可能であった。
対して、エーツーのシールドは残り2枚であり、バトルゾーンには《龍覇 ザ=デッドマン》と《侵攻する神秘 ニガ=アブシューム》が。いったい彼のデッキはどのような動きを見せるのだろうか。
「俺のターン、1枚引いてからマナチャージして……手札から
《舞姫炎武 凛々丸》を召喚だ!この時、《龍覇 ザ=デッドマン》の能力により、正規のコストを払うかわりに、5色すべてが揃うようにマナを5枚タップすることで、クリーチャーを召喚できる!
そして、《舞姫炎武 凛々丸》を
召喚してバトルゾーンに出したということは……」
「
ガチンコ・ジャッジだねー!わぁい!」
「なのじゃー!
しかも、この《舞姫炎武 凛々丸》は、
3回相手とガチンコ・ジャッジをして、勝つ度に、相手のシールドと手札とマナを1枚ずつ、山札送りにできるのじゃ!これなら、
強力なシールド・トリガーを踏んでしまう心配もないのじゃ」
「というわけで、さっそく──ガチンコ・ジャッジ!」
3回ともエーツーが勝利し、プリマ・ドンナのシールドと手札とマナを、3枚ずつ山札送りにしてしまう。
「使えるマナまだあと5マナある。というわけで、手札からもう1体の《舞姫炎武 凛々丸》を召喚するよ!そして、またまたガチンコ・ジャッジ!
この時《逆転王女 プリン》を見せたので、《時空の破壊神 エイティ》をタップだ!」
「ひいぃぃぃ⁉︎」
再びエーツーが全勝し、プリマ・ドンナのシールドを削り切る。そのまま《龍覇 ザ=デッドマン》で、見事ダイレクト・アタックを決めた。
②ハル・マゲドンVSシュウ
ハル・マゲドンのシールドはまだ残り5枚。バトルゾーンには、新たなD2フィールド、
《Dの彼岸 黄泉ノ国》を展開していた。
対して、シュウのシールドは4枚であり、クリーチャーは1体も出ていない。
そんな中、ハル・マゲドンは《左右神 ハル・マゲドン》を召喚し、あらかじめ場に出していた《精霊聖邪 ライジング・サン》とリンクさせる。
「ゴッド・ノヴァがバトルゾーンに出たことにより、《Dの彼岸 黄泉ノ国》の能力発動です!自分の山札の上から1枚目を墓地へ。そして、自分のゴッド・ノヴァをリンクしたので、Dスイッチを使うことができます!
というわけで……デデンデンデンデンジャラスイッチ、オン!」
彼はノリノリで《Dの彼岸 黄泉ノ国》を上下逆さまにする。シュウが相手だからか、やけにテンションが高い。
「その効果で、
自分のクリーチャーを1体破壊し、進化ではないコスト6以下のゴッド・ノヴァを2体まで、墓地から選んでバトルゾーンに出せるんです!
まず、リンクしている《左右神 ハル・マゲドン》を破壊して墓地に。そして、墓地から今破壊した《左右神 ハル・マゲドン》と《神の子 イズモ》を出します!──これで、
3体リンク完成です!」
「さすがはゴッド大好きのハルくん。なかなか手強いっすね……」
「まだ終わりではありませんよ?
ゴッド・ノヴァがバトルゾーンに出たので、再び山札の上のカードを墓地へ。そして、これにより
《神憑きのインガ コクトー・レザー》のG・ゼロ条件成立です!《神憑きのインガ コクトー・レザー》は、
自分の墓地にゴッドが6枚以上で、なおかつD2フィールドを展開していればタダで召喚することができるんです!」
さらに、《神憑きのインガ コクトー・レザー》のもう一つの恐ろしい能力が発動。《神憑きのインガ コクトー・レザー》はバトルゾーンにある間、種族に「ゴッド・ノヴァ OMG」を追加し、リンクしているゴッド・ノヴァ OMGとしても扱われるのだ。
「《神憑きのインガ コクトー・レザー》は、リンクしているゴッド。つまり、召喚酔いが解け、すぐに攻撃することが可能です!
そして、3体リンクした《神の子 イズモ》の能力の対象になるので、アンタッチャブルとQ・ブレイカーを得る!さっそくシュウさんに攻撃です!」
「くっ、シールド・トリガーはありませんな」
「なら、《神の子 イズモ》でダイレクト・アタックです!やったー!シュウさんに勝ちました!」
「それで終わりか!開発部Xの刺客、ハル・マゲドン!」
「その声は、闇文明の貴公子、シュウさん!」
「いや、むしろ終わりそうなのはシュウくんっすけど……」
「もう、いろいろ意味不明ですね……」
アンとケンジのツッコミをスルーしつつ、シュウは手札からあるカードを見せた。
「
《革命の黒魔龍 ジャック・バイバイ》の革命0を宣言しますぞ!山札の上を見て、それが進化ではない闇のクリーチャーであれば、バトルゾーンに出しつつ進化させられる!というわけで、
ドロドロドロー!──来ましたぞ!《漆黒の美学 デスノワール》!
こいつを進化元に、《革命の黒魔龍 ジャック・バイバイ》をバトルゾーンへ!そして、《革命の黒魔龍 ジャック・バイバイ》はブロッカー!
3体リンクした《神の子 イズモ》を
ブロックして攻撃を止めますぞ!」
「……やっぱりシュウさんはすごいや!
ヒリつかせてくれますね!美学ですね!」
前回と同じアニメネタを言いつつ、ハル・マゲドンはターンエンドする。
「わたくしのターン、
美学ドロー!1枚チャージして、我が弟ケンジもお気に入りの切り札、
《奈落の王 アバドン・モナーク》を召喚!《奈落の王 アバドン・モナーク》は墓地進化なので、
バトルゾーンに進化元がなくても出すことができるのです!
