恋心

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mioazu

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卒業式を間近に控え秋山澪は悩んでいた。

悩みと言っても勉学ではない。

大学も無事、合格した。

そう言った類の悩みではない。

けど、彼女の胸の内にはもやもやとした感覚が有るのだった。

澪「律に相談してみようか?でも多分冷やかされるから止めとこう」


卒業式当日

今日でこの学校に通うのも最後。

そして、高校で軽音部5人揃うのも最後。

澪はある決意をして、学校に向かうのだった。

そう、胸のもやもやを取り払うため。

律「おーっす」

いつもの様に律と学校に向かう。


卒業式を無事終え、軽音部の仲間と部室に向かった。

ここでこうやって過ごすのも最後か。などと思いにふける。

やがて、梓もやってきて軽音部5人が揃った。

梓「お礼の手紙を書いてきたんです」

梓から卒業する3年生に手紙が渡される。

澪「ありがとう」


そして後輩の梓へ向け、最後の演奏をする。

梓は涙を流し、喜んでくれた。

部室で演奏するのもこれで最後。

その後、和とさわ子先生も来てくれて盛り上がった。


そんな中

澪「梓、ちょっと話があるんだけど良いかな?」

澪は梓を屋上へと誘った。

梓「話って何です?」

澪「あの・・・」

梓「部室じゃまずかったんですか?」

澪「部室じゃちょっとな・・・」

頭の中が落ち着かない。

言いたい事は、昨夜きちんと整理したはずなのに

まだためらうのか、と自分が情けなくなる。

悲しい気持ちより、自分を嘲笑いたい気持ちでいっぱいになる。

気持ちを切り換えるように軽く咳払いをした後

澪はゆっくりと、呼びかけた。

澪「梓」

澪の呼び掛けに梓は思わず身構えた。

上手く言葉が出ない。

自分の言葉で、ちゃんと伝えたいのに。

その気持ちとは反対に、声を出そうと思えば思うほど喉の奥で引っかかる。

言葉が出ないのはこんなにも、もどかしいものなんだと痛感した。

そんな自分の情けなさに目頭が熱くなる。

何回もライブを経験した。学園祭では主役を演じきった。

度胸は付いた筈なのに・・・

肝心な時に、またヘタレに戻ってしまうのか。

梓「どうしたんですか?」

梓が下から澪の顔を覗き込む。

澪「え、えっと・・・」

梓「頑張って下さい」

そう言い、梓は澪の手をギュッと握った。

澪「うん」

フー、と一呼吸すると梓を見据え

澪「私、梓の事が好きなんだ」

2人以外誰もいない、この場所に聞こえる震える澪の声。

その瞬間2人の時間が止まっているかのようなそんな感覚だった。

澪はまっすぐ梓を見つめ、梓もまたまっすぐに澪を見つめた。

しばしの沈黙。時間にすれば30秒ほどだろう。

しかし、その時間が恐ろしく長いものに感じられた。

そんな重苦しい沈黙を先に破ったのは梓の方だった。

梓「恥ずかしがり屋の澪先輩が告白するなんて」

澪は黙って俯いている。

梓「私は、言葉で伝える勇気がなかったから」

澪「え?」

澪は伏せていた顔を上げる。

梓「さっき部室で渡した手紙・・・」

澪は慌ててポケットにしまった梓から渡された手紙を開ける。

『澪先輩は永遠に憧れです。大好きです』

澪「え?じゃ、じゃあ」

梓「私も、澪先輩が大好きです」

その言葉を聞いた時

心の中に安堵の気持ちが溢れ出した。

その言葉こそが、澪が最も望んだ言葉だったのだ。

梓「涙、拭いて下さい」

そっと梓からハンカチが手渡される。

その時初めて自分が涙を流していた事に気付いた。

澪の目の前が一気に滲んだ。

梓は澪の背中に手を回し、ゆっくりと抱きしめた。

制服を通して、澪の温もりが伝わってくる。


梓「ねぇ、澪先輩」

澪「ん?」

梓「んっ・・・」

澪「?」

梓は抱きしめていた手を離すと顎を上げ、目を瞑った。

澪(こ、これは?もしかして世間一般で言う、キスして下さいポーズ)

澪「///」

どうしよう、今日キスするなんて思ってなかったから心の準備が・・・

身体が固まったまま動かない。


梓が待ちくたびれて眼を開けると、顔を真っ赤にして硬直した澪の顔があった。

梓(全く・・・)

心の中でそう呟くと梓は澪を抱き寄せ唇を奪った。

「んん・・」

優しく触れた後、唇はそっと放される。その時間はほんのわずかだった。

梓「も、もう戻りましょう。あんまり遅いと怪しまれます///」

そう言い、階段へ向かい歩き始める梓。

澪(・・・このままヘタレで終わりたくない)

ガシッ

後ろから梓の肩に手を掛ける。

梓「何です?」

澪は振り向く梓の頭を抱き寄せると唇を一気に奪った。

「んんっ」

先ほどよりも長いキス。

やがて唇が離れる。

梓「さっきして下さいよ。待ってる間恥ずかしかったんですから」

澪「ゴ、ゴメンな///」

梓「もう」

澪「みんなに報告に行こう」

そう言い、梓の手を取り歩き始める澪。

梓は澪に身体を寄せ、ぴったりとくっつき歩き始めた。




お終い
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