「ふう・・・一人で残ってやってたからって、ちょっと練習に熱を入れすぎたかな」
今日はどうにも練習での自分の演奏に納得が出来なかったので、先輩達が帰った後も私は一人で残って練習をしていた。
そうしてしばらく一人で練習したのち下校時間も近付き、外も暗くなってきた所で私もそろそろ帰る事に。
そうしてしばらく一人で練習したのち下校時間も近付き、外も暗くなってきた所で私もそろそろ帰る事に。
「もう他の生徒も残ってないだろうし、早く帰ろ・・・」
そうして部室前の階段を下りていた所、肩に担いでいるムスタングがずり落ちかけたので担ぎ直そうとした瞬間、
―ずるっ、
「きゃっ!?」
―だんっ!どさっ!
「いっ・・・いったあっ・・・!」
ムスタングがずり落ちかけたのを担ぎ直そうとした時に足元を見ずに階段を下りたのがまずかったのか、私は階段を踏み外してしまった。
幸い、ねんざとかはせずにムスタングも無事だったけど踏み外した時に階段に勢いよくお尻を打ってしまい、一時的に足腰が立たなくなってしまった。
「ううっ・・・澪先輩っ・・・」
上の部室と下の廊下の間にある階段の踊り場で動けずに何だか涙が出そうになる中、無意識に大好きな先輩の姿が脳裏に浮かぶ。
そんな都合よく来てくれる事はないと、すぐに自分で理解しつつも。
そんな都合よく来てくれる事はないと、すぐに自分で理解しつつも。
と、下の方から足音が聞こえ誰かがやってくる。残っている先生だろうか・・・と思っていたが。
「梓っ!?」
「えっ・・・み、澪先輩!?」
「えっ・・・み、澪先輩!?」
決して来るとは思わなかった先輩の姿が、確かに目の前にいた。
「澪先輩、もうとっくに帰ったんじゃ・・・いたたっ」
「私は忘れていた教科書を取りに学校に戻ってたんだけど・・・それより今の音、梓どうしたんだ!?」
「私は忘れていた教科書を取りに学校に戻ってたんだけど・・・それより今の音、梓どうしたんだ!?」
澪先輩は心配な顔で駆け寄ると私の顔を覗き込んでくる。何だかもう驚きと喜びでどうにかなっちゃいそう・・・。
「ちょっと階段を踏み外して・・・それでお尻を打っちゃったみたいで痛くて立てなくてっ・・・」
私がそう言うと、
「・・・梓、ちょっとごめんな」
「え?」
「え?」
澪先輩は私のムスタングを肩に担ぐと、私を両手に抱え上げた。
「え・・・えっ?」
――いわゆる、世間一般で言う「お姫様抱っこ」を先輩にされていると私は気付くのに数秒程かかっていた。
「??!みみっ、澪先輩っ!?」
「少し我慢しててくれよ、保健室まで運ぶから」
「はっ、恥ずかしいですっ」
「この時間なら他の生徒なんて誰も残ってないし、それに何より梓が動けないのを黙って見ていられないよ」
「少し我慢しててくれよ、保健室まで運ぶから」
「はっ、恥ずかしいですっ」
「この時間なら他の生徒なんて誰も残ってないし、それに何より梓が動けないのを黙って見ていられないよ」
澪先輩に強い口調でそう言われてしまうとこちらとしても返しようがなく、大人しく抱え上げられているしかなくなってしまう。
気恥ずかしさでいっぱいな中、保健室まで私を両手に抱え上げて歩く澪先輩はこの上なくかっこよくて、見とれていた――
「保健の先生が帰る直前に間に合ってよかったよ、開いてなかったら保健室は使えなかっただろうからさ」
「は、はい」
「まあ、保健の先生に見られたのは少し恥ずかしかったけど・・・」
「は、はい」
「まあ、保健の先生に見られたのは少し恥ずかしかったけど・・・」
保健室の前まで来た所、ちょうど保健の先生が鍵をかけて帰ろうとしていて先輩が事情を話すと「後で戸締まりを忘れないように」と戸締まりを任される代わりに、私は痛みが引くまで保健室のベッドで横になり休ませてもらえる事になった。