そして、その登場時能力により、
自分の山札の上から3枚を墓地に置いた後、墓地から《モナーク》ではない闇のクリーチャーを1体バトルゾーンに出すことができる……。呼び出すのは、このクリーチャー──《悪魔神 バロム・クエイク》ですぞ!」
「
進化デーモン・コマンド⁉︎」
「左様。《モナーク》でなければ、
進化クリーチャーだって出せるのです!」
「すごい!しかも、《悪魔神 バロム・クエイク》が出たということは……」
「うむ、
デーモン・コマンド以外のクリーチャーをすべて破壊ですな!」
ハル・マゲドンは《神の子 イズモ》を墓地へ置く。
シュウは《悪魔神 バロム・クエイク》でリンクした《左右神 ハル・マゲドン》と《精霊聖邪 ライジング・サン》を攻撃し、破壊。《奈落の王 アバドン・モナーク》でさらに残った方を攻撃する。
返しのターン、ハル・マゲドンは新たにゴッドを召喚するも、結果シュウが押し切る形で、辛うじて勝利を収めたのだった。
「さーて、こっちはなんとかなったっすけど、他はどうなんすかねえ。
ちょっと様子を見に行ってみるっすか」
アンたちは他の組の元へ向かった。
③メーガネーターVS主任K
デュエル開始直前、メーガネーターはある巨大なフィールドを展開する。それは、計5枚ものカードから成る最凶の切り札──
メーガネーターは言いながら、妖しく眼鏡を光らせた。
第七話:「最終にして最凶の禁眼がビッグ↓バーン↑!!!遂に目醒めたダモグラスX!!!」
メーガネーターと主任Kの対戦。先に動き出したのは、主任Kであった。
「《スクランブル・チェンジ》で5マナ軽減し、残りの2マナで
《破王龍 トライダム》を召喚!
登場時能力で、山札の上から1枚目をマナゾーンか墓地に置き、その後、墓地またはマナゾーンから多色クリーチャーを1枚選び、山札の上にセットできる。ここはマナゾーンに置いてから、マナゾーンにあった
《龍の宝 ラゴン》を山札の上に。
さらにスピードアタッカーだから、すぐに攻撃可能。相手プレイヤーを攻撃──する時に、
墓地またはマナゾーンから多色カードを1枚手札に戻すよ」
「《破王龍 トライダム》で相手プレイヤーを攻撃だ!」
「……では、
《禁眼α ダモガード》で攻撃をブロックします」
「《禁眼γ ダモブロ》はコスト5以上の水のコマンド。つまり、封印を1つ外すことができるんですよ?」
メーガネーターは、《FORBIDDEN MEGANE~デッキ開発部最後の日~》の1つ目の封印を解除し、その効果でカードを1枚ドローした。
「さっそく封印を外して来たか。これはもたもたしていられないな。
僕のターン、呪文、
《タカラゴン・チャージャー》を唱えるよ!その効果で、
《禁眼γ ダモブロ》を破壊。さらに、
山札の一番上を見て、それがドラゴンであれば手札に加えられるんだ!」
説明しつつ、山札の上に手をかけ、
「このドローは激しく重い……。けど、僕は引く!DMデッキ開発部の主任として!──サルサルサルドロー!」
独特の今引き演出の末、彼は見事切り札を引き当てるのだった。
「これが僕の新たな切り札!
《白き主任 タカラゴン富》だ!」
「……
タカラ……
トミ」
「おっと、
『ゴン』を抜かしちゃダメだからね?」
「…………」
「気を取り直して……まずは、《破王龍 トライダム》で相手プレイヤーを攻撃──する時に、革命チェンジ!さっき手札に加えた、《白き主任 タカラゴン富》と入れ替えるよ!」
バトルゾーンに降り立った、《白き主任 タカラゴン富》。革命チェンジで登場したことにより、ファイナル革命が発動する!
「ファイナル革命により、このターン、相手がこのクリーチャーを選んだ時、相手のマナゾーンにあるカードを3枚墓地に置くことができる!さらに、相手が僕のクリーチャーを選ぶ時、必ずこのクリーチャーを選ばなければならない!」
擬似的なアンタッチャブルを得た《白き主任 タカラゴン富》により、相手のシールドを3枚ブレイクする。
メーガネーターはシールド・トリガーを使わず、そのままターンエンドとなった。
のだが──
「トモちゃんチェックです!」
と言う声と共に、メーガネーターの眼鏡が光る。
アニメキャラの口調を真似つつ、彼女は切り札を出し、D2フィールドを展開する。展開時能力により、カードを1枚ドロー。
「コスト5以上のコマンドを侵略MEGANEによってバトルゾーンに出したので、封印を1つ外しますね。あまり意味はないですが、その効果で次の自分のターンのはじめまで、《MEGANEの侵略 コバルトクラスト》にブロッカーを与えます」
そして、続くメーガネーターのターン、彼女は《禁眼の泉 グラスプリング》のDスイッチを使用した。
「デデンデンデンデンジャラスイッチ、オン!山札の中から水の呪文を1枚選び、相手に見せてから手札に加えます。そして、その後自分の手札1枚とシールドカード1枚を、入れ替えることができる!」
彼女は山札の中から
《メガネ・スパーク》を選び、手札に加える。そして、自分の手札から、カードを1枚シールドに仕込んだ。
「さらに1マナで《禁眼α ダモガード》と、5マナで《禁眼γ ダモブロ》を召喚。コスト5以上のコマンドを召喚したことにより、封印を一つ外します!
その効果により、《白き主任 タカラゴン富》は次の私のターンのはじめまで、攻撃もブロックもできません!」
「……動きを封じて来たか」
「《MEGANEの侵略 コバルトクラスト》で主任さんを攻撃──する時に、能力発動!バトルゾーンに自分のD2フィールドがあれば、手札からコスト4以下の水の呪文を唱えることができるんです。
と言うわけで、《ブレイン・チャージャー》を唱え、1枚ドロー。唱え終えた《ブレイン・チャージャー》を、マナゾーンに置きますね」
そして、《MEGANEの侵略 コバルトクラスト》の攻撃で、主任Kのシールドを2枚ブレイク。シールド・トリガーはなく、彼のターンに代わる。
「さすがに手強いね。ここはひとまず……《メガ・ブレード・ドラゴン》を召喚!相手のブロッカーを一掃するよ!」
メーガネーターのブロッカーをすべて破壊し、彼はターンを終えた。
するとそのタイミングで、他のデッキ開発部の面々が駆け付ける。各々戦いを終えた彼らは、二人の様子を見にやって来たのだ。
「なんすか!あのデカいフィールドは⁉︎前回アンちゃんがデュエルした時は、あんなカード使ってなかったっすよ!」
「なんだかよくわかりませんが、とても嫌な予感がしますぞ……」
他のメンバーも、最終禁眼の持つ巨大な力を感じ取っているらしく、珍しくシリアスな表情をしている。
そして、シュウの「予感」は現実の物となる──
「……このターン、コスト5以上の水または光のコマンドを召喚することができれば、最後の封印が解かれます。文字どおり、今日が『デッキ開発部最後の日』となる……。
今こそ、デッキ開発部のすべてをゼロへ!最終禁眼ドロー!」
彼女は、最後の封印を解く為のクリーチャーを引き当てた。
「
《禁眼の刺客 メーガネーター》を召喚!《FORBIDDEN MEGANE~デッキ開発部最後の日~》の
最後の封印を墓地に置きます!これにより、最凶のクリーチャーが目醒める……
禁眼ビッグ↓バーン↑です!」
《FORBIDDEN MEGANE~デッキ開発部最後の日~》が裏返り、合体することで1体の巨大なクリーチャー──
《究災の禁眼 ダモグラスX》へと変化する。そして、その瞬間、主任Kのクリーチャーはすべて封印されてしまった。
「《究災の禁眼 ダモグラスX》の禁眼ビッグ↓バーン↑時の能力発動!相手のクリーチャーすべてに封印を1つ付けます。さらに、主任さんは眼鏡をかけていない為、自分の封印を墓地に置くことはできません!」
「つまり、コマンドをバトルゾーンに出したとしても、主任のクリーチャーは解放されないのじゃ⁉︎」
「まるで、公式の《終焉の禁断 ドルマゲドンX》みたいですね……」
「……ハルくん、『公式』って?」
エーツーの問いは、当然のように黙殺される。
「《究災の禁眼 ダモグラスX》で主任さんをを攻撃──そして、MEGANEフォース発動!いずれかの眼鏡を1つ選び、それが持ち主の顔にかかっている間、自分の光と水のクリーチャーはすべてブロックされなくなります!
