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まさか『寝るな。寝ると死ぬぞ』という定番のギャグを、この身で味わうハメになろうとは。

「噂には聞いてたけど、本当に雪山ってのはこうも簡単に天気が急変するんだな」

自嘲交じりに重たいまぶたをこすりながら私はつぶやく。
どういう自然の悪戯なのか、ムギに誘われて軽音部のメンバーと山の別荘へスキーしにきたのに、
突然の吹雪に巻かれて私と梓だけがはぐれてしまったのだ。
もし偶然この山小屋に逃げ込めなかったら、とっくに凍死してしまっていたに違いない。

「澪先輩、暖炉の火が消えそうです」

心なしか梓の声が震えているのは寒さのためか、それとも恐怖のためか。
おそらくは両方だろう。
この山小屋に逃げ込んだことで多少は生き長らえたようだが、その幸運もそう長くないようだ。
燃やせるようなものはあらかた暖炉に放り込んでしまい、もうほとんど何も残っていない。

そして外の吹雪はますます激しくなる一方だ。
このままでは、とても明日の朝まで持ちそうにない。

「あの、ひとつ提案があるのですが、先輩…」

顔を伏せたまま、ぼそぼそと梓が話しはじめたのは、そんなかなり追い詰められた状況でのことだった。

「なんだ、何かいい方法でも思いついたか」
「…その、こういう時の定番は、やっぱり…」
「やっぱり、何だ」
「…ええと、ですから…、あれですよ。人肌で暖めあう、という…」

……ああ、こいつ、とうとう壊れたか。

「な、何をバカなことを言ってるんだ。そんなことできるわけないだろ」
「いいえ、できます。私、澪先輩を救うためだったら、ぬ…脱ぎますっ!」

そう言い放つなり、すっくと立ち上がった梓は、スキーウェアから何から次々と脱ぎ始めていく。

「ちょっと待て、落ち着け梓」

だが私の言葉をまったく無視したまま、とうとう梓は最後の一枚まで床に脱ぎ捨てると、私の前で仁王立ちになった。

「さあ、今後は澪先輩の番です」
「いやだから、いくら女同士でも、それはちょっとマズいんじゃないか…と」
「今さら何言ってるんですか。生きるか死ぬかの瀬戸際なんですよ。さっさと全部脱いで、その軽音部随一の豊満な肉体を余さず私の目の前に晒してくださいっ!!」

な、なんだこいつ。なんか言ってることがおかしいぞ。

「とにかく待て。落ち着け。話せばわかるっ」
「問答無用っ!」
「きゃ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!」

──そして翌朝。

救助隊が発見したのは、やつれ果て前後不覚に陥っていた全裸の私。
そしてその私を抱きかかえたまま、それはもう幸せそうに眠っていた全裸の梓の姿だったと聞かされた。
あのとき梓がキレてから、いったい何があったのか。何も覚えていない。っていうか思い出したくもない。
しくしくしくしく──。

(おしまい)