「でも驚きました、澪先輩が助けに来てくれないかなと思ったら本当に来てくれたので」
「そ、そうなのか?」
「だって、大好きな先輩が助けに来てくれたんですよ?だからすごく嬉しかったんです」
「そ、そっか、期待に応えられたようで何より・・・」
「そ、そうなのか?」
「だって、大好きな先輩が助けに来てくれたんですよ?だからすごく嬉しかったんです」
「そ、そっか、期待に応えられたようで何より・・・」
私の言葉に照れ笑いを浮かべる澪先輩。
「けど、私は梓を守るって決めたからさ。これぐらいはしないと」
「澪先輩・・・」
「私なんかに出来る事なんて、たかが知れてるだろうけどそれでも私に出来る事で梓を守れるなら何だってしたいんだ」
「澪先輩・・・」
「私なんかに出来る事なんて、たかが知れてるだろうけどそれでも私に出来る事で梓を守れるなら何だってしたいんだ」
私の手を握り、私の目を真っ直ぐに見ながら、澪先輩は強く語る。
こんなに素敵な先輩に守られていると思うと、本当に自分は幸せ者だって感じる。けどそう感じる程に、守ってもらっているだけの自分が何だか情けなくも思えてしまう。
こんなに素敵な先輩に守られていると思うと、本当に自分は幸せ者だって感じる。けどそう感じる程に、守ってもらっているだけの自分が何だか情けなくも思えてしまう。
だが澪先輩はそんな私の心を読むかのように、
「でも、私は梓にいつも助けてもらっているからな。変に気に病むことはないぞ」
「澪先輩・・・あっ」
「澪先輩・・・あっ」
澪先輩はそっと私の半身を起こすと、優しく抱きしめる。
「梓が傍にいてくれるだけで私は助けられているって言ってもいいぐらいだから・・・さ」
「せん、ぱい・・・」
「せん、ぱい・・・」
そうして澪先輩は私をゆっくりとベッドに横たえると、そっと覆い被さりながら唇を重ねてきた。
私は抵抗することなく目をつむり、先輩の唇の感触に身を委ねる。
私は抵抗することなく目をつむり、先輩の唇の感触に身を委ねる。
「んんっ・・・」
柔らかな唇の感触が数秒ほど続いた後、唇が離れていくのと同時に目を開けると澪先輩は顔を紅くしつつも柔らかな笑みを浮かべていた。
「ふふふっ」
「えへへっ」
「えへへっ」
澪先輩が笑みを浮かべるのにつられ、私も笑みを浮かべた。
それからしばらくして私の体の痛みも引いた所で二人で一緒に帰ることに。
「梓、本当にもう大丈夫か?」
「はい、おかげさまでもう大丈夫です」
「そっか・・・よかった。じゃあ」
「はい、おかげさまでもう大丈夫です」
「そっか・・・よかった。じゃあ」
私がベッドから出ようとした所、保健室まで運ばれた時と同じように澪先輩に両手に抱え上げられた。
「みっ、澪先輩っ!だからもう一人で歩け・・・」
「あ、ごめん。さっき保健室まで来た時のくせで・・・」
「あっ、ま待って下さいっ」
「?」
「あ、ごめん。さっき保健室まで来た時のくせで・・・」
「あっ、ま待って下さいっ」
「?」
私を下ろそうとする澪先輩をとっさに制止する。
「あ、あの歩けます・・・けど・・・このままの状態でもう少しいてくれると嬉しいかな、なんて・・・」
自分でも顔に熱が集中しているのが分かりつつ、恥ずかしいお願いを口にする。
「ふふっ・・・では靴箱の所までこのまま運んでもよろしいですか、お姫様?」
「もうっ、からかわないで下さいっ」
「もうっ、からかわないで下さいっ」
そう言いながら私は先輩の首の後ろに腕を回し、肩にぎゅっと掴まる。
「大好きですっ、澪先輩」
「私も大好きだぞっ、梓」
「私も大好きだぞっ、梓」
そうして先輩が歩き出す前、私は抱き上げられた状態でもう一度先輩とお互いの唇を重ねていた――
(FIN)