私が選ぶのは、もちろん私自身の眼鏡」
言いながら、自らの眼鏡をかけ直す。
「これで、万が一主任さんがブロッカーをデッキに入れていたとしても安心ですね!さすが最終禁眼クリーチャー、惚れちゃいます!」
《究災の禁眼 ダモグラスX》の攻撃により、3枚のシールドが吹き飛ばされる。ここでシールド・トリガーを引くことができなければ、《MEGANEの侵略 コバルトクラスト》のダイレク・トアタックを受けてしまうが、果たして……。
1枚目、2枚目とシールド・チェックを終え、そして運命の3枚目を手札に加えた。
「──シールド・トリガー!《閃光の守護者 ホーリー》を召喚!相手クリーチャーをすべてタップだ!」
「……ここで引いて来るなんて、さすがですね。けど、どのみち次のターンでお終いです。このデュエルも、そしてデッキ開発部も……」
「ブロッカーがいないのにその余裕……やはり、さっきのDスイッチでトリガーを仕込んだんだね?
ならば、シールドに触らずに倒すまで……」
主任Kはデッキに手を置き、再び今引き演出をする。
「このドローは激しく重い!けど、僕は引く!たとえデッドマンに焼肉に誘われなくたって!(キーボードを触ったせいで)この指が蕁麻疹だらけになったって!──サルサルサルドロー!」
先ほどよりも長いセリフが功を奏したのか、彼は再び切り札を引き当てるのだった。
第八話:「決着!メーガネーターVS主任K!そして、衝撃の展開へ!」
「来たよ!僕の新たな切り札がね!
というわけで、7マナを支払い、《閃光の守護者 ホーリー》をこいつに進化だ!」
彼が《閃光の守護者 ホーリー》の上に乗せた進化クリーチャーこそ、開発部を守護する為の最後の砦と言うべき存在だった。
「
《守護の革命 S.G.ミッチー》を召喚!」
「新たな姿の、ミッチー……⁉︎」
「そう、僕たちデッキ開発部を護る為、彼は
革命の力に目醒めたんだ!
と言うわけで、《守護の革命 S.G.ミッチー》で《究災の禁眼 ダモグラスX》を攻撃!」
「無茶ですわ!ダモグラスXのパワーは999999もありますのよ⁉︎敵いっこないですわ!」
「……心配いらないよ。ミッチーには
革命の力があるからね」
そう、《守護の革命 S.G.ミッチー》バトルする時、自分のシールドが2枚以下であれば、革命2が発動するのである。
「革命2発動!《守護の革命 S.G.ミッチー》が『開発部』以外のクリーチャーとバトルする時、自分のシールドが2枚以下であれば、そのバトルに勝つ!」
「なるほど!それなら相手のパワーがどれだけ高くても、関係ないっすね!」
「ダモグラスXは種族を持たないクリーチャーのようだから、問題なく能力を使える。部外者を容赦なく排除する、守護者にぴったりの能力だね!」
「アンちゃんとエーツーくんの言うとおり!
さあ、これでダモグラスXを破壊だ!」
「くっ、MEGANEエスケープ!バトルゾーンを離れるれるかわりに、禁眼コアを2枚、ダモグラスXの下へ!そして、私は──眼鏡を外します」
宣言どおり眼鏡を外し、そっとデュエル台に置いたメーガネーター。彼女は何を思ったか黙り込み、立ち尽くしている。
「…………」
しかも、露わになった彼女の両目は、なんと「3」になっているではないか。まるで昔の漫画のように。
そんな設定だっただろうか、と誰かが疑問に思い始めた頃、さらに予想外のことが起こる。
「……よっこらせっ、と」
年寄りじみた掛け声が、トモの眼鏡から発せられたのだ。
「ふう、危ないところやったわぁ」
それも、何故か関西弁で。
(め──眼鏡が喋ってる⁉︎)
「三回や。ダモグラスXを倒すには、三回破壊する必要がある」
謎の喋る眼鏡はアニメネタを挟みつつ、立ち上がる。眼鏡のレンズから落書きのようなおざなりな両手両足が生えていた。
「……なん、だと……⁉︎本当にドルマゲドン並の耐久力じゃないっすか⁉︎」
「そこ⁉︎そこも驚きだけど、もっと気にすべきところあるよね⁉︎」
やっと我に返った様子のエーツーが大声でツッコむ。
「そうですよ!僕なんか、驚きすぎてリアクション芸忘れちゃったくらいですからね……」
「ちい兄様のそれはこっちがびっくりするから、なくてよかったのじゃ……」
落ち込むケンジと呆れるリリィであった。
一方、主任Kはこの眼鏡の存在を予測していたのか、これまでと変わらずにプレイを続ける。
「ならば、あと二回倒すまで!──革命0、発動!《守護の革命 S.G.ミッチー》がバトルに勝った時、または自分のターンのおわりに自分のシールドが0枚ならば、アンタップさせられる!
もう一度、ダモグラスXに攻撃だ!」
「MEGANEエスケープ!コアを2枚下へ!そして、眼鏡をかけてへんので、シールドを2枚手札へと加えるで!」
再び破壊を免れた《究災の禁眼 ダモグラスX》。
しかし、革命0によって《守護の革命 S.G.ミッチー》がアンタップされる。
「バトルに勝ったことで、再びアンタップ!……ダモグラスXは最終禁眼クリーチャー。つまり、ドルマゲドン同様、『バトルゾーン以外の場所にあれば自分はゲームに負ける』能力を持ってるんだろう?」
「それじゃあ、この攻撃で破壊してしまえば、主任さんはゲームに勝てるんだねー!わぁい!」
「そうだ!これで、ゲームエンドだよ!」
「……アカン、ワイの負けや」
この攻撃により、ダモグラスXは破壊され、見事主任Kが勝利を収めた──かのように、思われた。
しかし──
「
な〜んちやって〜──
MEGANEストライク8、発動やで!」
「何⁉︎」
「
自分のマナゾーンにカードが8枚以上あり、このゲーム中他の『ストライク』を使っていなければ、このシノビをタダで出せるんや。てはわけで、
《禁眼忍者 ドライアイ》を召喚!
《禁眼忍者 ドライアイ》で、ミッチーの攻撃をブロックするでぇ!……《禁眼忍者 ドライアイ》は
『開発部』やさかい、そいつの革命2は使えんのやろう?」
「……だが、パワーはこちらが上だ!バトルに勝てば、またアンタップできる!」
「残念──やったなぁ!《禁眼忍者 ドライアイ》は、
コマンドとドラゴンとのバトル中に、それぞれパワーが+4000される!つまり、
コマンド・ドラゴンとバトルする場合、+8000されるっちゅうわけや!」
《禁眼忍者 ドライアイ》のパワーは合計13000に。対して、《守護の革命 S.G.ミッチー》は12500。バトルに負け、あえなく破壊されてしまう。
「頼みの綱は断たれてまったようやなぁ。
ワイのターン!《究災の禁眼 ダモグラスX》で、ダイレクト・アタック!」
「くっ、負けた……こんちきしょうめ!」
主任Kの敗北に、動揺を隠しきれない開発部メンバーたち。
すると眼鏡はひとりでに宙に浮かび上がる。そして、トモの顔にかけ直された。意識を取り戻したらしい彼女であったが、その口調は何故か関西弁だった。信じがたいことだが、どうやらこの謎の眼鏡に精神を乗っ取られてしまったらしい。
「ほな、これよりデッキ開発部をゼロへと戻すで?」
「ゼロへ──具体的には何をするつもりっすか?」
「そんなもん決まっとるがな。……テコ入れや」
「は?」
「永らく休載しとったさかいなぁ。これを機に、設定やキャラクター等を一新してリニューアルするんや。それが、この娘の願い……」
「トモちゃんの……」
「せやから、ちゃっちゃと始めるでぇ!まずは手始めに、全員眼鏡キャラに」
「ま、待ってくれ!」
デュエル台の上に突っ伏していた主任Kが、どうにか起き上がる。
「もう一度だけ、チャンスをくれ。もう一度、開発部のメンバーとデュエルをしてくれないか?」
「はあ?せやかて主任はん、あんたより強いデュエリストおらんのちゃうか?」
「……そんなことはないさ。ここにいるみんなは、これまで幾多の強力デッキを開発して来たんだ!彼らなら、きっと君を倒して、トモちゃんを取り戻してくれる!」
「ほう……」
メーガネーターは逡巡した後、
「……ええやろう。あんたらのリベンジマッチ、受けたろうやないかい。
それと、せっかくやから新しいデッキを組む時間もくれたるわ。完成したらワイ、もといこの娘の携帯にラインしてや。ワイはそれまでス○バでも行って、茶ぁシバいてるさかいなぁ。ほな」
RPGのラスボス的な寛容さを見せ、メーガネーターは去って行くのだった。
取り残されたデッキ開発部の面々は、新デッキの開発──の前に、あの眼鏡が何者なのかを主任Kに尋ねる。
「僕にも、詳しいことはわからない。……ただ、どうやらあの関西弁の眼鏡は、本物のクリーチャーのようなんだ」
「クリーチャー⁉︎」
「ああ。信じられないかも知れないが、そうとしか考えられない」
「けど、どうしてトモ殿の眼鏡がクリーチャーに?」
「それについては……アンちゃんたちに心当たりがあるんじゃないか?」
「アンちゃんたちっすか?そう言えわれても……あ」
何やら思い出したらしい。
第九話:「今明かされる真実!例の眼鏡の正体!」
「もしかして、あの時のアレっすかね。ほら、八重子ちゃんとリリィちゃんも一緒にいたじゃないっすか」
「八重子もですの?」
「あっ、わらわもわかったのじゃ!あの、《霞み妖精ジャスミン》のイラストになった時じゃな!」
「そすそす。きっとあの時連れて帰って来ちゃったんすよ」
彼女ら三人は何やら納得いった様子である。
しかし、当然ながら他のメンバーたちは全く話が見えていないようだ。
「えっと、つまり、どういうこと?ジャスミンのイラストって?」
「ほら、いつだかカー○ゲーマーの付録で、アンちゃんたちがイラストになった《霞み妖精 ジャスミン》が付いて来たじゃないっすか」
「うん、あったけど……?」
「あの時、つい出来心で、トモちゃんの眼鏡だけを持って行ったんすよ。ほら、よく『眼鏡が本体』って言うじゃないっすか〜。
で、だからそのせいで、眼鏡がクリーチャー化しちゃったのかなぁ、と」
「……持って行ったって、どこに?」
「え?決まってるじゃないっか。──クリーチャー世界っすよ」
「ええ⁉︎あれって本当に行ってたの⁉︎」
「そんな設定だったなんて⁉︎僕知りませんでしたよ!」
驚くエーツー。ケンジもまた、ここぞとばかりにリアクション芸を披露する。
「何を今さら驚いてるんすか。そりゃあ、実際に行かなきゃカードイラストにできないっすからね。外の世界ではどうか知らないっすけど、こっちからしたらああいうの全部、撮影してるみたいなもんっすから」
「そうなの⁉︎ていうかいいのか、そんなこと言っちゃって!」
「まあ、所詮これは二次創作っすからね。細かいことはいいんじゃないっすか」
「……身も蓋もねえ」
とにかく、原因の一端はアンたちにあるらしい。
「しかし、どうしてトモちゃんさんの眼鏡だけクリーチャーになったんですかね?他の人は特に影響ないみたいですけど」
「いい質問っすね。ハルくん。
これはあくまでもアンちゃんの仮説なんすけど……そもそも、あの眼鏡はダモグラスXの化身なんじゃないかと思うっす。つまり、ダモグラスXの思念体みたいな物が、トモちゃんの眼鏡に乗り移ったわけっすね」
「なんか、いきなり背景ストーリーっぽい壮大な話になって来ましたね」
「で、それじゃあなんでトモちゃんズ眼鏡が選ばれたかと言うと、ダモグラスXの文明を考えれば説明がつくっす。
《究災の禁眼 ダモグラスX》は光と水のレインボー。そして、トモちゃんと言えば、水文明担当っす」
「つまり、文明が合っていたからトモ様の眼鏡を選んだってことですの?
でも、それだと光の要素がわかりませんわ!もしその仮説どおりだとすれば、八重子だって狙われていた可能性があることになりますの!」
アンが答えるよりも先に、ユウヤが声を上げる。
「僕わかったよー!トモお姉さんは、眼鏡が光るからなんじゃないかなー?」
「そうっす、ユウちゃん!アンちゃんが言いたかったのは、まさにそれなんすよ」
「ど、どういうことですの?」
「要するに、トモちゃんは水文明が好きな上に、眼鏡が光るという半ば忘れられていた設定を持ってるっす。つまり、ダモグラスXと完全に文明が一致するんよ!」
「こ、こじつけがましい⁉︎」
アンとユウヤ、それから主任Kを除く全員が声を揃えてそう言った。
「まあ、アンちゃんもかなり無理があるとは思ってるっすけど。
ともあれ、あの眼鏡がクリーチャーであることは疑いようがないっす。けど、それがなんでデッキ開発部をゼロは戻したがってるのは謎っすね」
「そういえば、さっきそれがトモちゃんの願い的なことを言っていたけど……どういう意味なんだろう?」
「……確かなことは言えないっすけど、おそらくトモちゃんなりにデッキ開発部の今後を心配してたんじゃないっすか。そして、その心の不安にダモグラスXの思念が付け込んで、開発部をゼロに戻そうとしていたとか……。
いずれにせよ、あいつを倒さない限りトモちゃんは返って来ないっす。となれば、やることは一つっすよ」
「ああ、そうだね!俺たちの手で、トモちゃんを取り戻すんだ!」
決意を固め、メーガネーターへのリベンジに燃えるエーツー。
さっそく新たなデッキを組もうとしたところで、二つの問題に行き当たった。
それは、どんなコンセプトのデッキにするのかと、誰がそれを使って戦うか、である。
「単純な実力で言えば、『絶対にデュエマに勝てる』設定の八重子ちゃんが妥当な気もするっすけど……」
「そんな設定、あってないような物ですの!今回、八重子は二連敗してるんですのよ?」
「まあ、苦手なデッキタイプが相手だったから、って言うのもあると思うけどね」
悩む一同。すると、主任Kがこんなことを言い出した。
「ここはやはり、トモちゃんの気持ちを一番理解できる者が戦うべきだろう。彼女と似たような境遇にあり、彼女のことを誰よりも理解できるであろう、存在が」
「トモちゃんと、似たような境遇……」
全員の視線が、ほぼ同時にケンジへと注がれた。
「……え?──ええ⁉︎僕ですか⁉︎」
「確かに、カードプロテクト化もされてないですし、似たような境遇ですね」
「うむ。あの時プロテクトになれなかったのは、なんだかっだ言ってわたくしとケンジ、それからトモ殿だけでしたからな。まあ、トモ殿は、一応ストレージボックスでイラストになっていましたが」
「兄ちゃんまで!」
困惑するケンジだったが、他の面々はすでに納得している模様である。
「こうなったら腹を括るっすよ。心配せずとも、デッキを組むのはちゃんとみんなで協力するっすから」
「アンちゃんさん……」
「それと、今回は特別にこのカードをケンちゃんに進呈するっす。きっと、役に立つっすよ」
「これは……。ありがとうございます!僕、やってみます!」
「その意気っす!」
というわけで、ケンジがみなの代表としてデュエルすることに決まった。
続いて、どんなデッキを作るのかという話になり、主任Kがとあるカードを取り出す。それは、彼の切り札である《白き主任 タカラゴン富》だった。
しかし、どうやら先ほど彼が使っていた物とは違う物らしい。
「みんなには、これを使ったデッキを組んでもらいたい。この、特別バージョンのタカラゴンをね」
「特別バージョン?いったい何が──あ!」
何かに気付いた様子のケンジ。彼は受け取ったカードの角を、爪で摘むようにする。
「このカード、シールになってるんですね!」
「そう、かのドギラゴールデンのように、これもシール式のレジェンドカードなんだ!
というわけで、ケンジくん。今こそ、その真の姿を醒ましてくれ!」
「はい!うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
ケンジは凄まじい勢いで、シールを引っぺがしていく。
そして、ついに新たな切り札の真の姿が顕となった。
そのクリーチャーの名は──
「
《極限の煌神 タカラネクサス》⁉︎コスト12のビルド・コマンド・ドラゴンで、パワー15000!そ、それに、この能力は……!」
「そう、《極限の煌神 タカラネクサス》の持つその力こそが、
ダモグラスXを倒す鍵となるんだ!
さあ、さっそくデッキ開発に取りかかろう」
かくして、《極限の煌神 タカラネクサス》をコンセプトに、彼らは最終決戦用のデッキを創り上げるのだった。
第十話:「託された切り札、タカラネクサス!ケンジ、最後の戦いへ!」
無事タカネクサスのデッキを完成させた開発部の一同は、無事タカネクサスのデッキを完成させた開発部の一同は、ラインでメーガネーターを呼び出した。
現れたメーガネーターは余裕の表情で、テイクアウトしたらしいス○バのコーヒーを飲んでいる。
「案外早かったやないか。で、誰がワイの相手をするんや?」
「ぼ、僕が戦います!」
「ほう……こんなジャリにワイの相手が務まるんかいのう。
ま、ええわ。ほな、さっそく始めるで?《FORBIDDEN MEGANE~デッキ開発部最後の日~》を、バトルゾーンにセット↓オーン↑や!」
言いながら、メーガネーターは《FORBIDDEN MEGANE~デッキ開発部最後の日~》を展開する。
「僕は、みんなと一緒に組んだこのデッキを信じます!
デュエマ、スタートです!」
仲間たちの思いを胸に、ケンジは最後の戦いに臨む。
序盤、メーガネーターは、《禁眼α ダモガード》と《虹彩奪取 アクロパッド》を召喚し、着実に場を固める。一方、ケンジはクリーチャーを出せていないものの、《フェアリー・ミラクル》などによって、一気にマナを伸ばしていた。
「5色デッキかいな、洒落臭い。
ワイのターン、ドロー!《虹彩奪取 アクロパッド》で1マナ軽減し、《禁眼γ ダモブロ》を召喚!」
コスト5以上の光または水のコマンドを召喚したことにより、《FORBIDDEN MEGANE~デッキ開発部最後の日~》の封印が1つ外される。
「
封印を外した時の効果でカードを1枚引き、《虹彩奪取 アクロパッド》でシールドを1つブレイクや!」
「くっ、S・トリガーはありません」
「ターン・エンド。なんや、手応えがあらへんのう」
「まだまだこれからです!
僕のターン!まず、3マナで
《体操子爵 ヘルボーグ》を召喚!そして、
体操発能力動!
エーツーさん!」
「おう!行くぞ、ケンジくん!──
ヘルボーグ体操!ヘル!」
「
ボーグ!」
ケンジとエーツーの二人は、《体操子爵 ヘルボーグ》のカードイラストと同じポーズを取った。そのまま3秒間このポーズを保つことができれば、「体操」能力を使うことができるのだ。
「よし、3秒間保てたので、
相手のブロッカーを1体破壊です。というわけで、《禁眼α ダモガード》を破壊!
さらに、残りの4マナでこの呪文、
《凛・チャージャー》を唱えます!」
「
わらわのカードなのじゃー!」
「そう、姫──じゃないリリィのこの呪文の効果で、このターン、
僕の火のクリーチャーはすべてスピードアタッカーを得る!
そして、それだけではなく、
相手とガチンコ・ジャッジをして勝つことができれば、ブロッカーを1体破壊できるんです!」
「なんやと⁉︎」
「行きますよ、メーガネーターさん!ガチンコ・ジャッジ!──
やった!僕の勝ちだ!」
《凛・チャージャー》の効果により、さらに《禁眼γ ダモブロ》を破壊する。
「スピードアタッカーになった《体操子爵 ヘルボーグ》で、《虹彩奪取 アクロパッド》を攻撃して破壊します!」
「……存外やるやないか。せやけどなぁ、その程度のことで、一度動き出した禁眼を止めることはできへんでぇ!
《禁眼の刺客 メーガネーター》を召喚!二つ目の封印を外し、その効果により、《禁眼の刺客 メーガネーター》にブロッカーを与えるで!
……おっと、登場時能力は使わんとこか」
再び守りを固めて来たメーガネーター。すべての封印が解かれてしまう前に勝負を決めてしまいたいところだが、果たして……。
「《口寄せの化身龍》を召喚!その能力で、トーテム・コマンド・ドラゴン以外の種族1つにつきカードを1枚引きます!なので、この場合は3枚引いてから」
「《口寄せの化身龍》の持つ種族1つにつき1枚、マナゾーンへ置くことができるっすね!」
手札補充をし、2マナ加速する。
さらに、{タップされていないクリーチャーを攻撃できる{《体操子爵 ヘルボーグ》で、《禁眼の刺客 メーガネーター》を攻撃し、破壊した。
「……5マナ、《音感の精霊龍 エメラルーダ》を召喚。封印を1つ解除や。その効果で、《口寄せの化身龍》は
次のワイのターンのはじめまで、攻撃もブロックもできへんで。
さらに、《音感の精霊龍 エメラルーダ》の能力で、シールドを1つ手札に加える。……この時、それがトリガーなら使ってもええんや。──ちゅうわけで、S・トリガー!
《禁眼σ ダモサーファー》をバトルゾーンへ!効果で《体操子爵 ヘルボーグ》を
手札に戻させてもらうでぇ!」
「くっ」
「エメラルーダの効果で手札を1枚シールドに加え、ターン・エンドや」
(何かトリガーを仕込んだのかも知れない。……だけど!)
ケンジのターン、カードを引いた彼は勝負に出る。
「5マナで、《龍の宝 ラゴン》を召喚!登場時能力により、このターン、
《音感の精霊龍 エメラルーダ》のパワーを−2000します!
さらに《龍の宝 ラゴン》はスピードアタッカーなので、
すぐに攻撃することが可能!
そして、攻撃する時に
革命チェンジ!──手札にある
《漆黒の死奏家 グルジエフ》と入れ替えます!
《漆黒の死奏家 グルジエフ》がバトルゾーンに出た時、
自分の手札から闇のクリーチャーを1体墓地へ置くことで、相手のクリーチャー1体のパワーを、こうして墓地に置いた闇のクリーチャーのパワーと同じ分減らすことができる!」
「
パワー軽減こそ闇の美学!それでこそ我が弟ですぞ!」
ケンジは先ほど手札に戻した《龍の宝 ラゴン》を墓地へ置く。これにより、《音感の精霊龍 エメラルーダ》のパワーはー4000され、《龍の宝 ラゴン》の能力を含めてパワーが0になり、破壊される。
さらに、相手のクリーチャーが破壊されたことで《漆黒の死奏家 グルジエフ》の能力が発動。墓地に捨てた《龍の宝 ラゴン》を、手札に戻した。
「そのまま、シールドをW・ブレイクです!」
彼は手札から仕込まれたシールドを避けつつ、ブレイクする。
「……やっぱりあかんのう、最近のデュエマは。コスト踏み倒しが横行しすぎやで。そないに生き急いで、どうするつもりやねん」
急に「最近の若者は」的なことを言い出したメーガネーター。かと思えば、彼は裏声を使い、
「『トモちゃんチェックです!』──てなわけで、侵略MEGANE行くでぇ!」
「自分だって踏み倒してるじゃないですか⁉︎」
「それはそれ、これはこれやがな。──手札から、《禁眼の泉 グラスプリング》と、《MEGANEの侵略 コバルトクラスト》×2体をバトル↓ゾーン↑に!」
「一気に2体も⁉︎」
「そして、侵略MEGANEでコマンドを出したことにより、最後の封印を解除するでぇ!禁眼ビッグ↓バーン↑や!」
《FORBIDDEN MEGANE~デッキ開発部最後の日~》は裏返り、1体のクリーチャーとして合体する。
「《究災の禁眼 ダモグラスX》が禁眼ビッグ↓バーン↑したことにより、相手のクリーチャーすべてに封印を付けてもらうでぇ!
さらに、ワイのターン。《禁眼の泉 グラスプリング》のデンジャラスイッチ、オンや!山札の中から《メガネ・スパーク》を持って来て、さらに手札1枚とシールド1つを入れ替える!」
またも手札とシールドを交換した彼は、ターン最初のドローを行う。
「このドローで、何もかも終わりや……。
開発部をゼロへと戻す、最終禁眼ドロー!──来たで、
ワイの切り札がなぁ!
まずは4マナを使うて、「
《禁眼μ ダモセーブ》と《禁眼α ダモガード》1体ずつ召喚!さらに!」
メーガネーターは、追い打ちをかけるように、手札からある呪文を唱える。
「《ダイヤモンド・ソード》!これにより、このターン、ワイのクリーチャーの『攻撃できない』能力はすべて無効になる!……どういうことか、わかるよなぁ?」
「つまり、たった今召喚した2体も!」
「そのとおりや……。ほな、行くでぇ!
《究災の禁眼 ダモグラスX》で攻撃──と、同時に、MEGANEフォース発動や!選ぶんは、もちろんワイ自身やで!」
ダモグラスXのMEGANEフォースにより、メーガネーターの光と水のクリーチャーは、すべてブロックされなくなってしまう。
さらにその攻撃で、ケンジのシールドを3枚ブレイク。ここでトリガーを引けなければ、かなり苦しい展開となるが……。
「──S・トリガー!
《天性の転生 サンサーラ》を召喚します!」
「
わぁい!これで
相手クリーチャーを1体破壊できるねー!」
「ああ!──というわけで、《MEGANEの侵略 コバルトクラスト》を1体破壊します!
さらに、もう1枚のS・トリガー!《ゴッド・ハンド》!」
「
相手のクリーチャーを1体、山札の上に送ることができますね。リンクしているゴッドがいないので、シャッフルまではできませんが……まあ、
ここを凌げればどっちでもいいですよね!」
「はい!こっちも《MEGANEの侵略 コバルトクラスト》を選んで、山札送りです!」
どうにか2体のクリーチャーを除去することに成功したが、まだ危機は終わっていない。
「無駄な抵抗を……。《禁眼α ダモガード》で、最後のシールドをブレイクや!」
ケンジは、最後のシールド・チェックを行う。
(S・トリガーは……ない!革命0トリガーを持つカードも手札にはないし……。このままじゃ、僕の負けだ)
「トリガーはなかったんやろ?……せやったら、ちゃっちゃとダイレクト・アタックや!」
「そ、そんな……」
肩を落とし、俯くケンジ。絶体絶命──のはずだったが、彼の仲間はまだ諦めてなどいなかった。
「まだっすよ、ケンちゃん!まだ終わってなんかいないっす!」
「アンちゃんの言うとおりだ!君はみんなで創ったデッキを信じるんじゃなかったのか?」
「アンちゃんさん、主任さん……」
顔を上げたケンジは、自分の手札に目を落とす。
(そうだ、まだこのカードを使えば!)
「僕はみんなを、そしてアンちゃんさんから貰ったこのカードを信じます!」
彼は手札から、あるクリーチャーを相手に見せた。
「
《全力疾層》の
龍マナ武装5発動!自分のマナゾーンにドラゴンが5体以上あれば、このクリーチャーは
『S・バックードラゴン』を得る!」
「あァ?」
「僕のマナゾーンにはドラゴンが5体以上あります!そして、最後のシールドは──
《守護の革命 S.G.ミッチー》!ドラゴンなので墓地に置き、《全力疾層》を召喚します!
そして、登場時能力により、《全力疾層》を破壊!その後、
自分の封印を1つ表向きにして、それが進化ではないドラゴンまたは開発部であれば、バトルゾーンに出すことができる!」
「無理や!引けるわけあらへん!」
「それでも僕は引きます!
開発部のみんなの想いに、応える為に!──
ドロー!」
ケンジは《漆黒の死奏家 グルジエフ》に乗せられていた封印を、表向きにする。
果たして、そのカードは──
「来た!──
《ベイビィ・エイティ》!」
「八重子が推薦したクリーチャーですわ!ドラゴンではないですが、
開発部なのでバトルゾーンに出せますわね!」
「はい!
そして、《ベイビィ・エイティ》が場に出た時の能力で、
相手のクリーチャーを1体えらんでタップします!」
「
アホな⁉︎」
「《禁眼μ ダモセーブ》をタップします!
よし、
どうにか耐え切ったぞ!」
「……ぐ、ターン・エンドや」
どうにか最大の危機を凌いだケンジ。メーガネーターとの戦いは、いよいよ最終局面を迎える。
第十一話:「最終発動!!超絶極限ファイナル革命!!!!」
危機を乗り越えたケンジのターン。このターンで相手のシールドを割り切ることも可能だが、メーガネーターはS・トリガーを仕込んでいる可能性が高い。確実にここで決着を付けるには、今の盤面では不安が残るが……。
「僕のターン……みなさんの力を借りて繋いだこのドローは、激しく重い……。けど、僕は引きます!僕は……僕は、出番に飢えている!豆知識キャラもリアクション芸も、すべてはこの時の為!アグレッシブに──ハングリードロー!」
飢えた狼ばりの今引き演出の果て、彼は見事切り札を引き当てる。
「来ました!僕たちの切り札が!
まずは5マナを使って、《龍の宝 ラゴン》を召喚します!そして、《漆黒の死奏家 グルジエフ》でダモグラスXを攻撃する時に!」
ケンジが手札から見せたのは、2枚のカードだった。
「《極限の煌神 タカラネクサス》の
革命チェンジと、
《開発部秘伝! エクストリーム・モード!》の
アタック・チャンスを使います!」
「そ、そのカードは⁉︎」
「まず、《漆黒の死奏家 グルジエフ》と《極限の煌神 タカラネクサス》を入れ替えます!そして、タカラネクサスがバトルゾーンに降り立った時、ゲーム中一度だけしか使えない必殺技──
超絶極限(ファイナル・ファイナル)ファイナル革命が発動する!
自分の山札の上から3枚を表向きにして、その中に闇のドラゴン、火のドラゴン、自然のドラゴンがあれば、表向きにしたドラゴンをすべてタップしてマナゾーンに置き、このターンの後にもう一度自分のターンを行うことができるんです!」
ケンジは緊張の面持ちで、山札の上に手をかける。
「まず1枚目!」
表向きにしたカードは──《界王類邪龍目 ザ=デッドブラッキオ》。
「よし、自然のドラゴンだ!あとは闇と火を引ければ……」
言いながら、2枚目を捲る。
今度のカードは──《煉獄と魔弾の印》。
「……残念、ドラゴンやないのう」
「で、でも、まだ後1枚あります!この次が闇と火の多色ドラゴンなら、効果は使えますよ!」
「そないにうまいこといくわけ」
「できるっすよ!」
メーガネーターの言葉を遮ったのは、アンだった。
「ケンちゃんは、やればできる子っすから!」
「……ありがとうございます、アンちゃんさん!
{最後の1枚!頼む、来い!、」
祈るような言葉と共に、彼は最後の1枚を表向きにした。
「──《ボルメテウス・ブラック・ドラゴン》!闇と火の文明を持つドラゴンだ!」
「なん、やと……⁉︎」
「超絶極限ファイナル革命の条件成立!このターンの後に、{もう一度僕のターンを行います!
さらに、今表向きにした《界王類邪龍目 ザ=デッドブラッキオ》と《ボルメテウス・ブラック・ドラゴン》を、マナゾーンに置きますね!」
からくも追加ターンを獲得したケンジは、さらにタカラネクサスのもう1つの能力を使用する。
「タカラネクサスが場に登場した時、または攻撃する時、バトルゾーンにある、自分のマナゾーンにあるカードの枚数以下のコストを持つカードを1枚、持ち主の墓地に置くことができます!この能力で、《禁眼μ ダモセーブ》を墓地へ!」
「小癪なマネを……!」
「これでダモグラスXを守るものはなくなりました!
さらに、さっき唱えた《開発部秘伝! エクストリーム・モード!》の効果を使います!自分の開発部1体を選び、次の相手のターンのはじめまで、その開発部のパワーをバトル中無限大にする!しかも、自身よりパワーの低いクリーチャーにブロックされなくできるんです!
選ぶのはもちろん、《極限の煌神 タカラネクサス》!」
「すごい!これなら、相手のパワーがどれだけ高くても関係ないね!」
「うむ。もし万が一MEGANEストライクを使われたとしても、ブロッカーをすり抜けられますな!」
すっかり解説役となっている、エーツーとシュウ。
その間に、タカラネクサスはダモグラスXとバトルを行う。
「タカラネクサスの攻撃で、ダモグラスXを破壊です!」
「MEGANEエスケープ!禁眼コアを2枚ダモグラスXの下に置き、眼鏡を外すで!」
トモの顔から外され、デュエル台の上に降り立った眼鏡。レンズの下側と端から、落書きのような手足が現れる。
「ターン・エンド!──そして、もう一度僕のターン!
タカラネクサスで、再びダモグラスXを攻撃!そして、バトルゾーンにあるカードを1枚墓地に置きます!──僕が選ぶのは、禁眼コアです!」
禁眼コアはコスト0のカードである為、この能力で墓地に置くことが可能。そして、これによりMEGANEエスケープは封じられてしまう。
「禁眼コアが1枚しかない以上、もうMEGANEエスケープは使えませんよね?
というわけで、そのままタカラネクサスで、ダモグラスXとバトルします!」
「何言うてんのや!パワーは圧倒的にこっちの方が高いんやで?そもそも、さっきの呪文の効果は」
「そっちこそ、何を言ってるんですか?──《開発部秘伝! エクストリーム・モード!》の効果は、次の相手のターンのはじめまで効くんです!つまり、追加で自分のターンを行った場合、そのターンも範囲に含まれる!」
「なっ──」
「この戦いで、僕は諦めないことの大切さを知りました。どんなに不利な状況だろうと、ひっくり返せるんだってことを!
たとえ、カードプロテクト化されなくたって、カード○ーマーズへの出張企画で微塵も名前が出されなくたって、ヒーローズカードが一枚もなくたって──何度だって、ひっくり返してやればいいんです!」
「……あれ、全部ちい兄様のことなのじゃ」
「アニメネタに見せかけた、ただの自虐ですね……」
「八重子、なんだか切なくなってきましたわ……」
仲間たちが複雑な視線を送る先で、無限大の力を得たタカラネクサスは、見事ダモグラスXを討ち倒す。
コアが1枚もない為MEGANEエスケープは使えず、《究災の禁眼 ダモグラスX》は今度こそ本当に破壊された。そして、バトルゾーン以外の場所にあることにより、特殊敗北条件が成立する。
台の上で跪いていたメーガネーターのレンズに、亀裂が走った。
「こんな……こんな所で、ワイが負けるわけ……」
《究災の禁眼 ダモグラスX》を使ってデュエルに負けたプレイヤーは、自らの命──ではなく眼鏡を失ってしまう。
ダモグラスXの思念が宿ったトモの眼鏡は、ひとりでにつるが折れ曲がり、瞬く間にひしゃげて行った。
「……これで終わりや思うなよ!……ワイは、あきらめ、へんぞ……アイル、ビー、ばっ」
「いや、そのネタもうトモちゃんがやってたっすよ」
「……な、あ、ほな」
そんなやり取りを最後に、眼鏡は完全に潰れ、もう何もを言葉を発しなくなった。
そして、その瞬間、トモの体から力が抜け、膝から崩れ落ちる。
「トモちゃん!」
エーツーが駆け寄り、咄嗟に彼女の体を支えた。彼が肩を揺すって声をかけると、トモは目を覚ました。
「……あれ?みなさん、何をしているんですか?というか、私の眼鏡は?」
「よかった、なんともないみたいだね」
彼女の無事を確認することができ、安堵する一同。すると、気が抜けた為か、誰かの腹の虫が盛大に鳴った。
「……なんだか、安心したらお腹が空いてきたのじゃ」
「僕も、お腹ぺこぺこだよー」
「そう言われてみるとそうですな。何か食べにでも行きましょうか」
「あ、だったらちょうどここにシュークリームがあるっすよ?せっかくだし、みんなで食べるっす!」
「賛成ですわ!八重子もお腹が空いてますの!」
「そうだね、じゃあ、みんなで食べちゃおうか。
ほら、トモちゃんも」
「はあ。なんだかよくわからないですけど……そういうことなら、1ついただきます!」
皿に盛られたシュークリームをそれぞれ一個ずつ手に取り、口に運ぶ。
「……あっ、そのシュークリームなんですけど」
何事か言いかけたハルだったが、すでに遅く、
「みなさんを待ってる間暇だったんで、全部わさび入りにしちゃったんですけど……」
彼が言い終えた時には、みなシュークリームを頬張った後だった。
ていうオチです……。
最終更新:2017年02月27日 00:34